SKI000802 - 天理大学情報ライブラリーOPAC

学習,体験。
対象者観がソーシャルワーク 専門職 性 形成に及ぼす 影響
一英分散構造分析の 手法を用いて 一
南
彩子
[キーワ一円
共 分散構造分析、 専門職住獲得,リフレクティブ・フラクティショナ
一
はじめに
利用者が安心して 援助を求めることの 出来る専門職性の 高いソーシャルワーカーとは、
ソーシャルソーカ 一なのか。 この疑問に答えていくために、
て研究したのが、 『ソーシャルワーク 専門職住自己評価
どのような
ソーシャルワーク 専門職性の内容につい
一 Social
Work Proficiency Inventory一 d
(南 ・武田 2004 、 相川書房刊 ) であ る。
さらに、 そうした専門職性の 高いソーシャル
を行
う
一力一の養成に 資するために、 社会福祉の専門教育
ヮ
大学では、 学生に対してどのような 方向づけをすべきなのか。
その疑問が、 本研究の出発点で
これまでの一連の 研究 u と、 天理大学における 約 13 年間にわ
あ る。 この疑問に答えていくために、
たる大学教育実践とを 足がかりにして、 ソーシャルワークの 専門職 性 獲得に影響を 及ぼす要因を 明ら
かにしたいと 考えた。 方法としてほ、 先行研究と 13 年間の教育経験から 仮説を構築し、 仮説をパス 図
にまとめた多重指標モデルにおける
変数間の関係を 統計的に検証するために、 共 分散構造分析 2) を用
いて分析する。 共 分散構造分析は、 「社会。 自然現象の因果関係を 調べるための 統計的手法」であ り、
「ものごとの
因果関係を明らかにすることは、
れる」もので、
「
共 分散構造分析はこのような
あ
らゆる分野で 判断あ るいは行動をする 上で必要とさ
因果関係を、 観測 t れた現象に基づいて 明らかにする」
ものであ る (山本・小野寺、 1999:1L。
重 回帰分析ではなく、 共 分散構造分析を 用いたのは、 1 度の分析で抽出した 因子の妥当性を 検証す
る確認的因子分析と 潜在変数間の 関係を明らかにするパス 解析を同時に 行 う ことができ、 潜在変数と
観測変数の両方を 扱ってその因果関係を 検証し、 統計的にも誤差を 蓄積することなく、 正しく解が得
られるためであ る。 また、 Amos5.0 の「指定検索機能」を 用いることによって、 候補となっている 幾
。 。k 基準 ) の値が最も小さい べ ストモデルを 検索し、 説明 力
つかのモデルのなかから、 BCC(Browne-Cud
が低いパスを 理論的に削除することが 可能であ る。 そうして、 適合 度 指標の値の優れた、 最も当ては
まりの良いモデルを 構築し、 ソーシャルワーク 専門職住形成に 影響を及ぼす 要因と、 それらの関連性
について検討していくことを
目的とする。
「、 研究の枠組み
い ) 研究枠組と仮説
先行研究や社会福祉士養成テキスト
等において、 高い専門職性を 有するソーシャルワーカーが
ていくためには、 「価値」「知識」「技術」の 習得が大事であ ることは自明のこととして
が、 この言葉は極めて 抽象的概念であ る。 そこで本研究においては、
育っ
述べられている
「価値」「知識」「技術」という
言
葉を使わずに、 もう少し具体的な 概念に置き換えて 仮説を構成し、 実証的研究を 進めていこうと 考え
た。 その際 Schdn,D.A. 等による「リフレク テ イブ・プラクティショナー。 モデル」
Practltioner Model
: 反省的実践
(Sch6n,D.A.1983 . 佐藤 1996 、
Ⅰ
(Ref ective
Ⅰ
家 モデル ) における体験と 学習を重視する 考え方を参考にした
997
. 秋田
1ggf
.
山口 他 2004) 。 さらにソーシャルワークという
が援助理念や目的として 内在化すべき 価値を根底にもつことが 最も尊重されるべきであ
一5 一
職種
るという視点、
から、 あ るべき ソ 一 シャルワーカー 像に近づいてゆくためには、
当の学習量
と
専門職としての「対象者 観 」と、 相
、 対象者と関わる 体験とが必要であ るという知見を 盛り込んで、 「ソーシャルワークの 専
門職住 は 、 ライフタイムにおける 学習の質量と、 体験の質量と、 それらに影響を 受けつっ培われた 対
豪者 観 とによって影響を 受け、 獲得されていく」という
対象者観には「高齢者観」や「障害者観」等があ
出発点となる 仮説を設定した。
るが、 本論文においては 学生を対象としているた
め、 彼らにとって、 より身近で一般的であ る「高齢者観」に 焦点を当てて 研究していきたい。
(2) 用語の定義と 概念の整理
①ソーシャルワークにおける
専門職性の定義
本研究では専門性あ るいは専門職 性 に関する従来の 種々の定義 (Wilensky,H,L. 1964 : 142 、
Vollrner,H,W.& Mills,D.L, 1966
:
7 一 8 、 Etzioni,A. 1969
:
5 、 石村 1969
結果、 ソーシャルワークにおける 専門職性を以下のように 定義する。
有する専門職としての 成熟性」であ り、 本論文で問題にするのは、
: 25 一 26
個 ) をレビュー した
「専門職 性 」とは「当該専門職が
「個人の専門職
性 」であ る。
