BETAスレイヤー ID:84985

BETAスレイヤー
葉川柚介
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小説の作者、
﹁ハーメルン﹂の運営者に無断でPDFファイル及び作
品を引用の範囲を超える形で転載・改変・再配布・販売することを禁
じます。
︻あらすじ︼
BETA抗争で家族や想い人、仲間を殺された因果導体、白銀武。
再び別の並行世界に呼び寄せられたそのとき、謎のニンジャソウル
が憑依。
一命を取り留めたタケルは﹁BETAスレイヤー﹂││BETAを
殺す者となり、復讐の戦いに身を投じる
※この作品はArcadia様にも掲載しています。
ETAの死闘が始まった。
絶望に蝕まれた近未来の地球を舞台に、BETAスレイヤーVSB
!
目 次 BETAスレイヤー │││││││││││││││││││
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ ││││││
1
14
BETAスレイヤー
並行世界。
それは近くて遠い、世界そのものの合わせ鏡。
ひとたびその境界を越えれば何かが変わる。見慣れた景色、見知っ
た人たち。しかしそれらは全く別の物で、モンスターを振り子の振れ
幅にしたりレベルを足し算したり重ねたり融合したりと変わり果て
る。
それが並行世界。
たとえ観測することはできなくとも、ここではないどこか、ここに
似ていて、だがどこか違う世界というのは、確かにあるのだ。
通常ならば、それを知ることはできない。何人たりとも、観測する
ことはできない。
しかし何事にも、例外はある。
1
﹁純夏⋮⋮冥夜⋮⋮みんな⋮⋮﹂
無限に連なる並行世界のただ中を漂う一つの意思がある。世界を、
自分を救ってほしいという声に導かれ、数多ある世界を旅してきた
魂。たどり着いた世界に己の宿命を呼び込むそれを、それ自身のかつ
ての恩師は﹁因果導体﹂と呼んだ。
だが、そんなものが何になる。大切だった、だが守れなかった人た
ちの名を呟きながら、形を持たない歯が噛みしめるのは、ただ己の無
力のみ。世界を変えることはできても救うことはできなかった、生き
地獄のような幾多の生の記憶だ。
││
が故に大切なものを助けられない弱さを。もっと力があれば。⋮⋮
魂は呪った。自分の宿命を。戦い続けなければならず、しかし無力
を求める声に導かれるまま、再び絶望と戦いの渦へと。
そんな因果導体の魂がまた、ひとつの世界に引き寄せられる。自分
﹁⋮⋮呼ばれ、てる﹂
!
奴らを殺しつくせる力があれば。そのためなら、この魂全てを復讐に
捧げることすらいとわないのに。
何度願ったか知れない、世界の狭間にただ掻き消えるべきその祈
り。
││だがこの時、その願いを感じ取ったソウルがあった
︵︵︵オヌシ、力が欲しいか︶︶︶
﹁⋮⋮力﹂
つ。為すべきことは一つ︶︶︶
﹁為すべきこと⋮⋮たった一つ⋮⋮BETA、殺すべし
﹂
︵︵︵ウ ム。な ら ば 我 が ソ ウ ル と 一 体 と な れ。今 よ り 我 ら の 願 い は 一
﹁⋮⋮力が、欲しい。たとえ⋮⋮魂と引き換えにしてでも﹂
て全ての敵を殺してしまいたいと願う⋮⋮怒り
体にもわかる。そのソウルが持つ悲しみと絶望、憎しみと悔恨。そし
声はジゴクめいた響きで語りかける。魂しかない今ならば因果導
!
﹁ム⋮⋮﹂
◇◆◇
﹂
全ての世界を震わせる、カラテシャウトと共に
﹁Wasshoi
界の中の一つ、絶望渦巻く世界へと勢いよく舞い降りる。
二つのソウルは混じり溶け合い、黄金立方体が照らす数多の並行世
!!
に体の奥へと消えていく感覚。見慣れたはずの自室で目を覚ました、
かつて白銀武であった男は自分の体にみなぎる圧倒的なカラテの力
を感じていた。
﹁鏡⋮⋮鏡はどこだ﹂
自身の変化を確認するため、彼は部屋の中を見渡す。この部屋の様
子が勝手知ったるものであったのは、並行世界を渡る宿命を持つよう
になる前の話。どこに鏡があったかを思い出すのにすら難儀するこ
2
!
むくり、と身を起こす。頭痛と吐き気がわずかに残り、しかしすぐ
!
!
とにわずかな寂しさを感じながら、しかし体が覚えていたかのように
すぐに見つけた身だしなみを整えるそれに、姿を映す。
そこにいたのは、ニンジャであった。
カラテによって鍛え上げられた精悍な肉体。幾多のイクサを潜り
コ
抜けて鋭く光を放つ目。赤黒のニンジャ装束。そして顔を覆う﹁BE
TA﹂
﹁殺﹂と書かれたメンポ。それは紛れもないニンジャの証
ワイ
﹁やはり⋮⋮か。行くとしよう。時間が惜しい﹂
るものか。
◇◆◇
﹁⋮⋮ん、なんだあれ
﹂
﹁誰か、近づいてきてるのか
﹂
なものを踏みにじったものへの怒りを激しく燃やす。この怒り、忘れ
はしない。ほんの一時だけ景色を見つめ、目に焼き付け⋮⋮彼の大切
つい口をついて出た言葉は、メンポの中にこもって誰の耳にも届き
﹁⋮⋮インガオホー﹂
にある。
と荒れ果てた街並み。まさに、古事記に記されたマッポーの世がそこ
込むのは糸が切れたジョルリめいて動かないハイ・テックなロボット
界とつながりを持ち、瞬く間に朽ちる景色。扉を開ければ、家に倒れ
だから彼は迷うことなく家を出る。部屋を一歩出た時から、外の世
となく自嘲した。世界の狭間で、涙が枯れ果てるほどに。
いまだ白銀武と呼べる部分が残っているかすら怪しいものだと、何度
わったからなんだというのだ。魂は幾度とない戦いの中ですり減り、
しかし彼は変わった自分の在り方に悩まない。今更姿の一つが変
!
基地に近づく何かを見つけた。
めの研究を進める香月夕呼の根城たるこの基地の門番二人は、その時
さらうという暗黒メガコーポめいた方法を使い、しかし世界を救うた
国連軍横浜基地、正門前。女狐の狡猾さをもって絶大な権力をかっ
?
?
3
!
荒れ果てた荒野と化した道を黙々と歩いてくる人影。どこから現
れたのか、その歩みは間違いなく彼らのいる基地を目指している。門
を守る彼らは、その存在に警戒もあらわにする。こんなところに、事
﹂
前の連絡もなく、徒歩で近寄ってくる者などおよそまともではありえ
ないからだ。
﹂
で、でもまさか⋮⋮あれは
﹁お、おい⋮⋮なんだあれ
﹁俺に聞くな
!
!?
彼方から威圧の風を轟かせる⋮⋮ニンジャなのだ
サツバツたる異様から漂うジゴクめいたアト
!
頼みたい﹂
﹂
ニンジャナンデ
﹁アイエエエエエ
﹁ニンジャ
!
﹂
!?
