ビッグデータ解析による製油所の高度安全管理技術の調査 1. 研究開発

ビッグデータ解析による製油所の高度安全管理技術の調査
(日揮プラントイノベーション株式会社)
○折茂
史教、前田
純
1. 研究開発(調査)の目的
「 平 成 2 6 年 度 石 油 精 製 環 境 分 析・情 報 提 供 事 業
ビックデータ解析手法による
製 油 所 安 定 操 業 対 策 に 関 す る 調 査 」で 実 施 し た 4 つ の テ ー マ の 内 、デ ー タ 解 析 の 有
効 性 が 高 い「 オ ン サ イ ト 配 管 の 腐 食 解 析 」の テ ー マ を 深 堀 し 、信 頼 性 向 上 に 資 す る
ビ ッ グ デ ー タ 解 析 手 法 を 用 い た 実 用 的 な「 オ ン サ イ ト 配 管 腐 食 管 理 手 法 」を 提 案 す
る。この技術をより効果的に運用するための技術(データ抽出インターフェース、
運 転 デ ー タ と の 連 携 、等 )を 調 査 し 、将 来 的 な デ ー タ 活 用 の 方 向 性 を 提 案 す る 事 を
目的に調査を行った。
2.研究開発(調査)の内容
2 -1 . 調 査 体 制
本 調 査 は 、一 般 財 団 石 油 エ ネ ル ギ ー 技 術 セ ン タ ー の プ ロ ジ ェ ク ト 統 括 の 下 、石 油
会 社 1 社 よ り 提 供 さ れ た デ ー タ を 日 本 I B M の 知 見・ノ ウ ハ ウ を 活 用 し な が ら ビ ッ
グ デ ー タ 解 析 を 実 施 し た 。解 析 結 果 の 評 価・考 察 は 、委 員 長( 鈴 木 和 彦
教授)、委員2名(辻裕一
東京電気大学教授、広瀬晋也
岡山大学
石油連盟環境安全課)
からなる委員会を設置し、3回の委員会を開催した。
2 -2 . 調 査 ス ケ ジ ュ ー ル
調 査 ス ケ ジ ュ ー ル を 表 2 . 2 -2 に 示 す 。 作 業 は 7 月 初 め か ら 解 析 準 備 と し て 、
デ ー タ 収 集 、デ ー タ の ク レ ン ジ ン グ 作 業 を 行 い 、9 月 中 旬 に は 第 1 回 委 員 会 を 開 催
し た 。1 2 月 中 旬 に 第 2 回 委 員 会 で 中 間 報 告 を 行 っ た 。1 月 中 に 解 析 結 果 を ま と め
第3回委員会では解析結果および今後の方向性について討議した。
表2.2-2
調査スケジュール
2 -3 . 解 析 の 流 れ
今 年 度 の 解 析 は 、昨 年 度 の 解 析 結 果 の 深 掘 り し 解 析 精 度 を 向 上 さ せ る 。そ の た め
昨 年 度 で 構 築 し た 解 析 ロ ジ ッ ク( ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク 手 法 )を 用 い て 、入 力 デ
ー タ の 再 検 討 、デ ー タ ク レ ン ジ ン グ 方 法 や 他 の 解 析 手 法 を 検 討 し 解 析 作 業 を 実 施 し
た 。 解 析 の 概 略 の 流 れ を 図 2 . 2 -3 に 示 す 。
図2.2-3
解析作業の流れ(概略)
3.研究開発(調査)の実行
3 -1 . 対 象 装 置 の 選 定
装 置 に よ る 腐 食 傾 向 が 異 な る 複 数 装 置 を 対 象 に 解 析 を 実 施 し た 。装 置 選 定 に 当 た
っては、汎用性、データ提供会社のニーズ、などを考慮し3装置(常圧蒸留装置、
ガス回収装置、軽油水素化脱硫装置)を選定した。
3 -2 . 解 析 用 デ ー タ の 収 集
解 析 用 デ ー タ と し て 、設 備 診 断 支 援 シ ス テ ム の デ ー タ 一 式 、お よ び 対 象 の P F D
( Process Flow Diagram)と 検 査 図 面( ア イ ソ メ 図 )を 受 領 し た 。次 に 解 析 に 用
い た デ ー タ は 、設 備 管 理 支 援 シ ス テ ム に 管 理 さ れ て い る 1 0 0 項 目 以 上 の 肉 厚 測 定
関 係 の デ ー タ か ら 腐 食 に 関 係 す る 5 5 項 目 を 選 別 し た 。さ ら に デ ー タ 量 が 少 な い 項
目 や 腐 食 に 関 係 が 少 な い 項 目 を 解 析 対 象 か ら 外 し た 。ま た 今 回 は 腐 食 予 測 に 影 響 が
