BETAスレイヤー ID:84985

BETAスレイヤー
葉川柚介
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小説の作者、
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︻あらすじ︼
BETA抗争で家族や想い人、仲間を殺された因果導体、白銀武。
再び別の並行世界に呼び寄せられたそのとき、謎のニンジャソウルが憑依。
一命を取り留めたタケルは﹁BETAスレイヤー﹂││BETAを殺す者となり、復
讐の戦いに身を投じる
※この作品はArcadia様にも掲載しています。
まった。
絶望に蝕まれた近未来の地球を舞台に、BETAスレイヤーVSBETAの死闘が始
!
目 次 BETAスレイヤー ││││││
カラテ ││││││││││││
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・
1
21
BETAスレイヤー
並行世界。
それは近くて遠い、世界そのものの合わせ鏡。
ひとたびその境界を越えれば何かが変わる。見慣れた景色、見知った人たち。しかし
それらは全く別の物で、モンスターを振り子の振れ幅にしたりレベルを足し算したり重
ねたり融合したりと変わり果てる。
それが並行世界。
たとえ観測することはできなくとも、ここではないどこか、ここに似ていて、だがど
こか違う世界というのは、確かにあるのだ。
通常ならば、それを知ることはできない。何人たりとも、観測することはできない。
しかし何事にも、例外はある。
無限に連なる並行世界のただ中を漂う一つの意思がある。世界を、自分を救ってほし
﹁純夏⋮⋮冥夜⋮⋮みんな⋮⋮﹂
1
いという声に導かれ、数多ある世界を旅してきた魂。たどり着いた世界に己の宿命を呼
び込むそれを、それ自身のかつての恩師は﹁因果導体﹂と呼んだ。
だが、そんなものが何になる。大切だった、だが守れなかった人たちの名を呟きなが
ら、形を持たない歯が噛みしめるのは、ただ己の無力のみ。世界を変えることはできて
も救うことはできなかった、生き地獄のような幾多の生の記憶だ。
││
││だがこの時、その願いを感じ取ったソウルがあった
﹁⋮⋮力﹂
!
何度願ったか知れない、世界の狭間にただ掻き消えるべきその祈り。
のためなら、この魂全てを復讐に捧げることすらいとわないのに。
を助けられない弱さを。もっと力があれば。⋮⋮奴らを殺しつくせる力があれば。そ
魂は呪った。自分の宿命を。戦い続けなければならず、しかし無力が故に大切なもの
れるまま、再び絶望と戦いの渦へと。
そんな因果導体の魂がまた、ひとつの世界に引き寄せられる。自分を求める声に導か
﹁⋮⋮呼ばれ、てる﹂
!
︵︵︵オヌシ、力が欲しいか︶︶︶
BETAスレイヤー
2
声はジゴクめいた響きで語りかける。魂しかない今ならば因果導体にもわかる。そ
のソウルが持つ悲しみと絶望、憎しみと悔恨。そして全ての敵を殺してしまいたいと願
う⋮⋮怒り
!
!!
一つ︶︶︶
﹂
望渦巻く世界へと勢いよく舞い降りる。
◇◆◇
全ての世界を震わせる、カラテシャウトと共に
﹁Wasshoi
!
ていく感覚。見慣れたはずの自室で目を覚ました、かつて白銀武であった男は自分の体
むくり、と身を起こす。頭痛と吐き気がわずかに残り、しかしすぐに体の奥へと消え
﹁ム⋮⋮﹂
!
二つのソウルは混じり溶け合い、黄金立方体が照らす数多の並行世界の中の一つ、絶
﹁為すべきこと⋮⋮たった一つ⋮⋮BETA、殺すべし
﹂
︵︵︵ウム。ならば我がソウルと一体となれ。今より我らの願いは一つ。為すべきことは
﹁⋮⋮力が、欲しい。たとえ⋮⋮魂と引き換えにしてでも﹂
3
にみなぎる圧倒的なカラテの力を感じていた。
﹁鏡⋮⋮鏡はどこだ﹂
自身の変化を確認するため、彼は部屋の中を見渡す。この部屋の様子が勝手知ったる
ものであったのは、並行世界を渡る宿命を持つようになる前の話。どこに鏡があったか
を思い出すのにすら難儀することにわずかな寂しさを感じながら、しかし体が覚えてい
たかのようにすぐに見つけた身だしなみを整えるそれに、姿を映す。
そこにいたのは、ニンジャであった。
カラテによって鍛え上げられた精悍な肉体。幾多のイクサを潜り抜けて鋭く光を放
コワイ
!
つ目。赤黒のニンジャ装束。そして顔を覆う﹁BETA﹂
﹁殺﹂と書かれたメンポ。それ
は紛れもないニンジャの証
!
ち、瞬く間に朽ちる景色。扉を開ければ、家に倒れ込むのは糸が切れたジョルリめいて
だから彼は迷うことなく家を出る。部屋を一歩出た時から、外の世界とつながりを持
に。
いるかすら怪しいものだと、何度となく自嘲した。世界の狭間で、涙が枯れ果てるほど
というのだ。魂は幾度とない戦いの中ですり減り、いまだ白銀武と呼べる部分が残って
しかし彼は変わった自分の在り方に悩まない。今更姿の一つが変わったからなんだ
﹁やはり⋮⋮か。行くとしよう。時間が惜しい﹂
BETAスレイヤー
4
動かないハイ・テックなロボットと荒れ果てた街並み。まさに、古事記に記されたマッ
ポーの世がそこにある。
﹁⋮⋮インガオホー﹂
つい口をついて出た言葉は、メンポの中にこもって誰の耳にも届きはしない。ほんの
一時だけ景色を見つめ、目に焼き付け⋮⋮彼の大切なものを踏みにじったものへの怒り
﹂
﹂
を激しく燃やす。この怒り、忘れるものか。
◇◆◇
﹁⋮⋮ん、なんだあれ
﹁誰か、近づいてきてるのか
わにする。こんなところに、事前の連絡もなく、徒歩で近寄ってくる者などおよそまと
は間違いなく彼らのいる基地を目指している。門を守る彼らは、その存在に警戒もあら
荒れ果てた荒野と化した道を黙々と歩いてくる人影。どこから現れたのか、その歩み
るこの基地の門番二人は、その時基地に近づく何かを見つけた。
メガコーポめいた方法を使い、しかし世界を救うための研究を進める香月夕呼の根城た
国連軍横浜基地、正門前。女狐の狡猾さをもって絶大な権力をかっさらうという暗黒
?
?
5
もではありえないからだ。
﹁お、おい⋮⋮なんだあれ
﹂
で、でもまさか⋮⋮あれは
﹂
!
!?
﹁殺﹂の禍々しいショドーがはるか彼方から威圧の風を轟かせる⋮⋮ニンジャなのだ
サツバツたる異様から漂うジゴクめいたアトモスフィア。間違
えようのないニンジャの姿に、二人は心底震え上がる
!
!
ニンジャナンデ
﹂
!?
﹂
﹁ドーモ、BETAスレイヤーです。⋮⋮香月副指令への取り次ぎを頼みたい﹂
!
ナムアミダブツ
!