﹁ドーモ、BETAスレイヤーです。⋮⋮香月副指令への取り次ぎを
る
モスフィア。間違えようのないニンジャの姿に、二人は心底震え上が
ナムアミダブツ
!
覆うメンポに刻まれた﹁BETA﹂
﹁殺﹂の禍々しいショドーがはるか
ンジャ装束に身を包み、マフラーめいたぼろ布を風になびかせ、顔を
その人影が近づくにつれ、彼らの間に動揺が走る。人影は赤黒のニ
!
しめやか
?
しかしこの兵士たちは逃げない。
!
BRATATATA
引き金が引かれ、大量の弾丸がB
!
﹁イヤーッ
﹂
ETAスレイヤーめがけて吐き出されたのだ
伸びる
しかし、悲劇は起こる。怯え震える兵士の指が、なんとトリガーに
命感は彼らの足を縫いとめた。
持ち場を離れることによるケジメの恐怖も無論あったが、それでも使
に失禁することは確実であろう
る読者諸氏の前に、もしも突然ニンジャが現れたら⋮⋮
それも無理からぬことだ。ご想像いただきたい、日々を善良に生き
怖の叫びをあげるのみ。
届かない。両手に持った銃をがくがくと振るわせ突きつけながら、恐
しかしニンジャ・リアリティ・ショックのただ中にある門番の耳には
BETAスレイヤー、と名乗ったニンジャの奥ゆかしいアイサツ。
!?
!
!
!
4
!
BETAスレイヤーは流麗なブリッジで銃撃回避
そのまま五
!
﹂
﹂
兵士には傷一
連続バックフリップで距離を取り、ジグザグに走って狙いを外しなが
ら再び迫る
﹁イヤーッ
﹁アバーッ
そして暴れまわる銃を掴み、ニンジャ握力で粉砕
!
香月夕呼に会いに来た⋮⋮シロガネ・タ
つないが、二人そろってしめやかに失禁
﹁私は怪しい者ではない
﹂
ケルと伝えろ
!
A殺すべし。慈悲はない
◇◆◇
﹂
!
⋮⋮ほんとにぃ
?
﹁あれが⋮⋮白銀武
﹂
﹁私はもはや、誰かを守ることはできない。だから、せめて⋮⋮BET
の仲間達の、散っていった姿が去来し胸をえぐる。
がこの名を出さねば進めないと囁くのに従い使ったが、同時にかつて
ら、二度と使わない覚悟でいたかつての名前。並行世界を辿った記憶
がら、BETAスレイヤーの心は揺れる。あの家を一歩出たときか
腰が抜けたままおたおたと基地へ向かって行く兵士たちを眺めな
﹂
﹁ヨロコンデー
!
した。すると⋮⋮そこにたたずむのは、まさにニンジャであった
者たる彼女にとってニンジャの放つアトモスフィアとて冷静に観察
香月夕呼は、しかし驚きはしない。奇妙と思いはしても、天才科学
!
室から正門の様子を撮影しているゲキシン・ガーゴイルの映像を確認
を欲しいままにする自分をだます罠にしては杜撰に過ぎると考え、自
だがあまりにも荒唐無稽なその話、横浜基地副指令にして女狐の名
しまったか。そんな懸念を感じすらした。
熱中するあまり、うっかりバリキドリンクのオーバードーズでもして
夕呼は己が耳を疑った。世界を救うカギとなる00ユニット開発に
基地の正門におかしなニンジャがいる。その報告を聞いた時、香月
?
5
!
!
!
!? !
し、真実を導き出すための一要素とするのだ。タツジン
はすぐに痛感することになる。
﹂
﹁まあ、そんなことありえない⋮⋮っ
に、こっちを見た
な、何今の⋮⋮カメラ越し
⋮⋮それが、ニンジャへの無知からくるウカツであることを、彼女
しな輩だろうと、すぐに斬り捨てる。
描かれるようなニンジャの法則は適用されない。あれはただのおか
しかし、すぐに否定する。彼女の信じる科学に、コミックの世界に
りめいたインスピレーションが彼女のニューロンでスパークする。
るいはこのニンジャこそが00ユニット完成の鍵になるのでは。悟
ネ・タケル﹂という名のほうだ。その名を口にするということは、あ
それよりも彼女が気になるのはそのニンジャが名乗った﹁シロガ
!
﹂
!
る。かつての仲間たちと同じ207B分隊に配属され、衛士になるた
そして、夕呼に会ったBETAスレイヤーはすぐにも行動を開始す
◇◆◇
ての出会いは、直接相対することなく交わされた。
ず、言葉を発さず。世界を救う鍵となる二人のこの世界における初め
モニタ越しに見つめ合う夕呼とBETAスレイヤー。目をそらさ
﹃⋮⋮﹄
﹁⋮⋮﹂
り、睨みあげた。
し、基地のIRCネットワーク越しに自分を観察する視線を感じ取
BETAスレイヤーはその位置をニンジャ観察力によって見つけ出
ゲキシン・ガーゴイルのカメラの位置は秘匿されている。しかし、
!?
めの訓練に明け暮れる。全てはそう、BETAを殺すために
﹂
何を言っているの
﹁⋮⋮本当に、強い
﹁彩峰
!
6
!?
?
﹁⋮⋮オヌシ自身で確かめよ﹂
!?
﹁BE⋮⋮白銀も、挑発に乗ってどうするのよ
﹂
﹁イヤーッ
されることもあった。
﹂
BETAスレイヤーが見せる威圧的なアトモスフィアに、時に反発
!?
はどこに﹂
!
正確に射抜く
タツジン
﹁武。そなた、こんな時間に何を⋮⋮
﹂
﹁チャドーには、このような月夜がいい。スゥーッ
﹂
﹁ばっ、バカモノ あれはニンジャだぞ
ものか
ハァーッ
﹂
我々がどうにかできる
!
!
﹁⋮⋮月読中尉、放っておいていいんですか、アレ﹂
!
?
!
数百m離れた狙撃用の的を、BETAスレイヤーの放つスリケンが
﹁必要ない。イヤーッ
﹂
﹁えっと、それじゃあ狙撃訓練を⋮⋮って、あれ。白銀さん、ライフル
破る
彩峰のミリタリー・カラテをBETAスレイヤーのジュー・ジツが
﹂
﹁ンアーッ
!
!
!?
振りをされたりもした。
⋮⋮しかし、それだけか
り前の日々を過ごすだけの存在か
?
BETAスレイヤーは、BETAを殺すものは、本当にそんな当た
?
最近腹が痛くてしょうがない夕呼に呼び出された鎧衣課長が無茶
﹁あれと一緒にされるのはさすがに⋮⋮﹂
うが﹂
﹁ちょっと、何とかしなさいよ。あんただって似たようなもんでしょ
は着々と衛士への道を歩んでいく。
ワビ・サビの心を通し、冥夜との絆を紡ぎもし、BETAスレイヤー
!
7
!
!
