Page 1 Page 2 児玉 晴香 氏の学位論文審査の要旨 論文題目 ラット反

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Kumamoto University Repository System
Title
ラット反回神経再建にともなう甲状披裂筋内筋衛星細胞
活性動態ならびにMyoD発現動態に関する研究
Author(s)
児玉, 晴香
Citation
Issue date
2016-03-25
Type
Thesis or Dissertation
URL
http://hdl.handle.net/2298/34546
Right
児 玉
晴 香
氏 の 学 位 論 文 審 査 の 要 旨
論 文題 目
ラ ッ ト反 回 神 経 再 建 に と もな う 甲状 披 裂 筋 内筋 衛 星 細 胞 活 性 動 態 な らび にMyoD発 現 動 態 に 関 す る研 究
(Modulation
after
of Satellite
Reccurent
Cells
Laryngeal
Activity
Nerve
and
MyoD
in Rat
Thyroarytenoid
Muscle
Reinnervation)
声 帯 麻痺 患 者 の 声 帯 筋 萎 縮 を改 善 す る頸 神 経 ワナ を用 いた 神 経 再 建 手 術 は 、 良好 な術 後 発 声 機 能 の獲 得 に
有効 で あ る 。 しか しな が ら、 神 経 再 支 配 処 置 後 に 筋 再 生 が 不 十 分 で 、音 声 改 善 が 乏 しい症 例 が 存 在 す る 。神
経 再 支配 後 の 筋 再 生 効 果 の 改 善 を 目指 し、筋 再 生 の 基 本 的 な 機 序 を明 らか にす るた め 、幹 細 胞 と して筋 組 織
再 生 能 を有 す る筋 衛 星 細 胞 と 、Myogenicregulatoryfactor(MRF)フ
果 た す転 写 因子 で あ るMyoDお
ァ ミ リー と して 筋 再 生 に重 要 な役 割 を
よび そ の 陽 性 細 胞 に着 目 し、研 究 を行 った 。筋 再 生 過 程 に お け る これ ら細 胞 の
動 態 を調 べ る た め 、 本 研 究 で は 、 ラ ッ ト反 回神 経 切 断 後 に 神 経 再 建 処 置(端 端 縫 合)を 行 い 、 甲状 披 裂 筋 に お
け る筋 衛 星 細 胞 の活 性 化 動 態 とMyoDの 発 現 変 化 に つ い て評 価 し、さ らに 、神 経 筋 接 合 部 の 再 生 と筋 断 面積 の
変 化 との 関連 性 も検 討 した 。 これ らの結 果 を、 神 経 再 建 処 置 を行 わ なか っ た脱 神 経 群 の 結 果 と比 較 した 。
ウ ィス タ ー 系 ラ ッ ト(n=132)を
脱 神経 群(n=60)、
神 経 縫 合 群(n=60)、
コ ン トロー ル 群(n=12)
の3群 に分 け 、処 置 後3日 、1週 、3週 、5週 後 に喉 頭 を摘 出 し以 下 の解 析 を行 った 。脱 神 経 群 、神 経 縫 合 群
の う ち 各40匹
M-cadherinお
ぞれ20匹
お よ び コ ン トロー ル 群 全 て の 処 置 側 甲 状 披 裂 筋 に つ い て 筋 衛 星 細 胞 の マ ー カ ー で あ る
よびMyoDのrRNA発
現 量 を リア ル タ イ ムPCRで 評価 した 。 ま た 、脱 神経 群 、神 経 縫 合 群 の それ
に つ い て 、M-cadherinとMyoD免
疫 染 色 陽 性 細 胞 の 出現 、α一bungarotoxin染 色 陽性 ・synaptophysin
