第7回 授業資料 - G-SEC

シティグループ証券寄附講座「グローバル金融制度論」
世界の法体系の概要
2016年5月27日
シティグループ証券株式会社
シティグループ証券株式会社取締役副会長
藤田 勉, Ph.D.
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東京都千代田区丸の内1丁目5番1号
新丸の内ビルディング
本資料はシティグループ証券が情報提供を目的として作成したものであり、投資に関する助言又は金融商品の売買の勧誘を意図したものではありません。
世界の法体系とその歴史
公法と私法
公法は、主に、憲法、行政法、刑法、訴訟法、国際法。
私法は、民法、商法、国際私法など。
会社法は私法。金融法制は一般に公法に属する。
会社が会社法に定める配当規制違反をしても、利害関係者が提起しない
限り、違反として罰せられることはない。金融法制に関わるインサイダー取
引は、利害関係者が提起しなくても、違反として罰せられることがある。
成文法と不文法
制定法は成文法、判例法、慣習法は不文法に区分される。
判例法は、裁判所で下された判決が準拠した趣旨や原則(判決理由)により
形成された法律を指す。
英米では判例主義を採用。判例が基本法体系。
伊藤正己、加藤一郎編『現代法学入門第4版』(有斐閣双書、2005年)、末川博編『法学入門[第6版]』(有斐閣双書、2009年参照。
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世界の法体系とその歴史
ハードロー
法律や判例法。裁判所などの国家権力により、その執行が強制力を持つ。
長所は、強制力を持つこと。成文法は、明示性が高い。
短所は、実務の変化に対応するのが遅れる。裁判が頻発すると、司法コス
トは膨大。時間を要する。
ソフトロー
非拘束的規範(自主規制、紳士協定、努力目標など)。
強みは、実務的であり、かつ時代の変化や国際間の制度の相違などにつ
いても、比較的柔軟に対応可能。迅速かつ低コストであることが多い。
弱点は、強制力を持たないこと。
証券取引所上場規則やコーポレート・ガバナンス原則に代表されるように、
世界の資本市場においてソフトローの役割が高まっている。
藤田友敬「ソフトロー・プロジェクト:その意義とこれまでの歩み」(ソフトロー研究第14号、2009年)
瀬下博之「ソフトローとハードロー―何がソフトローをエンフォースするのか―」(COEソフトロー・ディスカッション・ペーパー・シ
リーズ、2006年4月)
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世界の法体系とその歴史
大陸法(シビルロー)
起源は、ハムラビ法典、ローマ法。
ローマ帝国は、異なる言語や慣習を持つ多民族国家で形成。成文法により
統一した法律が必要。
→ローマ法大全。東ローマ帝国ユスティニアヌス1世が制定発布。
神聖ローマ帝国、フランス(ナポレオン法典)、ドイツ帝国で発達。
日本は、当初、フランスの制度を移入したが、その後、ドイツ法を移入。
法の編纂を通じて発達したシビルローは成文法中心。
古典的な基本思想は、「法は君主が領民を支配するためのものであり、君
主が法を決める」。
コモンローは不文法中心。米国では判例法、英国では慣習法が発達。
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世界の法体系とその歴史
英米法(コモンロー)
英国:
1066年征服王ウイリアムス1世、ノルマン朝の成立。
各地の判例→国立裁判所の設立。
判例法(陪審)+衡平法(エクイティ)。慣習法。ソフトローの発達。
旧英国植民地諸国で発達。
米国:
Stare decisis(先例拘束性の原則)→司法による法の創造が発達。
連邦法と州法
外交、通貨、州際業務など、連邦しかできないものだけ連邦法。それ以外
は、州法(刑法、民法など)。
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本日のまとめ
1.
世界の企業法制のトレンド
日本や欧州大陸でも、英米法の影響は高まりつつあるが、限定的。会社法
制は、その国や地域の歴史や社会などに深く根ざしたものが多いため、そ
の国や地域に固有なルールが多い。
金融法制は、英米法に収斂しつつある。世界の国際金融センターは、ニュー
ヨーク、ロンドン、香港、シンガポールが優勢。
2.
制度は歴史と社会に根ざす
制度の哲学、理念の理解が十分でなく、かつ、法的プラットフォームを全体
的に導入せず、「部品」だけを移入しても機能しない。
例:法科大学院、三角合併、ライツイシュー、委員会設置会社、TOB、独立
取締役
結論:法律を理解するには、その国の歴史、社会、文化、宗教、政治を深く
理解することが不可欠。
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