の 専門職住」とは、 「ソーシャルワーカーを 目指す学生あ るいは現にソーシャルターカーとして
いる者にとっての、
②対象者 観
。
あ るべき理想のソーシャルターカー
「個人
働いて
像への到達度であ る」と定義する。
高齢者観の定義
対象者 観 とは、 「ソーシャルワークの 援助の対象となる 人々に対して 抱いているイメージ、 観方・考
え方、 態度等の総称であ る」と定義する。 抽象的な概念ではあ るが、 認知・認識・ 感情レベルのもの
で、 個人のなかに 前提として存在して、 実際には援助場面における
れる。 ソーシャルワーク は価値実現という 使命をもつ専門職であ
態度・行動として 表れると考える
るから、 自分自身の対象者観を 吟味
しておくことほ 最も大事なことの 一つであ る。 本論文では、 学生にとってより 一般的であ る高齢者観。
を 通して議論していきたい。
したがって高齢者観とは「高齢者に
対して抱いているイメージ、
観方。
考え方、 態度等の総称であ る」と定義する。
③学習。 体験の定義
学習とは、 「教育機関における 教師からの直接的な 知識や当該専門に 関して学生自らが 教科書や参
考図書を通して 学ぶことや、 実習等に よ る体験学習
(直接的学習 ) およびテレビ・ 新聞・映画。本筈
を 通して間接的に 学んだ知識の 修得 (間接的学習 ) の両者を含む 学習を含む」ものとする。
体験とは、 「ライフタイムにおける 祖父母その他の 多様な対象者との 接触経験、 実習を通しての 対
象 者との接触体験、 ソーシャルワーカーとしての 援助体験等を 含む」ものとする。
成 概念と尺度の 構成
次に、 仮説に含まれる 4 つの概念 ( ソーシャルワークの 専門職 性 、 学習の質量、 体験の質量、 高齢
者観 ) について、 その構成概念と 尺度について 述べていく。
①ソーシャルワーク 専門職住 め
ソーシャルワーカ 一のための専門職住評価尺度
(Social W0rk Proficiency Inventory) 7 領域 42
項目に関しては、 あ らゆる領域のソーシャルワーカ
一に対する何度かの 調査と調査結果の 因子分析等
によって確定したものであ
問職 性 到達度評価尺度
る。 また、 ソーシャルワーカーをめざす
: 学生飯
(So。 "l Work Prof
ぇ
ぇ
。 iency
学生のためのソーシャルワーク
専
Inventory for Student,) は、 以下の表
1 に示す 5 領域 30 項目であ ると考えた。 5 領域とは、 使命感、 倫理性、 自律性、 知識・理論、 専門的
技能であ る。
一6 一
②高齢者観に 関する
先行研究によれば、 高齢者観を測定する 妥当性。信頼性の高いスケールというものは
らず、 試行的に実施されたスケールに
関しても今後の 検討の余地を 残していることが 記述されている
(馬場。 中野。 冷水等 1993 :8)。 東京都老人問題総合研究所においてその
を継続研究しているという
開発されてお
後高齢者観スケールの 開発
報告も見当たらない。 そこで、 本研究においては、 中谷の指摘 (中谷 1991
:
13-14) にもあ るように、 態度的な意味を 含ませるのが 妥当であ るとして高齢者観の 操作的定義とし
て「高齢者に 対する主観的なとらえ 方
」
としているのを 参考にして、 態度的側面を 中心として尺度構
によれば、 「特定の対象に 対し、 一定の仕方
成を行った。 態度とは、 Rosenberg & Crutchfield(1960)
で 反応する傾向であ る」と定義されている。 そして態度は、 感情 (afect) 的側面、 認知 (cognition)
的側面、 行動 (behavior)的側面の 3 つの次元によって 構造的に把握することができると 述べられてい
る (Rosenberg & Crutchfiel 。L、 1960
:
1-14) 。 これは、 わが国における 原岡 (1970) や山内れ 996)
によっても検証されている。
そこで、 今回使用する 高齢者観 (高齢者に対する 態度 ) の構成概念は、 これら先行研究の 知見から、
感情的側面、 認知的側面、 行動的側面の 3 つから成ると 考えた。 感情的側面とほ、 感情の言語的表現
を意味し、 下位概念として 高齢者に関心をもっていることと、
高齢者の身にな って高齢者に 共感しよ
うとするという 2 項目を考えた。 認知的側面とは、 信念の言語的表現を 意味し、 下位概念として、 学
ぶことが多いということと、
教えてあ げたり情報提供したりしょうと
思 う という 2 項目を考えた。 行
動的側面とは、 行動に関する 言語的表現を 意味し、 下位概念として、 高齢者とともに 過ごすことが 好
きであ る、 高齢者と話をすることが
好きであ るという 2 項目を考えた。
③学習。体験の
ソーシャルワークの 専門職 性 獲得に必要な「学習と 体験」についての 質問項目に関しては、 文献 調
査や筆者自身の 大学における
スカッションのなかからまず
13 年間の教育体験およびソーシャルワークを
専門とする教員間のデイ
12 項目を選定した。 学習・体験・ 高齢者観の構成概念と 尺度構成は 、 表
2 の通りであ る。
(4) 調査対象者の 概要と倫理的配慮
本研究においては、 質問紙を用いてのアンケート
調査を実施した。 対象者は、 天理大学の学生およ
