2016 年 5 ⽉ 20 ⽇ 第 66 号 通貨と株式市場-「通貨安=株⾼」は本当か?(その 2) 大和住銀投信投資顧問 経済調査部 部長 門司 総一郎 「『通貨安=株高』は本当か?」の第 2 回です。前回は世界的には通貨高の時に株高となる国が多 いとして、韓国・豪州・ブラジルを紹介しました。今回は日本同様に通貨安の時に株高となる国につ いて見てみます。 日本同様に通貨と株価が逆相関の関係にあるのがスイスです。ただし 2011 年以降、スイス中央銀行 の為替管理によりスイスフランが小幅の動きに止まっているため、逆相関は以前に比べると弱まって います。 ス イスフ ラ ンの対ユ ー ロレー ト とSMI( 月次、2005-15年) スイス フ ラ ンの対ユ ー ロレー トとSMI( 前年同月比、2005-15年) 11000 ↑株高 10000 SMI(左) スイスフラン(右、逆) 9000 1.0 60% 1.1 40% 1.2 8000 ↑フラン高 20% 0% 1.4 6000 1.5 -20% 1.6 -40% ↓株安 4000 2005年 ↓フラン安 2009年 2011年 2013年 ↓株安 ←フラン安 -60% -10% 0% 出所:Bloomberg、2005-15年 1.7 2007年 y = -1.227x + 0.1042 R² = 0.2034 1.3 7000 5000 ↑株高 2015年 出所:Bloomberg、2005-15年、フランの対ユーロレートは1ユーロあたりのフラン フラン高→ 10% 20% 30% それ程強くありませんが、米国でも両者の関係は逆相関です。ただし、2005 年から 11 年にかけては 比較的きれいな逆相関の関係が見られたのですが、それ以降関係は徐々に薄まりました。2014 年以降 に限れば、ドル高と株高が同時に進行する順相関となっています。 ドル指数とS&P500( 月次、2005-15年) ドル指数とS&P500( 前年同月比、2005-15年) 2500 120 ↑株高 2000 60% ↑ドル高 S&P500(左) ドル指数(右) ↑株高 110 y = -0.654x + 0.0793 R² = 0.1209 40% 20% 1500 100 1000 90 0% 500 2007年 2009年 2011年 2013年 ↓株安 80 -40% 70 -60% -30% ←ドル安 ↓ドル安 ↓株安 0 2005年 -20% 2015年 -20% ドル高→ -10% 0% 10% 20% 30% 出所:Bloomberg、2005-15年、ドル指数は主要6通貨に対するドルの価値を指数化したもの ユーロ圏では弱いながらも順相関の関係が観察されます。しかし、2014 年以降に限るとユーロが下 落する中で株式は上昇しており、日本同様の逆相関の関係に近づきつつあるように見えます。 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 1 市場のここに注⽬! 2016 年 5 ⽉ 20 ⽇ ユ ー ロの対ドルレー トとユ ー ロSTOXX( 月次、2005-15年) ユ ー ロの対ドルレー ト とユ ー ロSTOXX( 前年同月比、2005-15年) 500 60% 1.8 ↑株高 450 ↑ユーロ高 ユーロSTOXX(左) 40% ユーロ(右) 400 ↑株高 1.6 20% 350 300 1.4 250 200 1.2 150 -20% -40% ↓株安 100 2005年 0% ↓ユーロ安 1.0 2007年 2009年 2011年 2013年 2015年 y = 0.4738x + 0.0575 R² = 0.0575 ↓株安 ユーロ高→ ←ユーロ安 -60% -30% -20% -10% 0% 10% 20% 30% 出所:Bloomberg、2005-15年、ユーロの対ドルレートは1ユーロあたりのドル 中国では通貨と株価の動きの間に相関はほとんどありません。これは人民元レートが政府(中央銀行) の管理下で小幅にしか動かない一方、個人が主要投資主体となっている株式市場はしばしば乱高下す るためです。しかし、政府が従来よりも人民元レートの変動を容認するようになった結果、足元では 順相関の関係が観察されることが増えてきました。 人民元の対ドルレー ト上海総合( 月次、2005-15年) 人民元の対ドルレー ト と上海総合( 前年同月比、2005-15年) 5.5 250% 6000 6.0 200% 5000 6.5 150% 4000 7.0 100% 3000 7.5 50% 2000 8.0 7000 ↑株高 ↑人民元高 上海総合(左) 1000 人民元(右、逆) ↓株安 0 2005年 2009年 2011年 2013年 -50% ↓人民元安 2015年 出所:Bloomberg、2005-15年、フランの対ユーロレートは1ユーロあたりのフラン y = -0.7693x + 0.2222 R² = 0.0017 0% 8.5 9.0 2007年 ↑株高 ↓株安 ←人民元安 -100% -10% -5% 出所:Bloomberg、2005-15年 人民元高→ 0% 5% 10% 15% 通貨と株価指数の相関係数( 前年同月比、2005-2015年) 1.00 0.75 0.50 0.24 0.33 0.37 0.39 英 南ア ロシア 0.47 0.58 0.60 メキシコ トルコ 0.71 0.72 カナダ 韓国 0.79 0.79 0.25 0.00 ‐0.04 ‐0.25 ‐0.50 ‐0.45 ‐0.35 ‐0.75 ‐1.00 ‐0.84 日本 スイス 米 中国 ユーロ 豪州 インドネシア ブラジル 出所:Bloomberg、株価指数は各国の代表的な指数、スイスフランと英ポンドは対ユーロレート、米国はドル指数、その他は対ドルレートを使用 主要国の中で、通貨安=株高の関係になっているのは日本、スイス、米国のみで通貨高=株高が圧 倒的多数です。次回はなぜ通貨高=株高の国が多いのか、なぜ日本、スイス、米国は例外なのかなど について考えてみます。 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 2 市場のここに注⽬! 2016 年 5 ⽉ 20 ⽇ 理由は「日本は輸出企業が多いため、為替レートの変動が企業業績に与える影響が大きい」という ことではありません。キーワードは「リスク選好」と「金利」です。 以上 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点におけるレポート作成 者の判断に基づくもので、今後予告なしに変更されることがあり、また当社の他の従業員の見解と異なることがあります。投資に関す る最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げます。 3
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