包み、マフラーめいたぼろ布を風になびかせ、顔を覆うメンポに刻まれた﹁BETA﹂
その人影が近づくにつれ、彼らの間に動揺が走る。人影は赤黒のニンジャ装束に身を
﹁俺に聞くな
!
﹁アイエエエエエ
!?
に、もしも突然ニンジャが現れたら⋮⋮ しめやかに失禁することは確実であろう
?
し か し こ の 兵 士 た ち は 逃 げ な い。持 ち 場 を 離 れ る こ と に よ る ケ ジ メ の 恐 怖 も 無 論
!
それも無理からぬことだ。ご想像いただきたい、日々を善良に生きる読者諸氏の前
くと振るわせ突きつけながら、恐怖の叫びをあげるのみ。
リアリティ・ショックのただ中にある門番の耳には届かない。両手に持った銃をがくが
BETAスレイヤー、と名乗ったニンジャの奥ゆかしいアイサツ。しかしニンジャ・
﹁ニンジャ
BETAスレイヤー
6
あったが、それでも使命感は彼らの足を縫いとめた。
BRA
!
引き金が引かれ、大量の弾丸がBETAスレイヤーめがけて吐き出さ
しかし、悲劇は起こる。怯え震える兵士の指が、なんとトリガーに伸びる
TATATA
れたのだ
!
﹁イヤーッ
﹂
プで距離を取り、ジグザグに走って狙いを外しながら再び迫る
!
﹂
﹂
!
時にかつての仲間達の、散っていった姿が去来し胸をえぐる。
名前。並行世界を辿った記憶がこの名を出さねば進めないと囁くのに従い使ったが、同
イヤーの心は揺れる。あの家を一歩出たときから、二度と使わない覚悟でいたかつての
腰が抜けたままおたおたと基地へ向かって行く兵士たちを眺めながら、BETAスレ
香月夕呼に会いに来た⋮⋮シロガネ・タケルと伝えろ
ろってしめやかに失禁
﹂
﹁私は怪しい者ではない
!
﹁ヨロコンデー
!
そして暴れまわる銃を掴み、ニンジャ握力で粉砕 兵士には傷一つないが、二人そ
﹁アバーッ
!? !
!
BETAスレイヤーは流麗なブリッジで銃撃回避 そのまま五連続バックフリッ
﹂
﹁イヤーッ
!
!
!
!
7
﹂
⋮⋮ほんとにぃ
﹂
﹁私はもはや、誰かを守ることはできない。だから、せめて⋮⋮BETA殺すべし。慈悲
はない
◇◆◇
?
ジャであった
るのだ。タツジン
それよりも彼女が気になるのはそのニンジャが名乗った﹁シロガネ・タケル﹂という
!
てニンジャの放つアトモスフィアとて冷静に観察し、真実を導き出すための一要素とす
香月夕呼は、しかし驚きはしない。奇妙と思いはしても、天才科学者たる彼女にとっ
!
キシン・ガーゴイルの映像を確認した。すると⋮⋮そこにたたずむのは、まさにニン
る自分をだます罠にしては杜撰に過ぎると考え、自室から正門の様子を撮影しているゲ
だがあまりにも荒唐無稽なその話、横浜基地副指令にして女狐の名を欲しいままにす
リンクのオーバードーズでもしてしまったか。そんな懸念を感じすらした。
疑った。世界を救うカギとなる00ユニット開発に熱中するあまり、うっかりバリキド
基地の正門におかしなニンジャがいる。その報告を聞いた時、香月夕呼は己が耳を
?
!
﹁あれが⋮⋮白銀武
BETAスレイヤー
8
名のほうだ。その名を口にするということは、あるいはこのニンジャこそが00ユニッ
ト 完 成 の 鍵 に な る の で は。悟 り め い た イ ン ス ピ レ ー シ ョ ン が 彼 女 の ニ ュ ー ロ ン で ス
パークする。
しかし、すぐに否定する。彼女の信じる科学に、コミックの世界に描かれるようなニ
ンジャの法則は適用されない。あれはただのおかしな輩だろうと、すぐに斬り捨てる。
な、何今の⋮⋮カメラ越しに、こっちを見た
﹂
⋮⋮それが、ニンジャへの無知からくるウカツであることを、彼女はすぐに痛感する
ことになる。
﹁まあ、そんなことありえない⋮⋮っ
!?
交わされた。
世界を救う鍵となる二人のこの世界における初めての出会いは、直接相対することなく
モニタ越しに見つめ合う夕呼とBETAスレイヤー。目をそらさず、言葉を発さず。
﹃⋮⋮﹄
﹁⋮⋮﹂
に自分を観察する視線を感じ取り、睨みあげた。
ヤーはその位置をニンジャ観察力によって見つけ出し、基地のIRCネットワーク越し
ゲキシン・ガーゴイルのカメラの位置は秘匿されている。しかし、BETAスレイ
!?
9
◇◆◇
そして、夕呼に会ったBETAスレイヤーはすぐにも行動を開始する。かつての仲間
﹂
﹂
たちと同じ207B分隊に配属され、衛士になるための訓練に明け暮れる。全てはそ
﹂
う、BETAを殺すために
﹁⋮⋮本当に、強い
何を言っているの
﹁⋮⋮オヌシ自身で確かめよ﹂
﹁彩峰
!
!
?
た。
﹂
!
彩峰のミリタリー・カラテをBETAスレイヤーのジュー・ジツが破る
﹂
﹁イヤーッ
!
﹁えっと、それじゃあ狙撃訓練を⋮⋮って、あれ。白銀さん、ライフルはどこに﹂
!
BETAスレイヤーが見せる威圧的なアトモスフィアに、時に反発されることもあっ
﹁BE⋮⋮白銀も、挑発に乗ってどうするのよ
!?
!?
﹁ンアーッ
BETAスレイヤー
10
﹁必要ない。イヤーッ
﹂
﹂
ハァーッ
﹂
我々がどうにかできるものか
﹂
数百m離れた狙撃用の的を、BETAスレイヤーの放つスリケンが正確に射抜く
タツジン
﹁武。そなた、こんな時間に何を⋮⋮
﹁チャドーには、このような月夜がいい。スゥーッ
あれはニンジャだぞ
!?
!
!
﹁⋮⋮月読中尉、放っておいていいんですか、アレ﹂
﹁ばっ、バカモノ
!
!
!
した。
⋮⋮しかし、それだけか
?
最近腹が痛くてしょうがない夕呼に呼び出された鎧衣課長が無茶振りをされたりも
﹁あれと一緒にされるのはさすがに⋮⋮﹂
﹁ちょっと、何とかしなさいよ。あんただって似たようなもんでしょうが﹂
の道を歩んでいく。
ワビ・サビの心を通し、冥夜との絆を紡ぎもし、BETAスレイヤーは着々と衛士へ
!
!
?
11
BETAスレイヤーは、BETAを殺すものは、本当にそんな当たり前の日々を過ご
すだけの存在か
?