び高齢者関係施設・ 機関に就職している 卒業生であ る。 在学生に対しては、 無記名式で配 票 調査 法 に
よって実施した。 調査時期は、 2004 年 3 月末日∼ 4 月 10 日、サンプル数は、 2004 年度入学 1 年生 (入
学 直後 ) 36 名、 2 年生 26 名、 3 年生 23 名、 4 年生 23 名であ る。 欠席者を除いて 全数調査であ る。
さらに 2004 年 3 月に 2003 年度卒業直双の 学生 27 名に対しても 同様の調査を 行った。 また、高齢者 関
係 施設・機関に 就職している 卒業生に対しては、 無記名式で調査の 意図を説明した 文書を添付した 上
で、 郵送調査を行った。 郵送 致 50 の 内 返送されてきたのが
計 サンプル数は 165 であ る。
一7 一
30 サンプル、 回収率 60.0% であ った。 合
表
Ⅰ
[学生服] の構成概念と 尺度構成 (南 ,武田2005)
ソーシャルワーク 専門職住到達度評価尺度
Social@Work@Proficiency@Inventory@ for@Students(SWPI-s)
1 使命感の程度を 測る項目
ェ
福祉の仕事を 努力して続けることにより 自己実現をはかれると 居、
2
福祉の仕事は
3
福祉の仕事は、 他者に献身するという 側面をもっていると 思
4
単に生活の手段としてではなく、 福祉の仕事に 対して、 一種の使命感をもっている
5
福祉の仕事は、 ソーシャルワークの 価値を実現するための 仕事だと認識している
6
福祉の仕事は、 公共の福祉に 貢献するものであ ると思
、
う
弱い立場の人や 権 利が侵害されている 状態にあ る人の 力 になる仕事だと 思
う
う
う
倫理性の程度を 測る項目
Ⅱ
7
ソーシャル ヮ 一カ一の倫理綱領をよく 理解している
8
ソーシャル ヮ
9
判断に迷 う時、 倫理綱領を参照しょうと 思 う
Ⅰ
0
一力一には何故倫理が 問われるのか、 その理由を理解している
所属機関や同僚の 非倫理的行動を 見過ごすことはしないと 思
11
いかなる状況にあ ろうとクライェン
12
クライェン
ト
ト
の人としての
には、 中立・公正な 態度で接したいと
う
尊厳を守ることを 念頭におきたいと 思、
ぅ
思う
自律性の程度を 測る項目
m
Ⅰ
3
他職種と協働するとき、 場合によっては 裁量権を発揮したいと 思
う
14
ソーシャルワーク 援助の進め方を、 自分自身の判断で 決定することが 出来ると思う
15
他者の指示によらず 仕事を進めていくことをめざしたいと 用、 5
16
クライェン
17
責任を伴った 判断をしなければならない 場合には、 すると思う
18
開業することもできる 仕事であ ると用、
W
ト
の自己決定を 実現するために 必要に応じて 援助チームの 中で主導権 を握れると居、
ぅ
ぅ
知識・理論の 程度を測る項目
19 社会福祉に関する 幅広い知識を 系統立てて学んでいる
20 援助の対象となる 領域 (障害者・老人・ 児童等) に関する幅広い 知識を身につけている
21
クライェン
ト
を理解するための 諸理論を学んでいる
22 幅広く、 かつ最新の社会資源の 情報を有している
23 人とそれを取り 巻く状況を理解する 幅広い知識及び 洞察力を有している
24 複数のソーシャルワークの 援助理論を学んでいる
V
専門的技能の 程度を測る項目
25
クライェン
ト
との間で適切な 人間関係が築けると 居、 ぅ
26
クライェン
ト
のおかれた状況やその 問題に対してアセスメントを 行い、 援助計画を立案できると 無げ
27
問題解決の方法について、 創造的・効果的に 工夫できると 思
28
クライェント 自身の力を引き 出すよ
29
個職種や同僚とうまく 連携し、 適切な人間関係が 築けると思
う
心がけたいと 思
う
う
う
3to 必要に応じて 社会に向かって 行動や発言をすることができると 思 う
一8 一
表2
学習・体験・ 高齢者観の構成概念と 尺度構成
構成概念
学
下
習
Ⅰ
2
位 尺 度
高齢者関連の 法律 (老人福祉法や 介護保険法華 ) を読むことによる 学習機会
高齢者関連の 白書 (高齢社会白書、 図説高齢者白書、 厚生労働白書等 ) を読むことに
よる学習機会
3
講義などを通して 直接高齢者に 関して学習する 機会
4
高齢者関連の 新聞記事等を 読むことによる 学習機会
5
高齢者を取り 扱ったテレビ 番組や高齢者が 主人公のドラマ・ 映画・ビデオ等による学
習機会
6
接
触
体
高齢者が主人公の 小説やその他の 本等を読むことによる 学習機会
験 7 祖父母に祝い 事をしてもら
ぅ
等の忘れられない 思い出
食事をしたり、 遊びに行ったりした 接触経験
8
祖父母と一緒に 話をしたり、
9
親戚の高齢者と 一緒に話をしたり、
食事をしたり、 遊びに行ったりした 接触経験
10 近所の高齢者と 一緒に話をしたり、 食事をしたり、 遊びに行ったりした 接触経験
11 実習を通して 高齢者と関わった 体験
12 ボランティア 等を通して高齢者と 関わった体験
高
齢
者
観
13 高齢者に関心をもっている
14 高齢者の身になって、 高齢者に共感しょうとする
15 学ぶことが多い
16 教えてあ げたり、 情報提供したりしょうと 思 う
17 高齢者とともに 過ごすことが 好きであ
18 高齢者と話をすることが 好きであ
る
る
(5) 調査。 分析方法