﹁⋮⋮﹂
夜の隊舎に、静かに眠る影がある。そう、彼こそはBETAスレイ
ヤー。フートンに包まれ安らかに眠っている⋮⋮ように、この部屋の
様子を覗いたものがいれば誰もが思うだろう。
誰も気づかない。夜ごと基地への侵入者を警戒する漢字サーチラ
イトの光輪の隙間を抜けて、夜の闇へと消えていく赤黒の影があるこ
とを。
◇◆◇
新潟県、佐渡島。横浜基地からネオサイタマを抜け、中国地方を越
えたドサンコにほど近い地。現在日本に唯一のハイヴがそびえたつ、
BETAに支配された異形の大地。24時間体制で監視の目が向け
の衛士ならば誰もが知る﹁たくさん撃てば実際当たりやすい﹂という
有名なレべリオンハイクに従って、海から上がるたびにネギトロに変
えていく。
衛士たちが自らを鼓舞するために叫ぶ身も凍るような恐ろしさの
ヤクザスラングも高らかに、突如勃発したイクサは夜の闇に火花を散
らす。
だが、誰かが気付いていただろうか。
BETAたちがまるでなにかから逃げるかのように統制も何もな
い 動 き で 本 土 に 上 陸 し て き て い た こ と に。そ し て 戦 術 機 が 本 土 で
戦っているこの瞬間も、佐渡島上ではまるで同規模、いやそれ以上の
8
られるその地に、近頃奇妙な動きがあった。
日本海を挟んで本土側から観測を続ける帝国軍のレーダーに、毎夜
﹂
BETAの活発な動きが捕えられているのだ。
﹂
﹁ザッケンナコラー
﹁スッゾコラー
BRATATATATA
!
緊急発進した戦術機が本土に上陸したBETAを蹴散らす。日本
!
!
激しいイクサが行われているかのような光の明滅があることに。
﹁異常ないか﹂
﹁異常ない﹂
﹂
﹁ユウジョウ
広がる⋮⋮無数のBETAの死骸
﹁すげえ、まるでツキジだ﹂
!
﹁⋮⋮おい見ろ、あそこだ
﹂
彼らがついに見つけた異常 それは一面に
!
﹂
BETAの死骸は様々だ。闘士級から要撃級、突撃級、果ては要塞
報を転送。仲間を呼ぶとともに情報収集重点のボタンを押す。
二人は戦術機のIRCネットワークにすぐさま連絡を入れ、位置情
で⋮⋮
﹁ブードゥーめいてやがる。こんなに大量のBETAが、たった一晩
!
﹁おぉ⋮⋮ブッダ
﹂
その予想は、確かな現実として姿を現した。
違いない。それも、彼らの常識を飛び越えるような何かが。
れただけでも奇跡だということを考えれば、何かが起きていたのは間
今のところBETAの姿はない。ここまで当たり前のように来ら
ここまでのことが起きればそうはいかない。調査の必要がある。
た。これまではBETAの夜間活動で済ませることもできていたが、
に向かって照射されることすら起き、本土にまでBETAが上陸し
は誰も上陸していないはずの佐渡島からレーザー級のレーザーが空
連夜のごとくBETAが佐渡島上で不審な動きを見せ、まして昨夜
渡島の調査である。
と警戒して進む彼らに課せられた任務は、昨夜異常な動きがあった佐
立つ2機の戦術機があった。互いの背中を守り合いながらゆっくり
翌朝、往年のカチグミサラリマンめいた完璧な連携で佐渡島に降り
﹂
﹁ユウジョウ
!
ナムアミダブツ
!
!
9
!
?
級まで、ありとあらゆるBETAが死んでいる。死因とみられる痕跡
もまた多岐に渡る。体中穴だらけになったもの、ズタズタに切り裂か
れたもの、しめやかに爆発四散したもの。
もしこの中で唯一の共通点を見いだせるとするならば、いずれもが
﹂
殺戮者の果てしない怒りを感じるほどのネギトロになっていること
くらいである。
﹂
﹁⋮⋮なあ、こんな噂を聞いたことあるか
﹁噂
﹂
ものではないか
要塞級の甲殻に空いた無数の小さな穴は、連続カラテパンチによる
周りに散らばるBETAの死骸。
ようやく理解した。
はいないだろうか。衛士は相棒も決して正常な精神にはないことを
笑いをこらえているようだった相棒の声もまた、どこかひきつって
相棒の言葉に、衛士は喉元まで登ってきた言葉を飲み込んだ。
﹁おい、それじゃまるで⋮⋮﹂
だってよ﹂
て、生身なのに戦術機みたいに速くて⋮⋮顔にメンポをつけてたん
﹁まあ聞けって、続きがあるんだ。そのゴーストはな、赤黒い装束を着
うな
﹁⋮⋮まさか、そのゴーストがこれをやったって言うんじゃないだろ
の方へ向かって走っていく、赤黒い人影を﹂
﹁最近さ、見たってやつがいるんだよ。夜になるたび、本土から佐渡島
これが一番の近道なのだ。
精神、ヘイキンテキを保つため、チャドーを知らない彼らにとっては
得ることだが、今の状況ならば許されよう。衛士に求められる理想の
任務中の軽口。場合が場合ならばケジメはおろかセプクすらあり
?
たことによるものではないか
たのではないか
全ての脚をへし折られた要塞級は、なんらかのジツによって倒され
?
戦車級をバラバラにしている鋭利な切り傷は、スリケンが切り裂い
?
?
10
?
?
無数のBETAを一晩で、しかも戦術機の反応を感知させることな
く倒しきるからには、恐ろしいカラテのワザマエがなければなしえな
い。そんな力を持つ存在を、彼らは知っていないか。遥かな過去、平
安時代から日本人の遺伝子の中に、その存在が刻まれてはいなかった
か。
ニンジャ、という言葉は、最後まで二人の口をついて出ることはな
かった。
事後の報告書において、
﹁まるでニンジャのイクサの後のような﹂と
いう言葉は、一度書いた後に消して別の言葉に直され、提出された。
BETAスレイヤーのイクサは終わらない。この地上から、全ての
BETAを滅ぼすその日まで。走れ、BETAスレイヤー、走れ
﹁ドーモ、あ号標的=サン。BETAスレイヤーです﹂
11
◇◆◇
登場人物名鑑
BETAスレイヤー
り合い、珠姫の狙撃と同等の命中精度を誇るスリケンの腕によって
練を積んでいる。彩峰のミリタリーカラテや冥夜のイアイドーと渡
成に協力する傍ら、普段は207B分隊とともに衛士になるための訓
鋼鉄製メンポをつけ、ユウコ先生たちと共にオルタネイティブⅣの達
赤黒のニンジャ装束に﹁BETA﹂
﹁殺﹂と禍々しくショドーされた
たアトモスフィアを放つニンジャとなった。
マエ、人知を超えた多数のイクサを乗り越えたことによるジゴクめい
ろにニンジャソウルが宿ったことで、圧倒的なパワーとカラテのワザ
元々因果の流入による軍人として鍛えられた体を持っていたとこ
り、BETAが蠢く地球へと降り立った。
ルが憑依。それによりBETAを殺すもの、BETAスレイヤーとな
回も新たな世界に降り立とうとしていたが、その時謎のニンジャソウ
本名シロガネ・タケル。数多の並行世界を渡る因果導体であり、今
!