動きが捕えられているのだ。
日本海を挟んで本土側から観測を続ける帝国軍のレーダーに、毎夜BETAの活発な
24時間体制で監視の目が向けられるその地に、近頃奇妙な動きがあった。
ど近い地。現在日本に唯一のハイヴがそびえたつ、BETAに支配された異形の大地。
新潟県、佐渡島。横浜基地からネオサイタマを抜け、中国地方を越えたドサンコにほ
◇◆◇
を抜けて、夜の闇へと消えていく赤黒の影があることを。
誰も気づかない。夜ごと基地への侵入者を警戒する漢字サーチライトの光輪の隙間
うだろう。
包まれ安らかに眠っている⋮⋮ように、この部屋の様子を覗いたものがいれば誰もが思
夜の隊舎に、静かに眠る影がある。そう、彼こそはBETAスレイヤー。フートンに
﹁⋮⋮﹂
BETAスレイヤー
12
﹁ザッケンナコラー
﹂
﹂
BRATATATATA
﹁スッゾコラー
!
﹁異常ない﹂
﹁異常ないか﹂
とに。
るで同規模、いやそれ以上の激しいイクサが行われているかのような光の明滅があるこ
陸してきていたことに。そして戦術機が本土で戦っているこの瞬間も、佐渡島上ではま
BETAたちがまるでなにかから逃げるかのように統制も何もない動きで本土に上
だが、誰かが気付いていただろうか。
高らかに、突如勃発したイクサは夜の闇に火花を散らす。
衛士たちが自らを鼓舞するために叫ぶ身も凍るような恐ろしさのヤクザスラングも
から上がるたびにネギトロに変えていく。
が知る﹁たくさん撃てば実際当たりやすい﹂という有名なレべリオンハイクに従って、海
緊急発進した戦術機が本土に上陸したBETAを蹴散らす。日本の衛士ならば誰も
!
!
13
﹂
﹁ユウジョウ
!
!
﹂
﹁⋮⋮おい見ろ、あそこだ
!
彼らがついに見つけた異常 それは一面に広がる⋮⋮無数の
!
﹁おぉ⋮⋮ブッダ
ナムアミダブツ
!
﹂
その予想は、確かな現実として姿を現した。
び越えるような何かが。
だということを考えれば、何かが起きていたのは間違いない。それも、彼らの常識を飛
今のところBETAの姿はない。ここまで当たり前のように来られただけでも奇跡
きていたが、ここまでのことが起きればそうはいかない。調査の必要がある。
本土にまでBETAが上陸した。これまではBETAの夜間活動で済ませることもで
ないはずの佐渡島からレーザー級のレーザーが空に向かって照射されることすら起き、
連夜のごとくBETAが佐渡島上で不審な動きを見せ、まして昨夜は誰も上陸してい
務は、昨夜異常な動きがあった佐渡島の調査である。
があった。互いの背中を守り合いながらゆっくりと警戒して進む彼らに課せられた任
翌朝、往年のカチグミサラリマンめいた完璧な連携で佐渡島に降り立つ2機の戦術機
﹂
﹁ユウジョウ
!
BETAスレイヤー
14
BETAの死骸
﹁ブードゥーめいてやがる。こんなに大量のBETAが、たった一晩で⋮⋮
﹁すげえ、まるでツキジだ﹂
!
﹂
?
﹂
?
走っていく、赤黒い人影を﹂
﹂
﹁最近さ、見たってやつがいるんだよ。夜になるたび、本土から佐渡島の方へ向かって
ドーを知らない彼らにとってはこれが一番の近道なのだ。
状況ならば許されよう。衛士に求められる理想の精神、ヘイキンテキを保つため、チャ
任務中の軽口。場合が場合ならばケジメはおろかセプクすらあり得ることだが、今の
﹁噂
﹁⋮⋮なあ、こんな噂を聞いたことあるか
い怒りを感じるほどのネギトロになっていることくらいである。
もしこの中で唯一の共通点を見いだせるとするならば、いずれもが殺戮者の果てしな
になったもの、ズタズタに切り裂かれたもの、しめやかに爆発四散したもの。
らゆるBETAが死んでいる。死因とみられる痕跡もまた多岐に渡る。体中穴だらけ
BETAの死骸は様々だ。闘士級から要撃級、突撃級、果ては要塞級まで、ありとあ
呼ぶとともに情報収集重点のボタンを押す。
二人は戦術機のIRCネットワークにすぐさま連絡を入れ、位置情報を転送。仲間を
?
15
﹁⋮⋮まさか、そのゴーストがこれをやったって言うんじゃないだろうな
術機みたいに速くて⋮⋮顔にメンポをつけてたんだってよ﹂
﹂
﹁まあ聞けって、続きがあるんだ。そのゴーストはな、赤黒い装束を着て、生身なのに戦
?
か。衛士は相棒も決して正常な精神にはないことをようやく理解した。
周りに散らばるBETAの死骸。
要塞級の甲殻に空いた無数の小さな穴は、連続カラテパンチによるものではないか
ではないか
全ての脚をへし折られた要塞級は、なんらかのジツによって倒されたのではないか
ニンジャ、という言葉は、最後まで二人の口をついて出ることはなかった。
てはいなかったか。
知っていないか。遥かな過去、平安時代から日本人の遺伝子の中に、その存在が刻まれ
は、恐ろしいカラテのワザマエがなければなしえない。そんな力を持つ存在を、彼らは
無数のBETAを一晩で、しかも戦術機の反応を感知させることなく倒しきるからに
?
?
戦車級をバラバラにしている鋭利な切り傷は、スリケンが切り裂いたことによるもの
?
笑いをこらえているようだった相棒の声もまた、どこかひきつってはいないだろう
相棒の言葉に、衛士は喉元まで登ってきた言葉を飲み込んだ。
﹁おい、それじゃまるで⋮⋮﹂
BETAスレイヤー
16
事後の報告書において、
﹁まるでニンジャのイクサの後のような﹂という言葉は、一度
書いた後に消して別の言葉に直され、提出された。
BETAスレイヤーのイクサは終わらない。この地上から、全てのBETAを滅ぼす
その日まで。走れ、BETAスレイヤー、走れ
!
