2016・17年度 内外経済見通し

2016・17年度 内外経済見通し
~世界経済の下振れ懸念が根強い中、各国財政政策が下支え~
2016.5.20
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見通しのポイント
○ 新興国経済の減速が先進国にも波及する中、世界経済に対する慎重な見通しを維持
○ 日本経済は、海外経済の減速や地震・円高の影響から不透明感の強い状況が続く。財政健
全化に向けて消費増税は実施すべきだが、景気下振れ懸念が根強い中で再延期も選択肢
○ 年初の金融市場の混乱は一服するも、中国を中心とした新興国経済の減速が世界経済や金
融セクターへの不安につながり易い状況は変わらず、市場の不安定化リスクは残存
○ 米当局のドル高警戒姿勢を背景に当面はドル高是正局面が続く見込み。米国の経済成長の
下振れや米大統領選の行く末次第では、ドル高が抑制された状況が長期化する可能性も
○ 米長期停滞リスクが意識される中、米利上げはより慎重なスタンスが見込まれるため、2017
年以降の利上げペースと利上げの最終着地点を下方修正
○ 各国の金融政策は緩和バイアスが継続するも、通貨安競争に対する警戒や金融政策の限界
が意識される中、各国は景気下支えのため財政拡張方向にやや傾斜
1
《構 成》
Ⅰ.全体概要
P 3
Ⅱ.海外経済
P 31
(1)米国経済
P 32
(2)ユーロ圏経済
P 38
(3)アジア経済
P 44
Ⅲ.日本経済
P 49
Ⅳ.金融市場
P 55
2
Ⅰ.全体概要
~世界経済に下振れリスク、各国の財政政策に期待~
3
全体概要 ~世界経済は先進国中心に持ち直しの見通しだが、下振れリスクは残存
◯ 予測対象地域計の成長率は、2016年は前年並み、2017年に向けて持ち直しを見込むが、新興国を中心に下振れ懸念も
‧ 2016年は、米国、NIEs、インドを下方修正、ユーロ圏、日本、ブラジル、ロシアなどを上方修正し、全体では小幅上方修正
‧ 2017年は、ブラジル、ロシアの上方修正によって全体でも小幅上方修正。先進国主導の持ち直しという見通しを維持
【 世界経済見通し総括表 】
(前年比、%)
暦年
2013年
2014年
2015年
2016年
2017年
(実績)
(実績)
(実績)
(予測)
(予測)
(前年比、%)
2016年
2017年
(3月予測)
(%ポイント)
2016年
2017年
(3月予測からの修正幅)
3.3
3.5
3.2
3.2
3.7
3.1
3.6
日米ユーロ圏
0.8
1.5
1.9
1.4
1.7
1.4
1.7
米国
1.5
2.4
2.4
1.6
2.3
1.8
2.3
▲ 0.2
-
▲ 0.3
0.9
1.6
1.4
1.4
1.2
1.4
0.2
-
1.4
▲ 0.0
0.6
0.5
0.6
0.4
0.6
0.1
-
6.4
6.3
6.1
6.0
6.0
6.0
6.0
-
-
中国
7.7
7.3
6.9
6.6
6.5
6.6
6.5
-
-
NIEs
2.9
3.4
2.0
1.8
2.2
2.0
2.2
▲ 0.2
-
ASEAN5
5.0
4.6
4.7
4.6
4.5
4.5
4.5
0.1
-
インド
6.3
7.0
7.3
7.5
7.5
7.6
7.5
▲ 0.1
-
オーストラリア
2.0
2.6
2.5
2.6
2.5
2.6
2.5
ブラジル
3.0
0.1
▲ 3.8
▲ 3.5
0.6
▲ 3.6
0.0
0.1
0.6
ロシア
1.3
0.7
▲ 3.7
▲ 1.2
1.0
▲ 3.3
0.5
2.1
0.5
日本(年度)
2.0
▲ 0.9
0.8
0.9
0.2
0.9
0.3
原油価格(WTI,$/bbl)
98
93
49
44
46
29
30
予測対象地域計
ユーロ圏
日本
アジア
0.1
-
0.1
-
-
-
-
▲ 0.1
15
16
(注)予測対象地域計はIMFによる2013年GDPシェア(PPP)により計算。
(資料)IMF、各国統計より、みずほ総合研究所作成
4
日本:海外経済の減速や地震・円高の影響により、不透明感の強い状況が続く見込み
◯ 2016年度の日本経済は、海外経済の減速や地震・円高の影響などから不透明感の強い状況が続く見込み
‧ 年度後半に消費増税を前にした駆け込み需要が顕在化するため、成長率は+0.9%と潜在成長率(みずほ総合研究所で
は+0.2%~+0.3%と試算)を上回る見通し
――― 3月時点の予測値(+0.9%)からは据え置き。2016年1~3月期のGDP上振れに伴い成長率のゲタが上昇する一
方、熊本地震や円高を受けて設備投資・輸出等を下方修正
◯ 2017年度は、駆け込み需要の反動減などから、成長率は+0.2%に低下。年度後半には持ち直し、景気腰折れは回避へ
【 日本経済見通し総括表 】
2014
2015
2016
年度
実質GDP
前期比、%
内需
▲ 0.9
2015
2017
7~9
0.8
0.9
0.2
0.4
2016
10~12
▲ 0.4
1~3
0.4
4~6
0.0
2017
7~9
0.5
10~12
0.4
1~3
0.5
2018
4~6
7~9
▲ 0.6
▲ 0.3
10~12
0.4
1~3
0.4
前期比年率、%
--
--
--
--
1.6
▲ 1.7
1.7
0.1
1.9
1.5
2.0
▲ 2.5
▲ 1.0
1.4
1.6
前期比、%
▲ 1.5
0.7
1.0
0.0
0.3
▲ 0.5
0.2
0.1
0.5
0.6
0.8
▲ 0.9
▲ 0.3
0.3
0.4
前期比、%
▲ 1.9
0.7
0.7
▲ 0.3
0.5
▲ 0.7
0.1
0.0
0.4
0.6
0.9
▲ 1.4
▲ 0.4
0.4
0.3
個人消費
前期比、%
▲ 2.9
▲ 0.3
1.2
▲ 0.6
0.5
▲ 0.8
0.5
0.1
0.4
0.5
1.6
▲ 2.5
0.1
0.4
0.3
住宅投資
前期比、%
▲ 11.7
2.4
3.2
▲ 6.6
1.7
▲ 1.0
▲ 0.8
2.2
1.9
0.7
▲ 0.6
▲ 3.5
▲ 3.2
▲ 2.0
▲ 0.8
設備投資
前期比、%
0.1
1.6
1.0
0.6
0.7
1.2
▲ 1.4
0.1
0.5
0.9
0.9
▲ 0.8
0.0
0.3
0.3
在庫投資
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.4
▲ 0.4
0.2
▲ 0.1
▲ 0.1
▲ 0.0
▲ 0.1
▲ 0.1
0.0
▲ 0.4
0.7
▲ 0.3
0.0
0.0
前期比、%
▲ 0.3
0.8
1.8
1.1
▲ 0.3
▲ 0.1
0.6
0.4
0.8
0.4
0.4
0.4
▲ 0.0
0.2
0.4
民需
公需
政府消費
前期比、%
0.1
1.6
1.5
1.4
0.2
0.7
0.7
0.2
0.3
0.3
0.3
0.3
0.4
0.4
0.4
公共投資
前期比、%
▲ 2.6
▲ 2.2
3.0
0.2
▲ 2.2
▲ 3.5
0.3
1.7
2.9
0.5
1.0
0.6
▲ 1.7
▲ 1.0
0.4
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.1
▲ 0.1
0.1
0.1
0.1
0.2
▲ 0.1
▲ 0.0
▲ 0.2
▲ 0.3
0.3
0.1
0.0
0.0
輸出
前期比、%
7.9
0.4
1.0
2.7
2.6
▲ 0.8
0.6
▲ 0.4
0.5
0.4
0.3
0.7
0.9
0.9
0.9
輸入
外需
前期比、%
3.4
▲ 0.1
1.5
2.1
1.7
▲ 1.1
▲ 0.5
0.3
0.7
1.4
1.9
▲ 1.1
0.6
0.7
0.7
名目GDP
前期比、%
1.5
2.2
1.3
1.8
0.7
▲ 0.2
0.5
▲ 0.5
1.2
0.4
0.7
▲ 0.6
1.2
0.8
0.1
GDPデフレーター
前年比、%
2.4
1.4
0.4
1.7
1.8
1.5
0.9
0.2
0.6
0.4
0.5
1.0
1.7
2.2
1.7
前年比、%
2.1
▲ 0.2
▲ 0.2
1.8
▲ 0.1
▲ 0.2
▲ 0.5
▲ 0.6
▲ 0.6
▲ 0.1
0.7
1.6
1.8
2.0
1.8
内需デフレーター
(注)網掛けは予測値。
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成
5
日本:コアインフレ率は2016年後半にかけてゼロ%近傍で推移
【 日本経済見通し総括表(主要経済指標) 】
2014
2015
2016
2017
年度
2015
7~9
2016
10~12
1~3
4~6
2018
2017
7~9
10~12
1~3
4~6
7~9
10~12
1~3
鉱工業生産
前期比、%
▲ 0.5
▲ 1.0
1.1
1.4
▲ 1.0
0.1
▲ 1.0
▲ 0.3
1.6
1.4
1.7
▲ 1.4
▲ 0.1
0.6
1.1
経常利益
前年比、%
5.1
5.0
▲ 4.0
3.1
8.5
▲ 3.1
▲ 3.9
▲ 6.5
▲ 3.6
▲ 4.4
▲ 0.9
▲ 5.6
1.5
5.9
11.3
名目雇用者報酬
前年比、%
1.9
1.7
1.9
1.9
1.7
1.9
2.5
1.9
1.8
1.9
1.7
1.7
1.8
2.0
1.9
%
3.5
3.3
3.2
3.1
3.4
3.3
3.2
3.2
3.2
3.2
3.1
3.1
3.1
3.0
3.0
新設住宅着工戸数
年率換算、万戸
88.0
92.1
94.4
86.1
91.7
86.8
94.7
94.8
95.4
95.0
92.1
88.6
85.8
84.8
85.2
経常収支
年率換算、兆円
8.7
18.0
17.5
18.1
15.9
19.2
19.8
18.7
18.6
16.9
13.8
15.2
19.1
18.9
16.0
国内企業物価
前年比、%
2.7
▲ 3.2
▲ 2.0
3.2
▲ 3.7
▲ 3.7
▲ 3.4
▲ 3.8
▲ 2.9
▲ 1.5
0.4
2.7
2.9
3.6
3.5
消費者物価(除く生鮮食品)
前年比、%
2.8
▲ 0.0
0.1
2.0
▲ 0.1
0.0
▲ 0.1
▲ 0.5
▲ 0.3
0.2
0.9
2.1
2.1
2.0
1.8
消費者物価(同上、除く消費税) 前年比、%
0.8
▲ 0.0
0.1
1.1
▲ 0.1
0.0
▲ 0.1
▲ 0.5
▲ 0.3
0.2
0.9
1.2
1.2
1.0
0.8
消費者物価(除く食料(酒類除く)
前年比、%
及びエネルギー、除く消費税)
0.6
0.7
0.2
0.8
0.8
0.8
0.7
0.4
0.0
0.1
0.3
0.7
0.8
0.8
0.6
完全失業率
無担保コール翌日物金利
%
0.02 ▲ 0.00 ▲ 0.05 ▲ 0.05
0.01
0.04 ▲ 0.00 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05 ▲ 0.05
新発10年国債利回り
%
0.48
0.39
0.31
日経平均株価
円
対ドル為替相場
WTI原油先物最期近物
0.30 ▲ 0.08 ▲ 0.09
16,273 18,841 16,100 16,800
19,412 19,053
0.06 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.10 ▲ 0.05
16,849 16,400 15,700 16,000
16,300 16,500 16,700 16,900
17,200
円/ドル
110
120
107
111
122
121
115
108
105
106
108
109
110
112
113
ドル/バレル
81
45
47
47
47
42
34
46
48
48
45
45
47
48
49
(注)1.網掛けは予測値。実数データより変化率を計算しているため、公表値と一致しないことがある。
2.経常利益は法人企業統計の全規模・全産業ベース(金融・保険、電気業を除く)。
3.完全失業率、新設住宅着工戸数、経常収支の四半期は季節調整値。
4.金融関連の指標について、無担保コール翌日物金利は期末値、新発10年国債利回りは月末値の期中平均値、その他は期中平均値。
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」、経済産業省「鉱工業指数」、財務省「法人企業統計季報」、総務省「労働力調査」、「消費者物価指数」、国土交通省「建築着工統計調査報告」、