徐々に溶け込んでいっている。
夜な夜な基地を抜け出しては佐渡島に赴き、その名の通りBETA
を狩るサツバツとした日々を過ごしている。
コウヅキ・ユウコ
BETAスレイヤーの協力者、に半ば強制的にさせられる科学者。
紛れもない天才であるが、科学技術への造詣は深い一方でニンジャ科
学への無知がたたり、BETAスレイヤーが引き起こす数々の奇跡的
なカラテの前にニューロンが焼き付きそうになる。最近バリキドリ
ンクが手放せない。
目的のためなら犠牲をいとわず手段も柔軟に変えていける彼女の
美点は、幸か不幸か00ユニット完成のために必要な最後のピースを
自力で手に入れるに至る。00ユニットのボディを、ハイ・テックに
よって作り出したニンジャのボディにすればいい、というアンタイ
ブッダ的結論によって。
世界を救うために奔走しているが、同時にこの人がやらかしたこと
によってこの世界にもニンジャが生まれてしまったりする。
ヘイズシュライン
ヤシロ・カスミがBETAスレイヤーとの初対面時、ユウコ先生の
指示で彼をリーディングしたことで魂が変質し、ニンジャとなってし
まった存在。ニンジャとなったあとはBETAスレイヤーからのイ
ンストラクションを受け、素手でBETAをネギトロに変えられるほ
どのカラテを手に入れる。またニンジャになる前からのユニーク・ジ
ツであるドクシン・ジツが強化され、周囲の人、動物、機械を問わず
あらゆる意思を読み取り、また投影することが可能となった。
生まれ方が特殊なため彼女のニンジャソウルはどこのクランにも
属していないが、当人は勝手にウサギ・ニンジャクランのニンジャ、と
名乗っている。
セレンミラー
12
私は大丈夫、とか言っときながら実はばっちり遅効性のニンジャリ
アリティショックにやられていたユウコ先生により、00ユニットの
ボディはハイ・テックニンジャボディとなった。そのボディへとカガ
ミ・スミカのソウルが移される際、BETAへの凄まじい憎しみの感
情からニンジャソウルへと進化を遂げたことにより、実際ニンジャ存
在となって生まれた00ユニットニンジャ。
くまなくサイバネ化された体から繰り出されるテクノカラテと、L
AN直結することなしに電脳コトダマ空間にアクセスしてネット
ワークを掌握できるというヤバイ級ハッカーすら超越するハッキン
グ能力を持つ、極めて強力なニンジャ。ヒサツ=ワザは一撃でBET
Aスレイヤーを成層圏までかち上げるという噂のスゴイギンガパン
チ。
起動直後はBETAへの憎しみから暴走し、BETAスレイヤーに
止められなければ横浜基地の全施設と全戦術機部隊を壊滅させてい
ただろうと言われるほどの力を見せる。
唯一の欠点は、サイバネボディであるため定期的にスシを摂取しな
いと動けなくなること。
13
﹂
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
﹁敬礼
リーダーを務める者の合図とともに、居並ぶ新人が一斉に敬礼をす
る。緊張感にあふれるその敬礼は、堅苦しさを嫌う夕呼の直属部隊A
│01ではなかなか見られない物だ。そのことに初々しさを感じな
がらも、特殊任務部隊A│01、通称伊隅ヴァルキリーズの隊長を務
める伊隅みちるは微笑ましく思う。
今日はめでたい日である。なにせこの伊隅ヴァルキリーズに新任
が配属となる。激戦に次ぐ激戦で人員を減らし、新しく着任すること
となる彼女らにも辛い戦いばかりを経験させることになるだろうが、
それでも仲間が増える喜びは筆舌に尽くしがたい。彼女らを守り抜
き、いつか彼女らが自分たちを守ってくれるようになれば。今からそ
んな未来を望んでやまない。
﹂
﹁榊千鶴です。207B分隊では隊長を務めていました。よろしくお
願いします
シバシ鍛えていかねばなるまい。日本人としてはその顔付きにそこ
てかなり気になるところであるが、ともあれ彼女もまた新任としてビ
とんがっている髪型はどうやってセットしているのか同じ女性とし
凛とした雰囲気とは彼女のためにある言葉だろう。人知を越えて
戦いをご指導のほど、よろしくお願いいたします﹂
﹁御剣冥夜と申します。剣術は得意としていますが、改めて実戦での
くれれば良いと期待が膨らむ。
聞き及んでおり、それらが良い刺激となって優秀な指揮官に成長して
んじて着任した207A分隊の涼宮茜とはライバル関係にあるとも
見事合格に導いた指揮能力はA│01の面々も聞き知っている。先
ていた207B分隊を最終的には何とかまとめあげ、総合技術演習を
はもとより、政治的な思惑が複雑怪奇に絡み合って訓練が遅れに遅れ
げとメガネの少女が率先して名乗った。分隊内の人格的な相性の面
キビキビとした言葉遣いからも几帳面な性格が伝わってくる、おさ
!
はかとなくデジャヴを感じずにはいられないのだが、その辺は勤めて
14
!
気にしないようにすることが生き残るためのコツだ。
﹁彩峰慧。突撃前衛希望、です﹂
前二人と打って変わって不遜な態度を示す慧に対し、千鶴がさっそ
く横目で鋭い視線を向ける。この二人は207B分隊のころから犬
猿の仲であり隊の関係をぎくしゃくさせていたということだが、総合
技術演習までには互いを認め合うようになったという。不敵な顔付
きをどう料理してくれようかと、獰猛な笑みを浮かべているA│01
﹂
の現突撃前衛筆頭たる速瀬水月が喜びのあまり可愛がりすぎないよ
えーとえーと⋮⋮がんばりましゅっ
うに注意しなければならないだろう。
﹁た、珠瀬壬姫です
高く評価していた。
﹁鎧衣美琴です。精一杯がんばります
﹂
ようだが、仲間とともにその弱点を克服した精神をこそ、みちる達は
る狙撃の才能がある。あがり性の気質は完全にはなくなっていない
および、見てもわかることではあるが、彼女にはそれを補って余りあ
顔に侮りと失望の色はない。ドのつくあがり性というのは聞きしに
噛んだ。微笑ましさにほっこりしてしまうが、A│01メンバーの
!
今回の新任は、この5人だけではなく。
なる彼女らを受け入れる。受け入れているのだが。
⋮⋮初々しくも頼もしい、新任達。これから苦楽を共にすることに
の向上に大いに貢献してくれることだろう。
もつながる。身に着けたサバイバル能力の高さも含め、部隊の生存力
面で発揮されるようだが、それは常に自分を見失わないという長所に
全くないのはただ一人、美琴のみだ。マイペースな性格はあらゆる局
元207B分隊は個性的な面々だが、この場において緊張の様子が
!
﹁ドーモ、ヴァルキリーズ=サン。BETAスレイヤーです﹂
15
!
﹂
﹁アイエエエエエ
﹁アイエエエ
ニンジャ
ニンジャナンデ
!?
﹂
!?
