Title 実験的ビタミンB[12] - Kyoto University Research Information

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実験的ビタミンB[12]欠乏症に関する研究( Abstract_要旨 )
山村, 善信
Kyoto University (京都大学)
1966-11-24
http://hdl.handle.net/2433/212019
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
信
善
【173 】
村
むら
学 位 の 種 類
医
学
学 位 記 番 号
論
学位授与 の 日付
昭 和 41 年 11 月 24 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5 条 第 2 項 該 当
学位 論文 題 目
実験的ビタミン B 12 欠 乏症 に関す る研究
論文 調査 委員
教 授 脇 坂 行 一
博
鵬 士
医
㍑博
山
やま
氏
第 322 号
(主 査)
論
(目的)
文
内
教 授 高 安 正 夫
容
の
要
教 授 深 瀬 政 市
旨
造 血 ビ タ ミンと呼ば れ るビタ ミン B 12 (B 12 と略) , 葉酸 (F A と略) , F A か ら citrovorum
factor への転換 を促進す ると言われ るビタ ミンC (C と略) 等 が欠乏す る時 , 動物の造血臓器並 びにその
他諸組織 に及 ぼす影響 を検討 し, これ らビタ ミンとの関連性 を明 らかにせ ん と試 みた。
(方法)
総計 145 匹の幼君系 A D モルモ ッ トを B riggs, R eid らの合成飼料で飼育 し, 対照 , F A 欠
乏 , B 12 欠乏 , C 欠乏 , B 12 十 F A 欠乏 , B 12 + C 欠乏 , B 12 + F A + C 欠乏 の各群 に分 かち, 死直前 の状態
を迎えるまで観察 した。 その最短飼育 日数 は 5 日, 最長飼育 日数 は 247 日であ った。 各群毎 に成長過程 ,
臨床症状 , 血液学的所見 を観察 し, 池本民法 に従 い ochrom onas m alham ensis を用 いて血液 , 骨髄 ,
肝 , 腎 , 胆 , 胃, 小腸 ,
副
腎 , 筋 肉の B 12 値 を測定 した。 また m ethylgreenpyronin 染色 (R N A ), F e-
ulgen 染色 (D N A ), N issle 染色 (神経系の R N A ) 法 を用いて組織化学的 に骨髄 , 内臓諸組織 , 神経系
組織 の核酸 を観察 した。 ついで内臓諸組織 につ いて病理学的変化を追求 した。
(成績)
(1)
B 12 単独 , F A 単独 , B 12 + F A の三欠乏群 の成長発育はかな り良好であ ったがそれぞれ
の過半数 に脱毛 , 約y3に下痢 , 或いは体重減少 を認めた。 これに反 しC 単独 , B 12 + C , B 12 + F A + C の三
欠乏群では全例生存期間の著 しい短縮 を認め, 発育栄養 ともに悪化 し, 全例 に脱毛 , 下痢 , 時 に血便 を来
した。 また各欠乏群 それぞれに 2 ない し 3 例ずつ の皮下溢血を認 めた。 次 に骨髄標本 においてはいずれの
欠乏群 も頼粒球の生成障碍成熟抑制 の傾 向を認め , いずれの欠乏群 において も過半数 の動物 に巨赤芽球 ,
巨大後骨髄球 , 或いは過分葉核好 中球 の出現 を見 た
。
(2 ) F A 単独欠乏群では全血および肝臓 中 B 12 値 はほ とんど正常値 を示 したが, 骨髄 B 12 値は低下
した。 その他の各欠乏群では血液 , 骨髄並 びに肝臓中の B 12 値 は著 しく低下 した。 胃, 小腸 , 腎 , 牌 ,
刺
腎 , 筋 肉の B 12 値は個体差が大 き く, 対照群 と各欠乏群 の問 に一定 の関係 は認め得 なか った.