日本銀行「国際収支」、「企業物価指数」、「金融経済統計月報」、「外国為替相場」、日本相互証券㈱「主要レート推移」、日本経済新聞、Bloombergより、みずほ総合研究所作成
6
(1)日本経済・政策対応 ~ 2016年度成長率は+0.9%、2017年度は+0.2%と予測
◯ 2016年度の景気は、海外経済の減速などから不透明感の強い状況が続く見通し。後半にかけ消費増税(2017年4月)前
の駆け込み需要が顕在化することで、成長率は+0.9%と潜在成長率(+0.2%~+0.3%と推計)を上回る見通し
‧ 2016年度成長率は、3月見通し(+0.9%)から据え置き。1~3月期のGDP上振れにより成長率のゲタが上昇する一方、熊
本地震や円高が成長率下振れ要因に(地震・円高・財政を総合すると、0.1%Pt程度の下振れ要因)
◯ 2017年度は、駆け込み需要の反動減により、成長率は+0.2%に低下。年度後半には反動減が一巡することで、景気腰
折れは回避できる見込み
【 実質GDP成長率の見通し 】
(前年比、%)
公的需要
3
2.0
2
1
【 熊本地震・円高・財政出動による経済見通しへの影響整理 】
予測
外需 潜在成長率
0.8
0.9
熊本
地震
•生産:2016年2Qが1%弱下振れ(その後挽回)
•消費:2016年2Qが0.1%程度下振れ
円高
• 輸出:2016年度通年で0.5%程度の押下げ
• 企業収益:2016年度通年が1兆円程度の下振れ
財政
• 経済対策:5兆円を想定(1.5兆円は前回織り込み済み)
• 震災復興:1.5兆円を想定
実質GDP
0.9 成長率
0.2
0
企業
▲1
▲0.9 (設備+在庫)
家計
(消費+住宅)
▲2
まとめ
• GDP:2016年度通年で0.1%程度の下振れ
▲3
2012
13
14
15
16
(注)潜在成長率はみずほ総合研究所推計値。
(資料) 内閣府「国民経済計算」などより、みずほ総合研究所作成
17 (年度)
(注)図中の数値は、3月見通しからの修正幅を示している。
(資料) みずほ総合研究所作成
7
日本:2016年度のコアCPI上昇率はゼロ%近傍にとどまる見通し
◯ 円高や原油価格下落の影響で、コアインフレ率は2016年末頃までゼロ%近傍で推移。その後は、エネルギー価格が前年
比プラスに転じることで、コアインフレ率は1%前後に。エネルギー価格を除く基調的なインフレ率は、緩やかながら改善
‧ 2016年度のコアCPI上昇率は前年比+0.1%と予測。3月見通し(同▲0.2%)と比べると、原油価格の想定引き上げ(2016
年度のドバイ原油価格:3月予測24ドル/バレル⇒今回予測45ドル/バレル)を主因に、上方修正
◯ 2017年度のコアCPI上昇率(除く消費税ベース)は1%程度まで上昇する見通し
【 消費者物価指数の見通し(消費税除く) 】
【 CPI・エネルギー及び原油相場(ドバイ)の前年比 】
(前年比、%)
1.5
CPI・エネルギー(今回見通し)
ドバイ(右目盛)(今回見通し)
見通し
(%)
見通し
10
1.0
0.5
CPI・エネルギー(前回見通し)
ドバイ(右目盛)(前回見通し)
100
5
80
0
60
(%)
40
▲5
0.0
20
▲ 10
▲ 0.5
0
▲ 15
米国基準コア
エネルギー
食料(生鮮食品・酒類を除く)
生鮮食品を除く総合
▲ 1.0
▲ 1.5
2013
14
15
16
(注) 米国基準コアCPIは、食料(酒類を除く)・エネルギーを除く総合。
(資料) 総務省「消費者物価指数」より、みずほ総合研究所作成
17
18 (年)
▲ 20
▲ 20
▲ 40
▲ 25
▲ 60
▲ 30
15/3
15/9
16/3
16/9
17/3
17/9
▲ 80
18/3 (年/月)
(資料) 総務省「消費者物価指数」などより、みずほ総合研究所作成
8
日本:短期的な民需喚起策や公共事業に加えて、成長戦略の加速が重要
◯
‧
‧
◯
伊勢志摩サミット(G7)に向けて、「一億総活躍プラン」など経済政策のメニューが出揃いつつある
例年は6月末に取りまとめられる「骨太方針」や「成長戦略」も、今年度は5月中の閣議決定が行われる見込み
また、伊勢志摩サミット(G7)の討議を踏まえ、消費増税再延期の可能性も否定できず
今秋に編成が見込まれる経済対策では、短期的な民需喚起策や公共事業に加えて、成長戦略の加速が重要に
【 今後の主な政治・経済日程 】
日付
4月 14日から
○民間需要の喚起
熊本地震
安倍首相 欧州主要国を歴訪
17日
補正予算(熊本地震対策)成立
18日
日本GDP(2016Q1)
コンセンサスより上振れも、10~12月期
と均せば横ばいで、力強さには欠ける
18~19日
「ニッポン一億総活躍プラン」、「骨太の
方針」、「成長戦略」とりまとめ
閣議決定は5月末の予定
20~21日
財務大臣・中央銀行総裁会議(G7、仙台)
26~27日
伊勢志摩サミット(G7)
1日
国会会期末
15~16日
金融政策決定会合
7月中
参院選
28~29日
金融政策決定会合(展望レポート)
7月
・プレミアム付き商品券・旅行券の発行
2015年度決算
・国内旅行市場の拡大にむけた休み方改革を推進
・健康保険・介護保険料率の上昇抑制
・生産性向上設備投資促進減税、所得拡大促進税制の拡充
サミットの討議を踏まえ、増税先送り
決断の可能性
○防災、公共事業
・庁舎、病院などの公共施設の耐震化
衆参同日選挙の観測再浮上
・費用対効果を踏まえた効率的なインフラ整備
○成長戦略
2017年度予算概算要求基準閣議了解
末頃
剰余金を補正予算(経済対策)の財源に
充当
・「待機児童解消」に向けた保育の受け皿拡充と担い手確保
日本GDP(2016Q2)
・同一労働同一賃金の実現
4~5日
G20首脳会議(中国、杭州)
・エネルギー環境投資の拡大
15~16日
金融政策決定会合
8月 15日
9月
【 想定される経済対策の内容 】
備考
1~7日
5月
6月
項目
秋頃
補正予算(経済対策)編成見込み
(資料)各種報道より、みずほ総合研究所作成
・インフラシステム輸出の拡大
(資料) 内閣府「経済財政諮問会議」、「産業競争力会議」などより、みずほ総合研究所作成
9
日本:国債の追加発行なしで4~5兆円の財源確保が可能
◯ 経済対策(2016年度補正予算)の財源としては、国債の追加発行なしでも4~5兆円程度が確保可能
‧ 近年は、税収上振れや経費削減で毎年4~6兆円の財源を確保。2016年度については、円高のため法人税収の上振れは
生じにくいが、金利低下により既定経費の減額(国債利払い費の削減)が増加すると試算
◯ 震災対策予算の規模は総額1.5兆円程度と想定
‧ 2016年度当初予算の予備費(約0.4兆円)と第1次補正予算(約0.8兆円)が、仮設住宅整備や被災者の生活支援金、がれ
き処理などの応急的な対策に充てられる予定。その後、被災地の復興対策に追加の財政資金が投じられると想定
【 過去の決算剰余金・既定経費の減額などの推移 】
(兆円)
前年度の決算剰余金
既定経費の減額
税収の上振れ等
9
8
7
6
5
4
3
2
1
0
・国債発行
・外国為替資金特別会計
の積立金の活用
【 過去の震災による被害額と対策予算額 】
(兆円)
35
30
試算値
対策予算総額
25
社会基盤
その他
20
1.7
ライフライン
15
2010
11
12
13
14
15
2.0
5
0.8
0
16
(年度)
(注)1.決算剰余金は、財政法6条の規定(決算剰余金の2分の1以上を国債償還財源に
充当)の適用を外す特例法を制定して、全額補正予算に充当する場合の金額。
2.2011年度は、東日本大震災の影響を考慮する必要がある。
3.2016年度はみずほ総合研究所による試算値。
(資料)財務省より、みずほ総合研究所作成
1.5兆円前後
(想定)
(最大4兆円超注4)
建物
10
未確定
初期対策予算
被害額
対策予算額
東日本大震災
被害額
対策予算額
阪神・淡路大震災
被害額
対策予算額
新潟県中越地震
被害額
対策予算額
熊本地震
(注)1.東日本大震災の初期対策予算は、2011年度の補正予算額の合計。
2.阪神淡路大震災の初期対策予算は、1994年度2次補正、1995年度1次・2次補正の合計。
3.新潟県中越地震の初期対策予算は、2004年度補正の災害対策費。
4.報道によれば、内閣府が熊本地震の被害額を最大4兆円超と試算している模様。
(資料) 財務省より、みずほ総合研究所作成
10
日本:消費増税の影響を除くと、2016年度成長率は+0.6%、2017年度は+1.0%に
◯ 消費増税の影響を除くと、2016年度の成長率は+0.6%に低下。一方、2017年度の成長率は+1.0%に上昇
‧ 2016年度は、駆け込み需要による押し上げを除くと、成長率が0.3%Pt程度低下
‧ 2017年度は、駆け込み需要の反動と家計負担増を除くことで、0.7~0.8%Pt分の下押し圧力が緩和
――― 駆け込みの反動が0.5%Pt程度、家計負担増(実質所得の低下)の影響が0.2~0.3%Pt
【 日本経済見通し(消費増税の影響の有無別) 】
消費増税の影響を除いた場合(参考試算)
2014
2015
2016
予定通り増税の場合(メインシナリオ、P5再掲)
2014
2017
2015
2016
2017
年度
年度
実質GDP
前期比、%
▲ 0.9
0.8
0.6
1.0
実質GDP
前年比、%
▲ 0.9
0.8
0.9
0.2
内需
前期比、%
▲ 1.5
0.7
0.6
1.0
内需
前年比、%
▲ 1.5
0.7
1.0
0.0
前期比、%
▲ 1.9
0.7
0.1
0.7
前年比、%
▲ 1.9
0.7
0.7
▲ 0.3
個人消費
前期比、%
▲ 2.9
▲ 0.3
0.5
1.0
個人消費
前年比、%
▲ 2.9
▲ 0.3
1.2
▲ 0.6
住宅投資
前期比、%
▲ 11.7
2.4
0.7
▲ 0.9
住宅投資
前年比、%
▲ 11.7
2.4
3.2
▲ 6.6
設備投資
前期比、%
0.1
1.6
0.6
1.0
設備投資
前年比、%
0.1
1.6
1.0
0.6
在庫投資
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.4
▲ 0.3
▲ 0.1
在庫投資
前年比寄与度、%Pt
0.6
0.4
▲ 0.4
0.2
前期比、%
▲ 0.3
0.8
1.9
1.7
前年比、%
▲ 0.3
0.8
1.8
1.1
政府消費
前期比、%
0.1
1.6
1.5
1.7
政府消費
前年比、%
0.1
1.6
1.5
1.4
公共投資
前期比、%
▲ 2.6
▲ 2.2
3.2
1.7
公共投資
前年比、%
▲ 2.6
▲ 2.2
3.0
0.2
前期比寄与度、%Pt
0.6
0.1
0.0
0.0
前年比寄与度、%Pt
0.6
0.1
▲ 0.1
0.1
輸出
前期比、%
7.9
0.4
1.1
2.8
輸出
前年比、%
7.9
0.4
1.0
2.7
輸入
前期比、%
3.4
▲ 0.1
0.8
2.5
輸入
前年比、%
3.4
▲ 0.1
1.5
2.1
民需
公需
外需
民需
公需
外需
(注)網掛けは予測値。
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成
11
増税延期の場合、財政健全化は遅れるが、金利急騰リスクはまだ低い
◯ 消費増税を再延期した場合、プライマリー・バランスは4兆円程度(GDP比1%弱)下振れ。もっとも、歳出削減努力の継続
を前提にすれば、公債等残高の増加は抑制可能であり、直ちに財政懸念が高まる状況ではない
【 (参考)増税延期期間によるメリット・デメリット整理 】
【 増税先送りによる財政への影響試算 】
4年延期が相対的にデメリット小さい可能性
(予定通り、4年延期、無期限延期)
重視するポイント
プライマリー・バランス
(対GDP比、%)
0
試算値
▲1
20年度:▲2.1%
(目標:黒字化)
▲2
▲3
▲4
▲5
20年度:▲2.7%
(目標:黒字化)
18年度:▲2.4%
(目安:▲1.0%)
公債等残高
(対GDP比、%)
240
220
試算値
2020年度に向けた財政健
全化注1
インボイス本格導入との
セット
現政権下での増税に対す
る責任注2
1年
2年
延期期間
3年
(18年4月)
(19年4月)
(20年4月)
(21年4月)
△
△
×
×
-
×
×
×
○
○
○
△
△
△
×
4年
無期限
200
五輪効果で経済失速回避
×
○
◎
△
?
180
歳出削減努力を前提にすれば、 衆院解散の自由度確保注3
増税延期による
上振れは当面限定的
×
○
△
△
○
デフレ脱却
×
△
○
○
○
参院選への配慮注4
○
×
○
○
?