調査仮説を実証するために、
以下の手順で 分析を行なった。 まず、 学習,体験・高齢者観に関する
主要な要因を 発見し軸を規定するために
探索的因子分析を 行なって
れる構成概念間の 因果関係を明らかにするためにソーシャルワーク
連性を示す多重指標モデルを
構築し、
共 分散構造分析によってその
4 要因を抽出し、 次に仮説に含ま
専門職性を規定する 要因とその関
適合性を検証していった。
これら
一連の分析には、 統計解析ソフト SPSS Verl2.0 、 および Amos5,0 を用いた。
2 、 結果
( ) 対象者の基本的属性
「
調査対象者は、 天理大学に在籍中の 学生 135名、 および卒業生で 高齢者関係の 施設・機関
と
交流することの 多い職場を選定した
)
(高齢者
で福祉職として 働いている者 30 名、 計 165名であ る。 その主
な基本的属性は、 以下の表 3 に示したとおりであ る。
一9 一
表3
対象者の基本的属性
N
ノ﹃
T
カ
目
項
性別
t02 i 6
女性
無 回答
1
0.60%
663370
322223
21.80%
l
年生
2
年生
15.80%
3
年生
13.90%
4
年生
13.90%
卒業直前学生
16.40%
卒業生 (高齢者関係,福祉職 )
18.20%
りし
有無
信仰の有無
80%
62 1 37.60%
男性
学年別 (在学・卒業 )
Ⅰ・
92 I 55.80%
72 I 43.60%
佐臣
回
無
祖父母との同居経験
有り
105 I 63.60%
無し
60@[email protected]%
00O
55
O0
00
848
521
32
l上
O6
27
63
不健康
できる範囲で 世話をするという
70
家族で世話をするのは 当然とし
54
847
41
422
家族で世話をしたくないという 意向
243
両親の祖父母の 世話
663
回
答
健康
祖父母の健康状態
23
りし
有無頼
現在の同居の 有無
0.60%
N Ⅱ 65
(2) 分析結果
追分析に用いる 潜在変数と観測変数の 確定手順
ソーシャルワークの 専門職住獲得に 必要な「学習と 体験」そして「高齢者観 (高齢者に対する 態度 )
ほ ついての質問項目は、 まず 18 項目を選定し、 165 サンプルに対してライカート
」
式評定尺度 法 により
調査した回答結果を 得点化し、 各項目ごとに 平均値。標準偏差を算出した。 結果、 標準偏差の刀、 憶い
もの (極端に分布の 偏った変数 ) 2 項目 ((実習体験 ) (ボランティア 体験 )) を 削除し、 残る 16 項目
を 用いて、 因子間の相関を 認める科文回転
(プロマックス 法 ) を伴う重みづけのない 最小二乗法によ
り因子分析を 実施し、 因子構造を探索した。 さらに因子に 対する共通性の 低い 5 項目 ((近所高齢者接
触 ) (高齢者への共感 ) 塙 者からの享受機会 コ塙齢 者への情報提供機会 ) (高齢考への関心
し、 残る 10 項目を用いて 分析し、 さらに因子付加量が 0 . 4 を下回る 2 項目㏄親戚高齢者
コ
) を 削除
接搬伴習
機会 )) を 削除して、 再度因子分析を 行った結果、 因子数を 4 としたときに 最適な解が得られた。 信頼
性は ついては、 尺度全体の Cronbach の & 係数が 0.708 という値を示した。 因子別の Cronbach の & 係
数は、 第 1 因子が 0.858 、 第 Ⅱ因子が 0 . 723 、 第 Ⅲ因子が 0.788 、 第 Ⅳ因子が 0.735 であ った。
一 %0 一
因子分析を行った 際のプロマックス 法による錯交回転後の 各因子に含まれる 項目とその付加量を 表
4 に、 因子相関行列を 表 5 に示す。
表4
因子分析結果
新聞記事等を 読む機会
因子抽出 湘 重みづけのない最小二乗法
回転法: Ka :Ser の正規化を伴
王
Cronbach
う
プロマックス 法
の 援 係数 : 0.708
(因子 T : C,=0.858
因子Ⅱ : a=0.723
因子Ⅲ : a=0.788
因子 W : a=0.735
表5
)
因子相関行列
因子 I
因子Ⅱ
因子 皿
因子 W
因子 I
1- 000
0 203
0 , 285
0 132
因子Ⅱ
0 , 203
1. 000
0 190
0 404
因子Ⅲ
0 , 285
0. 190
1. 000
因子 W
0, 32
0. 404
・
Ⅰ
・
・
一
0
・
・
一
0
・
075
1. 000
075
因子抽出法 : 重みづけのない 最小二乗法
回転法 : Kajser
の正規化を伴
う
プロマックス 法
第 Ⅰ因子に負荷が 高いのは、 高齢者とともに 過ごすことが 好きであ る :
(時間共有好感度 )
齢者と話をすることが 好きであ る : 桧話 好感度 ) といった高齢者へのポジティブな
と、 高
態度に関する 項
目であ り、 これを「高齢者観」を 表す因子であ ると考えた。 第 Ⅱ因子に負荷が 高いのは、 高齢者を取
り扱ったテレビ 番組 や 、 高齢者が主人公のテレビドラマ。 映画・ビデオ 等による学習機会
と、 高齢者関連の 新聞記事などを 読むことを通しての 学習機会 :
(新聞記事 )
:
(テレビコ
と、 高齢者を取り 扱っ
た 、 あ るいは高齢者が 主人公の小説やその 他の木等を読むことを 通しての学習機会
:
(小説。本コ