乗り越えたことによるジゴクめいたアトモスフィアを放つニンジャとなった。
ルが宿ったことで、圧倒的なパワーとカラテのワザマエ、人知を超えた多数のイクサを
元々因果の流入による軍人として鍛えられた体を持っていたところにニンジャソウ
すもの、BETAスレイヤーとなり、BETAが蠢く地球へと降り立った。
降り立とうとしていたが、その時謎のニンジャソウルが憑依。それによりBETAを殺
本名シロガネ・タケル。数多の並行世界を渡る因果導体であり、今回も新たな世界に
BETAスレイヤー
登場人物名鑑
◇◆◇
﹁ドーモ、あ号標的=サン。BETAスレイヤーです﹂
17
BETAスレイヤー
18
赤黒のニンジャ装束に﹁BETA﹂
﹁殺﹂と禍々しくショドーされた鋼鉄製メンポをつ
け、ユウコ先生たちと共にオルタネイティブⅣの達成に協力する傍ら、普段は207B
分隊とともに衛士になるための訓練を積んでいる。彩峰のミリタリーカラテや冥夜の
イアイドーと渡り合い、珠姫の狙撃と同等の命中精度を誇るスリケンの腕によって徐々
に溶け込んでいっている。
夜な夜な基地を抜け出しては佐渡島に赴き、その名の通りBETAを狩るサツバツと
した日々を過ごしている。
コウヅキ・ユウコ
BETAスレイヤーの協力者、に半ば強制的にさせられる科学者。紛れもない天才で
あるが、科学技術への造詣は深い一方でニンジャ科学への無知がたたり、BETAスレ
イ ヤ ー が 引 き 起 こ す 数 々 の 奇 跡 的 な カ ラ テ の 前 に ニ ュ ー ロ ン が 焼 き 付 き そ う に な る。
最近バリキドリンクが手放せない。
目的のためなら犠牲をいとわず手段も柔軟に変えていける彼女の美点は、幸か不幸か
0 0 ユ ニ ッ ト 完 成 の た め に 必 要 な 最 後 の ピ ー ス を 自 力 で 手 に 入 れ る に 至 る。0 0 ユ
ニットのボディを、ハイ・テックによって作り出したニンジャのボディにすればいい、と
いうアンタイブッダ的結論によって。
19
世界を救うために奔走しているが、同時にこの人がやらかしたことによってこの世界
にもニンジャが生まれてしまったりする。
ヘイズシュライン
ヤシロ・カスミがBETAスレイヤーとの初対面時、ユウコ先生の指示で彼をリー
ディングしたことで魂が変質し、ニンジャとなってしまった存在。ニンジャとなったあ
とはBETAスレイヤーからのインストラクションを受け、素手でBETAをネギトロ
に変えられるほどのカラテを手に入れる。またニンジャになる前からのユニーク・ジツ
であるドクシン・ジツが強化され、周囲の人、動物、機械を問わずあらゆる意思を読み
取り、また投影することが可能となった。
生まれ方が特殊なため彼女のニンジャソウルはどこのクランにも属していないが、当
人は勝手にウサギ・ニンジャクランのニンジャ、と名乗っている。
セレンミラー
私は大丈夫、とか言っときながら実はばっちり遅効性のニンジャリアリティショック
にやられていたユウコ先生により、00ユニットのボディはハイ・テックニンジャボ
ディとなった。そのボディへとカガミ・スミカのソウルが移される際、BETAへの凄
BETAスレイヤー
20
まじい憎しみの感情からニンジャソウルへと進化を遂げたことにより、実際ニンジャ存
在となって生まれた00ユニットニンジャ。
くまなくサイバネ化された体から繰り出されるテクノカラテと、LAN直結すること
なしに電脳コトダマ空間にアクセスしてネットワークを掌握できるというヤバイ級
ハッカーすら超越するハッキング能力を持つ、極めて強力なニンジャ。ヒサツ=ワザは
一撃でBETAスレイヤーを成層圏までかち上げるという噂のスゴイギンガパンチ。
起動直後はBETAへの憎しみから暴走し、BETAスレイヤーに止められなければ
横浜基地の全施設と全戦術機部隊を壊滅させていただろうと言われるほどの力を見せ
る。
唯一の欠点は、サイバネボディであるため定期的にスシを摂取しないと動けなくなる
こと。
﹂
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
﹁敬礼
未来を望んでやまない。
!
に絡み合って訓練が遅れに遅れていた207B分隊を最終的には何とかまとめあげ、総
が率先して名乗った。分隊内の人格的な相性の面はもとより、政治的な思惑が複雑怪奇
キビキビとした言葉遣いからも几帳面な性格が伝わってくる、おさげとメガネの少女
﹁榊千鶴です。207B分隊では隊長を務めていました。よろしくお願いします
﹂
女らを守り抜き、いつか彼女らが自分たちを守ってくれるようになれば。今からそんな
経験させることになるだろうが、それでも仲間が増える喜びは筆舌に尽くしがたい。彼
戦に次ぐ激戦で人員を減らし、新しく着任することとなる彼女らにも辛い戦いばかりを
今日はめでたい日である。なにせこの伊隅ヴァルキリーズに新任が配属となる。激
リーズの隊長を務める伊隅みちるは微笑ましく思う。
だ。そのことに初々しさを感じながらも、特殊任務部隊A│01、通称伊隅ヴァルキ
れるその敬礼は、堅苦しさを嫌う夕呼の直属部隊A│01ではなかなか見られない物
リーダーを務める者の合図とともに、居並ぶ新人が一斉に敬礼をする。緊張感にあふ
!
21
合技術演習を見事合格に導いた指揮能力はA│01の面々も聞き知っている。先んじ
て着任した207A分隊の涼宮茜とはライバル関係にあるとも聞き及んでおり、それら
が良い刺激となって優秀な指揮官に成長してくれれば良いと期待が膨らむ。
﹁御剣冥夜と申します。剣術は得意としていますが、改めて実戦での戦いをご指導のほ
ど、よろしくお願いいたします﹂
凛とした雰囲気とは彼女のためにある言葉だろう。人知を越えてとんがっている髪
型はどうやってセットしているのか同じ女性としてかなり気になるところであるが、と
もあれ彼女もまた新任としてビシバシ鍛えていかねばなるまい。日本人としてはその
顔付きにそこはかとなくデジャヴを感じずにはいられないのだが、その辺は勤めて気に
しないようにすることが生き残るためのコツだ。
ならないだろう。
現突撃前衛筆頭たる速瀬水月が喜びのあまり可愛がりすぎないように注意しなければ
う。不敵な顔付きをどう料理してくれようかと、獰猛な笑みを浮かべているA│01の
させていたということだが、総合技術演習までには互いを認め合うようになったとい
を向ける。この二人は207B分隊のころから犬猿の仲であり隊の関係をぎくしゃく
前二人と打って変わって不遜な態度を示す慧に対し、千鶴がさっそく横目で鋭い視線
﹁彩峰慧。突撃前衛希望、です﹂
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
22
﹁た、珠瀬壬姫です
えーとえーと⋮⋮がんばりましゅっ
﹂
!
評価していた。
﹂
なっていないようだが、仲間とともにその弱点を克服した精神をこそ、みちる達は高く
が、彼女にはそれを補って余りある狙撃の才能がある。あがり性の気質は完全にはなく
色はない。ドのつくあがり性というのは聞きしにおよび、見てもわかることではある
噛んだ。微笑ましさにほっこりしてしまうが、A│01メンバーの顔に侮りと失望の
!
今回の新任は、この5人だけではなく。
入れる。受け入れているのだが。
⋮⋮初々しくも頼もしい、新任達。これから苦楽を共にすることになる彼女らを受け
め、部隊の生存力の向上に大いに貢献してくれることだろう。
に自分を見失わないという長所にもつながる。身に着けたサバイバル能力の高さも含
一人、美琴のみだ。マイペースな性格はあらゆる局面で発揮されるようだが、それは常
元207B分隊は個性的な面々だが、この場において緊張の様子が全くないのはただ
﹁鎧衣美琴です。精一杯がんばります
!
23
ニンジャナンデ
﹂
﹁ドーモ、ヴァルキリーズ=サン。BETAスレイヤーです﹂
ニンジャ
!?
﹁アイエエエエエ
﹂
!?
新任があからさまにニンジャなのだ
﹁アイエエエ
!?
ニンジャが、207B分隊のメンバーとしてA│01に着任したのだ
コワイ
!