160
140
(注)1.消費税の増税時期と、増税分を国庫に納め始める時期とが、企業の決算期によって異な
るため、増税初年度の税収増はやや抑制される。
2.安倍首相の自民党総裁としての任期は2018年9月まで。ただし、自民党の総裁公選規程
▲6
予定通り(2017年4月増税)
予定通り(2017年4月増税) 120
改正により、「2期6年」の任期を「3期9年」に延長する可能性あり。
4年延期(2021年4月増税)
4年延期(2021年4月増税)
3.衆院解散の自由度確保は、現職衆院議員の任期内(2018年12月まで)における解散の自
無期限延期
由度。1年延期では、2018年4月前後の解散が困難になるため×と評価している。また、3
無期限延期
▲7
100
年(4年)延期の場合には、2016年度(2017年度)中の衆院解散を行うと新議員の任期が
2010 12 14 16 18 20 22 24
2010 12 14 16 18 20 22 24
2020年度(2021年度)までとなるため、増税と選挙の時期が重なるが、再度の解散で時期
(年度)
(年度)
をずらすことは可能。
4.次々回の参院選は2019年夏の見込み。
(資料)内閣府「国民経済計算」より、みずほ総合研究所作成
(資料) 各種報道を参考に、みずほ総合研究所作成
12
(参考)消費増税延期の是非について
◯ 財政健全化、世代間格差是正のためには、早期の消費増税実施が求められる。もっとも、具体的な増税時期については、
景気悪化を招かないような配慮が必要に
【 消費増税の延期に関する財政・経済面での根拠整理 】
分類
延期反対論の
根拠
財政面
経済面
延期賛成論の
根拠
財政面
経済面
内容
重要度
プライマリー・バランスは依然赤字。公債等残高(GDP比約200%)は
主要国で最も悪い状況
○
増税の先送りによって、世代間格差はさらに悪化(将来世代への
負担先送りが拡大)
◎
成長率は、概ね潜在成長率(+0.2~+0.3%と試算)を上回って推移
◎
経常収支が大幅な黒字(GDP比3~4%)であり、国債の国内消化が
可能。国債格下げに伴うリスクも、現時点では大きくない
○
金融緩和の効果で長期金利(▲0.1%前後)が名目成長率(+1%~
+2%程度)を下回っているため、公的債務残高GDP比の上昇は
当面抑制可能
○
個人消費の低迷や海外経済の減速が継続。こうした状況下での
増税は、デフレ脱却を遅らせかねない
○
(注)重要度の欄は、みずほ総合研究所による評価を示している。
(資料)みずほ総合研究所作成
13
日本:マイナス金利拡大のハードルは高く、量・質に重点を置いた追加緩和を予想
◯ 年後半にかけての金融政策決定会合での追加緩和を予想
◯ 米国のドル高抑制スタンス下では追加緩和による円安効果は限定的。政策効果を高めるため、政府の財政政策と一体で
追加緩和を実施する可能性も。早ければ政府の景気対策をにらみ6月会合(6/15・16)で追加緩和が実施される可能性も
◯ 量・質に重点を置いた追加緩和を予想。マイナス金利拡大は消費マインドへの影響などが懸念されハードルが高い
‧ ETF、REITや社債等の買い増しに加え、金融機関向け貸付金利へのマイナス金利適用も選択肢
【 追加緩和の選択肢 】
緩和策
検討点等
可能性
・金融機関収益、消費マインド等への影響が懸念
⇒金融機関向け貸付金利引き下げと同時に実施する手法も
⇒国債買入れ柔軟化と組み合わせることで緩和の持続性を高める手法も
・米国のドル高抑制スタンス下で円安効果は限定
△
・補完策により買い入れ拡大が可能。ただし、日銀の損失負担拡大のリスク
・物価引き上げ効果を高めるには他の施策とセットで実施する必要
・2015年の最大の買い入れペースとした場合、ETFは年間5.3兆円、REITは年間1,500億円
◎
・国債市場の流動性への影響。政策の限界が意識される可能性
⇒買入れ年限長期化の可能性も
△
(現状は残高維持:社債 3.2兆円、CP 2.2兆円)
・企業の資金調達コスト引き下げ効果
・社債市場の規模から買入れ拡大余地は限定的
○
金融機関向け貸付金利への
マイナス金利適用 (現状0.0 %)
・金融機関の貸出増と資金調達コスト引き下げ効果。ただし、貸出金利引き下げ競争に
つながる可能性
○
成長基盤融資(米ドル特則)の拡充
・金融機関のドル資金調達、企業の海外展開をサポート
○
マイナス金利の拡大
(現状:▲0.1%)
ETF・REIT買い増し
(現状:ETF 年3兆円、REIT 年900億増)
国債買い増し
(現状:年80兆円増)
CP・社債等買い増し
(現状120億米ドル、6カ月LIBOR)
(資料) 日本銀行より、みずほ総合研究所作成
14
(2)世界経済の現状 ~中国不安や原油安を材料とした年初来のリスク回避は一服
◯ 年初は人民元安や原油安などを材料とした新興国不安から世界同時株安の様相となったが、2月中旬以降は持ち直し
‧ 人民元安に歯止めが掛り、原油価格も反発したことから市場の不安心理も改善
――― ただし、中国を中心とした新興国経済の減速が続く中、再び市場が不安定化するリスクは残存
【 MSCI世界株指数とVIX指数 】
【 WTI原油先物価格と人民元対ドル相場 】
(ドル/バレル)
(2015年初=100)
110
(元/ドル)
45
70
5.9
40
60
6.0
105
35
100
30
6.1
50
25
40
20
30
6.2
6.3
95
15
90
85
80
15/1
5
0
15/4
15/7
20
10
MSCI世界株指数
VIX指数(右目盛)
15/10
16/1
16/4
6.4
10
6.5
WTI原油先物価格
0
15/1
6.7
15/4
15/7
15/10
16/1
16/4
(年/月)
(年/月)
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
6.6
人民元対ドル相場(右逆目盛)
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
15
引き続き原油相場の行方に留意
◯
‧
‧
◯
‧
‧
持ち直し基調の原油相場は、40ドル台半ばまで回復
米国の利上げ期待が後退したのを受け、ドル高の是正が進み、原油相場の下押し圧力も緩和
しかし、原油市場では、原油相場を反転させた「増産凍結」観測が後退
市場動向の鍵を握る原油相場は、2016年を通して40ドル台の推移にとどまる見通し
米国産原油の生産はピークアウトしたものの、OPECの増産が米国の生産減を相殺
原油の超過供給は縮小に向かうが、2016年中の需給ギャップ解消は見込めず。投機筋は相応の売りポジションを保持
【 市場の米利上げ予想 】
【 原油相場の見通し 】
(利上げの予想回数)
2.0
(ドル/バレル)
130
120
110
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
1.5
1.0
0.5
0.0
▲ 0.5
15/1
15/3
15/5
15/7
15/9
15/11
16/1
16/3
16/5
(年/月)
(注)FF金利先物に織り込まれた6カ月先(4回先のFOMC)までの利上げ予想。
25bpの利上げ予想を1回の利上げとして計算。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
実績 予測
2014
14
15
16
17
18
(年)
(注)予測は、みずほ総合研究所による四半期平均の予測。
(資料)Bloombergより、みずほ総合研究所作成
16
(3)為替相場の動向と日本への影響 ~ ドル高是正の局面は今秋頃まで続く見通し
◯
‧
‧
◯
‧
‧
2月から進むドル高是正は米中当局の動向が直接の起点に
対先進国通貨では、1月FOMC(1/26・27)で利上げ見通しを引き下げたことなどが、ドル高からの反転のきっかけに
対新興国通貨では、中国当局総裁の元売りけん制発言後の人民元切り上げ(2/15)が、ドル安への反転の起点に
米中の動向が今後もドル相場を左右すると想定され、今秋頃までドル安地合いが続く見通し
米当局が利上げに慎重な姿勢を続ける間は、米国要因によるドル高圧力は高まりにくい
G20サミット(9月)を控え、中国当局は国内情勢が悪化しない限り、国際金融市場安定を意識した政策を続ける見通し
【 G7、G20のスケジュール 】
【 ドルの名目実効為替レート 】
(2015年末=100)
110
ドル名目実効為替レート(Major、主として先進国通貨)
日程
場所
会議体
2月26・27日
中国・上海
G20(財務大臣・中央銀行総裁会議)
4月14・15日
米国・ワシントン
G20(財務大臣・中央銀行総裁会議)
5月20・21日
日本・仙台
G7(財務大臣・中央銀行総裁会議)
5月26・27日
日本・伊勢志摩
G7(伊勢志摩・サミット)
7月23・24日
中国・成都
G20(財務大臣・中央銀行総裁会議)
9月4・5日
中国・杭州
G20(杭州・サミット)
10月6日
米国・ワシントン
G20(財務大臣・中央銀行総裁会議)
ドル名目実効為替レート(OITP、主として新興国通貨)
105
16/2/15
人民元切り上げ
100
95
16/1/26・27
1月FOMC
90
15/1
15/4
15/7
15/10
(注)OITPはOther Important Trading Partners の略。
(資料) FRBより、みずほ総合研究所作成
16/1
16/4
(年/月)
(資料)財務省などより、みずほ総合研究所作成
17
米国は為替報告書での監視リスト公表により、各国の為替政策をけん制
◯
‧
◯
‧
◯
‧
貿易円滑化・貿易執行法が改正され(2/11可決)、各国為替政策の評価軸を明確化したほか、問題国への措置を強化
為替政策に関して問題国か否かの認定基準を、より定量的に判定できる形に変更
同法に基づき、米財務省は為替報告書(4/28)で為替政策に関する監視リスト対象国を公表し、各国政策をけん制
3つの認定基準のうち2つが該当する日本を含めた5カ国を監視リスト対象国に指定
リスクとして、米国の経済成長の下振れや米大統領選の行く末次第では、ドル高是正の局面が長引く可能性も
同局面では為替政策に関する問題国認定や、対抗措置実施まで発展する可能性もあり、ドル安圧力として働くことが想定
【 貿易円滑化・貿易執行法2015 第701条(1988年法との比較) 】
1988年法
認定基準
2015年法
①顕著な対米貿易黒字
①顕著な対米貿易黒字
②顕著な経常収支黒字
②顕著な経常収支黒字
評価軸
大幅な対米貿易黒字
大幅な経常黒字
持続的・一方的な
為替介入
主な基準
対米貿易黒字が
200億ドル超
経常黒字が
GDPの3%超
1年間のネット為替
介入額が
GDPの2%超
単位
(億ドル)
(%)
(%)
③経常収支の調整阻止、もしく
③継続的・一方的な為替市場
は、不公正な競争的優位獲得
への介入
のための為替操作
中国
3,657
3.1%
▲3.9%
①交渉(IMFの場を含む)実施
ドイツ
742
8.5%
-
日本
686
3.3%
0.0%
韓国
283
7.7%
0.2%
台湾
149
14.6%
2.4%
①二国間交渉実施
②一年間の交渉で結果が出な
い場合の対抗措置
認定後の措置
【 為替政策の評価軸と各国の現状(為替報告書より) 】
・OPIC経由融資の禁止
・政府調達への参加禁止
・IMFへの調査要請
・通商交渉締結時に考慮
(資料)米国財務省「包括通商競争力法1998」、「貿易円滑化・貿易執行法2015」より、
みずほ総合研究所作成
(注)図表上の数値は2015年の数値。
(資料)米国財務省「為替報告書」より、みずほ総合研究所作成
18
日本:経常収支の観点からみた均衡ドル円相場は108円
◯ 2015年10月時点で円の実質実効レートは均衡水準と等しいが、対ドルでは「120円(当時)は円安過ぎる」と評価
‧ 均衡為替レートは、2020年時点の経常収支・GDP比が正常な範囲(±3%以内)に収まるために必要な実質実効レート
‧ 実質実効レートが10%過大(ただし2015年10月時点)。実質実効レートでみれば円ではすでに10%円高に
――― 一方、 ユーロ、人民元、韓国ウォン、台湾ドルは対ドルで上昇する余地が存在
【 米有力シンクタンクによる主要通貨の均衡ドル相場 】
2015 年 の 経 常 収
支・GDP比(%)
経 常 収 支 ・ GDP 比 が 正
常な範囲(±3%以内)に
収 ま る た め に必要な調
整幅(%Pt)
左記の調整に必要な実
質実効レートの修正幅
(2015年10月実績比、%)
対ドル相場
2015年10月
の実績
均衡為替レートの
水準に一致する
対ドル相場
直近の
対ドル相場
かい離率
(%)
プラスが
ドル高を表す
円
3.0
±0.0
±0.0
120
108
108.7
+1
ユーロ
3.2
±0.0
±0.0
1.12
1.24
1.13
+10
人民元
3.1
±0.0
±0.0
6.35
5.74
6.52
+14
韓国ウォン
7.1
▲1.8
+4.3
1145
998
1180
+18
12.4
▲7.5
+16.9
32.6
25.4
32.7
+29
台湾ドル
対ドル相場のメルクマールに
米ドル
▲2.6
+1.6
▲9.9
―
―
―
―
(注)1. 2020年の経常収支・GDP比が±3%のレンジに収まるために必要な実質為替レートを求めた上で、対ドルレートの調整を計算。
2. 2015年の経常収支・GDP比はIMFの世界経済見通し(2015年10月)。
3. 直近の対ドル相場は2016年5月16日。Bloombergより取得。
(資料) Cline, William R.(2015)“Estimates of Fundamental Equilibrium Exchange Rates, November 2015,” Policy Brief, PB15-20, Peterson Institute for International
Economics, Novemberにより、みずほ総合研究所作成