と
いう項目であ り、 これらを「間接的学習」を 表す因子と解釈した。 第 Ⅲ因子に負荷が 高いのは、 祖父
母に祝い事をしてもらうなどの
忘れられない 思い出 : m祖父母 祝 Ⅱと、祖父母と一緒に 話をしたり、
食事をしたり、 遊びに行ったりした 接触経験 : 湘 父母接触
一 11--
コ
という項目であ り、 これらを「接触 体
験 」を表す因子と 解釈した。 第 W 因子に負荷が 高いのは、 高齢者関連の 法律 (老人福祉法や 介護保険
法華 ) を読むことを 通しての学習機会
:
(法律 コと 、 高齢者関連の 白書 (高齢社会白書、 図説高齢者
白書、 厚生労働白書等 ) を読むことを 通しての学習機会
:
泊割
という項目であ り、 これらを「 直
接 的学習 j を表す因子と 解釈した。
そこで「学習」という 概念をさらに「直接的学習」と「間接的学習」とに
接 的学習」
「接触体験」
「高齢者観」を
分け、 「直接的学習」
潜在変数とし、 各因子を構成する 変数を観測変数とする。 ま
た、 もう一つの潜在変数であ る「ソーシャルワーク 専門職 性 」に対する観測変数であ
しては先に述べた「ソーシャルワーク
「間
るが、 これに関
専門職 性 自己評価学生 肋 における 5 領域 (使命感、 倫理性、
自律性、 知識・理論、 専門的技能 ) を観測変数として 用いた。 以下の表 6 において、 共 分散構造分析
に用いる潜在変数と、 潜在変数を測定する 観測変数についての 一覧表を示す。 これら観測変数の 項目
に 関してライカート 式評定尺度 法 による回答結果を 分析していく。
表6
共 分散構造分析に 用いる潜在変数と 観測変数
潜在変数
観測変数
直接的学習
[法律学習 機 割高齢者関連の 法律 (老人福祉法や 介護保険法華 ) を読むことによる 学習機会
旧蕃 学習 機割
高齢者関連の 白書 (高齢社会白書、 図説高齢者白書、 厚生労働白書等 ) を読むこと
による学習機会
間接的学習
[新聞記割高齢者関連の 新聞記事等を 読むことによる 学習機会
け
しピ] 高齢者を取り 扱ったテレビ 番組 や 、 高齢者が主人公のドラマ・ 映画・ビデオ 等による学習
機会
[小説・刈
接触体験
高齢者が主人公の 小説やその他の 本等を読むことによる 学習機会
[祖父母祝い ] 祖父母に祝い 事をしてもら
ぅ
等の忘れられない 思い出
[祖父母 接純 祖父母と一緒に 話をしたり、 食事をしたり、 遊びに行ったりした 接触経験
高齢者観
[時間共有好感度 ]
[会話好感度 ]
Sf 専門職住
[使命 劇
6
高齢者とともに 過ごすことが 好きであ
る
高齢者と話をすることが 好きであ る
つの下位項目より 成る
[倫理性 ] 6 つの下位項目より 成る
伯律性 ]
6 つの下位項目より 成る
[知識・理論 ] 6 つの下位項目より 成る
[専門的技能 ] 6 つの下位項目より 成る
②ソーシャルワーク 専門職性の獲得に 関する因果モデルの 構築
次に、 ソーシャルワーク 専門職性の形成に 関する因果モデルの 構築に当たり、 学習 (直接的学習・
間接的学習
)
と
体験 (接触体験 ) と高齢者観の 形成とが相互に 関連し合いながら、 これら全要因がソー
シャルワーク 専門職性を規定するという
潜在変数間の 仮説を立て、 5 つの潜在変数 (「直接的学習」・「間
接 的学習」・「接触体験」・「高齢者観」・「ソーシャルワーク
専門職 性 ) の関係を表す 因果構造のフレー
ムをまず想定し、 それぞれの潜在変数に 観測変数を付加し、 さらに内生変数にはモデルで 説明しきれ
」
一 12 一
ない誤差を誤差変数として
学習」。 「間接的学習」。
付け加えて、 多重指標モデル
(基本モデル ) を作成した。 最初 は 、 「直接的
各潜在変数間に 双方向のパスを 描いていたが、 指
「接触体験」・「高齢者観」の
定検索を実施した 結果、BCC(Browne-Cud
。 。 k 基準 ) の値が最も刀、 さいモデルが べ ストモデルであ ると 判
新 し、 説明力 め 低い双方向のパスを 削除した。 また「高齢者観」の 配置については、 双方向のパスが
最も素直に引ける 位置ということで、 図 1 のようにした。 パスに付した 数値は標準化因果係数であ
り、
(R-) は.30 であ った。
内生変数 ( ソーシャルワーク 専門職 性 ) の決定係数
・
17
30
カイコ 襄 眉目 /ク Z44 タ ク F ニ 6ヲ p このひ /
/月アニタ ワ 6 % 月7=;タ のひ用材 SEZ 三ク Z乏
図
「
共分散構造分析の結果 (標準化 解 )
追分析に よ る多重指標モデルの 適合度の検討
最終的に構築したモデル ( 図 1 共 分散構造分析の 結果 (標準化 解 )J) の 適合皮 は ついて検討する
「
ため、 表 7 において各種の 適合皮指標目の 算出結果を示す。
表7
S
EA
一 13 一
R
900
Ⅲ
Ⅰ・
.906
C
ⅠF
え
]27 %9
モデルの適合 度 指標
072
X 2 値に関しては
標程度にとどめる。
127.449 ( 自由度 = 69 、 X Z/DF: 1.847 、 p=.001)
しかしながら 基準化適合皮指標であ
が.906 、 CFI (Comparative Fit IndeX)
る IFI (B0l en, S InCrementa F;t lndeX)
Ⅰ
Ⅰ