免疫 染色 陽性 の神 経 筋 接 合部 の存 在 、 お よび 甲状 披 裂 筋 の 断 面 積 を組 織 学 的 に評 価 した 。
脱 神 経 群 で は 、観 察 期 間 全 て で 、M-cadherin、MyoDと
上 昇 した(p〈0.05)。
もに.,発
一 方 、神 経 縫 合 群 で は 、 処 置 後1週
現 量 が コ ン トロー ル 群 に対 して 有 意 に
ま で は 、脱 神 経 群 と 同様 にM-cadherin、MyoD
のmRNA発 現 量 が コ ン トロール 群 に 対 し有 意 に 上 昇 した が(P〈0.05)、3週
以 降 で は、 両 者 と も コ ン トロー
ル と有 意 差 の無 い程 度 ま で 減 少 した 。 免 疫 染 色 の 結 果 も 同様 な 推移 を示 した 。 ま た 、 神経 縫 合 群 で の み 、処
置 後3週 以 降 で 、 神 経 筋 接 合 部 の 再 生 を認 めた 。 筋 断 面積 は 、神 経 縫 合 群 の処 置 後5週 で 、 非 処 置 側 と有 意
差 の無 い程 度 ま での 回復 を認 め た 。
ラ ッ ト甲状 披 裂 筋 に お い て 、脱 神 経 後 にM-cadherinとMyoDの
置 後3週
発 現 上 昇 が み られ た 。 神 経 縫 合 群 で は、 処
で この上 昇 が 抑 え られ 、 同 時期 に 神経 筋 接 合 部 の 再 生 が 観 察 され た こ とか ら、 両 現 象 の 関 連 が 示 唆
され た 。脱 神 経 後 に 活 発 とな って いた 筋 線 維 新 生 が 神 経 再 支 配 に よ って有 効 な 筋再 生 に つ な が り、 筋 衛 星 細
胞 の活 性 化 や筋 芽細 胞 の 反 応 が 沈 静 化 した もの と考 え られ た 。 臨 床例 へ の 応 用 と して 、神 経 再 支 配 処 置 に 合
わ せ て 、IGF-1な どの成 長 因子 を投 与 す る こ とに よ って 筋 衛 星 細 胞 の 活 性 化 、MyoDの 発 現 上 昇 を促 進 し、 甲
状 披 裂 筋 の 筋 再 生 を促 進 し、声 帯麻 痺 患 者 の 声 帯 萎縮 を予 防 す る こ と も出 来 る と考 え られ た 。
本 発 表 に 対 して 、1)実 験 動 物 の 数 や 雌 雄 差 、2)神 経 縫 合 の 成功 率 、3)神 経 再 生 と筋 再 生 の 関係 、4)神
経 再 生 と声 帯 の 運 動 性 の 関連 、5)筋 再 生 の評 価 法 、5)筋 衛 星細 胞 マ ー カ ー のM-cadherinの
機 構 、6)筋 衛 星 細 胞 が消 費 され る機構 、7)MyoD以
胞 で の シ グナ ル 伝 達 経 路 、9)iPsや
機 能 や 発現 制 御
外 の 転 写 因子 の 関与 、8)神 経 再 生 に伴 って起 こ る筋細
間 葉 系 幹 細 胞 に よ る研 究 との 比較 、10)IGF-1の
標 的 細 胞 やIGF受
容体
の分 布 、11)声 帯 麻 痺 に 対 し神 経 再 建 術 を受 けた 患 者 の 予 後 因子 、 な どの 質疑 が 行 わ れ 、 申請 者 か らは 適 切
な 回答 が 得 られ た 。本 研 究 は 、 声 帯 麻痺 患 者 へ の 神 経 再 建 術 に よ る筋 再 生 と神 経 再 支 配 に 関す る 実験 的 研 究
で 、神 経 再 建 の重 要 性 と筋 衛 星 細 胞 、 筋 芽 細 胞 の 動 態 を明 らか に した研 究 で あ り、声 帯 麻 痺 の 治療 改 善 を 目
指 した基 礎 的 な研 究 と して 、学 位 論 文 に相 応 しい と判 断 され た 。
審査委員長 機能病理学担当教授
伊
課
謄
マ爲