19
日本:ドル円相場は企業の想定為替レートよりも円高水準に
◯ ドル円相場は企業の想定為替レート(日銀短観)よりも円高水準となり、企業収益の抑制要因に
‧ ドル円相場が想定為替レートより大幅に円高になったのは2012年10月以来約3年ぶり
‧ 日銀短観(3月調査)における企業の2016年度想定為替レートは1ドル=117.46円
【 ドル円相場と想定為替レート 】
(全規模・全産業ベース、長期的推移)
(大企業・製造業ベース、直近の推移)
(ドル円)
(円/ドル)
130
2016年度上期
想定為替レート:117.45円
125
120
110
120
想定為替レート
より円高水準に
100
90
80
115
大企業・製造業の
2015年度上期
想定為替レート:120.93円
同下期想定為替レート:118.69円
ドル円相場
想定為替レート
70
05/4 06/4 07/4 08/4 09/4 10/4 11/4 12/4 13/4 14/4 15/4 16/4
(年/月)
(注)想定為替レートは日銀短観の全規模・全産業ベース。上期は6月調査、下期は12月調査の
想定レート(ただし2016年度は3月調査)。
(資料) 日本銀行、Bloombergより、みずほ総合研究所作成
110
2015/4
15/7
15/10
16/1
(年/月)
(資料) 日本銀行、Bloombergより、みずほ総合研究所作成
20
日本:円高の影響①輸出企業を中心に、業績圧迫
◯ 円安による企業業績押し上げ効果が剥落し、今後は円高が業績の重石に
‧ 年明け後に進んだ円高が今後の企業業績を下押しする見込み。10%の円高による業績への影響を試算すると、経常利
益(国内、単体決算ベース)が2%強押し下げられる結果
――― ただし、円高による収益減少効果は大企業、製造業に集中しており、中小企業、非製造業への影響は限定的
◯ 2016年度の経常利益は前年比▲4.0%と3月予測(同+3.7%)から下方修正。円高(2%弱の下方修正要因)、原油価格の
想定引き上げ(7%弱の下方修正要因)が主因
【 10%円高が企業業績に与える影響試算 】
【 企業業績の寄与度分解 】
(前年同期比、%)
80
固定費要因
売上要因
60
変動費率要因
経常利益
円安の恩恵も剥落し、
経常利益の改善は一服
40
増益
要因
20
0
▲ 20
減益
要因
▲ 40
▲ 60
▲ 80
Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ (期)
2012
2013
2014
(注)対象は全規模・全産業(除く金融・保険)。
(資料) 財務省「法人企業統計」より、みずほ総合研究所作成
2015
(年)
国内投入価格要因
輸出金額要因(円高)
営業余剰変化
(兆円)
▲
▲
▲
▲
3
2
1
0
1
2
3
4
▲ 1.5兆円
製造業
▲ 0.2兆円
非製造業
業種別
生産波及効果(円高)
国内産出価格要因
▲ 0.4兆円
▲ 1.3兆円
中小企業
大企業
企業規模別
(注)1.10%の円高による営業余剰への影響を規模別産業連関表を用いて試算。2010年の投入
産出構造を前提に計算しているため、試算結果は相当の幅を持ってみる必要がある。
2.投入価格の変化から産出価格への転嫁率は約3割とした(みずほ総研マクロモデルでの
試算結果を基に設定)。
3.企業規模別に関しては、一部の業種(建設業、運輸業など)は原データ(規模別産業連関
表)が規模・業種別に分かれていないため、本試算結果には含めていない。そのため、
業種別影響と企業別影響の合計は完全には一致しない。
(資料)経済産業省「平成22年簡易延長産業連関表」、中小企業庁「規模別産業連関表」など
より、みずほ総合研究所作成
21
日本:円高の影響②「非線形性」 -円高が急激なほど、輸出への影響がより拡大
◯ 急激な円高の動きが続けば、輸出がさらに押し下げられる可能性
‧ 為替変動が実質輸出に及ぼす影響は、通常の為替変動幅の場合には、必ずしも大きくない。一方、急激な円高の場合に
は、輸出の為替感応度が、通常の為替変動の2~3倍に高まると推計
‧ また、仮に80~90円/ドル台まで円高が進めば、単なる輸出減少にとどまらず、国内生産能力の再編につながるリスクも
【 実質実効為替レートの推移(四半期ベース、前期比) 】
(%)
(%)
25
2016年1~3月期の為替変動は急激
20
【 実質輸出の為替感応度 】
(約半年後までの累積、10%の為替変動の影響)
2.5
2.0
15
1.5
10
1.0
5
0
0.5
▲5
0.0
通常の為替ショック
▲ 10
▲ 15
▲ 20
1990
dlog(実質輸出t)= + dlog(実質輸出t−1)+ ∑
dlog(世界鉱工業生産t−s)
+∑
dlog(実質実効為替レートt−s)+∑
dlog(実質実効為替レートt−s)*急激な円高ダミーt-s
dlog(実質実効為替レートt−s)*急激な円安ダミーt-s +
+∑
為替前期比
2000
05
(資料)日本銀行「外国為替市場」より、みずほ総合研究所作成
急激な円高ショック
(注)1.以下のモデルを推計(推計期間:1985年Q1~2016年Q1)。
10~90パーセンタイルの為替変動
95
急激な円安ショック
10
15 (年)
急激な円高(円安)は実質実効為替の変動が90パーセンタイル以上(10パーセンタイル
以下)変動した際に1となるダミー。
2.通常の為替ショックは∑
、急激な円高ショックは∑
+∑
、急激な円安ショッ
クは∑
+∑
で計算。
(資料) 日本銀行「国際収支統計」などより、みずほ総合研究所作成
22
(4)各国金融・財政政策 ~ 金融政策の限界が意識される中、財政政策にやや傾斜
◯ 世界経済の下振れ懸念が根強い中、各国は金融・財政政策で景気下支えを志向
‧ 特に、通貨安競争に対する警戒や金融政策の限界が意識される中、財政政策への期待が高まる方向に
【 各国の金融・財政政策 】
国・地域
金融政策
財政政策
米国
2016年は金利据え置き、2017年から
緩やかなペースで利上げ
金融危機後の縮小基調から拡大基調
に転換
ユーロ圏
インフレ率下振れから年内にフォワー
ド・ガイダンスが強化される見込み
2016年は財政拡大。2017年は財政緊
縮の見込みだが、後ろ倒しの可能性も
日本
物価の基調が下振れ年内に追加緩
和が行われると予想
熊本地震の復旧・復興対策、および経
済対策などにより、歳出を積み増し
中国
住宅市況や人民元動向に配慮しつつ 財政赤字の対GDP比率を3%に拡大
利下げや預金準備率引き下げを模索 減税・行政費用の徴収削減が主眼
その他新興国
物価動向からみると、金融緩和の余
地は乏しいか、限られる国が多い
財政状況からみると、財政出動の余地
は乏しいか、限られる国が多い
(資料) みずほ総合研究所作成
23
米国:4月FOMCでは「経済指標の改善等次第では6月利上げの可能性あり」と議論
◯ 4月FOMCにおいて「経済指標の改善等が続けば6月の利上げが適切」と議論していたことが、議事録によって明らかに
‧ 4月FOMCの声明文では、利上げの障害となっているリスク評価が削除
‧ 議事録(5月18日)によれば、殆どの参加者が、景気回復等を確認できれば、6月利上げが適切な可能性があると判断
【 4月声明文と議事録のポイント 】
主たる変更点
みずほ総研の評価
経済活動は減速したようにみえる(growth in economic activity appears to have slowed)。
後退
委員会は、国際外経済・金融市場の動向を注視している(The Committee continues to
closely monitor inflation indicators and global economic and financial developments)。
「国際経済・金融市場の動向は引き続きリ
スクをもたらす」という文言を削除することで、
利上げの障害除去
声明文
[リスク判断について]
・参加者らは、「全般的にみれば、国際経済・金融市場からもたらされる経済見通し上のリスクは後退した」という点で合意した。
・投票メンバーも、全般的なリスク・バランスを評価することなく、3月会合からみればリスクが縮小したことを指摘するため、「国際経済・金
融市場の動向を注視する」姿勢を声明文に記述することを決定。
議事録
[今後の金融政策について]
・参加者らは、「4月会合で金利を据え置き、様子見するのは、6月会合での利上げの可能性に余地を残すため」と考えている。
・殆どの参加者が、「4-6月期の景気持ち直しと雇用拡大の継続、インフレの持ち直しが経済指標によって確認されるのであれば、6月の利
上げが適切な可能性がある」と、判断している。ただし、その可能性の程度についての見方は分かれている。
・投票メンバーも、次回会合での利上げの可能性については、予断を持たずに経済動向等を見守る姿勢である。
(資料) FRBより、みずほ総合研究所作成
24
米国:米国経済は長期停滞の淵にあり、金融政策の正常化には慎重さが必要
◯ みずほ総合研究所の推計によれば足元の実質均衡金利はマイナス2%。一方、実質政策金利はマイナス1.4%
‧ 実質均衡金利に改善の兆しなし。推計には不確実性が伴うものの、年内の利上げを見送るべきことを示唆
――― EU離脱の是非を問う英国民投票(6/23)や、新興国経済の低迷など、下押し要因残存
【 実質政策金利と実質均衡金利 】
(%)
14
12
10
実質政策金利(赤線)
8
6
実質政策金利は
実質均衡金利を上回っており
金融政策はタイト
4
2
0
実質均衡金利
(みずほ総合研究所)
▲2
▲4
1960
70
80
90
2000
10
20 (年)
(注)1. 政策金利の実質化には、AR(3)モデルによる予想インフレ率を利用。
2. 小野亮(2016)「米実質均衡金利はマイナス2%~修正LWモデルに基づく試算とその示唆~」みずほインサイト、4月4日に基づく分析。
(資料) みずほ総合研究所作成
25
米国:金融政策は2016年内据え置き。2017年の利上げは年2回と予想
◯ 2016年内は据え置きを予想。2017年以降の利上げテンポと政策金利の最終着地点を下方修正
‧ 長期停滞リスクが燻る中で、2017年以降の利上げテンポは従来よりも緩やかに修正(年4回⇒年2回)
‧ 同様に、政策金利の最終着地点も3%から2%に引き下げ
【 米政策金利見通し 】
(%)
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
(四半期)
2015
2016
2017
2018
2019
2020
(年)
(注)グラフは政策金利レンジの上限(レンジ幅は0.25%)。
(資料) みずほ総合研究所作成
26
米国:緊縮モードから拡張モードへ
◯ 連邦財政収支・GDP比は、金融危機後の縮小基調から拡大基調に転換
‧ 2000年代以降、米国の公共投資額(実質)は減少しており、公共インフラの老朽化に拍車。財政支出の必要性が拡大
――― 大統領選挙後、インフラ投資に関して民主党と共和党の主張が一致する可能性あり
【 連邦財政収支の見通し 】
【 高速道路のビンテージ 】
(GDP比%)
(年)
4
30
予測
2
25
0
20
▲2
▲4
15
▲6
10
▲8
5
▲ 10
▲ 12
1970
80
90
2000
10
20
0
1930
40
50
60
70
80
(年度)
(資料) 米議会予算局(CBO,2016/3)より、みずほ総合研究所作成
90
2000
10
(年)
(注)1996年までと、1997年以降は分類が異なる。
(資料) 米議会予算局(CBO)より、みずほ総合研究所作成
27
ユーロ圏:金融政策は緩和強化、財政政策は2016年に拡大計画
◯ ECBは3月理事会において、信用緩和を企図した追加緩和パッケージを発表
‧ パッケージは、預金金利の引き下げや資産購入額の増額のほか、企業業向け貸出促進策(TLTRO2)や社債購入を含む
――― 一定の条件の下、TLTRO2利用行にはマイナス金利が適用に(オペ利用行に金利が還付)
‧ ECBは政策効果を見極める段階に。ただし、ECBの想定ほどインフレ率は上昇しないとみられ、年内にもフォワード・ガイ
ダンスの強化などが実施される可能性も
◯ 各国の中期財政計画に基づくと、2016年のユーロ圏は財政緩和。2017年は財政緊縮が計画されている
【 ECBの追加緩和策(2016年3月理事会) 】
緩和策
狙い
政策金利の引き下げ:主要リファイナ
実質金利低下を通じた景気刺激、ポー
ンスオペ金利を0%、限界貸出ファシ
①
トフォリオリバランスを通じた貸出増や
リティ金利を0.25%、預金ファシリティ
為替レート減価など、緩和効果の拡大
金利を▲0.4%に引き下げ
QE月次購入額の600億ユーロから
800億ユーロへの引き上げ、国際機
②
関債等の購入上限を33%から50%
へ引き上げ
③
追加緩和の拡大(同上)、購入上限の
引き上げによるQEのスムースな実施
貸出条件付き4年物長期リファイナン
スオペの開始(TLTRO2)、TLTRO2 企業向け貸出の強化と金融機関の資
④
の貸出金利は最低▲0.4%まで適用 金調達ニーズ確保
可能
(資料)ECBより、みずほ総合研究所作成
(構造的財政収支(GDP比)、%)
フォワードガイダンスの強化による緩和
効果の浸透
ドイツ
イタリア
ユーロ圏
1.0
0.5
フランス
スペイン
0.0
ユーロ圏全体では
2016年に赤字拡大
▲ 0.5
社債購入プログラム(CSPP)の開始 信用緩和の強化、QE購入可能証券の
(投資適格級ユーロ建て社債のみ) 拡大によるQEのスムースな実施
⑤ 低金利を資産購入終了後も継続
【 ユーロ圏・主要国の構造的財政収支 】
▲ 1.0
▲ 1.5
▲ 2.0
2015
2016
2017
(年)
(注) 各国2016年安定レポートベース。ユーロ圏は、各国の想定を加重平均したもの。
(資料) 各国財務省より、みずほ総合研究所作成
28