が.900 という値であ り、 いずれも.90 を上回る値であ った。
(1999 : 3 仁 42) を参照した。 これらの結果から、 デー
適合皮指標の 評価に関しては、 山本・小野寺編
タはモデルにかなり
という値であ り、 これは参考指
適合していると 考えられる。 また、 RMSEA(Root
App oximation) は,072 (L0g0=.052
「
、 HI g0=.091 、 Pclose=.036)
Mean Square Error of
であ り、 カットオフポイントであ
る.05 を下回る値ではないが、 モデルとしての 当てはまりは 悪くない。 以下、 図 1 で示したソーシャ
ルワーク専門職性の 形成に関連する 因果モデルの 評価を、 部分的にみていきたい。
3 、 結論と考察
ソーシャルワーク 専門職 性 に関連する諸要因をその 関連の強さや 因果関係を考慮して 明らかにする
ために、 5 潜在変数と 14 観測変数より 成る多重指標モデル (図工 ) による 共 分散構造分析を 用いて 分
析 した。 この多重指標モデルは、 「接触体験」「間接的学習」「直接的学習」「高齢者観」「ソーシャルワ
ーク専門職住」の 5 潜在変数と、 (祖父母接角
出コ
律 学習機会
暁闇共有好感度 ) (使命感
) ( 白書学習 機剣
(会話好感度
コ
(祖父母祝い ) (テレビコⅡ、 説
コ
・
杓 (新聞記事
コ
(,
法
倫理 ャ幻 ( 自律ヰ生 ) (知識・
理論 ) (専門的 技制 0 14 観測変数より 成るモデルであ る。
まず、 潜在変数から 個々の観測変数への 影響指標は、 自律性と使命感の 2 つに関してはやや 影響 指
標は低いものの、 あ とは有意な影響指標であ
り、 それぞれの潜在変数と 個々の観測変数との 対応は適
切なものであ ると判断した。 潜在変数から 観測変数に向けられたパスで、
いる「 SW
と
低い値の影響指標を 示して
( ソーシャルワーク ) 専門職 性 」から曲律 性コに 向けられたパスの 標準化因果係数 は . 04
有意な関連性を 示しておらず、 ( 自律4目とこのパスを 削除したら、 モデルの説明はさらに 上昇する
ことを確認したが、 伯律 ,目はソーシャルワーク専門職住にとってなくてはならない
り
(南 。 武田 2004)、 モデルにとって 必須であ るので、 はずすことはできなかった。
意な関連性を 示していないということは、
重要な指標であ
今回の調査で 有
調査対象が学生および 卒業生 (8 年未満経験のソーシャル
ヮ 一カ一 ) であ るため、 他からの指示によらず
自らの判断で 裁量権 をもって動くということに
関して、
自信がもてないことの 反映であ ろう。 しかし、 このことは、 ソーシャルワーカーが 専門職性を獲得し
ていく上で意識して 引き上げていかねばならない
(使命感 )
事柄であ るので、あ えて、今回のモデルでは 残した。
に関しても同様の 考えから、 残した。
次に要因間の 因果関連を見てみると、 「直接的学習」が「ソーシャルワーク 専門職住」に 及ぼす影響
は大きく
け =.30) 、 やはり大学等において 講義をしっかりと 聴き、 現在の福祉動向を 的確につかむ
ための法律や 白書類を通して 福祉の現状を 直接学ぶ機会を 多くもつことによって、
専門職性は向上するということが
ソーシャルワーク
伺える。 したがって福祉関連の 白書や法規 類 に目を通して 表やグラ
フを通して福祉の 現状を正しく 認識する機会を 教育のなかで 広く取り入れながら、 学習量をできるだ
け 増やすような
教育方法をとる 必要があ ると思われる。 また間接的学習がソーシャルワーク
専門職 性
に及ぼす影響も 見られけ 二 . 28) 、 自宅における 小説やテレビ。 新聞等のメディアを 通して間接的に
福祉の対象者について 学習する機会を 多くもつことによって、 ソーシャルワーク 専門職性は向上する
ということが 伺える。 新聞記事やビデオ 等を効果的に 利用するといった 間接的学習を 大学教育のなか
に意識的に加えて い く必要性も感じられる。
また、 「直接的学習」と「間接的学習」との
間に有意な関連
い二 . h7 、
pく .
01) がみられるよ
う
に、
直接的学習量の 増加は間接的学習量をも 増加 t せるのであ る。教育上、 「直接的学習」だけではなく「間
接 的学習」の重要性を 十分に考慮しっ っ 間接的学習を 取り入れた授業を 工夫することが、 学習量全体
一 %4 一
を 引き上げることになると 予測される。
次に「接触体験」であ るが、 「接触体験」が 増えることによって、
「間接的学習」に
影響を及ぼす 傾
向が見られる (v=.18L 。 また、 「接触体験」と「ソーシャルワーク 専門職住」の 間には、 負の相関 ( ノ
艮 -.17) が見られる。 すな む ち 、 家に介護を要する 高齢者が居てその 世話をしていたり、 ボランティ
ア活動を通して 高齢者と関わる 機会を多くもっていたからといって、
上 とは直接関連しないということであ
ソーシャルワーク 専門職住の
る。 むしろ「接触体験」だけをいくら
自体は無駄ではないが ) 、 専門職性の獲得にはつながりにくいということであ
積み上げても
向
(そのこと
る。
「高齢者観」 (高齢者に対する 態度 ) については、 「間接的学習」との 間の関連も認められ (V
二.