なかったことをこそ彼女らの強靭な精神力として誉め讃えるべきだろう。
うはならなかったというほどの、ニンジャの恐怖に震えるA│01たち。むしろ失禁し
ばニンジャアトモスフィアから逃れるすべはない。新兵として初陣を迎えた時でもこ
ない。これまで必死に視界に入れないようにしていたが、直接アイサツをされてしまえ
いかに歴戦の衛士といえど、A│01の彼女らもまたモータルであることに変わりは
!
国連軍の制服に身を包み、しかしなぜか﹁BETA﹂
﹁殺﹂と書かれたメンポをつけた
!
!
しいですから﹂
﹁大丈夫ですよ、BETAスレイヤー=サンはこう見えてBETA以外にはとっても優
﹁私達も、最初はこうだった﹂
﹁懐かしい反応だな﹂
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
24
﹁BETAに対して慈悲はないけどね﹂
BETAが地上を覆いつくし、人類の滅亡が極めて現実的な可能性となった未来。
そのマッポーの世に降り立ったニンジャ、BETAスレイヤー。
﹂
彼の戦いはまだ、始まったばかりだ
◇◆◇
﹁戦術機のOS
!
と、いかにユウコセンセイとはいえニンジャをまともに直視すれば失禁は免れえないが
ユウコセンセイは、書類から目を上げることがない。溜まった仕事が膨大であること
﹁戦術機の動きが悪いって、そりゃあんたからすれば⋮⋮い、いやなんでもないわ﹂
との会話を両立する。
横浜基地副指令としての執務をこなしながら、異様な風体の訪問者BETAスレイヤー
基地の最奥にて人類救済のために戦う女性こそ、ユウコセンセイである。執務室の机で
国連軍横浜基地の地下深く。かつてのヨコハマ・スゴイフカイハイブを改造したこの
﹁ウム﹂
?
25
故のことだ。初めて面と向かったときに晒してしまった醜態は、ユウコセンセイ自身の
テンサイを駆使して記憶から抹消してある。
を作れっていうわけね﹂
﹁確かに戦術機は強い。だがニンジャのカラテを引き出すには足りぬ﹂
﹁それで、あんたの記憶にあるXM3
なかに、悪くない手だ。
力を増強することに加えて、政治的なカードとしても使える可能性を秘めている。なか
る。当然ユウコセンセイでもなければたやすく作るはできないが、だからこそ現状の戦
といった戦術機の挙動自体は確かに現在の技術でも実現が可能で、なおかつ有用でもあ
カラテなどと異なり、シロガネタケル自身の記憶に由来するというコンボやキャンセル
体は、対BETA戦への対応としてさほど的外れでもない。ニンジャソウルに由来する
ユウコセンセイはBETAスレイヤーの提案を吟味する。OSを作るということ自
?
﹂
!
そしてユウコセンセイの命を受け、かつて社霞と呼ばれていたニンジャ、ヘイズシュ
﹁ハイ、ヨロコンデー
わ。私は知能指数が高いのよ。霞、さっそく取り掛かるわよ﹂
﹁私にとってもメリットがあるからよ。それに、この程度だったら難しいものでもない
﹁手を貸してもらえるのか﹂
﹁⋮⋮まあ、いいわ﹂
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
26
ラインがUNIXを操作する。BETAスレイヤーのニンジャソウルを自身の持つド
クシン=ジツによって読み取った結果、自身の魂もまたニンジャソウルとなった少女
だ。それ以来BETAスレイヤーからのインストラクションを受け、いまやそのカラテ
は熟練の衛士ですら遠く及ばぬものとなっている。ニンジャとモータルの間にある差
は、それだけ大きい。
だがそんな彼女の仕事は本来ユウコセンセイの補佐。彼女はニンジャとなってから
より一層鍛えられたUNIX技術を、今日も人類のために駆使している。
れなかった。このニンジャアトモスフィアに飲まれれば、どうなるか。天才の頭脳をし
脳がすっきりと晴れる感覚と共に寿命が縮んでいる気もするが、今は背に腹は代えら
﹁あー、イイ。遥かにイイわ﹂
キドリンクを一本煽る。
凄まじい精神疲労を避けられない環境だった。とりあえず引出にしまっておいたバリ
も被ろうと決意してはいたのだが、このニンジャ密度はさすがのユウコセンセイをして
そして、ユウコセンセイを頭痛が襲う。人類を救おうと、そのためならどんな汚名で
﹁⋮⋮はあ﹂
﹁よろしく頼む、ヘイズシュライン=サン﹂
﹁任せてくださいBETAスレイヤー=サン。さっそくOSの作成に取り掛かります﹂
27
﹂
てすら想像したくないことというのは、存在する。
◇◆◇
後日
佐渡島
イヤーッ
!
イヤーッ
﹂
!
うに過ぎている。
めた今日が初陣の衛士たちも、初陣の衛士が生き延びられる平均時間﹁死の8分﹂はと
以外の何物でもない。そのため全員が必死の奮闘をし、結果、BETAスレイヤーを含
新人が配属されているとはいえ、A│01は歴戦の精鋭部隊。任された戦場は最前線
ら溢れだし、その対応のためにA│01にも呼び出しがかかったのだ。
呼ばれる数減らしをしているにも関わらず、どういうわけか大量のBETAがハイブか
日本国内に唯一残る佐渡島ハイブから、BETAがあふれ出した。定期的に間引きと
﹁黙っていろ
!
﹁BETAスレイヤー=サン、私達のことは気にしないで、もう⋮⋮﹂
!
!
!
﹁イヤーッ
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
28
﹁アイエエエエエ
﹂
アイエエエエアバーッ
﹂
!?
!
!
ているに過ぎない。
︵ヌウゥッ、カラテさえ、カラテさえあれば⋮⋮
︶
射神経による機動によってBETAを翻弄し、辛うじて動けなくなった仲間達をかばっ
しかもBETAスレイヤーの武装は既にアウト・オブ・アモー。卓越したニンジャ反
し、戦力の低下は著しい。
いるのは、先任を除けばBETAスレイヤーの一機のみ。他はみなどこかしらを損傷
トを破壊され、と次々戦闘不能に陥っていく。既にして完全に五体満足の状態で動けて
だが状況は極めて悪い。長時間にわたる戦闘により一人が大破し、一人が跳躍ユニッ
奮闘があればこそだ。
たちと、そしてイクサにおいてはA│01すら上回る経験を持つBETAスレイヤーの
その中でなお旧207B分隊の隊員が生き残っていられるのは、熟練のA│01先任
術機ごと爆発四散していく。
ファロー﹂のごとし。BETAリアリティショック状態に陥った者から順に屠られ、戦
は既に戦術機部隊を包囲して、まさにミヤモトマサシのコトワザ﹁前門の虎、後門のバッ
しかし他の全ての衛士もそうあるわけではない。目の前に迫りくるBETAの大群
﹁コワイ
!