中国:金融緩和を継続、財政政策については減税主眼の財政赤字拡大
◯
‧
‧
◯
‧
景気下支えのため緩和的な金融環境は維持されるも、過度な金融緩和は回避される方針
足元でやや過熱感のみられる住宅市況など物価動向に配慮しながら、利下げや預金準備率引き下げを模索する展開に
中国人民銀行の周総裁は、「成長率目標達成のために過度な金融緩和で経済を刺激する必要はない」と発言
2016年の財政赤字の対GDP比を3.0%に拡大(2015年:2.4%)。財政支出拡大よりも減税・行政手数料減免に力点
企業・家計の負担軽減規模は5,000億元超(対GDP比0.7%)の見込み。ただし、新規投資や消費押し上げに結びつかず、
景気浮揚効果が限定的となる可能性も。景気下振れ時には、財政支出を拡大しテコ入れを強化する余地あり
【 貸出・預金基準金利、預金準備率 】
(%)
24
【 財政収支(一般公共予算) 】
(%)
12
預金準備率(大型金融機関、左目盛)
20
10
16
8
貸出基準金利(1年物、右目盛)
(%)
(前年比、%)
財政赤字対GDP比(左目盛)
3.5
3.0
財政収入伸び率(右目盛)
35
財政支出伸び率(右目盛)
30
2.5
25
2.0
20
12
6
1.5
15
8
4
1.0
10
0.5
5
4
2
預金基準金利(1年物、右目盛)
0
12/1
13/1
14/1
(資料) 中国人民銀行より、みずほ総合研究所作成
15/1
0
16/1 (年/月)
0.0
2008
09
10
11
12
13
14
15
0
16 (年)
(注)2016年は予算ベース。2015年以降財政収入、財政支出いずれも定義が変更されている
ため、それらの伸びについて、どの程度厳密に時系列の比較ができるか不明な点あり。
(資料)中国国家統計局、財政部「关于2015年中央和地方預算執行情况与2016年中央和地方
預算草案的報告」より、みずほ総合研究所作成
29
新興国:財政・金融政策の余地は乏しい
◯
‧
‧
◯
‧
‧
財政状況からみると、ブラジル、インド、ベトナム、次いでマレーシアの財政出動余地が乏しい
ロシアでは政府の資金調達環境が厳しく、インドネシアでは財政ルールの制約があり、それぞれ財政出動の余地は限定的
フィリピン、タイ、香港、韓国の財政状況は比較的良好で、いずれも経常黒字国でもあるため、財政出動の余地あり
物価動向からみると、ブラジルとロシアでインフレ率が鈍化しつつあり、今後の利下げ余地を探る展開
既に複数回の利下げを実施したインドとインドネシアでは、更なる利下げ余地は限定的となっている
韓国、フィリピン、タイに利下げ余地、インフレ目標未採用国のマレーシアでもインフレ率低下で利下げ余地が出てきた模様
【 財政状況(2016年)からみた財政出動余地 】
政府債務残高/名目GDP(%)
● 経常黒字国/地域
90
70
○ 経常赤字国
ブラジル
余地乏しい
80
【 インフレ率とインフレターゲット 】
インド
ベトナム
60
50
マレーシア
タイ
40
フィリピン
韓国
30
20
0
▲5
ロシア
余地あり
香港
▲4
▲3
▲2
▲1
0
1
2
プライマリーバランス/名目GDP(%)
(注)EUのマーストリヒト条約を参考に、政府債務残高/名目GDPの目安を60%とした。
(資料)IMFより、みずほ総合研究所作成
ー
10
インドネシア
インフレターゲット
(%) インフレ率は
13
鈍化
インフレ率(2016年1月)
12
11
同上 (2016年4月)
10
インフレ率は
9
目標程度
インフレ率は
8
インフレ目標
目標を下回る
7
未採用国
6
5
4
3
2
1
0
▲1
マ
ブ
イ
韓
タ
台
ベ
フ
ロ
イ
ン
レ
ラ
国
イ
湾
ト
ィ
シ
ン
ジ
ド
ナ
リ
ア
ド
シ
ル
ネ
ム
ピ
ア
シ
ン
ア
(注)マレーシアの直近のインフレ率は2016年3月。
(資料)各国統計より、みずほ総合研究所作成
30
Ⅱ.海外経済
~米国は持ち直し、中国減速でアジア成長率は横ばい~
31
(1)米国経済 ~ 今春以降、緩やかに持ち直し。しかし、下振れリスクは残存
○ 1~3月期の実質GDP成長率は前期比年率+0.5%と、10~12月期(前期比年率+1.4%)か
ら大きく減速。これまでのドル高・原油安による悪影響に加え、年初の金融市場混乱、暖冬に
伴う季節商品の販売不振などが下押し要因
○ 1~3月期にみられた一時的な下押し要因が徐々にはく落するもとで、今後の景気は緩やか
な拡大基調に戻ると予想。個人消費は、雇用所得の拡大やマインドの安定が下支え。急速な
ドル高や原油安の進行に歯止めがかかるとともに、輸出や設備投資への下押し圧力は徐々
に緩和に向かう見込み
○ しかし、内外の下振れリスクは残存。国内では米銀の貸出態度の厳格化が懸念材料。海外
では新興国経済の弱さに加えて、英国のEU離脱を問う国民投票(6/23)を控えて、金融市場
が不安定化する恐れも
○ 足元では6月FOMCで利上げが行われる可能性が増大。しかし、長期停滞リスクやFOMCのタ
カ派的姿勢がドル高再燃等を招く恐れがあり、金融政策は年内利上げ見送りを予想。2017年
入り後の利上げテンポ(年4回→年2回)と政策金利の最終着地点(3%→2%)を下方修正
32
米国:1~3月期は減速。今後は緩やかな拡大基調に復する見通し
◯ 2016年の成長率を前年比+1.8%(3月予測)から+1.6%に下方修正、2017年を+2.3%と予想
‧ 下方修正の主因は、1~3月期の下振れ
‧ 国内では信用状況の引き締まり、海外では新興国経済の弱さなど、下振れリスクは残存
【 短期見通し総括表 】
2014 2015 2016 2017
暦年
2015
1~3
4~6
2016
7~9 10~12 1~3
4~6
2017
7~9 10~12 1~3
4~6
7~9 10~12
前期比年率、%
2.4
2.4
1.6
2.3
0.6
3.9
2.0
1.4
0.5
2.0
2.0
2.2
2.2
2.4
2.5
2.4
個人消費
前期比年率、%
2.7
3.1
2.4
2.2
1.8
3.6
3.0
2.4
1.9
2.5
2.0
2.3
2.3
2.3
2.0
2.0
住宅投資
前期比年率、%
1.8
8.9
9.4
4.7
10.1
9.3
8.2
10.1
14.8
6.5
5.0
6.5
4.0
4.0
4.0
4.0
設備投資
前期比年率、%
6.2
2.8 ▲ 2.0
1.7
1.6
4.1
2.6
▲ 2.1 ▲ 5.9 ▲ 2.4 ▲ 1.6
▲ 0.2
2.5
3.0
5.0
5.0
在庫投資
前期比年率寄与度、%Pt
0.1
0.2 ▲ 0.1 ▲ 0.0
0.9
0.0 ▲ 0.7
0.2
0.0 ▲ 0.2
0.0
0.0
0.0
3.8
3.5
2.0
2.0
2.0
▲ 0.0
実質GDP
前期比年率、% ▲ 0.6
政府支出
0.7
2.1
2.6 ▲ 0.1
前期比年率寄与度、%Pt ▲ 0.2 ▲ 0.6 ▲ 0.2 ▲ 0.0 ▲ 1.9
純輸出
2.6
1.8
▲ 0.2 ▲ 0.3 ▲ 0.1
0.1
1.2
3.8
2.0
0.2 ▲ 0.3
▲ 0.1 ▲ 0.3 ▲ 0.2 ▲ 0.2
▲ 0.2 ▲ 0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0
▲ 0.8
2.0
2.2
2.4
2.2
0.2 ▲ 0.4 ▲ 0.0
0.4
1.8
1.9
2.0
2.0
輸出
前期比年率、%
3.4
1.1 ▲ 1.3
0.8 ▲ 6.0
5.1
0.7
▲ 2.0 ▲ 2.6 ▲ 2.0 ▲ 1.8
輸入
前期比年率、%
3.8
4.9
0.3
1.2
7.1
3.0
2.3
▲ 0.7
%
6.2
5.3
5.1
5.0
5.6
5.4
5.2
5.0
4.9
5.1
5.1
5.1
5.1
5.0
4.9
4.8
非農業部門雇用者数 1か月当たり、千人
251
229
201
220
190
251
192
282
203
181
210
210
220
220
220
220
前年比、%
1.4
0.3
1.1
1.8
0.2
0.3
0.3
0.5
1.0
0.8
1.0
1.4
1.9
1.8
1.7
1.7
前年比、%
1.5
1.3
1.4
1.6
1.3
1.3
1.3
1.4
1.7
1.3
1.3
1.4
1.4
1.5
1.6
1.7
失業率
個人消費支出デフレーター
食品・エネルギーを除くコア
(注)網掛けは予測値。
(資料)米国商務省、米国労働省より、みずほ総合研究所作成
33
米国:新車販売は頭打ち。しかし、消費の基調は所得に沿った形で増勢が続く見込み
◯ 新車販売はペントアップディマンドの終了で頭打ち。今後は、サービス消費や非耐久財消費がけん引役となる見通し
‧ 新車販売台数は2011年末頃から潜在需要を超過していたが、今後は潜在需要(約1,700万台)並みで推移すると予想
――― 今後は、所得の増加(押し上げ要因)、使用年数の長期化とガソリン価格の底打ち(押し下げ要因)との綱引き
‧ サービス消費や非耐久財消費は所得の成長ペースに沿った形で増勢が続く見込み
――― 最近は消費と所得の乖離が開いているが、中長期的にみれば、消費は所得に見合った水準に収束する見込み
【 新車販売台数 】
(年率万台)
【 実質個人消費と実質可処分所得 】
昨年10月(1,818万台)を
境にピークアウト
2,000
(2008年10~12月期=100)
120
所得と消費の
乖離が拡大
(貯蓄率上昇)
1,800
115
1,600
1,400
増税前に
配当所得が集中
110
1,200
実績値
1,000
105
潜在需要
800
2005
07
09
11
13
15
(注)自動車の潜在需要は下記の式で試算。
log(auto)= 3.5 - 3.5 *log(age) + 1.1 *log(I) -0.2 *log(gas) - 0.1 *rate(-1)
(0.2) (0.0)
(0.0)
(0.0)
(0.0)
推計期間:1995Q2~2016Q1。カッコの中はp値。
auto:一人当たり新車販売台数、age:平均使用年数、I:一人当たり所得、
gas:ガソリン価格、rate:自動車ローン金利
(資料) Autodata、米国運輸省、米国商務省、FRBより、みずほ総合研究所作成
16
100
実質消費(サービス+非耐久財)
実質可処分所得
(年)
95
2008
10
12
14
16
(年)
(資料) 米国商務省より、みずほ総合研究所作成
34
米国:労働参加率の上昇は、堅調な雇用増加が続くことを示唆
◯ 求人数の増加や賃金上昇を受けて、これまで働く意思がなかった人が労働市場に復帰
‧ 労働参加率は高齢化や在学期間の長期化などを背景に一貫して低下傾向が続いてきたが、2015年9月以降、反発
――― 4月は一旦低下したが、9月を底に持ち直し傾向が続いている状況
――― 主要な生産年齢(25~54歳)でみても、同様の傾向
‧ 労働参加率(=非労力人口比率)の変動要因をみると、9月以降は、働く意思がなかった人が労働市場に戻る動き
【 非労働力人口比率の要因分解(25~54歳) 】
【 労働参加率 】
(%)
(%)
67
84
(2007年1月からの変化、%ポイント)
▲ 0.5
0.0
66
83
65
働く意思なし
0.5
1.0
82
64
労働参加率
下押し要因
1.5
2.0
63
81
62
2.5
数年間職探しを
していない
3.0
80
全体
61
25~54歳(右目盛)
60
79
2007
09
11
13
15
16
(年)
(資料) 米国労働省より、みずほ総合研究所作成
今は働くことが
できない
3.5
4.0
2007
09
11
ディスカレッジド
ワーカー等
13
(注)3カ月移動平均値。
(資料) 米国労働省より、みずほ総合研究所作成
15
16
(年)
35
米国:輸出や設備投資への下押し圧力は徐々に緩和へ
◯ 急速なドル高・原油安傾向に歯止めがかかるとともに、輸出や設備投資への下押し圧力も徐々に緩和する見通し
‧ 足元の実効レートはピーク(1月)比6%程度のドル安水準、原油価格は2月に底打ち
‧ ISM調査の輸出受注指数は上昇が継続。ドル高が一服するなかで、輸出需要に回復の兆候
――― 主要な業種をみると、コンピュータや電気機械は低調で、一般機械も一進一退だが、化学や金属関連などが改善
【 実質実効レート(左)と原油価格(右) 】
(1973年=100)
【 製造業ISM輸出受注指数(業種別) 】
(ドル/1バレル)
ISM輸出受注指数 ............
120
105
受注「増加」業種数
110
100
100
90
80
95
70
60
90
50
40
85
30
80
2010 11 12 13 14 15 16
(年)
20
2010 11 12 13 14 15 16
(資料) FRB、Haverより、みずほ総合研究所作成
(年)
受注「減少」業種数
食品・飲料・タバコ製品 ........
非金属鉱物製品 ................
衣料品 ........................
コンピュータ・電子製品 ........
電気機械 ......................
繊維 ..........................
紙製品 ........................
プラスチック・ゴム製品 ........
輸送機器 ......................
一般機械 ......................
家具 ..........................
一次金属 ......................
加工金属製品 ..................
石油・石炭製品 ................
木製品 ........................
化学 ..........................
印刷 ..........................
その他製造業 ..................
