添付1 - 中野区医師会胸部レ線読影会

第141回 胸部レ線読影会
紹介症例を中心に(神経内分泌腫瘍と肉芽腫疾患)
東京警察病院呼吸器内科部長:丸茂一義先生
今回は肺の神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor NET)3症例とサルコイドーシス&結核3症
例でした。
症例1は、75歳男性で右下葉の小細胞癌
です。1年間で急速に大きくなっています。
症例2は、56歳男性で右下葉の大細胞神経内分泌癌です。5年間で徐々に大きくなっています。
症例3は、36歳女性で左下葉のカルチノイドです。
画像上は肺腺癌や
平上
皮癌に比べ、(卵)円形や
分様化を呈することが多
く、辺縁境界明瞭で内部
が充実し、周囲に接する
気管支・血管を取り込ま
ず圧迫するように育ちま
す。
肺NETは、発生学的に未熟な段階の神経外肺葉系細胞・組織に類似した形態、あるいは正常の神
経内分泌細胞に類似した形態を模倣し、類器官胞巣、柵状、島状、リポン状、ロゼット様構造の
像を呈します。肺NETは、well-differentiatedである低悪性度の定型カルチノイド(G1)、中間悪性
度の異型カルチノイド(G2)、poorly-differentiatedである高悪性度の大細胞神経内分泌癌
(LCNEC)(G3)と小細胞癌(SCLC)(G3)に分類されます。
WHO2010はNETの分類を細胞分裂とKi67の2項目で分けています。細胞分裂が2未満/10HPF
がG1、2 20/HPFがG2、21以上/10HPFがG3であり、Ki67が2%以下がG1、3 20%がG2、20
%より多いのがG3としています。
神経内分泌マーカーはNET診断に重要な染色ですが、単独で十分な感度と特異性をもたないので
chromogranin A、synaptophysin、NCAM(CD56)などを複数組み合わせて判断します。また
LCNEC、SCLCではTTF1陽性のことが多く有用です。
症例4は47歳男
性でうっ血性心
不全で入院した
患者で、心不全
の治療後も
snowball様の多
発陰影が残り、
TBLBでサルコイ
ドーシスと診断
されました。
症例5は38歳男性で縦隔肺門
リンパ節腫大が見られ、やは
りサルコイドーシスと診断さ
れました。
症例6は48歳男性で左上葉
に小結節の集合像と肺門縦隔
のリンパ節腫大、腹腔内リン
パ節腫大を認め、HIV陽性者
のAIDS患者の結核症でした。
肉芽腫を作らないAIDS患者
における結核の画像診断で多
い所見は、縦隔リンパ節腫脹、
非典型的陰影、粟粒陰影で、
逆に少ない所見は空洞化、気
管内播種、結節、コンソリデー
ション、気管支壁肥厚、初感
染パターンです。
フロアーからは3症例提示されました。
35歳男性は3年でぶり返す胸痛が主訴でした。肺塞栓を疑いましたがATⅢ、プロテインC,S、抗
リン脂質抗体症候群などの凝固能異常や、薬剤性SLE、漿膜炎発作を繰り返す家族性地中海熱も
鑑別が必要との事でした。
82歳男性は健診のレ線で下行大動脈シルエット陽性の為CTを撮った所S10に腫瘤影があり炎症か
腫瘍か迷うものでした。
横隔膜向かいに扇状に広がったりindentが厚い感じは炎症ぽいが、毛羽立ちっぽい引き連れは
adenoぽい感じです。
72歳女性は20年来落ち着いていた非結核性抗酸菌(NTM)で急に陰影が変化した症例です。CTで
は新しい陰影もNTMで間違いなさそうですがストレスなどで急性憎悪する例があるので注意が必
要です。
山本博之