29
BETAスレイヤーはメンポの中で唸る。
戦術機は確かに強い。巨体とパワー、豊富な武装。それらを駆使すれば、BETAス
レイヤーが生身で戦うよりも多くのBETAをネギトロにすることができる。しかし、
しかしそれでもテックには限界がある。
カラテパンチならば一撃で倒せたBETAがいた。ヤリめいたサイドキックを放て
ればまとめて数体のBETAを葬れた局面があった。BETAスレイヤーは脳裏に浮
かんだそれら状況判断を必死に押し殺し、戦術機に見合った動きでBETAを屠り続け
ていた。
それでも、BETAスレイヤーは強い。今日が初陣とは思えぬ落ち着きを持っている
うえ、ニンジャ動体視力はあらゆるBETAの奇襲を許さず、ニンジャ耐久力がこれま
!
﹂
﹂
での長期戦を支え、ニンジャ腕力はいまだ衰えることなく操縦桿を握る。
﹂
だが、それでも。
﹁グワーッ
!
ば仲間が代わりに犠牲になるかもしれないという迷い。それらのいずれか、あるいはす
理由は何か。蓄積した疲労、戦術機の反応の遅れ、死角からの攻撃、回避してしまえ
﹁BETAスレイヤー=サン
!?
﹁IYAAA
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
30
べてがBETAスレイヤーの回避機動を鈍らせ、要撃級の格闘腕によるショートフック
がBETAスレイヤーの乗る戦術機を殴り飛ばした。
幸いウケミは間に合った。しかしダメージは深刻で、跳躍ユニットは全損。本体の動
きにこそ支障はない物の、もはやBETAを翻弄していた機動力を発揮することはかな
わないだろう。仲間達の悲痛な叫びが何よりその事実を証明している。
﹂
逃げてください、私たちに構わず、
だがそれでも、BETAスレイヤーは戦術機を立ち上がらせた。
だめです、BETAスレイヤー=サン
﹁⋮⋮スゥーッ、ハァーッ﹂
﹁⋮⋮
﹂
﹁そうそう、覚悟はできてるしさ﹂
﹁気に、しないで⋮⋮﹂
﹁珠瀬の言う通りだ。せめてBETAスレイヤー=サンだけでも
早く⋮⋮
!
﹂
彼女たちは覚悟を決める。ここで自分達が死ぬことになろうとも、BETAスレイ
な死に追いやるアブナイであることもまた理解していた。
ていないことを悟る仲間達。しかしそれはBETAスレイヤーを自分たちと同じ確実
通信から漏れ聞こえてくるチャドー呼吸に、BETAスレイヤーの闘志がいまだ折れ
﹁ええ、そうね。それが一番正しいって、わかっているでしょう
!
?
!
!
31
ヤーが生き残れば、自分達が生き延びて殺す以上のBETAを殺してくれるだろうと。
悲痛にして壮絶な覚悟を、乙女達は当たり前のこととして、既に胸の奥に受け入れてい
る。
⋮⋮その運命に抗う者は、この場においてただ一人。
BETAの大群を前にして、ジリー・プアー︵徐々に不利︶な状況を理解してなお否
﹁それはできぬ﹂
と叫ぶ、BETAスレイヤーのみである。
﹂
!?
と。全てのBETAを殺すこと。その双方を為すための力こそ、ニンジャソウルが授け
しかしそれを良しとする道理は、BETAスレイヤーにはない。全ての仲間を守るこ
も時に必要となるだろう。
生き残れば、より多くのBETAを殺せる。そうするためには、仲間を見捨てること
の優しさから生まれたものだ。
取るに等しい怒りの源は、仲間を、人々を、誰一人死なせたくないと願った一人の青年
殺し尽くし、幾多の世界で失われた命の復讐を果たす者。しかし、世界そのものを相手
そう、BETAスレイヤーはBETAを殺す者。この地上に蔓延る全てのBETAを
﹁私はBETAを殺す。全て、殺す。慈悲はない。⋮⋮それだけだ﹂
﹁なっ、何を言っている
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
32
﹂
たカラテであり、シロガネタケルの鍛えたテックを操る技術なのだから。
﹂
﹁IYAAA
﹁ヌゥッ
!
ことなどベイビー・サブミッションであったというのに⋮⋮
BETAスレイヤーの胸中に湧き上がる怒り、悔恨、焦り⋮⋮
迫りくる突撃級が
どうする、どうするBETAスレイヤー
!
激突するまで、残る距離は畳30枚分
戦術機の脚力ではすでに避けられない
!
!
!
!
あるいは、カラテを自在に使うことができたならば。この程度のチャージを回避する
せめて跳躍ユニットが生きていれば。
気付かされる。
ETAスレイヤーの操る戦術機はもはや回避の術を持たないことにこのときはじめて
正面から迫りくる突撃級BETAの、スモトリに匹敵するブチカマシを前にして、B
しかし、現実は非情である。
!?
⋮⋮そのとき
!
33
﹃BETAスレイヤー=サン
Wasshoi
﹂
!
﹄
!
!
声が、UNIXから響き渡る
﹁
に戦術機を駆る
﹂
﹄
!?
畳1
さらにそのままパルクールめいて周囲の地形を
最短距離で走り、体当たりを失敗して通り過ぎた突撃級BETAの背後に肉薄
!
﹁イヤーッ
﹂
中腰姿勢の戦術機が放ったパンチ⋮⋮あれは、ポン・パンチだ
﹁ABAAAA
!?
!
背後の弱点を突か
れた突撃級BETAはそのまま地面と水平に吹き飛び、その先にいた戦車級や闘士級を
!
﹂
枚分、すなわち人間サイズに換算してワンインチ間合いへと瞬く間にたどり着き⋮⋮。
!
事突撃級の攻撃をかわしてのけた
きから打って変わり、まさしく人間めいて跳躍。側転からの5連続バックフリップで見
すると、おお、見よ。BETAスレイヤーの操る戦術機は先ほどまでのぎこちない動
﹃イヤーッ
!
!
その声に導かれ、BETAスレイヤーは操縦桿を力強く握り、カラテシャウトととも
!
﹁IYAAA
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
34
引き潰し、要撃級や要塞級BETAの脚にぶつかるたびピンボールめいて跳ねまわり、
周囲にBETAにとってのアビ・インフェルノを巻き起こす弾丸となった。
﹂
!?
ズも恐れずこの瞬間のために持てる力の全てを賭してくれたことを雄弁に物語ってい
う。画面の隅に映るザゼンドリンクの空き瓶の数は、ヘイズシュラインがオーバードー
おそらく、この突貫作業は彼女にとっても限界を越え、危険を伴うことだったのだろ
成し遂げたヘイズシュラインは額の汗をぬぐい、垂れる鼻血をメンポで隠した。
いることを告げてくる。戦闘中の戦術機に直接OSを転送するなどというタツジンを
ヘイズシュラインの言葉に被さり、電子マイコ音声が新OSへの書き換えが行われて
︿新OS転送中ドスエ。最低限のモーションパターンは転送済。残り10%ドスエ﹀
が、成功したようです﹄
﹃頼 ま れ て い た O S が よ う や く 完 成 し ま し た。戦 闘 中 の 直 接 転 送 は 危 険 な 賭 け で し た
を映しだした。
理解しきれていないBETAスレイヤーの目の前に、UNIXがヘイズシュラインの姿
咄嗟のことで、流れるようなカラテ・ムーブメントがなぜ実現できたのか、当人自身
﹁ヘイズシュライン=サン
﹃なんとか間に合ったようですね、BETAスレイヤー=サン﹄
﹁こ、これは⋮⋮﹂
35
る。
︿新OS転送完了ドスエ﹀
OS転送中というある種無防備な状態でありながら、BETAスレイヤーは周囲への
警戒を怠らず、それを察してかBETAは遠巻きに様子を伺い、攻めては来ない。突然
見違えるほどの動きをしたことを警戒しているのだろう。
だがそれは、絶望的なまでに悪手だった。もしもBETAに未来を見通す能力があっ
たのであれば、たとえ佐渡島ハイブの全BETAをこの瞬間のBETAスレイヤーにぶ
つけて、刺し違えてでも倒していたに違いない。
OSが書き換わったのと同時、戦術機の全身に力が満ちたように感じたのは気のせい
﹂
か、はたまたニンジャ第六感の為せる技か。
!