16/01
47.0
4
9
-
16/02
46.5
5
7
-
16/04
52.5
8
4
-
+
+
16/03
52.0
7
10
+
+
+
+
+
-
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
+
(注)前月と比べて輸出受注が増加した業種を+、減少した業種を-で表示。
(資料) 米サプライマネジメント協会より、みずほ総合研究所作成
36
米国:国内では企業向け貸出基準の厳格化が懸念材料
◯ レバレッジの拡大や収益の伸び悩みによる財務健全性の低下を背景に、企業向け貸出基準が厳格化
‧ 企業向け貸出基準DIは2015年10~12月期以降、3四半期連続で厳格化
‧ 企業の債務残高対/名目GDP比率は、景気後退期とほぼ同程度の水準まで上昇
――― 企業債務残高の内訳をみると、社債発行の増加が目立つ
‧ 今後、企業向け信用引き締めが長期化すれば、設備投資や雇用の抑制を通じて経済全体の減速につながる恐れ
【 企業向け貸出基準DI 】
【 企業の債務残高(対GDP比) 】
(DI、%)
(GDP対比,%)
商工業ローン(大・中堅企業)
30
100
企業
商工業ローン(中小企業)
20
厳
格
化
商業用不動産ローン
10
90
家計
80
0
70
▲10
緩
和
▲20
▲30
2010
11
12
13
14
15
16
60
50
1990
95
2000
05
(注)「厳格化」-「緩和」の回答率。
(資料) FRBより、みずほ総合研究所NY事務所作成
10
15
(年)
(年)
(注)シャドウは景気後退期。
(資料) 米国商務省より、みずほ総合研究所NY事務所作成
37
(2)ユーロ圏経済 ~ 低成長と低インフレが続く
○ 2016年、17年のユーロ圏実質GDP成長率は、各+1.4%、+1.4%となる見通し。
潜在成長率をやや上回る、緩やかなテンポでの景気回復が続こう
○ 2016年の成長率は、前年より小幅減速。1~3月期の成長率は高めだったが、天候要因など
一時的要因の影響が大きい。4~6月期以降、消費改善が続くも、企業が投資に慎重姿勢を
維持するとみられることなどから、景気回復テンポは緩やかに。2017年の成長率は前年と
同水準だが、景気回復テンポは加速。世界経済の持ち直しや、企業の慎重姿勢の和らぎを
背景に、輸出や投資の伸びが徐々に高まると予想される
○ 2016年、17年のユーロ圏インフレ率は、各+0.3%、+1.3%となる見通し。景気回復テンポ
が緩やかであること、ユーロ安による押し上げ効果が縮小することなどから、インフレ率の
伸び悩みが続くとみられる。2017年末になっても、ECBが目安とする2%には届かないだろう
○ ECBは、追加緩和策の効果を見極めるステージに。ただし、インフレ率はECBの想定を
下回る公算が大きく、年内にもフォワード・ガイダンスの強化などを迫られる可能性がある
38
ユーロ圏:今後も緩やかな景気回復が続く見込み
◯ 2016年のユーロ圏実質GDP成長率は+1.4%へ上方修正。2017年は+1.4%と予想
‧ 上方修正は、1~3月期の成長率上振れを反映したもの。4~6月期以降の回復テンポが緩やかというシナリオは変わらず
――― 上振れは天候要因など一時的要因の影響が大。4~6月期の成長率は減速する公算。企業の慎重姿勢は継続
‧ 2017年は、消費主導の景気回復が持続。投資回復テンポは徐々に加速
‧ インフレ率は、早晩、プラス圏に浮上。ただし、ユーロ安効果の縮小などからインフレ率の上昇テンポは緩慢
【 ユーロ圏短期見通し総括表 】
2014
2015
2016
2015
2017
暦年
1~3
4~6
2016
7~9 10~12
1~3
4~6
2017
7~9 10~12
1~3
4~6
7~9 10~12
前期比、%
0.9
1.6
1.4
1.4
0.6
0.4
0.3
0.3
0.5
0.2
0.3
0.4
0.4
0.4
0.4
0.4
前期比、%
1.0
1.7
1.7
1.4
0.8
0.0
0.7
0.6
0.6
0.1
0.2
0.3
0.4
0.4
0.4
0.4
前期比、%
0.8
1.7
1.4
1.3
0.5
0.3
0.5
0.2
0.5
0.3
0.3
0.3
0.3
0.3
0.4
0.4
総固定資本形成 前期比、%
1.4
2.6
2.5
1.4
1.4
0.1
0.4
1.3
1.2 ▲ 0.1
0.1
0.3
0.4
0.5
0.5
0.6
政府消費
0.8
1.3
1.6
0.9
0.5
0.3
0.3
0.6
0.5
0.3
0.2
0.2
0.2
0.2
0.2
0.0 ▲ 0.0
0.0
0.1
0.2 ▲ 0.2
0.3
0.1
0.0 ▲ 0.1 ▲ 0.1
0.1
0.1
0.1
0.0
0.0
▲ 0.1 ▲ 0.1 ▲ 0.3
0.1
▲ 0.2
実質GDP
内需
個人消費
前期比、%
在庫投資 前期比寄与度、%Pt
外需
前期比寄与度、%Pt
0.4 ▲ 0.4 ▲ 0.3
0.4
▲ 0.1
0.1
0.1
0.1
0.0 ▲ 0.0 ▲ 0.0
0.0
輸出
前期比、%
4.1
4.9
1.9
4.2
1.4
1.7
0.2
0.2
0.1
0.6
0.8
1.0
1.1
1.2
1.2
1.2
輸入
前期比、%
4.5
5.6
2.7
4.5
2.1
1.0
1.2
0.9
0.3
0.4
0.7
0.9
1.2
1.4
1.4
1.4
消費者物価指数
前年比、%
0.4
0.0
0.3
1.3
▲ 0.3
0.2
0.1
0.2
0.0
0.1
0.4
0.8
1.3
1.1
1.3
1.6
食品・エネルギーを除くコア前年比、%
0.8
0.8
1.0
1.3
0.7
0.8
0.9
1.0
1.0
0.9
0.9
1.0
1.2
1.3
1.4
1.5
(注) 網掛けは予測値。
(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成
39
ユーロ圏:1~3月期の成長率は上振れ。4月以降の景気回復テンポは緩慢
◯ 1~3月期のユーロ圏GDP成長率は前期比+0.5%と約1年ぶりの高い伸び。4月のユーロ圏合成PMIは伸び悩み
‧ 個人消費が1~3月期の景気回復をけん引した模様。固定投資・政府支出は暖冬・難民対応で上振れたとみられる
‧ 1~3月期の合成PMIは低下。景気回復の勢いが基調的に強まっているわけではないことを示唆
――― 4月のユーロ圏合成PMIは景気判断の節目となる50を上回るも、3月からは伸び悩み
‧ 各国の中期財政計画に基づくと、2016年は従来よりも緩和気味の財政政策が志向されている模様
【 ユーロ圏・主要国の構造的財政赤字(2016年) 】
【 ユーロ圏・主要国のGDP成長率と合成PMI 】
(前期比、%)
1.0
成長率
0.8
0.6
0.4
0.2
PMI
←
(Pt)
60
59
58
57
56
55
54
拡
張 53
52
51
景 50
気 49
48
縮 47
小 2014/4
0.0
▲0.2
Q1 Q2 Q3 Q4 Q1 Q2 Q3 Q4 Q1
2014
ユーロ圏
フランス
スペイン
15
16
(年/四半期)
ドイツ
イタリア
→
▲0.4
ユーロ圏
フランス
スペイン
(資料) Eurostat、各国統計局、Markitより、みずほ総合研究所作成
15/4
16/4
(年/月)
ドイツ
イタリア
(構造的財政赤字(GDP比)、%)
2.0
1.8
1.6
1.4
1.2
1.0
0.8
0.6
0.4
0.2
0.0
2016年春時点の想定
2015年秋時点の想定
1.2
1.8
1.3
1.2
1.0
0.7
0.7
0.5
0.0
ユーロ圏
0.0
ドイツ
フランス
イタリア
スペイン
(注) 2015年秋時点の想定=各国2016年予算案ベース、2016年春時点の想定=
各国2016年安定レポートベース。ユーロ圏は、各国の想定を加重平均したもの。
(資料) 各国財務省より、みずほ総合研究所作成
40
ユーロ圏:企業は投資拡大に対して慎重姿勢を維持する見込み
◯ 企業は固定投資などに対して慎重姿勢を維持。固定投資の回復テンポが加速するのは2017年入り後
‧ 金融市場でリスクオン局面が持続するほど、固定投資は増えやすいという経験則が有。足元、リスクオン局面の持続期間
は1四半期程度であり、投資回復テンポが顕著に加速するほど企業は楽観的になっていない模様
―― 1四半期のリスクオンでは、固定投資の回復テンポは限界的に+0.1%pt程度しか加速しないという結果
【 グローバル金融市場のリスクオン局面 】
(金融市場がリスクオンである確率、%)
100
90
80
70
60
50
40
30
20
10
0
08/5
2008/5
【 金融市場のリスクオンの持続期間が固定投資に与える影響 】
シャドーはリスクオン期間
(リスクオン確率≧50%)
(固定投資の前期比年率伸び率に対する影響、%pt)
2.2
リスクオンが
1四半期なら
加速は限定的 +0.1%pt
2.0
1.8
+0.4%pt
1.6
1.4
1.2
1.0
10/5
12/5
14/5
16/5
(年/月)
(注) マルコフ・スイッチングを伴う動学的因子モデルにより、様々な金融指標の
共変動と、共変動の局面変化を同時推計した。モデルから抽出される共変動が
投資家のリスク許容度を表すとした。また、許容度の上昇が相対的に大きく、
かつ、許容度の上昇が続きそうであるとモデルで識別された局面を、リスクオン
局面とした。2016年5月は第2週目までのデータに基づく。
(資料) Datastream、Bloombergなどより、みずほ総合研究所作成
ベンチマーク:
GDPが年率
1.5%増加
リスクオンが
1四半期継続
リスクオンが
1年継続
(注) ユーロ圏固定投資を、GDP成長率、GDP成長率×リスクオン局面の持続期間、
設備稼働率で説明する回帰モデルを推計。GDPが年率1.5%増加したケースにおいて、
リスクオン局面の持続期間がゼロの場合をベンチマークとし、リスクオン局面が継続した
場合の限界的な押し上げ効果を、交差項の係数から求めた。
(資料) Eurostatなどより、よりみずほ総合研究所作成
41
ユーロ圏:ユーロ安効果は剥落へ。今後のコア・インフレ率の上昇テンポは緩慢
◯ 4月のユーロ圏インフレ率は3カ月連続のマイナス。ユーロ安による物価押し上げ効果はピークアウトへ
‧ コア・インフレ率はコア財中心に上昇傾向だったが、このところ上昇が一服。ユーロ安効果剥落の兆候とみられる
――― 4月のコア財物価(季調値)は2カ月連続で前月比下落。計量分析は、1~3月期がユーロ安効果のピークとの結果
‧ 油価上昇を受け、早晩、インフレ率はプラス圏に浮上する見込み。ただし、コア・インフレ率は伸び悩み、2016年末に
+1.0% と低位にとどまる公算が大
――― 企業の値上げ見通しは、値上げに対する企業の慎重姿勢を引き続き示唆
【 ユーロ圏インフレ率 】
(前年比、%)
1.2
インフレ率
内訳
(前年比、%) (前年比、%)
1.4
0.0
1.0
0.8
▲0.5
0.6
0.4
0.2
▲1.0
▲1.5
0.0
▲0.2
▲2.0
▲0.4
【 為替のコア財物価に及ぼす影響 】
コア・インフレ率
内訳
0.6
1.0
0.4
0.8
0.2
0.6
0.0
0.4
▲ 0.2
0.2
▲ 0.4
0.0
▲ 0.6
(資料) Eurostatより、みずほ総合研究所作成
コア・インフレ率
サービス物価上昇率
コア財物価上昇率
為替の影響
コア財物価上昇率
0.8
1.2
▲0.6
▲2.5 ▲ 0.2
2015/4 15/7 15/10 16/1 16/4
2015/4 15/7 15/10 16/1 16/4
(年/月)
(年/月)
ユーロ圏インフレ率
コアインフレ率(エネルギー・食品等を除く)
エネルギー・食品等(右目盛)
(前年比、%)
2014
15
16
押し上げ効果は
徐々に剥落へ
17
(年/四半期)
(注)コア財物価、GDP、名目実効レート、原油価格、生産者物価(国内向け消費財)から
成るVARモデルを推計した結果に基づく試算。2016年以降の名目実効レートは、
みずほ総合研究所のユーロドル相場の見通しに基づき外挿したもの。
(資料) Eurostat、ECBより、みずほ総合研究所作成
42
ユーロ圏:欧州で高まる政治の不透明性
◯ 2016年後半にかけて、欧州の政治情勢は不透明性が高まる
‧ 政治リスクのうち、顕在化の可能性が最も高いものは英国のEU離脱の是非を問う国民投票(6/23)
――― 世論調査を見る限り、現時点では残留と離脱の支持率は拮抗し、結果は予断を許さず
――― EU離脱となれば、投資判断の先送り等により、英国のみならず欧州経済の下押し要因となる可能性あり
◯ その他、スペインの再選挙(6/26)、ギリシャの支援協議遅延、EU難民問題の深刻化、フランスの大統領選開始等、
EU政治情勢は、先行き不透明な状況が続く
【 英国のEU離脱国民投票の世論調査 】
(%)
残留
55
離脱
【 欧州政治情勢をめぐる不透明性 】
態度保留
50
45
イベント
鍵となる日付等
現状評価・リスク
英国のEU離脱
6月23日国民投票
英国民がEU離脱を選択する可能性は半々。離脱
となれば金融市場不安定化のリスク大
スペイン再選挙
6月26日投票日
40
ギリシャ支援協議の遅延
7月20日大口償還
昨年7月の第三次支援合意後の、ユーロ圏やIMF
との融資協議が遅延。プライマリーバランス目標
に関して債権者団(IMFとユーロ圏)内で意見相
違。但し、5月中には正式合意に達する公算が大
きく、ギリシャ危機再燃の可能性は低い
EU難民問題の深刻化
年央にかけて
現在、EUとトルコの合意を受け、トルコ経由での
ギリシャへの難民流入数は減少。しかし、夏場に
別ルートからの難民流入が増加する可能性も
フランス大統領選
秋口以降(本選は
2017/4/23、5/7)
2017年4・5月の大統領選挙を前に各党の候補者
選びが本格化。極右・国民戦線のルペン党首が
高支持率維持も、大統領になる可能性は低い
35