1に着任したのだ
コワイ
そのマッポーの世に降り立ったニンジャ、BETAスレイヤー。
となった未来。
BETAが地上を覆いつくし、人類の滅亡が極めて現実的な可能性
﹁BETAに対して慈悲はないけどね﹂
外にはとっても優しいですから﹂
﹁大丈夫ですよ、BETAスレイヤー=サンはこう見えてBETA以
﹁私達も、最初はこうだった﹂
﹁懐かしい反応だな﹂
べきだろう。
失禁しなかったことをこそ彼女らの強靭な精神力として誉め讃える
かったというほどの、ニンジャの恐怖に震えるA│01たち。むしろ
逃 れ る す べ は な い。新 兵 と し て 初 陣 を 迎 え た 時 で も こ う は な ら な
いたが、直接アイサツをされてしまえばニンジャアトモスフィアから
ることに変わりはない。これまで必死に視界に入れないようにして
いかに歴戦の衛士といえど、A│01の彼女らもまたモータルであ
!
たメンポをつけたニンジャが、207B分隊のメンバーとしてA│0
国連軍の制服に身を包み、しかしなぜか﹁BETA﹂
﹁殺﹂と書かれ
新任があからさまにニンジャなのだ
!?
!
﹂
彼の戦いはまだ、始まったばかりだ
◇◆◇
﹁戦術機のOS
﹁ウム﹂
!
ブを改造したこの基地の最奥にて人類救済のために戦う女性こそ、ユ
ウコセンセイである。執務室の机で横浜基地副指令としての執務を
16
!
!
国連軍横浜基地の地下深く。かつてのヨコハマ・スゴイフカイハイ
?
こなしながら、異様な風体の訪問者BETAスレイヤーとの会話を両
立する。
﹁戦術機の動きが悪いって、そりゃあんたからすれば⋮⋮い、いやなん
でもないわ﹂
ユウコセンセイは、書類から目を上げることがない。溜まった仕事
が膨大であることと、いかにユウコセンセイとはいえニンジャをまと
もに直視すれば失禁は免れえないが故のことだ。初めて面と向かっ
たときに晒してしまった醜態は、ユウコセンセイ自身のテンサイを駆
使して記憶から抹消してある。
を作れっていうわけね﹂
﹁確 か に 戦 術 機 は 強 い。だ が ニ ン ジ ャ の カ ラ テ を 引 き 出 す に は 足 り
ぬ﹂
﹁それで、あんたの記憶にあるXM3
ユウコセンセイはBETAスレイヤーの提案を吟味する。OSを
作るということ自体は、対BETA戦への対応としてさほど的外れで
もない。ニンジャソウルに由来するカラテなどと異なり、シロガネタ
ケル自身の記憶に由来するというコンボやキャンセルといった戦術
機の挙動自体は確かに現在の技術でも実現が可能で、なおかつ有用で
もある。当然ユウコセンセイでもなければたやすく作るはできない
が、だからこそ現状の戦力を増強することに加えて、政治的なカード
としても使える可能性を秘めている。なかなかに、悪くない手だ。
﹁⋮⋮まあ、いいわ﹂
﹁手を貸してもらえるのか﹂
﹁私にとってもメリットがあるからよ。それに、この程度だったら難
﹂
しいものでもないわ。私は知能指数が高いのよ。霞、さっそく取り掛
かるわよ﹂
﹁ハイ、ヨロコンデー
ジャ、ヘイズシュラインがUNIXを操作する。BETAスレイヤー
のニンジャソウルを自身の持つドクシン=ジツによって読み取った
結果、自身の魂もまたニンジャソウルとなった少女だ。それ以来BE
TAスレイヤーからのインストラクションを受け、いまやそのカラテ
17
?
そしてユウコセンセイの命を受け、かつて社霞と呼ばれていたニン
!
は熟練の衛士ですら遠く及ばぬものとなっている。ニンジャとモー
タルの間にある差は、それだけ大きい。
だがそんな彼女の仕事は本来ユウコセンセイの補佐。彼女はニン
ジャとなってからより一層鍛えられたUNIX技術を、今日も人類の
ために駆使している。
﹁任せてくださいBETAスレイヤー=サン。さっそくOSの作成に
取り掛かります﹂
﹁よろしく頼む、ヘイズシュライン=サン﹂
﹁⋮⋮はあ﹂
そして、ユウコセンセイを頭痛が襲う。人類を救おうと、そのため
ならどんな汚名でも被ろうと決意してはいたのだが、このニンジャ密
度はさすがのユウコセンセイをして凄まじい精神疲労を避けられな
い環境だった。とりあえず引出にしまっておいたバリキドリンクを
一本煽る。
イヤーッ
﹂
定期的に間引きと呼ばれる数減らしをしているにも関わらず、どうい
うわけか大量のBETAがハイブから溢れだし、その対応のためにA
18
﹁あー、イイ。遥かにイイわ﹂
脳がすっきりと晴れる感覚と共に寿命が縮んでいる気もするが、今
は背に腹は代えられなかった。このニンジャアトモスフィアに飲ま
イヤーッ
﹂
れれば、どうなるか。天才の頭脳をしてすら想像したくないこととい
うのは、存在する。
◇◆◇
後日
佐渡島
﹁イヤーッ
﹁黙っていろ
!
日本国内に唯一残る佐渡島ハイブから、BETAがあふれ出した。
!
﹁BETAスレイヤー=サン、私達のことは気にしないで、もう⋮⋮﹂
!
!
!
!
│01にも呼び出しがかかったのだ。
新人が配属されているとはいえ、A│01は歴戦の精鋭部隊。任さ
れた戦場は最前線以外の何物でもない。そのため全員が必死の奮闘
をし、結果、BETAスレイヤーを含めた今日が初陣の衛士たちも、初
﹂
陣の衛士が生き延びられる平均時間﹁死の8分﹂はとうに過ぎている。
﹂
アイエエエエアバーッ
﹁アイエエエエエ
﹁コワイ
BETAスレイヤーはメンポの中で唸る。
︵ヌウゥッ、カラテさえ、カラテさえあれば⋮⋮
︶
じて動けなくなった仲間達をかばっているに過ぎない。
越したニンジャ反射神経による機動によってBETAを翻弄し、辛う
しかもBETAスレイヤーの武装は既にアウト・オブ・アモー。卓
著しい。
スレイヤーの一機のみ。他はみなどこかしらを損傷し、戦力の低下は
して完全に五体満足の状態で動けているのは、先任を除けばBETA
一人が跳躍ユニットを破壊され、と次々戦闘不能に陥っていく。既に
だが状況は極めて悪い。長時間にわたる戦闘により一人が大破し、
る経験を持つBETAスレイヤーの奮闘があればこそだ。
練のA│01先任たちと、そしてイクサにおいてはA│01すら上回
その中でなお旧207B分隊の隊員が生き残っていられるのは、熟
四散していく。
リアリティショック状態に陥った者から順に屠られ、戦術機ごと爆発
シのコトワザ﹁前門の虎、後門のバッファロー﹂のごとし。BETA
るBETAの大群は既に戦術機部隊を包囲して、まさにミヤモトマサ
しかし他の全ての衛士もそうあるわけではない。目の前に迫りく
!?
!
