心不全のバイオマーカー - ロシュ e

特別講演 10
第 63 回日本心臓病学会 9 月 18 日~20 日 パシフィコ横浜
心不全のバイオマーカー
Heart Failure Biomarkers
Hutter Family Professor of Medicine, Harvard Medical School/DeSanctis Endowed Clinical Scholar, Massachusetts
General Hospital/Cardiometabolic Trial Group, Harvard Clinical Research Institute
James L. Januzzi, Jr
Review
● 心不全の診断と予後予測のバイオマーカーとして、ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP/BNP)はゴールドスタンダードで
あり、NT-proBNP/BNP ガイド下治療を行うことで全生存期間は延長することが報告されている(図 1)。
● 左室収縮機能障害による心不全患者を対象とした PROTECT 試験では、標準的な治療と比較して NT-proBNP ガイド下治療
において心血管イベント発生率が有意に低下した(オッズ比 0.44、95% 信頼区間[CI]0.22-0.84、p = 0.019)(図 2)。
● LCZ696(Entresto)は、アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬であるバルサルタンとネプリライシン阻害薬である sacubitril の
機能部位を組み合わせた世界初のアンジオテンシンⅡ受容体ネプリライシン阻害薬である(図 3)
。
● 心不全患者を対象とした PARADIGM-HF 試験における死亡または心不全による入院数は、LCZ696 群(n = 4187)で 914
例(21.8%)
、ACE 阻害薬であるエナラプリル群(n=4212)で1117例(26.5%)と、LCZ696群で有意に低かった(ハザー
ド比 0.80、95% CI 0.73-0.87、p = 0.0000004)
。
● LCZ696は血中のBNP濃度に干渉するため、同薬の投与例ではBNPを用いた心不全の管理が難しくなる可能性がある(図4)。
● 現在、心不全の新規バイオマーカーとして可溶性(s)ST2、エンドセリン -1(ET-1)などの有用性が報告されており、NTproBNP、高感度トロポニンT(hsTnT)
、sST2などを組み合わせることで、心不全患者の予後予測、治療効果判定は容易にな
ると考えられる(図 5)
。
図1
ナトリウム利尿ペプチドガイド下治療による全生存期間
の延長
ナトリウム利尿ペプチドガイド下治療を行うことで心不全患者の生存期間
は延長した。
図2
PROTECT 試験における心血管
イベント発生数
左室収縮機能障害による心不全患者を対象とした
PROTECT 試験では NT-proBNP ガイド下治療により
心血管イベント発生率が低下した。
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図3
LCZ696(Entresto)の作用機序
LCZ696 はバルサルタンと sacubitril の機能部位を組み合わせた世界初のアンジオテンシンⅡ受容体ネプリライシン阻害薬で、レニン - アン
ジオテンシン系(RAS)とネプリライシンを阻害する。
図4
LCZ696 がナトリウム利尿ペプチドに及ぼす影響
LCZ696 が投与された患者では、血中 NT-proBNP 濃度から予
後を予測しうるが、血中 BNP 濃度は薬剤の影響を受けるため予
後予測マーカーとはならない。
図5
複数のバイオマーカーによる急性非代償性
心不全患者の予後予測
急性非代償性心不全患者では、バイオマーカー保有数が多いほど
死亡率が上昇した。
1065.IM.PRZ.3000.COE06-106B