30
25
20
15
10
2012
13
14
15
16
(年)
(注)2012年12月、2015年8月は調査未実施のため、線形補完。1カ月に複数調査があった
場合は平均値。2016年4月のみは4/25~26日に実施された直近値。
(資料)YouGovより、みずほ総合研究所作成
再びどの党も過半数を取れない可能性。急進左
派・ポデモス主導政権となれば、カタルーニャ独
立機運が再び高まる可能性も
(資料)みずほ総合研究所作成
43
(3)アジア経済 ~ 総じて成長率は横ばいにとどまる見込み
○ 2016年1~3月期のアジア経済は減速。輸出が一進一退で推移する中、内需の自律的回復
の動きも乏しい状況 。各国では景気を下支えするために経済対策が打たれており、中国で
は成長率の減速は小幅だった一方、その他のアジアでは個別の要因で大幅に減速した国も
あった
○ 2017年までを見通すと、輸出環境は改善するものの、中国の減速が足を引っ張り、アジア全
体の成長率は横ばいの見込み
○ 中国では、過剰な生産能力と債務の調整圧力が残る中で、経済対策が続けられることにより、
投資を主体とする緩やかな減速が続く
○ 中国を除くアジアでは、2017年にかけて米国経済回復などの追い風を受け、輸出が緩やか
に持ち直し。もっとも、財政状況やインフレ動向から経済対策の余地は限定的なため、政策に
よる下支え効果は次第に縮小し、成長率の回復ペースは緩慢なものにとどまると予測
○ アジア経済にとってのリスク要因は、中国でのデフォルト増加。今後の増勢やその処理方法
によっては金融リスクが高まる恐れもあるため、注視が必要
44
アジア:2016~2017年の成長率は+6%で横ばい推移
◯
‧
‧
‧
‧
輸出環境は改善するものの、中国の減速が足を引っ張り、アジア全体の成長率は2016~2017年に+6%で横ばい
中国では、次第に過剰生産能力や債務の調整圧力を経済対策によって緩和することで、成長率は緩やかに減速
輸出依存度の高いNIEsでは、米国などの緩やかな景気回復を受けて、成長率は小幅改善
ASEAN5では、輸出が緩やかに持ち直すものの、内需の回復にはばらつきがあり、総じて成長率は横ばい圏の動き
インドでは、公務員給与の大幅引き上げなどにより、成長率が消費を中心にアジアの中で高めに推移
【 アジア経済見通し総括表 】
(単位:%)
2011年
(実績)
アジア
2012年
(実績)
2013年
( 実績)
2014年
( 実績)
2015年
( 実績)
2016年
( 予測)
2017年
( 予測)
(単位:%)
2016年
2017年
( 前回: 3 月予測)
7.4
6.4
6.4
6.3
6.1
6.0
6.0
6.0
6.0
中国
9.5
7.7
7.7
7.3
6.9
6.6
6.5
6.6
6.5
NIEs
4.1
2.3
2.9
3.4
2.0
1.8
2.2
2.0
2.2
韓 国
3.7
2.3
2.9
3.3
2.6
2.3
2.5
2.3
2.5
台 湾
3.8
2.1
2.2
3.9
0.7
1.1
1.8
1.4
1.8
香 港
4.8
1.7
3.1
2.7
2.4
1.5
1.8
1.9
1.8
シンガポール
6.2
3.7
4.7
3.3
2.0
1.8
2.3
1.8
2.3
ASEAN5
インドネシア
4.7
6.2
5.0
4.6
4.7
4.6
4.5
4.5
4.5
6.2
6.0
5.6
5.0
4.8
4.9
4.9
4.7
4.7
タ イ
0.8
7.2
2.7
0.8
2.8
2.8
2.7
2.5
2.7
マレーシア
5.3
5.5
4.7
6.0
5.0
3.7
4.3
3.8
4.3
フィリピン
3.7
6.7
7.1
6.1
5.8
6.1
5.5
6.0
5.5
ベトナム
6.2
5.3
5.4
6.0
6.7
6.0
5.7
6.0
5.7
6.6
5.6
6.3
7.0
7.3
7.5
7.5
7.6
7.5
オーストラリ ア
インド
2.6
3.6
2.0
2.6
2.5
2.6
2.5
2.6
2.5
( 参考) 中国・ インドを除く アジア
4.5
4.6
4.2
4.1
3.7
3.5
3.7
3.5
3.6
( 参考) 中国を除く アジア
5.4
5.0
5.1
5.4
5.3
5.3
5.4
5.3
5.4
(注)1.実質GDP成長率(前年比)。網掛けは予測値。網掛けなしは実績値。
2.平均値はIMFによる2014年GDPシェア(購買力平価ベース)により計算。
3.インドの伸び率は、2012年以前はIMF、2013年以降はインド統計計画実行省の値。
(資料)各国統計、CEIC Data、IMFより、みずほ総合研究所作成
45
アジア:輸出環境は改善するが、中国の減速が足を引っ張る見通し
◯ 2017年にかけて、輸出環境は次第に改善するものの、中国の減速が足を引っ張り、アジア全体の景気回復は勢いを欠く
‧ 中国では過剰生産能力と債務の調整圧力が続く中、経済対策を続けて下支えを図り、減速を小幅にとどめる見通し
――― なお、輸入は在庫調整の進展に伴い回復に向かうものの、ペースは緩慢
‧ その他のアジアでは、2017年にかけて欧米経済回復などで輸出が緩やかに持ち直し
――― もっとも、財政状況やインフレ動向から経済対策の余地は限定的なため、政策による下支え効果は次第に縮小し、
成長率の回復ペースは緩慢なものにとどまる見込み
【 米国・欧州・中国の実質輸入見通し 】
【 2016年入り後に公表された主な景気対策 】
(%)
金融政策
財政政策
中国
3月、預金準備率引き下げ
2016年度の財政赤字拡大
台湾
3月、利下げ
―
2
シンガポール
4月、金融緩和策(注)
―
0
インドネシア
1・2・3月、利下げ
米国(前期比年率)
インド
4月、利下げ
欧州(前期比年率)
タイ
―
4月に短期の消費刺激策
香港
―
2016年度予算を大幅拡張
10
(予測値)
8
6
4
▲2
▲4
▲6
中国(前年比)
▲8
予算執行ペースの加速
―
▲ 10
2015
16
(資料) 各国統計、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
17
(年)
(注)金融政策の操作対象であるシンガポールドルの名目実効相場について、上昇誘導から
横ばい誘導に変更。
(資料) みずほ総合研究所作成
46
中国:企業の債務拡大の結果、不良債権比率が上昇、社債デフォルトも増加
◯ 世界金融危機後の景気刺激策を契機として、債務の拡大傾向が持続
‧ 非金融部門の債務残高の対GDP比は、2008年末まで150%前後で推移していたが、2009年以降は上昇傾向をたどり、
2015年9月末には248.6%まで上昇。特に、非金融民間企業(国有企業も含む)の債務水準が高い
◯ 足元、不良債権比率の上昇傾向が続き、社債のデフォルトや発行取消も増加。過剰債務の綻びが露見
‧ 2016年3月末の不良債権比率は1.75%、要注意債権まで含めると5.8%にまで上昇
‧ 2016年3月以降、社債デフォルトが増加。モラルハザード回避のため、国有企業のデフォルトも容認されるように
【 中国の債務残高(非金融部門) 】
(対GDP比、%)
【 中国商業銀行の不良債権 】
2015年9月末:248.6%
250
200
2008年末:148.3%
非金融民間
企業部門
150
50
非金融民間部門
非金融民間企業
+家計部門
0
01/3
家計部門
政府部門
04/3
07/3
10/3
13/3
(年/月末)
(資料) BISより、みずほ総合研究所作成
(%)
6,000
6
要注意債権残高(左目盛)
総残高
100
(10億元)
5,000
不良債権残高(左目盛)
5
4,000
不良債権比率(右目盛)
4
3,000
不良債権比率+
要注意債権比率(右目盛)
3
2,000
2
1,000
1
0
0
09/3
10/3
11/3
12/3
13/3
14/3
15/3
16/3
(年/月末)
(資料)中国銀行業監督管理委員会、CEIC Dataより、みずほ総合研究所作成
47
中国:過剰生産能力の削減等に伴い、デフォルトの増加傾向が続く見込み
◯ 今後、過剰生産能力削減や国有企業改革に伴い、社債デフォルトや不良債権が増える見通し
‧ 石炭・鉄鋼などの生産能力過剰業種や国有企業では、財務レバレッジが高止まりしている状況。過剰生産能力削減や国
有企業改革に伴い、デレバレッジが進められるにつれて、社債のデフォルトや不良債権が増加する見通し
‧ IMFによると、インタレスト・カバレッジ・レシオが1以下の企業の借入額は、全社の借入金の約14%に相当(2015年)
――― この割合は近年上昇しており、全体的に企業の金利返済負担能力が低下傾向にあることを示唆
◯ 連鎖的なデフォルトが発生し政府の対応能力が疑われる事態となれば、金融リスクが大きく高まる恐れも
【 財務レバレッジ(企業形態別・業種別) 】
(倍)
3.5
【 社債スプレッド 】
(倍)
3.5
12
3.0
3.0
10
2.5
2.5
8
2.0
2.0
6
1.5
工業全体
1.5
工業全体
国有
石炭
1.0
(%)
1.0
鉄鋼
私営
外資
0.5
BBB+
A
4
AA-
2
AA
0.5
0.0
AAA
0
12/01
0.0
96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
(年)
(資料) 中国国家統計局より、みずほ総合研究所作成
13/01
14/01
15/01
16/01
(年/月)
96 98 00 02 04 06 08 10 12 14
(年)
(資料) Windより、みずほ総合研究所作成
48
Ⅲ.日本経済
~財政出動も、地震・円高などで不透明感の強さが継続~
49
日本経済 ~ 海外経済回復の鈍さ等から景気は力強さに欠けるも、景気後退は回避
○ 2016年1~3月期はプラス成長も、2015年10~12月期の減少分と均せば横ばい。足元の景気は
依然踊り場と評価される。2015年度通年の成長率は+0.8%(2014年度後半が高めの伸びと
なった影響を除くと、2015年度の期中成長率は▲0.0%)
○ 2016年度の景気は、海外経済の減速や円高などが回復の重石となり、力強さに欠ける見通し。
年度後半にかけて消費増税(2017年4月)前の駆け込み需要が顕在化することで、成長率は
+0.9%と潜在成長率(+0.2%~+0.3%と推計)を上回る見通し
○ 2017年度は、駆け込み需要の反動減により 成長率は+0.2%に低下。年度後半には反動減
が一巡することで、景気腰折れは回避できる見込み。なお、伊勢志摩サミットでの議論次第で
は、2017年度の消費増税が延期される可能性も(消費増税の影響を除いた場合、2016年度の
成長率予測値は+0.6%程度、2017年度は+1.0%程度に変化)
○ 円高や原油価格下落の影響で、コアCPI前年比は2016年末頃までゼロ%近傍で推移。その後
は、エネルギー価格の前年比がプラスに転じ、予測期間後半にはコアインフレ率は1%程度に
(消費増税の影響を除くベース)。エネルギー価格の影響を除く基調的なインフレ率は、緩やか
ながらも改善へ
50
日本:現状確認 -引き続き踊り場。4月は熊本地震が企業業況を下押し
◯ 1~3月期の実質GDPは、前期比年率+1.7%とプラス成長。ただし、10~12月期の減少分(同▲1.7%)と均せば横ばい
‧ 個人消費が高めのプラス(前期比+0.5%)となったが、10~12月期の落ち込み(同▲0.8%)を取り戻すには至らず。うるう
年による押し上げがあったことも考慮すると、消費回復の鈍さは変わらないとの評価
◯ 4月は、熊本地震が企業の景況感を下押し。もっとも、少なくとも4月時点では、マインド悪化の全国的な広がりは回避
‧ 景気の現状判断DI(景気ウォッチャー調査)を過去の震災時と比較すると、今回の熊本地震では、震源地の九州地方が
新潟県中越沖地震時の東北地方(新潟含む)よりも悪化。ただし、震源地以外の景況感は、ほぼ横ばいにとどまる結果
【 景気の現状判断DI(景気ウォッチャー調査、
過去の震災時との比較) 】
【 実質GDP成長率の寄与度分解 】
(前期比、%)
3
(Pt)
実質GDP
成長率
2
公的需要
震源地
(Pt)
60
60
1
50
50
0
40
40
30
30
▲1
▲2
民間在庫投資
外需
家計
(消費+住宅)
▲3
▲4
20
10
地震
▲5
地震
0
Q2
Q3
2014
Q4
Q1
Q2
Q3
2015
(資料)内閣府「四半期別GDP速報」より、みずほ総合研究所作成
Q4
Q1 (期)
2016 (年)
中越沖地震
(07/7)
東日本大震災
(11/3)
熊本地震
(16/4)
20
10
民間設備投資
Q1
震源地以外
0
-3 -2 -1 0
1
2
3
(カ月)
-3 -2 -1 0
1
2
3
(カ月)
(注) 震源地は、中越沖地震と東日本大震災は東北(景気ウォッチャー調査では新潟は東北に
分類される)、熊本地震では九州とした。震源地以外は回答者数で加重平均して算出。
(資料) 内閣府「景気ウォッチャー調査」より、みずほ総合研究所作成
51
日本:地震の影響 -4~6月期の生産が1%Pt弱、個人消費が0.1%Pt下振れと想定
◯ 熊本地震により、2016年4~6月期の鉱工業生産は1%Pt弱押し下げられると想定
‧ サプライチェーンの毀損による自動車の生産停止分が約9万台。他の自動車部品への波及も想定すると、2016年4~6月
期の生産下振れは1%Pt弱と試算される
――― ただし、依然として余震活動が続いているため、更なる下振れリスクは残存。他方、5月以降の挽回生産により、
生産下振れ幅は想定より抑制される可能性も
◯ 新潟中越沖地震時を参考に、今回の被災地のシェアを加味すると、4~6月期の個人消費は0.1%Pt程度下振れと試算
【 熊本地震の鉱工業生産への影響(試算) 】
【 九州各県の個人消費が全国に占める割合 】
(2010年=100)
101
震災影響勘案後
100
震災影響勘案前
99
98
97
2017
Ⅳ (期)
(年)
(参考)
北関東+新潟
