シティグループ証券寄附講座「グローバル金融制度論」 世界の金融法制の体系 2016年6月3日 シティグループ証券株式会社取締役副会長 藤田 勉, Ph.D. シティグループ証券株式会社 東京都千代田区丸の内1丁目5番1号 新丸の内ビルディング 本資料はシティグループ証券が情報提供を目的として作成したものであり、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘を意図したものではありません。 世界の上場会社法制 上場会社法制 ハードロー(法律、判例法など)、ソフトロー(それ以外の規則) 1. 会社法、金融商品取引法を中心とする成文法(ハードロー) 2. 裁判所による命令、判決、判例(ハードロー) 3. 政府機関による処分、命令(ハードロー)、指導、助言、勧告(ソフトロー) 4. 証券取引所上場規則、自主規制など(ソフトロー) 5. 市場の規律(市場の圧力、私的な制裁や非難、商慣習など) 国別の相対的な特徴 米国 ハードロー主体(司法、SEC)、ソフトロー(上場規則) 英国 ソフトロー主体(自主規制)、市場の規律 ドイツ 成文法(強行法規) 2 グローバル金融規制の決定プロセス リーマン・ショック後、グローバル金融規制の決定プロセスは固まる。 1. G20サミット 主要20か国の首脳がグローバル金融規制の基本方針を決め、FSBにその策 定を要請。 2. 金融安定化理事会(FSB) 主要な制度設計は、FSBが実施。IMFやWTOに匹敵する重要な組織。 例:G-SIFIs(金融システム上重要なグローバルな金融機関)の認定、金融機 関の破綻処理制度改革。 9の国際機関と25ヵ国(地域)の中央銀行、財務省、金融監督機関が参加。 3. 国際基準設定団体 BCBS→バーゼル規制。国際会計基準審議会(IASB)→国際財務報告基準( IFRS)。他に、証券、保険。 3 世界の金融法制 米国 制定法は授権法モデル。判例法の影響大。 SECの権限が強い。SEC規則や上場規則が充実。 上場規則はソフトローの範疇ではあるが、SECによる承認を必要とするの で、上場企業に関しては、事実上、ハードローに近い強制力を持つ。 欧州 英国では、自主規制を中心とするソフトローが発達。 大陸欧州では、ユニバーサルバンク主体、直接金融市場が相対的に小さ かった。→金融法制の発達は遅れた。 21世紀に入って、EUが、英国の金融制度を軸に、ハードロー(成文法)によ って、金融法制の整備を進めた。 大陸欧州の金融法制は英国法化し、英国の金融法制はハードロー化。 藤田友敬「ソフトロー・プロジェクト:その意義とこれまでの歩み」(ソフトロー研究第14号、2009年) 瀬下博之「ソフトローとハードロー―何がソフトローをエンフォースするのか―」(COEソフトロー・ディスカッション・ペーパー・シ リーズ、2006年4月) 4 世界の上場会社法制:日本 大陸法体系の会社法、税法と米国法体系の金融商品取引法が共存。 会計制度は、大陸法体系から英国法体系(IFRS)へシフト。 1. 会社法(税法、会計なども同様) 大陸法体系。戦後、米国法が加わった。 1899年 商法 ドイツ法体系 1950年 商法改正 米国会社法制の移入(取締役会、株式発行) 2005年 会社法 定款自治の範囲の拡大 2. 金融商品取引法 基本的には、米国法体系。近年、英国法が加わった(例:TOB法制の全部買 取義務、金融商品取引法、金融庁)。 1948年 証券取引法 米国占領下、世界で2番目に施行(英国1986年金 融サービス法、ドイツ1994年有価証券取引法) 5 本日のまとめ 経路依存性(path-dependency)の重要性 1. 過去の選択、経験や歴史的背景、学習といったものによって、現在の選 択が制約を受ける現象。 2. 各国毎に、金融法制が大きく異なる。特に、アングロ・サクソン法体系と 大陸法体系は大きく異なる。 3. アングロ・サクソン法体系でも、米国と英国(+オーストラリア、カナダ、シン ガポール、香港など)の体系は大きく異なる。 4. 各国の金融法制が大きく異なる中で、金融市場は急速にアングロ・サク ソン化しつつ、同時にグローバル化が進む。 結論 1. アングロ・サクソン法体系を中心に、世界的な金融規制統一が進む。 2. 大陸法体系からアングロ・サクソン法体系に移行しつつある日本の法体 系は、明確な哲学のないまま、大きな変革期を迎えている。 6 本資料はシティグループ証券(当社)が作成したものであり、他の第三者に過去に提供された他の資料の抜粋を含む可能性があります。本資料は、 当社又はその関係会社が作成配布したリサーチレポートに言及している可能性がありますが、本資料は調査部門が作成したものでなく、本資料に 記載された情報は、適用される規制当局により定義された「アナリストレポート」及び「リサーチレポート」に該当することを意図しているものではあり ません。本資料に記載された情報は、一般的に入手可能な情報であり、信頼に足ると思われる情報源から入手したものですが、正確性及び完全性 を保証するものではありません。本資料は情報提供のみを目的としており、特定の利用者の投資目的、財務状況、資力を考慮しておりません。本資 料は、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘ではありません。先物、オプション、高利回り証券を含む特定の取引又は取引戦略は、相当の リスクを内包しており全ての投資家に適したものではありません。直接、間接、派生的を問わず、本資料に記載された情報の使用により又は本資料 に起因する損失に対して、当社は一切の責任を負いません。当社は、税務及び法律の助言を行うものではありません。お客様におかれましては、ご 自身の税務及び法務アドバイザーより助言を受けた上で、ご自身の目的、経験、資力に基づく投資判断をなさるようお願いいたします。本資料に含 まれる資料、記述、情報は当社に帰属するものであり、著作権その他の知的財産に関する法律によって保護されます。いかなる目的においても他 者への転送、再配布を行うことはできません。 Copyright © Citigroup Global Markets Japan Inc. 2016. All Rights Reserved. シティ(Citi)及びシティと弧のマーク(Citi with Arc Design)は、シティグループ・インク及びその関係会社の商号及びサービス・マークであり、世界中で 使用及び登録されています。 7 この資料は、お客様に対してマーケット情報等を提供する目的で作成されたものであり、当社が行う金融商品取引業の内 容をご案内する目的で作成されたものでありませんが、金融商品取引業における販売資料として一般投資家のお客様に 交付させていただく場合、当社が行う広告等に該当しますので、広告等に関する以下の表示事項にご留意ください。 金融商品取引法第 37 条(広告等の規制)にかかる留意事項 上場有価証券の売買取引にあたっては、売買代金の他に売買代金にお客様と当社であらかじめ合意した料率を乗じ た売買手数料をいただきます。売買手数料の料率は、お客様と当社の間の合意により、都度又は定期的に決定され ますので、本書面上その料率等をあらかじめ記載することはできません。 上場有価証券を募集等により、または当社との相対取引により売買する場合は、原則売買対価のみを授受いただき ます。 上場有価証券は、発行者の信用状況の悪化等に伴う株価の変動により、損失が生じるおそれがあります。外国株式 は、為替相場の変動等により損失が生じるおそれがあります。 お取引にあたっては、契約締結前交付書面や目論見書またはお客様向け資料をよくお読み下さいますようお願いい たします。 商号等/シティグループ証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 130 号 加入協会/日本証券業協会、一般社団法人金融先物取引業協会、一般社団法人 第二種金融商品取引業協会 8
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