﹁KARATE⋮⋮カラテ
﹂
この瞬間、戦術機に、モーターシラヌイに、カラテが満ちた
!?
﹄
!
!
Terrestrial Enemy⋮⋮KARATEです
﹃Karate Abnormal Reaction Against extra
しかし真実、それは錯覚ではない。
﹃いいえ、違います。このOSの名は⋮⋮﹄
﹁おお、これが⋮⋮XM3
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
36
ニンジャ。
ニンジャとは、平安時代の日本をカラテによって支配した半神的存在である。しかし
現代に生きるニンジャはそのほとんどが、突然宿ったニンジャソウルによって心身を変
じたものに過ぎない。かつてのニンジャがキンカク・テンプルでハラキリ・リチュアル
を行ったことで、時空を超えてディセンションしたニンジャソウルが宿った者が、イン
ストラクションや己のトレーニングによってカラテを満たすことによってニンジャと
なる。
では、モーターシラヌイはどうか。
戦術機のソウルともいうべきコクピットに座すパイロットはニンジャ、BETAスレ
イヤー。そしてその身に満ちるのは、ヘイズシュラインがBETAスレイヤーのカラテ
を十全に発揮するために作り上げた新OS、KARATEの力。
ソウルにニンジャを、体にカラテを。それぞれ宿したモーターシラヌイはもはや、実
際ニンジャである
!
カラダニキヲツケテネ
﹄
﹃は い。私 が で き る こ と は こ こ ま で。⋮⋮ 信 じ て い ま す、B E T A ス レ イ ヤ ー = サ ン。
﹁⋮⋮感謝する、ヘイズシュライン=サン。必ず朗報を持って帰る﹂
37
!
力強い励ましの言葉とともに通信が切れる。これで戦場に残るのは、朽ちかけた戦術
機たちとモーターシラヌイ、そして無数のBETAのみ。
だがもはや、BETAスレイヤーに恐れも焦りもない。目の前の全ての敵は、元から
変わらず殺すべき敵。そして不安は全て消え去った。ゆえに。
モーターシラヌイは、アイサツを決めた
礼節
!
こには、﹁BETA﹂﹁殺﹂と書かれたメンポが
そし
カメラアイにセンコめい
いつの間に現れたのか、顔の下半分を覆うマスク装甲が焼き付き浮かぶ文字
て、おお、なんと⋮⋮全身の装甲が、赤黒く染まっていく
た赤い光が灯る
!
ということだけが確かだった。
ネニンジャめいた存在へと変わったか。ただ一つモーターシラヌイにもはや敵はない
ボディの内に膨れ上がったカラテの作用か、はたまたモーターシラヌイ自身がサイバ
!
!
!
集団にざわめきが走る。しかしモーターシラヌイはそれを意に介さず顔を上げ⋮⋮そ
決断的なアイサツは言葉を解さぬBETAにすらカラテを伝えたか、一瞬BETAの
!
﹃ドーモ、BETA=サン。BETAスレイヤーです﹄
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
38
﹃BETA殺すべし。⋮⋮慈悲はない
﹄
それに対してBETAスレイヤーは避けず、
そして、モーターシラヌイがジュー・ジツを⋮⋮構えた
﹂
﹂
﹄
﹁IYAAA
﹃イヤーッ
﹄
だ終わっていない。
﹃イヤーッ
﹃あれは伝説のカラテ技、サマーソルトキック
ゴウランガ
!
!
して天高く舞い上げた
この攻防を見てからも、明らかだ。既にBETAという巨大な生物は、モーターシラ
!
バク宙を繰り出しながらの蹴りあげが要撃級の首めいた部分を捕え、一撃で刈り飛ば
!
﹄
て反りかえっていた首のような器官がうつむき苦悶の様子。だが要撃級のジゴクはま
ショートフックを返した。胴体に突き刺さるモーターシラヌイの拳に、サソリの尾めい
防がず、逆らわず、受け流すことで得た回転力をカラテに変えて、懐に飛び込んでの
迫りくる要撃級の右ショートフック
﹁GUWAA
!
!
!
!
!
!?
39
ヌイと一体化したBETAスレイヤーにとっての獲物に過ぎない。ニンジャでない存
在など、今のBETAスレイヤーの前では等しく有象無象の塵芥。すなわち、全てのB
ETAがネギトロになる未来を運命づけられたということだ。
﹂
﹃貴様たちは殺す。ハイクを詠め﹄
﹁⋮⋮無理だと思うわよ
﹂
﹄
﹁気にするな速瀬。おそらく我々の理屈は通じない﹂
?
﹃イヤーッ
﹄
﹂
﹂
﹄
要塞級の頭を掴み、下半身に伸びるトゲに向かってアラバマ落とし
﹁GUWAA
﹃イヤーッ
突撃級の背後にヤリめいたサイドキック
﹁GUWAA
!
!
!
す
!
群がる戦車級の群れを、一発のポン・パンチが巻き起こした衝撃波がすべて吹き飛ば
﹁GUWAA
!
!
!
!
!
﹃イヤーッ
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
40
﹃イヤーッ
イヤーッ
﹁GUWAA
﹂
﹁GUWAA
イヤーッ
!
﹄
!
足元の闘士級や兵士級に激しいストンピング
﹂
﹂
﹁GUWAA
!
モーターシラヌイのカラテの前に次々と爆発四散する。
はるか彼方より、自身を狙
しかし、BETAにもまだ一つだけ、反撃の手が残されていた
﹄
BETAスレイヤーのニンジャ第六感が危機を告げる
﹃⋮⋮ヌゥッ
う者がいる
く、BETAスレイヤー諸共爆発四散する運命は避けられない。
て死ぬ。ただでさえ正確な狙いを持つ光線級の狙撃が放たれてしまえば逃れる術はな
いたことを。いかにモーターシラヌイといえど、レーザーの直撃を受ければ機体が焼け
金属雲の間隙をついて、はるか畳3000枚分の彼方から自身を狙う光線級BETAが
そのとき、BETAスレイヤーは知らなかった。戦闘が長引き濃度が下がってきた重
!
!?
!
!
戮者が赤黒の風となる。周辺のBETAはただ為す術もなく、BETAスレイヤーと
まさにマッポーの一側面。縦横無尽に戦場を駆け、その行く先々でBETAを屠る殺
!