(注)2016年Ⅱ期以降は、みずほ総合研究所予測値。
(資料) 経済産業省「鉱工業指数」などより、みずほ総合研究所作成
Ⅲ
東北
2016
Ⅱ
長野県
Ⅰ
新潟県
Ⅳ
福島県
Ⅲ
宮城県
Ⅱ
佐賀県
Ⅰ
宮崎県
2015
Ⅳ
大分県
Ⅲ
長崎県
Ⅱ
鹿児島県
Ⅰ
9.6
9.4
9.2
9.0
8.8
8.6
8.4
8.2
8.0
7.8
7.6
熊本県
94
4.0
3.5
3.0
2.5
2.0
1.5
1.0
0.5
0.0
福岡県
95
(%)
九州
96
(%)
(参考)
(注)九州各県と九州は2012年、宮城県、福島県、東北は2011年、新潟県、長野県、
北関東+新潟は2007年の名目ベースの値から算出。
(資料) 内閣府「県民経済計算」より、みずほ総合研究所作成
52
日本:個人消費の回復は当面緩慢に
◯ ①社会保険料の増加などに伴う可処分所得の弱さ、②耐久消費財のストック調整、③食料品を中心とした価格上昇と
いった要因が、引き続き個人消費の抑制に働く見通し
‧ 耐久消費財のストック調整については、足元で改善の兆しがみられるも、依然として調整局面を脱せず
◯ さらに、足元では、株安など金融市場の不安定化に加え、マイナス金利への悪印象が消費者マインドを下押しした可能性
‧ 金利水準DIをみると、1~3月期に「金利が低すぎる」という回答率が大幅に上昇した結果、DIは2006年以降の最低水準に
【 耐久消費財のストック循環図 】
(耐久財消費・前年比、%)
【 金利水準DI 】
(DI、「高すぎる」回答の割合-「低すぎる」回答の割合)
2010年
25
▲ 20
20
▲ 25
▲ 30
15
2016年1~3月期
10
▲ 35
5
▲ 40
2011年
0
▲5
▲ 45
▲ 50
2009年
2015年
▲ 10
▲ 55
▲ 15
0
2
4
6
8
10
(耐久財ストック・前年比、%)
(注) 2015年以降はトレンドで先延ばしした減耗率と耐久財消費の実績値を元に
ストックを算出。2016年は1~3月期の季調値を元に算出。
(資料)内閣府「国民経済計算」より、みずほ総合研究所試算
2006年9月調査
▲ 60
07/03 08/03 09/03 10/03 11/03 12/03 13/03 14/03 15/03 16/03
(年/期)
(資料) 日銀「生活意識に関するアンケート調査」より、みずほ総合研究所作成
53
日本:海外経済の回復の鈍さ、在庫調整圧力の残存から、当面景気は力強さに欠ける
◯ 消費増税後の落ち込みからの生産立ち直りの動きが、海外経済の減速によって下振れ。在庫調整圧力も残存しているた
め、景気は力強さに欠ける動きが続く見込み
――― 在庫調整局面にある財の割合は、足元でほぼ横ばい。また、在庫積み上がり局面の後期(在庫調整予備軍)にあ
る財の割合がやや上昇
【 生産指数と世界製造業PMI指数(四半期ベース) 】
【 在庫調整局面、積み上がり局面(後期)にある
品目(財)のウェイト推移】
(%)
(日本の生産、前年比、%)
10
60
8
50
積み上がり後期
在庫調整後期
在庫調整前期
6
40
4
2013年7~9月期
30
2
0
▲2
20
2016年1~3月期
消費増税による
生産減少
▲4
▲6
▲8
50.0
0
増税後の落ち込みからの立ち直りの動きが
海外経済の減速によって下振れ
50.5
51.0
51.5
52.0
52.5
2010
11
12
13
14
15
16
(年)
53.0
(世界の製造業景況感、DI、Pt)
(資料) 経済産業省、Markitより、みずほ総合研究所作成
10
(注)各業種の在庫調整局面にある品目ウェイトを加算。また、在庫調整局面のうち、
在庫伸び率が前年比プラスのものを「在庫調整局面前期」、マイナスのものを
「後期」と定義した。
(資料)経済産業省「鉱工業指数」より、みずほ総合研究所作成
54
Ⅳ.金融市場
~不透明要因が残存。円高地合いが日本株の重石に~
55
金融市場 ~ 英国国民投票など不透明要因が残存。円高地合いが日本株の重石に
○ 金融市場では、EU離脱を巡る英国国民投票や、年後半の米大統領選など不透明要因が残
存。日銀、ECBの追加緩和期待など政策期待が市場を下支えするも、2016年度中は株価は
上値が重く、長期金利は低位での推移を予想
○ 日銀は物価基調の改善シナリオが維持できず、年内に「質」、「量」に重点を置いた追加緩和
を実施すると予想。ドル円相場は、米利上げ先送りに伴う米長期金利の低迷などから、円高
ドル安地合いがしばらく続く見通し。日本株は政策期待が下支えするも、円高に伴う企業業
績の下振れリスクなどから、2016年度中は上値が重い展開
○ 国内長期金利は、日銀のマイナス金利政策を受け低位での推移が続くと予想。2017年度以
降、株価は緩やかに上昇すると予想するも、金利上昇は限定的となる見込み。市場の流動
性が低下する中、政府の消費増税判断や、海外金利の変動、日銀追加緩和などでボラティリ
ティが高まるリスクに留意が必要
56
金融市場:国内金利はマイナス圏での推移、米利上げ先送りで円高地合いが続く
【 金融市場の予測(2016年5月) 】
2015
2016
2017
2015
年度
年度
年度
10~12
2016
1~3
4~6
2017
7~9
10~12
1~3
4~6
2018
7~9
10~12
1~3
日本
無担保コールO/N
ユーロ円TIBOR
金利スワップ
新発国債
日経平均株価
(末値、%)
0~0.1
▲ 0.05
▲ 0.05
0~0.1
0~0.1
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
(3か月、%)
0.16
0.06
0.06
0.17
0.13
0.07
0.06
0.06
0.06
0.06
0.06
0.06
0.06
(5年、%)
0.17
▲ 0.01
▲ 0.06
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
▲ 0.05
0.00
0.17
▲ 0.05
▲ 0.04
(10年、%)
0.30
▲ 0.08
▲ 0.09
0.31
0.06
▲ 0.10
▲ 0.10
▲ 0.10
▲ 0.10
▲ 0.10
▲ 0.10
▲ 0.10
▲ 0.05
(円)
18,841
16,100
16,800
19,053
16,849
16,400
15,700
16,000
16,300
16,500
16,700
16,900
17,200
0.25~0.50 0.50~0.75 1.00~1.25
米国
FFレート
(末値、%)
0.25~0.50
0.25~0.50
0.25~0.50
0.25~0.50
0.25~0.50
0.50~0.75
0.50~0.75
0.75~1.00
0.75~1.00
1.00~1.25
新発国債
(10年、%)
2.12
1.83
2.05
2.20
1.91
1.80
1.80
1.80
1.90
2.00
2.00
2.10
2.10
(ドル)
17,298
17,400
18,000
17,483
16,636
17,600
17,100
17,400
17,500
17,800
17,900
18,200
18,200
ECB主要政策金利
(末値、%)
0.02
0.00
0.00
0.05
0.02
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
0.00
ドイツ国債
(10年、%)
0.53
0.17
0.28
0.56
0.32
0.13
0.10
0.20
0.25
0.25
0.25
0.30
0.30
(円/ドル)
120
107
111
121
115
108
105
106
108
109
110
112
113
(ドル/ユーロ)
1.10
1.16
1.14
1.08
1.10
1.15
1.18
1.17
1.16
1.15
1.15
1.14
1.13
(ドル/バレル)
45
47
47
42
34
46
48
48
45
45
47
48
49
ダウ平均株価
ユーロ圏
為替
ドル・円
ユーロ・ドル
WTI原油先物価格
(注) 網掛けは予測値。予測値は期中平均。但し、無担保コールO/N、FFレート、ECB主要政策金利は期末値。
ユーロ円TIBORは360日ベース。スワップ5年は6カ月LIBORに対する固定金利払。為替相場はニューヨーク終値ベース。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
57
米金利:国内外米国債需要を背景に上昇が抑制された展開が続く見通し
◯ 米10年国債利回りは、世界経済の先行き不透明感が残存する中、低位での推移が続く
‧ 非製造業を中心とした米国経済の底堅さがみられる一方、世界的な製造業の回復の弱さなどから世界経済の先行き
不透明感は残存。米10年国債利回りは、利上げを巡る思惑から上下に振れつつも、2%割れの水準が継続
◯ 米国経済の回復に伴い米金利の緩やかな上昇を見込むが、国内外の米国債需要の高まりから金利の上昇幅は限定的
‧ 間接入札比率は上昇傾向が続いており、海外での米国債需要の高まりを示唆。日欧の金融緩和の影響もあり、当面は
米国債利回りは上昇しづらい環境が続くとみられる
【 米10年国債利回り 】
【 米国債の間接入札比率 】
(%)
(%)
2.4
5年国債
70
2.5
2015年12月に利上げ
10年国債
30年国債
60
2.3
2.2
50
2.1
40
2.0
1.8
20
1.7
10
1.6
1.5
15/10 15/11 15/12
海外需要の
高まりを示唆
30
1.9
2%割れが継続
16/1
16/2
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
16/3
16/4
16/5 (年/月)
0
2007
08
09
10
11
12
13
14
15
16 (年)
(注) 12カ月移動平均値。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
58
円金利:10年国債利回りはマイナス圏での推移が続く見込み
◯
‧
‧
◯
‧
‧
10年国債利回りは日銀のマイナス金利政策導入後、▲0.1%前後での推移
超長期国債利回りは過去最低水準に低下。日銀の追加緩和期待が金利上昇を抑制
円調達コスト低下に伴う海外投資家の日本国債投資も引き続き金利押し下げ要因に
当面マイナス圏での推移を予想。政府の消費増税判断や日銀追加緩和期待への思惑などでボラティリティが高まり易い
CDSプレミアムは低水準にあるが、政府の消費増税再延期に伴う格付機関の動向などに注視が必要
市場流動性が低下する中、日銀の国債買入れが困難との見方が強まれば市場が変動する可能性があり注視が必要
【 日本国債:イールドカーブ 】
【 CDSプレミアム 】
(%)
(bp)
1.5
0
▲ 10
1.2
▲ 20
▲ 30
0.9
0.6
差(右目盛)
2016/1/28
2016/5/13
0.3
▲ 40
(bp)
80
増税先送り
(2014年11月18日)
70
60
日本
50
▲ 50
▲ 60
40
▲ 70
30
米国
▲ 80
0.0
▲ 90
▲ 100
▲ 0.3
1年 2年 3年 5年 7年 10年 15年 20年 30年 40年
20
ドイツ
10
1
3
2014年
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
5
7
9
11
1
3
2015 年
5
7
9
11
1
2016年
3
5
(月)
(注) 5年物CDS。
(資料) Bloombergより、みずほ総合研究所作成
59
【経済予測チーム】
武内浩二
小林公司
・米国/欧州経済
小野 亮
風間春香
吉田健一郎
松本 惇
・アジア経済
大和香織
玉井芳野
・日本経済
徳田秀信
有田賢太郎
小西祐輔
宮嶋貴之
松浦大将
川口 亮
(全体総括)
(新興国)
03-3591-1244
03-3591-1379
[email protected]
[email protected]
(総括)
(米国)
(欧州)
(欧州)
03-3591-1219
03-3591-1418
03-3591-1265
03-3591-1199
[email protected]
[email protected]
[email protected]
[email protected]
(総括)
(中国)
03-3591-1368
03-3591-1367
[email protected]
[email protected]
(総括)
(雇用・物価)
(企業)
(個人消費)
(外需)
(政府・住宅)
03-3591-1298
03-3591-1419
03-3591-1294
03-3591-1434
03-3591-1435
03-3591-1243
[email protected]
[email protected]
[email protected]
[email protected]
[email protected]
[email protected]
03-3591-1197
[email protected]
03-3591-1249
03-3591-1420
03-3591-1242
[email protected]
[email protected]
[email protected]
・新興国経済/原油価格
井上 淳
・金融市場
野口雄裕
(総括)
大塚理恵子 (内外株式)
坂中弥生
(海外金利)
本資料は情報提供のみを目的として作成されたものであり、取引の勧誘を目的としたものではありません。本資料は、弊社が
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りません。本資料のご利用に際しては、ご自身の判断にてなされますようお願い申し上げます。
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