イドキックを放てればまとめて数体のBETAを葬れた局面があっ
カラテパンチならば一撃で倒せたBETAがいた。ヤリめいたサ
ある。
トロにすることができる。しかし、しかしそれでもテックには限界が
れば、BETAスレイヤーが生身で戦うよりも多くのBETAをネギ
戦術機は確かに強い。巨体とパワー、豊富な武装。それらを駆使す
!
19
!
た。BETAスレイヤーは脳裏に浮かんだそれら状況判断を必死に
押し殺し、戦術機に見合った動きでBETAを屠り続けていた。
それでも、BETAスレイヤーは強い。今日が初陣とは思えぬ落ち
着きを持っているうえ、ニンジャ動体視力はあらゆるBETAの奇襲
を許さず、ニンジャ耐久力がこれまでの長期戦を支え、ニンジャ腕力
﹂
はいまだ衰えることなく操縦桿を握る。
だが、それでも。
﹂
﹂
﹁IYAAA
﹁グワーッ
!
﹂
だめです、BETAスレイヤー=サン
﹁⋮⋮スゥーッ、ハァーッ﹂
﹁⋮⋮
私たちに構わず、早く⋮⋮
﹁珠瀬の言う通りだ。せめてBETAスレイヤー=サンだけでも
﹁気に、しないで⋮⋮﹂
﹁そうそう、覚悟はできてるしさ﹂
﹂
逃げてください、
だがそれでも、BETAスレイヤーは戦術機を立ち上がらせた。
叫びが何よりその事実を証明している。
ていた機動力を発揮することはかなわないだろう。仲間達の悲痛な
は全損。本体の動きにこそ支障はない物の、もはやBETAを翻弄し
幸いウケミは間に合った。しかしダメージは深刻で、跳躍ユニット
イヤーの乗る戦術機を殴り飛ばした。
機動を鈍らせ、要撃級の格闘腕によるショートフックがBETAスレ
い。それらのいずれか、あるいはすべてがBETAスレイヤーの回避
回避してしまえば仲間が代わりに犠牲になるかもしれないという迷
理由は何か。蓄積した疲労、戦術機の反応の遅れ、死角からの攻撃、
﹁BETAスレイヤー=サン
!
こともまた理解していた。
﹂
Aスレイヤーを自分たちと同じ確実な死に追いやるアブナイである
闘志がいまだ折れていないことを悟る仲間達。しかしそれはBET
通信から漏れ聞こえてくるチャドー呼吸に、BETAスレイヤーの
﹁ええ、そうね。それが一番正しいって、わかっているでしょう
!
?
!
20
!?
!
!
彼女たちは覚悟を決める。ここで自分達が死ぬことになろうとも、
BETAスレイヤーが生き残れば、自分達が生き延びて殺す以上のB
ETAを殺してくれるだろうと。悲痛にして壮絶な覚悟を、乙女達は
当たり前のこととして、既に胸の奥に受け入れている。
⋮⋮その運命に抗う者は、この場においてただ一人。
﹁それはできぬ﹂
BETAの大群を前にして、ジリー・プアー︵徐々に不利︶な状況
﹂
を理解してなお否と叫ぶ、BETAスレイヤーのみである。
﹁なっ、何を言っている
﹁私はBETAを殺す。全て、殺す。慈悲はない。⋮⋮それだけだ﹂
そう、BETAスレイヤーはBETAを殺す者。この地上に蔓延る
全てのBETAを殺し尽くし、幾多の世界で失われた命の復讐を果た
す者。しかし、世界そのものを相手取るに等しい怒りの源は、仲間を、
人々を、誰一人死なせたくないと願った一人の青年の優しさから生ま
れたものだ。
生き残れば、より多くのBETAを殺せる。そうするためには、仲
間を見捨てることも時に必要となるだろう。
しかしそれを良しとする道理は、BETAスレイヤーにはない。全
ての仲間を守ること。全てのBETAを殺すこと。その双方を為す
ための力こそ、ニンジャソウルが授けたカラテであり、シロガネタケ
﹂
正面から迫りくる突撃級BETAの、スモトリに匹敵するブチカマ
シを前にして、BETAスレイヤーの操る戦術機はもはや回避の術を
持たないことにこのときはじめて気付かされる。
せめて跳躍ユニットが生きていれば。
あるいは、カラテを自在に使うことができたならば。この程度の
チャージを回避することなどベイビー・サブミッションであったとい
21
!?
ルの鍛えたテックを操る技術なのだから。
﹂
﹁IYAAA
﹁ヌゥッ
!
しかし、現実は非情である。
!?
うのに⋮⋮
BETAスレイヤーの胸中に湧き上がる怒り、悔恨、焦り⋮⋮
﹂
!
どうする、どうするBE
迫りくる突撃級が激突するまで、残る距離は畳30枚分
﹄
戦術機の脚力ではすでに避けられない
TAスレイヤー
⋮⋮そのとき
﹃BETAスレイヤー=サン
Wasshoi
声が、UNIXから響き渡る
﹁
!
﹂
テシャウトとともに戦術機を駆る
﹁IYAAA
﹄
さらにそのままパルクールめいて周囲の地形を最短距離で走
り、体当たりを失敗して通り過ぎた突撃級BETAの背後に肉薄
﹂
﹂
間にたどり着き⋮⋮。
﹁イヤーッ
﹁ABAAAA
﹁こ、これは⋮⋮﹂
Aにとってのアビ・インフェルノを巻き起こす弾丸となった。
TAの脚にぶつかるたびピンボールめいて跳ねまわり、周囲にBET
飛び、その先にいた戦車級や闘士級を引き潰し、要撃級や要塞級BE
背後の弱点を突かれた突撃級BETAはそのまま地面と水平に吹き
!
!?
中腰姿勢の戦術機が放ったパンチ⋮⋮あれは、ポン・パンチだ
畳1枚分、すなわち人間サイズに換算してワンインチ間合いへと瞬く
!
た
転からの5連続バックフリップで見事突撃級の攻撃をかわしてのけ
でのぎこちない動きから打って変わり、まさしく人間めいて跳躍。側
すると、おお、見よ。BETAスレイヤーの操る戦術機は先ほどま
﹃イヤーッ
!?
!
その声に導かれ、BETAスレイヤーは操縦桿を力強く握り、カラ
!
!
!
!
!
!
!
!
!
22
!
!