3 ) 骨髄中諸細胞 の核酸 : R N A は各欠乏群 とも赤血球系の細胞 たると白血球 系細胞 たるを問わず対照
よ り高値を示 した。 なかんず く, B 12 + F A 欠乏群でよ り顕著であ った。 D N A は , 赤血球系の細胞はいず
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れの欠乏群で も対照 よ り高値 を示 したが正赤芽球では対頻 との間 に著 明な差 は認めなか った。 白血球系細
胞の D N A はいず れの欠乏群 も対照 よ り低値 を示 した。 淋 巴球 の R N A
はいずれの欠乏群 も対照 よ り低
値 を , R N A は対照 よ り高値 を示 した。
肝細胞の核酸 : D N A は各欠乏群 とも対照群 よ り高値 を示 し, かつ単独欠乏群 よ りも複合欠乏群で高値
を示す傾 向を認めた。 その他 内臓諸組織 の R N A も肝臓 と類似の傾 向を認 めた。 D N A はいずれの欠乏群
において も対照 よ り低値 を示 したが , 冒, 副腎 , 揮臓 , 肺臓では B 12 欠乏 , B 12 + C 欠乏 の両群で高値の
傾 向を認 めた。
神経系組織 の核酸 : 大脳 , 小脳 , 脊髄前角細肘 の い ず れ も R N A は各欠乏群 とも対照 よ り高値 を示 し
た。 D N A は B 12 欠乏 , B 12 + F A 欠乏両群 は対渦 よ り高値 を, そ の 他 の 欠乏群 は対照 との間 に著変 を認
めなか った。
(4 ) B 12 欠乏 , B 12 + F A 欠乏の両群で胃, 小腸 の変性壊死像 が著 しく, 各欠乏群 を通 じ肝細胞の空胞
変性 , 染色性 の変化等 を過半数 の動物 に認めた。 各欠乏群 とも肺胞 内出血像 を高率 に認 めた。 また脊髄前
角細胞 は各欠乏群 の過半数以上の動物で虎斑 の消失を認 めた。
(結論)
B 12, F A , C の単独ない し複合欠乏飼料で動物を飼育 し, これ ら ビ タ ミ ンの欠乏 と造血臓器並
びにその他諸臓器組織 における細胞学的 , 病理組織学的変化および R N A ,D N A の態度 との関係 を明 らか
に した 。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
実験的 B 12 欠乏症 において, 造血臓器 その他の臓器組織 にいかなる組織学的 , 細胞学的変化がお こるか
またその核酸 の態度 にいかなる変化がお こるかば, まだ じゆ うぶ ん明 らかにされていない。 著者 はこれ ら
の点 を明 らかにす る目的を もって, 幼若モルモ ッ トにおいて実験的 に欠乏食投与 によ り, B 12, 葉酸 , ビタ
ミンC の単独 あるいは複合欠乏症 を作成 し, 次 の観察結果 を得 た。 すなわ ち骨髄で はいずれの欠乏群 にお
いて も頼粒球 の生成障害 , 成熟抑制 , 巨赤芽球 , 巨大後骨髄球 , 過分葉核好 中球 の出現 を認め , 血液 , 骨
髄 , 肝臓の B 12 値 は葉酸単独欠乏群 の血液 , 肝臓 を除 き, いずれ も著減を示 した。 M ethylgreen pyronin
染色 , F eulgen 染色 による核酸の細胞化学的観察では, 各欠乏群 ことに複合欠乏群で , R N A は骨髄の赤
芽球系な らびに頼粒球系細胞 , 肝細胞 , 大脳 , 小脳 , 脊髄前角細胞 においては対照 よ り高値 を示 し, D N A
は各複合欠乏群で 巨赤芽球 , 前赤芽球 , 大赤芽球 において高値 を示 し, 骨髄 の幼若 白血球 , 肝細胞では対
照 よ り低値 を示 した。 また各欠乏群で肝細胞の空胞変性 , 脊髄前角細胞の虎斑 の消失等 を認 めた。 以上本
論文 は動物 において実験的 B 12, 葉酸 , C 欠乏の影響 を明 らかに し, 人 の B 12 欠乏症 の研究 に有益 な一新
知見 を加えた もので, 医学博士 の学位論文 と して価値 あるもの と認 め る。
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