楽読 (ラクヨミ) 2016年5月18日 Vol. 1,103 中国の構造改革と近隣アジア諸国への影響 ~中国を除くアジアの成長率は加速へ~ IMF(国際通貨基金)は、中国で進む構造改革の影響や世界景気の回復力の鈍さなどから、アジアの経済成 長率が2016年に前年比+5.3%に鈍化し、17年は横ばいにとどまると予想しています。米国に次ぐ世界第2位 の経済大国となった中国では、経済を投資・輸出主導から消費・サービス主導へ移行させ、持続可能な成長を 実現すべく、構造改革が続けられています。その影響などから、中国の成長率は足元で鈍化しているものの、 水準自体は高く、世界経済の成長にとって大きな原動力となっています。ただし、同国の構造改革は、中長期 的には世界全体にプラスながら、短期的には近隣アジア諸国にマイナスの影響を及ぼすとみられています。 貿易面では、中国の投資に関連する分野の財・サービスを多く輸出しているような、韓国や台湾などに悪影 響が見込まれる一方、消費財の輸出が多いニュージーランドなどには恩恵が期待されます。なお、資源などの 一次産品(商品)については、中国での構造改革の影響で需要が鈍っているケースもあるものの、需要減より も市況下落に伴なう影響の方が大きくなるとみられています。ただし、足元では主要商品の市況に下げ止まり ないし持ち直しの動きがみられるようになっています。また、株式や為替といった金融面での中国の影響につ いても、貿易面での結び付きの強い、韓国、台湾、香港などへの影響が考えられるほか、中国での出来事を契 機に投資家のリスク回避の動きが強まるような局面では、日本などにも大きな影響が及ぶ可能性があります。 一方、貿易・金融両面で中国との関係が比較的弱いインドの場合、影響は限定的とみられます。 アジア経済は、良好な労働市場と所得の堅調な伸び、低インフレ、いくつかの国での景気刺激策の効果など を背景に、個人消費を中心とする内需が引き続き拡大するとみられることなどから、主要地域の中で最も成長 率が高く、世界経済を牽引すると期待されています。しかも、中国を除くと、アジアの成長率は加速見通しとなっ ています。同国の構造改革やそれに伴なう景気減速からの影響には注意が必要ながら、先進国から新興国ま で、さらに、工業やサービスに強い国から資源に強い国まで、様々な特徴をもった国が混在するアジアの魅力 は依然として高く、中国絡みの懸念だけを理由にアジアへの投資を見送ることは得策でないと考えられます。 IMFの経済成長率見通し(2016年4月時点) 中国の構造改革の影響の主な波及経路 世界 先進国 新興国 アジア アジア( 除く中国) オーストラリア ニュージーランド 日本 香港 韓国 台湾 シンガポール 新興アジア 新興アジア(除く中国) 中国 インド インドネシア マレーシア フィリピン タイ ベトナム 13年 3.3 % 1.2 % 4.9 % 5.7 % 4.3 % 2.0 % 1.7 % 1.4 % 3.1 % 2.9 % 2.2 % 4.7 % 7.0 % 5.9 % 7.7 % 6.6 % 5.6 % 4.7 % 7.1 % 2.7 % 5.4 % 14年 3.4 % 1.8 % 4.6 % 5.6 % 4.3 % 2.6 % 3.0 % 0.0 % 2.6 % 3.3 % 3.9 % 3.3 % 6.8 % 6.1 % 7.3 % 7.2 % 5.0 % 6.0 % 6.1 % 0.8 % 6.0 % 15年 16年(予) 17年(予) 3.1 % 3.2 % 3.5 % 1.9 % 1.9 % 2.0 % 4.0 % 4.1 % 4.6 % 5.4 % 5.3 % 5.3 % 4.2 % 4.4 % 4.6 % 2.5 % 2.5 % 3.0 % 3.4 % 2.0 % 2.5 % 0.5 % 0.5 % -0.1 % 2.4 % 2.2 % 2.4 % 2.6 % 2.7 % 2.9 % 0.7 % 1.5 % 2.2 % 2.0 % 1.8 % 2.2 % 6.6 % 6.4 % 6.3 % 6.2 % 6.3 % 6.5 % 6.9 % 6.5 % 6.2 % 7.3 % 7.5 % 7.5 % 4.8 % 4.9 % 5.3 % 5.0 % 4.4 % 4.8 % 5.8 % 6.0 % 6.2 % 2.8 % 3.0 % 3.2 % 6.7 % 6.3 % 6.2 % 商品市況経由* インド ニュージーランド フィリピン オーストラリア インドネシア マレーシア タイ ベトナム 貿易経由** 韓国 シンガポール 台湾 日本 金融経由*** * 一次産品、鉱物などの商品(コモディティ)の純輸出国 ** 中国向けの最終財輸出の付加価値がGDP比4%超の国 ***中国・香港向け金融債権がGDP比10%超の国、投資家の 世界的なリスク回避の動きに金融市場が敏感に反応する国 ※上記はイメージであり、実際と異なる場合があります。 ※上記は過去のものおよび予想であり、将来を約束するものではありません。 出所:いずれもIMF ■当資料は、日興アセットマネジメントが市況等についてお伝えすることを目的として作成したものであり、特定ファンドの勧誘 資料ではありません。また、弊社ファンドの運用に何等影響を与えるものではありません。なお、掲載されている見解は当資料 作成時点のものであり、将来の市場環境の変動等を保証するものではありません。■投資信託は、値動きのある資産(外貨建 資産には為替変動リスクもあります。)を投資対象としているため、基準価額は変動します。したがって、元金を割り込むことが あります。投資信託の申込み・保有・換金時には、費用をご負担いただく場合があります。詳しくは、投資信託説明書(交付 目論見書)をご覧ください。 1/1
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