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おわりに( fulltext )
細井,宏一
研究紀要/東京学芸大学附属大泉小学校, 25(1): 130-130
2014-01
http://hdl.handle.net/2309/145058
東京学芸大学附属大泉小学校
お わ り に
副校長 細 井 宏
今、「グローバル人材の育成」が喫緊の課題の一っとして様々なところで述べられています。
その具体的内容は、大学カリキュラムの改革、留学生制度推進、産官学の一体改革など、大学を
中心とした高等教育の改革について述べられることが多いようです。
では、初等教育(小学校の教育)は何も変わらなくてよいのでしょうか。初等教育に関わる記
述を探しててみると「英語改革」ぐらいしか見当たりません。小学校現場にいる者としては、少
々疑問に感じるところがありました。r英語だけで本当によいのか」ということです。
自明のことですが、グu一バル人材とは“英語が話せる人”ではないはずです。話す内容の方
が重要ですし、更には、違う考えの人と関わる力、新しいことを創造して行動する力なども伸ば
したい力です。「グローバル人材とはどのような人材ですか」との問いに、
「なんでも食べられて、どこでも寝られて、誰とでも仲良くできる人」
といった方がいたそうです。とてもユニークな表現ですが、的を得ているように思います。
子どもたちが、将来、世界の人から信頼され、活躍していく人材に成長するには、小学校で育
んでおくべき資質・能力や体験はどのようなものか、そしてどうカリキュラム化するとよいのか、
それらを明らかにすることを目的として、私たちは研究を進めて参りました。
そこで出会ったのが「異文化間教育」という考え方です。グロー一バル化が進めば、当然のこと
ながら様々な異文化と接する機会が多くなります。自分とは違う文化・考え方や行動様式に出会
っても、互いに尊重し合いながら共生していくことのできる人材を育成しなくてはなりません。
そこに異文化間教育の考えはフィットしました。特に、少子高齢化が進み、人と関わらないバー
チャルなつきあい方が増えている今の日本では、人間形成の基盤を担う小学校で、異文化間教育
をどのように展開することができるのかチャレンジしようと思ったのです。
そこで私たちは、小学校ではまず、「基盤となる心」を育てることが重要であるとの考えにい
たりました。その心とは「人と関わる有用感」「自己肯定感」「寛容性と耐性」です。「自分は役
に立っのだ」「自分にはいいところがある」といった「自己肯定感」、「人と一緒にやると楽しい
し、いいことがたくさんあるな」といった「人と関わる有用感」、「思いやりの心で違う考え方
も大切にしよう」「うまくいかないこともあるけどあきらめずに、明るくプラス思考でがんばろ
う」といった「寛容性や耐性」です。このような心をはぐくむ体験や学習を豊富にしてくことが、
小学校ではたいへん重要であると考えます。
そしてその中で、スキルを積み重ねていくのです。それを「視野を広げる力」「対話力」「解
決力と実践力」として体系化しました。
平成20年度には、コミュニケーションカの研究を、平成21年には、海外生活経験児童との
共生をはかる教育の研究を行い、平成22年度に一度まとめました。そして、平成23年度から、
東京学芸大学国際教育センターとの連携研究に取り組み、「グロー一バル社会に生きる力をはぐく
む」を研究テーマに掲げて、本年度は3年目です。
本校の研究に、是非、忌憧のないご意見、ご批判、ご指導を賜ることができれば幸いです。
最後に、この3年間、ご多忙のところご指導をいただいた先生方にあらためて厚くお礼申し上
げます。
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