1gL、
(v=.14) 。 また接触体験と、 高齢者に対するポジティブ
な態度とはあ まり関わりがなく、 接触体験が直接的・ 間接的学習を 積み重ることによって 体験の意味
「直接的学習」との 間の関連も認められる
を十分に理解しながら 意味のあ る経験に昇華されたときに、
ソーシャルワーク 専門職性は高められる
のであ ろう。
最後に「ソーシャルワーク 専門職住」の 獲得に関しては、 やはり「直接的学習」との 関連性 い =.30)
と「間接的学習」との 関連性 (v=.28) が高い。 ここでは、 講義や資料等を 通しての「直接的学習」
と、 身の回りのメディアを 通じての「間接的学習」が
得や到達に影響していることが
、 何よりも「ソーシャルワーク
専門職住」の 獲
伺える。 一方、 「接触体験」と「ソーシャルワーク 専門職住」との 間に
(V=-.17L 。 これは、 単に多くの高齢者と 接することがソーシャルワーク
の専門職住獲得や 向上に直接つながらないことを 意味する。 また「ソーシャルワーク 専門職 性 」の獲
は、負の相関が認められる
得に関しては、 「接触体験」からの 直接影響はマイナスであ るものの、 接触体験がきっかけとなって メ
ディアに関心をもつよ う になって進められた「間接的学習」が 進み、 そこから「ソーシャルワーク 専
門職住」に影響を 与えているということが 言えよう。
以上のことから、 単に身近な高齢者と 多く接することや、 ボランティア 体験を重ねること、 実習を
すること、 現場に出てからも 経験年数を積むことが、
は繋がらない。 接触体験を通してそこから
直接ソーシャルワーク 専門職性の獲得や 到達に
体験したことの 意味をふりかえりながら、 省察的に学習す
るというプロセス、 あ るいはそこから 高齢者に対する 援助者としてのポジテイブな
ていくといったプロセスを
経ることが、 専門職性の高いソーシャルワーカ
態度を育み形成し
一の育成につながっていく
ことを示す。
また、 高齢者との接触体験にもとづいて
多様な高齢者の 姿を理解することや、 接触体験をきっかけ
に多くの間接的学習を 積むことや、 接触体験を通じて 高齢者と向き 合う援助者としての 自分自身を客
観 的に理解するといった 省察的学習のプロセスを 踏まないことには、 真のソーシャルワーク 専門職性
の向上には結びつかないと
考えられる。 ソーシャルワーク 専門職住はこうした 要素の相互関連性のな
かから獲得されることが 示唆された。
これまで考察してきた 事柄をまとめると、 豊かな接触体験は 必要でほあ るが、 関連の白書類や 法規
などを豊富に 用いた教師からの 直接的学習によって 習得する学習量の 多さが求められる。 直接的学習
によ る知識量の豊富さが 専門職性を高める。 まずほ頭でソーシャルワーク 専門職性の根幹を 成すソー
シャルワークの 価値,原理,原則。
原論等の知識を 始めとして、 対象者を理解するための 諸理論・対
象者を取り巻く 社会システムや 諸制度や法規に 関する知識、 援助技術に関する 知識等の総量を 増やす
ことであ る。 また、 社会福祉援助技術現場実習指導や
社会福祉援助技術演習等の
時間を通して、 対象
者とどのように 関わり、 何を感じ、 何をしたかという 事柄を言語化 t せ 、 対象者との関わり 体験の自
分 にとっての意味づけとふりかえりを
行い、 それを通じて 援助者としての 自己を理解させること、 援
一 15 一
功者としてのポジティブな
対象者に対する 態度を育むこと、 そうして学習と 体験と対象者に 対するポ
ジティブな態度とがうまく
繋がりあ って機能した 場合に、 ソーシャルワーク 専門職 性が 獲得されてい
くと言える。 また今回の分析結果からは、
直接的学習のみならず 間接的学習の 重要性も浮かび 上がっ
た
したがって、 大学教育では 通常、 学生との対面 式 授業が中心ではあ るが、 殊にソーシャルワーク 専
問職性を高めるような 教育を志向しようとする
場合、 ライフタイムにおいて 育まれてきた 学生一人ひ
とりの対象者観や 社会福祉援助技術現場実習等を
通じての接触体験も 大事にしながら、 体験と学習と
が一体 7 セして理解を 深められるような 演習形式の授業を 重視することが 必要になると 思われる。 すな
ね ち、 社会福祉援助技術現場実習などの 貴重な体験が 単に「対象者と 交流する」という 点にとどまる
ことなく、 そのことの意味づけを、 洞察力あ る指導者による 指導やスーパービジョンを
び 取るといった 省察に基づく 学習が必要になることを
イショナー・モデル」に
意味する。 これが、 「リフレクティブ・プラクテ
該当するものであ る (図 2) 。
""
図2
受けながら 学
--一
"""
"-
ソーシャルワーク 専門職住獲得におけるリフレクティフ
リフレクティブ・プラクティショナ
一
,プラクティショナー・モデル
を志向するためには 社会福祉援助技術現場実習や
社会福祉援
助技術演習を 担当する教員にスーパービジョン 能力が一層求められることになる。 また接触体験や 直
接 的学習が間接的学習に 影響を及ぼし、 直接的・間接的学習がソーシャルワーク
専門職性の獲得や 到
達に繋がりやすいということを
考え合わせれば、 間接的に学習した 事柄を、 授業等で出来るだけ 取り
上げて発表させたりレポートを
書かせたりするといった
教育上の工夫も 必要であ ろう。 ソーシャルワ
ークという不確実性, 暖昧性 ・複雑性をもつ 状況における 経験であ るからこそ、 失敗も成功もあ り、
困難に直面することもあ
り得、 そこから学びが 生まれる。 実習体験の場合には、 指導者あ るい は 大学
の 担当教員との 間でのコミュニケーションのなかから
可能,性が開かれる。葛藤場面に直面するなかから、
問題への対処に 向けての省察を 行なうなかから、
省察がもたらされることも
多いと考える。
おわりに
最後に、 本調査の限界と 今後の課題について 述べる。 今回調査対象とした
籠中あ るいは在籍した 者であ り、 大学自体が少人数制
一 16 一
165 名は、 天理大学に在
(福祉専攻の各学年の 人数 20 ∼ 30 幻で、 宗教
色の濃い大学であ る、 という事情のもとにおける 調査であ ることは、 本調査の第工の 限界であ る。 し
たがって、 地大学に所属する 学生にどの程度一般化できるか、 という点に関して 確認することが 必要