!
!
!
41
﹂
光 の 速 さ で 致 死 の 熱 線 が モ ー
⋮⋮先ほどまでの、モーターシラヌイであったならば
﹁IYAAA
チ ャ ー ジ が 完 了 し た 光 線 級 B E T A の レ ー ザ ー
ターシラヌイに迫りくる。
﹄
だが、既に
!
知したレーザー照射のコンマ1秒前に流麗なブリッジ回避を決めていたのだ
いか
なんとモーターシラヌイは間一髪、ニンジャ第六感によって察
!
!
!
おお、ゴウランガ
!
だ。
﹃⋮⋮イイイィィ﹄
級へと向き直り、体勢も整えた。
でにこちらを狙った光線級の位置をニンジャ視力で特定している。着地と同時に光線
すぐさまバックフリップで狙われた位置から離れたBETAスレイヤーは、その時す
!
!
﹃イヤーッ
﹄
モーターシラヌイを爆発四散せしめるはずだったレーザーは、ただの空を焼くだけ
に絶対の命中精度を誇るレーザー級とはいえ、ニンジャの前ではゴジュッポ・ヒャッポ
!
!
﹃イヤーッ
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
42
そして、その手に⋮⋮光が集う
モーターシラヌイが作り上げた物。それは⋮⋮スリケンだ
﹄
たスパークが走るその腕に込められた力は人知を超え⋮⋮ついに
﹂
放たれる
!
カラテを込めて作り上げられたスリケンを放つのは、モーターシラヌイの腕。縄めい
!
ザーを減衰する役目を担っていた重金属雲。戦場に漂うその粒子を手の中で凝縮させ、
その正体は、レーザーから戦術機を守る重金属粒子。レーザー級に迎撃させ、レー
!
!
音速を超えたスリケンは空気を斬り裂いてソニックブームを巻
﹃イィィヤアァァァァーーーーーッ
﹁GUWAA
ツヨイ・スリケン
﹂
﹂
﹁GUWAA
!
﹁GUWAA
!
﹂
!
畳3000枚分の距離の先にいた再チャージ中の光線級はレーザー
!
を放つレンズを完璧に両断され、爆発四散した。
ブルズアイ
﹁⋮⋮ABAAA
す先には当然、BETAスレイヤーを狙った光線級BETA。
き起こし、周辺のBETAすらマグロめいて真っ二つに斬り裂きながら飛翔する。目指
!
!
!!
43
﹁す、すごい⋮⋮﹂
﹂
﹁これが、BETAスレイヤー=サンの本当の実力⋮⋮
﹁⋮⋮いや、なんか違わない
﹂
!
﹂
﹃気にしちゃダメよ水月。BETAスレイヤー=サンのカラテに不可能はないみたいだ
?
あんたもそっち側に行くつもり
!?
から﹄
!?
イヤーッ
!
﹃イヤーッ
﹁ABAAA
﹂
﹁ABAAA
!
イヤーッ
!
﹄
!
一つの仕損じもなく、一つのスリケンが複数のB
!
ETAを貫くことすらある正確無比にして慈悲のないワザマエを見せつけられて生き
つヒサツ=ワザ、ヘル・タツマキ
BETAの密集地点に飛び込み、回転しながら飛び上がって全方位へとスリケンを放
﹂
﹂
﹁ABAAA
!
!
紛れもなく、人類にとっての希望だった。
に等しく死を運ぶ赤黒の風となって戦場を駆けるその姿はまさしく死神であり、しかし
ヤーの圧倒的なカラテと、それを完全に実現してのけるモーターシラヌイ。BETA達
A │ 0 1 の メ ン バ ー は 唖 然 と し て 事 態 を 見 守 る よ り ほ か に な い。B E T A ス レ イ
﹁遥
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
44
残っていたBETAは、もはやない。
モーターシラヌイはわずかに残ったBETAをすべて一つ所に誘導し、一網打尽に仕
留めてのけたのだ。カラテ、テック、状況判断。全てを兼ね備え、もはや大地にBET
スゥーッ
ハァーッ
﹂
Aの影は一つとしてなく、BETAスレイヤーが、モーターシラヌイだけがそこに立つ。
ハァーッ
﹄
!
﹁ハァ⋮⋮ハァ⋮⋮。スゥーッ
﹄
!
どうした、返事がないが⋮⋮BETAスレイヤー=サン
﹃やりましたね、BETAスレイヤー=サン
﹃む⋮⋮
!?
!
む疲労に逆らえない。
NIXから聞こえるIRC通信に応えることもできず、BETAスレイヤーは全身を包
BETAスレイヤーがコックピットの中で気を張っていられたのはその時まで。U
してしまった。
烈であるがゆえに、それを操るBETAスレイヤー自身の血中カラテもまた大量に消費
積されていた。モーターシラヌイの巨体と機械のパワーから繰り出されるカラテは強
える。あまりにも激しい戦いは、BETAスレイヤー自身の体にも深い疲労となって蓄
モーターシラヌイのコックピット内で、BETAスレイヤーはチャドー呼吸で息を整
?
!
!
45
マシン・オブ・ヴェンジェンス・ウィズ・カラテ
46
ただ一つの心残りとして、ヘイズシュラインにスシを用意しておいてくれと頼むこと
を忘れたことに、自分の腹が鳴る音で初めて気が付きながら。
ついにこの星に、BETAスレイヤーの真なる力が解き放たれた。
しかし地上に蔓延るBETAはいまだ数限りなく、モータルを虫けらめいて殺してい
る。その全てを滅ぼす日まで、戦え、BETAスレイヤー
登場人物名鑑
モーターシラヌイ
が出現して﹁BETA﹂
﹁殺﹂の文字が刻まれ、全身のカラーリングが赤黒く変色し、カ
KARATEのインストールは実戦の最中に行われ、完了と同時にマスク状のパーツ
身が持つカラテの全てを戦術機のサイズとパワーで繰り出すことが可能となっている。
違いがないが、搭載しているOS︿KARATE﹀の力により、BETAスレイヤー自
スレイヤー専用カスタム機。元々ハード自体の拡張性が低いため他の機体とほとんど
日本の暗黒メガコーポ三社合同で開発された第三世代型戦術機︿不知火﹀のBETA
!
47
メラアイにセンコめいた赤い光が灯るという謎のカラテ現象を示す。
戦術機にとってのソウルともいうべきパイロットとしてニンジャを、そして体を動か
すOSをカラテとすることで、実際ニンジャに等しい存在となった。そのため﹁BET
Aスレイヤーが動かす戦術機﹂というよりも﹁機械の体で巨大化したBETAスレイ
ヤー﹂と言える。BETAに対する戦闘能力は極めて高く、単独でのハイヴ攻略すら可
能ではないかと推測される。
戦術機が使える武装をそのまま使える他、徒手空拳によるカラテの数々と、対レー
ザー弾頭が展開する重金属雲の粒子を集めてスリケンを作り出すことが可能。
エターナル
ユウコセンセイがNRSにやられてうっかり作ってしまった、BETAスレイヤーの
身体能力を再現できるサイバネ義足をとりつけられたスズミヤハルカのこと。常人の
三倍の脚力を持つ。