﹂
﹃なんとか間に合ったようですね、BETAスレイヤー=サン﹄
﹁ヘイズシュライン=サン
咄嗟のことで、流れるようなカラテ・ムーブメントがなぜ実現でき
たのか、当人自身理解しきれていないBETAスレイヤーの目の前
に、UNIXがヘイズシュラインの姿を映しだした。
﹃頼まれていたOSがようやく完成しました。戦闘中の直接転送は危
険な賭けでしたが、成功したようです﹄
︿新OS転送中ドスエ。最低限のモーションパターンは転送済。残り
10%ドスエ﹀
ヘイズシュラインの言葉に被さり、電子マイコ音声が新OSへの書
き換えが行われていることを告げてくる。戦闘中の戦術機に直接O
Sを転送するなどというタツジンを成し遂げたヘイズシュラインは
額の汗をぬぐい、垂れる鼻血をメンポで隠した。
おそらく、この突貫作業は彼女にとっても限界を越え、危険を伴う
ことだったのだろう。画面の隅に映るザゼンドリンクの空き瓶の数
は、ヘイズシュラインがオーバードーズも恐れずこの瞬間のために持
てる力の全てを賭してくれたことを雄弁に物語っている。
︿新OS転送完了ドスエ﹀
OS転送中というある種無防備な状態でありながら、BETAスレ
イヤーは周囲への警戒を怠らず、それを察してかBETAは遠巻きに
様子を伺い、攻めては来ない。突然見違えるほどの動きをしたことを
警戒しているのだろう。
だがそれは、絶望的なまでに悪手だった。もしもBETAに未来を
見通す能力があったのであれば、たとえ佐渡島ハイブの全BETAを
この瞬間のBETAスレイヤーにぶつけて、刺し違えてでも倒してい
たに違いない。
OSが書き換わったのと同時、戦術機の全身に力が満ちたように感
﹂
じたのは気のせいか、はたまたニンジャ第六感の為せる技か。
﹁おお、これが⋮⋮XM3
﹃いいえ、違います。このOSの名は⋮⋮﹄
しかし真実、それは錯覚ではない。
23
!?
!
﹃Karate Abnormal Reaction Again
﹄
﹂
s t e x t r a T e r r e s t r i a l E n e m y ⋮⋮ K A
RATEです
﹁KARATE⋮⋮カラテ
この瞬間、戦術機に、モーターシラヌイに、カラテが満ちた
ニンジャ。
ニンジャとは、平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存
在である。しかし現代に生きるニンジャはそのほとんどが、突然宿っ
たニンジャソウルによって心身を変じたものに過ぎない。かつての
ニンジャがキンカク・テンプルでハラキリ・リチュアルを行ったこと
で、時空を超えてディセンションしたニンジャソウルが宿った者が、
インストラクションや己のトレーニングによってカラテを満たすこ
とによってニンジャとなる。
では、モーターシラヌイはどうか。
戦術機のソウルともいうべきコクピットに座すパイロットはニン
ジャ、BETAスレイヤー。そしてその身に満ちるのは、ヘイズシュ
ラインがBETAスレイヤーのカラテを十全に発揮するために作り
上げた新OS、KARATEの力。
ソウルにニンジャを、体にカラテを。それぞれ宿したモーターシラ
ヌイはもはや、実際ニンジャである
﹄
!
た。ゆえに。
ての敵は、元から変わらず殺すべき敵。そして不安は全て消え去っ
だがもはや、BETAスレイヤーに恐れも焦りもない。目の前の全
Aのみ。
は、朽ちかけた戦術機たちとモーターシラヌイ、そして無数のBET
力強い励ましの言葉とともに通信が切れる。これで戦場に残るの
レイヤー=サン。カラダニキヲツケテネ
﹃はい。私ができることはここまで。⋮⋮信じています、BETAス
﹁⋮⋮感謝する、ヘイズシュライン=サン。必ず朗報を持って帰る﹂
!
24
!
!?
!
礼節
﹃ドーモ、BETA=サン。BETAスレイヤーです﹄
モーターシラヌイは、アイサツを決めた
!
れたメンポが
そして、おお、なんと⋮⋮全身の装甲が、赤黒く染まっ
カメラアイにセンコめいた赤い光が灯る
﹃BETA殺すべし。⋮⋮慈悲はない
﹁IYAAA
﹂
﹄
﹂
﹄
それに対してBETAス
そして、モーターシラヌイがジュー・ジツを⋮⋮構えた
!
!
﹄
まだ終わっていない。
﹃イヤーッ
﹃あれは伝説のカラテ技、サマーソルトキック
ゴウランガ
!
え、一撃で刈り飛ばして天高く舞い上げた
この攻防を見てからも、明らかだ。既にBETAという巨大な生物
!
バク宙を繰り出しながらの蹴りあげが要撃級の首めいた部分を捕
!
﹄
いた首のような器官がうつむき苦悶の様子。だが要撃級のジゴクは
突き刺さるモーターシラヌイの拳に、サソリの尾めいて反りかえって
カラテに変えて、懐に飛び込んでのショートフックを返した。胴体に
レイヤーは避けず、防がず、逆らわず、受け流すことで得た回転力を
迫りくる要撃級の右ショートフック
﹁GUWAA
﹃イヤーッ
!
!?
!
モーターシラヌイにもはや敵はないということだけが確かだった。
ヌイ自身がサイバネニンジャめいた存在へと変わったか。ただ一つ
ボディの内に膨れ上がったカラテの作用か、はたまたモーターシラ
ていく
かぶ文字
いつの間に現れたのか、顔の下半分を覆うマスク装甲が焼き付き浮
!
はそれを意に介さず顔を上げ⋮⋮そこには、
﹁BETA﹂
﹁殺﹂と書か
か、一瞬BETAの集団にざわめきが走る。しかしモーターシラヌイ
決断的なアイサツは言葉を解さぬBETAにすらカラテを伝えた
!
!
!
!
!
25
!
は、モーターシラヌイと一体化したBETAスレイヤーにとっての獲
物に過ぎない。ニンジャでない存在など、今のBETAスレイヤーの
前では等しく有象無象の塵芥。すなわち、全てのBETAがネギトロ
になる未来を運命づけられたということだ。
﹂
﹃貴様たちは殺す。ハイクを詠め﹄
﹁⋮⋮無理だと思うわよ
﹃イヤーッ
﹃イヤーッ
﹂
﹄
﹁GUWAA
﹂
﹄
要塞級の頭を掴み、下半身に伸びるトゲに向かってアラバマ落とし
﹁GUWAA
﹃イヤーッ
突撃級の背後にヤリめいたサイドキック
﹁GUWAA
﹂
﹄
﹁気にするな速瀬。おそらく我々の理屈は通じない﹂
?
イヤーッ
がすべて吹き飛ばす
﹃イヤーッ
﹁GUWAA
﹂
﹁GUWAA
イヤーッ
﹄
!
足元の闘士級や兵士級に激しいストンピング
﹂
﹂
﹁GUWAA
!
次々と爆発四散する。
﹄
はるか
しかし、BETAにもまだ一つだけ、反撃の手が残されていた
﹃⋮⋮ヌゥッ
BETAスレイヤーのニンジャ第六感が危機を告げる
!
!?
!
す術もなく、BETAスレイヤーとモーターシラヌイのカラテの前に
BETAを屠る殺戮者が赤黒の風となる。周辺のBETAはただ為
まさにマッポーの一側面。縦横無尽に戦場を駆け、その行く先々で
!
!
!
!
群がる戦車級の群れを、一発のポン・パンチが巻き起こした衝撃波
!
!
!
26
!
!
!
!
!
!
!
彼方より、自身を狙う者がいる
﹂
光の速さで致
⋮⋮先ほどまでの、モーターシラヌイであったならば
﹁IYAAA
チャージが完了した光線級BETAのレーザー
なんとモーターシラヌイは間一髪、ニンジャ
死の熱線がモーターシラヌイに迫りくる。
﹄
だが、既に
﹃イヤーッ
!