であ る。
また、 調査対象者の 同質性を確保する 上で、 入学時点から 同じ学生を卒業後まで 追跡調査するのが
最も妥当な方法であ ったが、 今回は 2004 年 4 月入学・進級時点において 一斉に、 各学年の学生。 卒業
直前の学生・ 卒業生を対象として 調査を行った。 つまり一地点調査であ るという点は、 本調査の 2 番
目の限界であ る。 しかしながら、 全く同質ではないにせよ、 各学年の学生。 卒業直前の学生・ 卒業生
を属性別に見たときに、 同じような背景をもち、 同じカリキュラムによる 学習や体験を 行っている者
たちであ るので、 2004 年 3 月∼ 4 月の時点における 6 グループの対象者群を 比較することは、 あ る 程
度 妥当な結果が 得られることになろ
う
という予測のもとに 調査を実施したことを 断っておきたい。 今
ムコ
後縦断的調査設計を 用いて、追跡調査研究を 行
第 3 番目に、 量的調査におけるサンプル
う
必要があ り、それは今後の 調査研究上の 課題であ る。
数がⅠ 65 であ ることは、 サンプルの数としては 少ないと 言
わなければならない。 しかし、 地大学の学生をもサンプルに 加えることは、 属性や条件が 異なるため、
厳密な分析ができかねると 判断し、 同一性を保持するためにこの 数で実施した。
第 4 番目に、 今回行った調査に 用いたスケールのなかで、
スケールについては 吟味を続けてきたものであ
ソーシャルワーク 専門職性を測るための
るが、それ以外のスケールについての
妥当性,信頼性 @こ
ついては、 再吟味するとともに、 構成概念をより 反映しうる質問項目を 厳選し、 精度の高い調査設計
を 継続していかなければならない。
最後に、 ソーシャルワーク 専門職住獲得要因に 関する 共 分散構造分析を 行った結果、 モデルの適合
皮指標 RMS ℡が, 072 であ ったこと。 現時点ではこのモデルであ
る程度の説明 は 可能であ ると考えてい
る 。 しかし、 もしもソーシャルワーク 専門職住獲得過程において
未 だ見出していない 他の要因が関与
しているとすれば、 それについては 今後継続研究を 実施していく 必要があ ると考える。 したがって 、
さまざまな制約の う えで出した結論であ り、 結果の一般化に 関しては、 さらに調査研究を 深めていく
必要があ る。 そして今回明らかにしてきたく 省察 ノ という概念を、 今後のソーシャルワーク 教育のな
かで大事に扱っていきたいと 考えている。
注
1) これまでの本研究に 関する一連の 論文は以下の 通りであ る。
南 彩子 (2000) 「医療ソーシャルワーカ一の専門性確立のための 研究-Grounded Theory の方法を用いて 一
に
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」
よ
南 彩子 (1998) 「わが国における医療ソーシャルワーカ 一の専門職としての 条件についての 検討一 米国との比
較から 一
」
下天理大学学報コ
Ⅰ
92
市 彩子・武田加代子 (2000) 「医療ソーシャルワーカ 一の職務の特徴
比較 一
」
一アイデアルイメージと
実践的意識の
『社会福祉学田41(1)
南 彩子 (200la) 「ソーシャルヮ 一力一の専門職性を 求めて
レビュー」 『天理大学社会福祉研究室紀要』
一
米国における 専門職業化の 流れに関する 文献
3
南 彩子 (200lb) r他の医療職種との 対比から捉えた 医療ソーシャルワーカ 一の存在意義 -GroundedTheory を
用いての分析」 『ソーシャルワーカー』 6
南 彩子・武田加代子・ 森野郁子 (2001) 「ソーシャルワーカ一の職務の専門職性を 構成する諸要件に 関する調査
報告書 (第一報)
」
『医療と福祉J 35 ㈲
一 17
一
南 彩子・武田加代子・ 森野郁子 (2002) r ソーシャル
査報告書 (第二親)
『
」
南 彩子・武田加代子
ヮ
一力一の職務の 専門職性を構成する 諸要件に関する 調
E 療 と福祉J 35(2)
(2003) 「福祉相談機関におけるソーシャル
ヮ
一カ一の専門職 性認知傾向の比較」『Vis.
療
社会福祉 学研究』 第 10 巻 第 1 号笛Ⅰ1 巻第 1 号 (合併号)
南
(2004) 『ソーシャルワーク 専門職住自己評価
彩子・武田加代子
一
Snn zal Work
Prof Nciency Inventory
土
土
一コ相川書房
南
彩子・武田加代子
(2005)
「
Proflc tency Inventory
土
の開発 一 ソーシャルワーカ 一の資質向上のために 一
( 『平成14 年度∼16 年度日本学術振興会科学研究費補助金、
南 彩子・武田加代子
」
研究成果報告書』 )
(2005) 「学生のソーシャルワーク 専門職住到達度とその 関連要因の分析」
ニ
天理大学学
報』第210 輯
武田加代子・ 南 彩子 (2001) r医師・看護婦による MSW の職務認知」 『医療社会福祉研究』9(1)
武田加代子・ 南 彩子 (2002) r ソーシャルワークの 専門職性評価指標作成の 試み」 『社会福祉学 d 42(2)
武田加代子・南 彩子 (2004)
「
wSW と他機関ソーシャルワーカ 一の専門職 性認知傾向の比較」『E 療 と福祉』37(1)
2) 共 分散構造分析に 関しては、 以下の文献を 参照した。
・豊田秀樹 (1998)
・豊田秀樹(1998)
『
共分散構造分析 (入門編コ一 構造方程式モデリンバ』朝倉書店
ぽ共
分散構造分析 (事例 編コ一 構造方程式モデリンバ』北大路書房
豊田秀樹・双田忠彦,柳井晴夫『原因をさぐる
統計学 一典分散構造分析入門一日講談社ブルーバックス
山本嘉一郎・ 小野寺幸菱 編 (1999) uAmnosによる 共 分散構造分析と 解析事例』 ナカニ シヤ出版
・山本嘉一郎,小野寺幸義 編 (2002)
T㎞ os5.o Users Guide 』
『ぬ
nos による 共 分散構造分析と 解析事例 1第 2 版
コ
』
ナカニ シヤ出版
(2003)
3) 適合度 指標については、 山本嘉一郎・ 小野寺孝義編 (1999) 同上書 p.36-42 を参照した。
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