はなく、BETAスレイヤー諸共爆発四散する運命は避けられない。
でさえ正確な狙いを持つ光線級の狙撃が放たれてしまえば逃れる術
ラヌイといえど、レーザーの直撃を受ければ機体が焼けて死ぬ。ただ
方から自身を狙う光線級BETAがいたことを。いかにモーターシ
が下がってきた重金属雲の間隙をついて、はるか畳3000枚分の彼
そのとき、BETAスレイヤーは知らなかった。戦闘が長引き濃度
!
モ ー
いかに絶対の命中精度を誇るレー
ザ ー 級 と は い え、ニ ン ジ ャ の 前 で は ゴ ジ ュ ッ ポ・ヒ ャ ッ ポ
!
﹄
﹃⋮⋮イイイィィ﹄
そして、その手に⋮⋮光が集う
それは⋮⋮スリケンだ
うその粒子を手の中で凝縮させ、モーターシラヌイが作り上げた物。
迎撃させ、レーザーを減衰する役目を担っていた重金属雲。戦場に漂
その正体は、レーザーから戦術機を守る重金属粒子。レーザー級に
!
で特定している。着地と同時に光線級へと向き直り、体勢も整えた。
イヤーは、その時すでにこちらを狙った光線級の位置をニンジャ視力
すぐさまバックフリップで狙われた位置から離れたBETAスレ
﹃イヤーッ
焼くだけだ。
ターシラヌイを爆発四散せしめるはずだったレーザーは、ただの空を
!
リッジ回避を決めていたのだ
第六感によって察知したレーザー照射のコンマ1秒前に流麗なブ
おお、ゴウランガ
!
!
!
カラテを込めて作り上げられたスリケンを放つのは、モーターシラ
!
27
!
!
!
放たれる
﹄
ヌイの腕。縄めいたスパークが走るその腕に込められた力は人知を
超え⋮⋮ついに
﹁GUWAA
﹂
﹁GUWAA
﹃イィィヤアァァァァーーーーーッ
!
音速を超えたスリケンは空気を斬り裂いてソ
!!
!
﹂
畳3000枚分の距離の先にいた再チャージ中の
!
﹁す、すごい⋮⋮﹂
﹂
﹁これが、BETAスレイヤー=サンの本当の実力⋮⋮
﹁⋮⋮いや、なんか違わない
!
能はないみたいだから﹄
あんたもそっち側に行くつもり
!?
イヤーッ
﹂
イヤーッ
!
へとスリケンを放つヒサツ=ワザ、ヘル・タツマキ
一つの仕損じ
BETAの密集地点に飛び込み、回転しながら飛び上がって全方位
!
類にとっての希望だった。
﹃イヤーッ
﹁ABAAA
﹂
﹁ABAAA
!
﹂
﹁ABAAA
!
﹄
て戦場を駆けるその姿はまさしく死神であり、しかし紛れもなく、人
るモーターシラヌイ。BETA達に等しく死を運ぶ赤黒の風となっ
BETAスレイヤーの圧倒的なカラテと、それを完全に実現してのけ
A │ 0 1 の メ ン バ ー は 唖 然 と し て 事 態 を 見 守 る よ り ほ か に な い。
﹁遥
﹂
﹃気にしちゃダメよ水月。BETAスレイヤー=サンのカラテに不可
?
﹂
光線級はレーザーを放つレンズを完璧に両断され、爆発四散した。
ブルズアイ
﹁⋮⋮ABAAA
ヤーを狙った光線級BETA。
つに斬り裂きながら飛翔する。目指す先には当然、BETAスレイ
ニックブームを巻き起こし、周辺のBETAすらマグロめいて真っ二
ツヨイ・スリケン
﹂
﹂
﹁GUWAA
!
!
!
!
!
!
28
!
!
!?
もなく、一つのスリケンが複数のBETAを貫くことすらある正確無
比にして慈悲のないワザマエを見せつけられて生き残っていたBE
TAは、もはやない。
モーターシラヌイはわずかに残ったBETAをすべて一つ所に誘
導し、一網打尽に仕留めてのけたのだ。カラテ、テック、状況判断。全
てを兼ね備え、もはや大地にBETAの影は一つとしてなく、BET
ス ゥ ー ッ
Aスレイヤーが、モーターシラヌイだけがそこに立つ。
ハ ァ ー ッ
﹄
!
どうした、返事がないが⋮⋮BETAスレイヤー=サン
!
﹂
﹁ハ ァ ⋮⋮ ハ ァ ⋮⋮。ス ゥ ー ッ
ハァーッ
!
﹃やりましたね、BETAスレイヤー=サン
﹃む⋮⋮
﹄
!
!
しかし地上に蔓延るBETAはいまだ数限りなく、モータルを虫け
ついにこの星に、BETAスレイヤーの真なる力が解き放たれた。
きながら。
てくれと頼むことを忘れたことに、自分の腹が鳴る音で初めて気が付
ただ一つの心残りとして、ヘイズシュラインにスシを用意しておい
きず、BETAスレイヤーは全身を包む疲労に逆らえない。
はその時まで。UNIXから聞こえるIRC通信に応えることもで
BETAスレイヤーがコックピットの中で気を張っていられたの
に消費してしまった。
ゆえに、それを操るBETAスレイヤー自身の血中カラテもまた大量
ヌイの巨体と機械のパワーから繰り出されるカラテは強烈であるが
ヤー自身の体にも深い疲労となって蓄積されていた。モーターシラ
ドー呼吸で息を整える。あまりにも激しい戦いは、BETAスレイ
モーターシラヌイのコックピット内で、BETAスレイヤーはチャ
?
らめいて殺している。その全てを滅ぼす日まで、戦え、BETAスレ
29
!?
イヤー
登場人物名鑑
モーターシラヌイ
日本の暗黒メガコーポ三社合同で開発された第三世代型戦術機︿不
知火﹀のBETAスレイヤー専用カスタム機。元々ハード自体の拡張
性が低いため他の機体とほとんど違いがないが、搭載しているOS
︿KARATE﹀の力により、BETAスレイヤー自身が持つカラテの
全てを戦術機のサイズとパワーで繰り出すことが可能となっている。
KARATEのインストールは実戦の最中に行われ、完了と同時に
マスク状のパーツが出現して﹁BETA﹂
﹁殺﹂の文字が刻まれ、全身
のカラーリングが赤黒く変色し、カメラアイにセンコめいた赤い光が
灯るという謎のカラテ現象を示す。
戦術機にとってのソウルともいうべきパイロットとしてニンジャ
を、そして体を動かすOSをカラテとすることで、実際ニンジャに等
しい存在となった。そのため﹁BETAスレイヤーが動かす戦術機﹂
というよりも﹁機械の体で巨大化したBETAスレイヤー﹂と言える。
BETAに対する戦闘能力は極めて高く、単独でのハイヴ攻略すら可
能ではないかと推測される。
戦術機が使える武装をそのまま使える他、徒手空拳によるカラテの
数々と、対レーザー弾頭が展開する重金属雲の粒子を集めてスリケン
を作り出すことが可能。
エターナル
ユウコセンセイがNRSにやられてうっかり作ってしまった、BE
TAスレイヤーの身体能力を再現できるサイバネ義足をとりつけら
れたスズミヤハルカのこと。常人の三倍の脚力を持つ。
30
!