あ る 可 能 性 が 考 え ら れ る 配 管 形 状 、流 れ 方 向 や 腐 食 形 態 な ど の 6 項 目 を 追 加 し 2 4
項 目 を 解 析 対 象 デ ー タ と し た ( 表 3 . 3 -2 ) 。
表3.3-2
データ数量
3 -3 . デ ー タ ク レ ン ジ ン グ 作 業 ( デ ー タ 準 備 )
精 度 の 高 い 解 析 モ デ ル を 構 築 す る た め の 前 処 理 と し て 、デ ー タ ク レ ン ジ ン グ 作 業
を 行 っ た 。計 測 デ ー タ に は 、休 止 点 や 参 考 値 な ど の 解 析 に 利 用 で き な い デ ー タ が 含
ま れ て い る た め 、こ こ で は 無 効 デ ー タ の 除 去 、解 析 用 デ ー タ の 加 工 、お よ び 不 足 デ
ータの追加作業を実施した。
(1) 無効データの除去
無 効 デ ー タ の 除 去 と は 、肉 厚 測 定 デ ー タ の 中 の 誤 計 測 、誤 入 力 デ ー タ や 明 確 に 必
要 と し な い デ ー タ な ど を 機 械 的 に 除 去 す る 作 業 で あ る 。こ こ で は 利 用 し た シ ス テ ム
の 特 徴 、デ ー タ の 取 り 方 な ど を 考 慮 し た 除 去 ロ ジ ッ ク を 作 成 し た 。無 効 デ ー タ の 除
去 に よ り 表 3 . 3 -3 に 示 す デ ー タ 数 と な っ た 。
表3.3-3
クレンジング後の測定数量表
(2) データ加工
シ ス テ ム に 登 録 さ れ て い る 情 報 の 表 現 が ば ら つ い て い る 場 合 が あ る た め 、デ ー タ
表記の統一化、温度など連続データをグループ化し腐食データを整理した。
■表記の統一
a.配 管 サ イ ズ : イ ン チ ( B 表 記 ) → m m ( A 表 記 ) に 統 一
b.材 質 分 類 : 材 質 分 類 の 表 記 を 統 一
c.腐 食 系 統 : 腐 食 系 統 を 整 理 し 「 装 置 +腐 食 分 類 」 の 名 称 に 統 一
d.測 定 部 位 : 測 定 方 位 の 表 記 を 統 一
e.そ の 他 : 全 角 ・ 半 角 の 統 一 、 ス ペ ー ス 文 字 の 統 一 な ど の 表 記 の 統 一
■データの分類化
a.温 度 : 温 度 ( ℃ ) 範 囲 を 5 0 ℃ ご と の グ ル ー プ に 集 約
b.圧 力 : 圧 力 ( MPa) 範 囲 を 1 0 M P a ご と の グ ル ー プ に 集 約
c.使 用 年 数 : 使 用 年 数 ( 年 ) 範 囲 を 5 年 ご と の グ ル ー プ に 集 約
d.そ の 他 : 腐 食 系 統 、 部 位 な ど は 解 析 の 目 的 ご と の グ ル ー プ に 集 約
(3) 追加データの準備
今 年 度 は 、設 備 診 断 支 援 シ ス テ ム に 登 録 さ れ て い な い デ ー タ を 検 討 し 、配 管 形 状
のタイプ分けや腐食形態などのデータを追加した。
■配管形状の整理
配管形状を整理するため、配管のタイプを配管形状(エルボ、直管、レジュー
サなど)、状態(縦、横、水平)、流れ方向(横→下、下→横、横→上など)
で分類、整理した。
■腐食系統および腐食形態の整理
腐食系統、および形態(分類)をエリアの腐食進展傾向や年間腐食量を
調査する目的で整理した。
3 -4 . 解 析 パ タ ー ン の 検 討
年 間 腐 食 量 の マ イ ナ ス デ ー タ お よ び 0( ゼ ロ )の 取 扱 い 方 法 や 複 数 測 定 デ ー タ( 腐
食 量 の 計 算 方 法 )の 取 扱 い を 表 3 .3 -4 に 示 す 1 2 種 類 の 組 み 合 わ せ を 作 成 し た 。
但 し 、「 初 回 値 利 用 の 年 間 腐 食 量 」は デ ー タ 数 が か な り 少 な く な り 汎 用 性 が 大 き く
低 下 す る た め 不 採 用 と し 、ま た「 す べ て の 値 利 用 」で は マ イ ナ ス デ ー タ を 使 用 す る
ことは現実的予測が期待できないため、比較検討から外すこととした。
最終的には6種類の組み合わせを使ってニューラルネットワークの解析結果を
比較した。
表3.3-4
解析パターンの組合せ
3 -5 . 入 力 項 目 の 検 討
ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク 実 施 の 場 合 、た く さ ん の 入 力 項 目 を 用 い る と 、組 み 合 わ
せ の パ タ ー ン が 増 え 予 測 精 度 が 向 上 し た よ う に 見 え る こ と が あ る 。し か し 、現 実 に
は 、多 種 の デ ー タ を 準 備 す る こ と が 難 し く 、解 析 手 法 の 汎 用 性 が 無 く な る 可 能 性 が
あるため、より少ない入力項目で精度の高い予測を実現できることが理想である。
そ こ で 、ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク を 実 施 す る に 当 た り 、最 も 関 係 が 強 い と 思 わ れ る
1 2 項 目 を 選 定 し 、1 2 項 目 に よ る 解 析 に 対 し て 、項 目 数 を 1 0 項 目 、9 項 目 に 減
ら し た 場 合 の 予 測 精 度 の 違 い を 比 較 検 討 し た 。本 来 は 、腐 食 に 関 わ る 項 目 を 用 い て
解 析 す る こ と が 望 ま し い が 、今 回 は 腐 食 デ ー タ と の 統 計 的 関 係 性 と 予 測 精 度 に 注 目
し て 項 目 の 検 討 を 行 っ た 。入 力 項 目 を 1 2 項 目 、1 0 項 目 、9 項 目 と 変 化 さ せ た 3
つ の パ タ ー ン で 実 施 し た 解 析 結 果 で は 、「 測 定 方 位 」「 流 体 性 状 」「 検 査 方 法 」の
3 項 目 を 除 外 し た 9 項 目 と 少 な い 条 件 で あ っ て も 、デ ー タ の 関 連 性 、お よ び 年 間 腐
食量の予測と実測の誤差精度に関して大きな違いがなかった。
表3.3-5
データ項目数と予測精度
3 -6 . 解 析 結 果
デ ー タ ク レ ン ジ ン グ お よ び 解 析 パ タ ー ン の 検 討 を 踏 ま え て 、 表 3 . 3 -6 に 示 す
解析条件を用いて年間腐食量の予測を行った。
表3.3-6
解析条件表(ニューラルネットワーク)
解 析 し た 予 測 結 果 は 、 図 3 . 3 -6 に 示 す よ う に 予 測 年 間 腐 食 量 と 実 測 年 間 腐 食
量 の 差 が 0 .1 m m / y 以 内 で あ る デ ー タ の 割 合 が 、9 9 % を 超 え る 予 測 モ デ ル を
構 築 す る こ と が で き た 。昨 年 度 の 解 析 結 果 と 比 較 し 大 幅 な 精 度 向 上 で あ る 。解 析 条
件 検 討 は 、常 圧 蒸 留 装 置 の デ ー タ を 用 い て 行 っ た が 、他 の 装 置 に つ い て も 常 圧 蒸 留
装置と同等以上の精度で予測できている結果となった。
予
測
年
間
腐
食
量
実測年間腐食量
図3.3-6
予測年間腐食量と実測年間腐食量の関係
3 -7 . 特 徴 の あ る デ ー タ 調 査
ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク を 用 い て 、配 管 内 部 腐 食 の 年 間 腐 食 量 予 測 を 行 い 昨 年 と
比 較 し 、よ り 精 度 の 高 い 結 果 を 導 き 出 す こ と が 出 来 た が 、予 測 結 果 の 中 に は 、予 測
値 が 実 測 値 と 大 き く 外 れ た デ ー タ も い く つ か 存 在 し た 。こ れ ら の デ ー タ は 、予 測 方
法 が 悪 い こ と を 起 因 す る も の ば か り で な く 、解 析 用 デ ー タ( 入 力 デ ー タ )の 信 頼 性
が 低 い も の も 含 ま れ て い る 可 能 性 が あ る 。そ こ で 、予 測 結 果 が 外 れ た デ ー タ を 抜 出
し、適切な予測が出来なかった理由を調査した。
図3.3-7
年間腐食量の予測と実測比較図(散布図)
図 3 . 3 -7 に 示 す よ う に 予 測 結 果 が 大 き く 外 れ て い る デ ー タ の 多 く は 、 年 間 腐
食 量 が 異 常 に 大 き い( 年 間 腐 食 量 が 0 .5 m m / y 以 上 )も の が 多 い が 、こ れ ら は
使 用 年 数 が 3 ヶ 月 以 下 と 非 常 に 短 く 、年 間 腐 食 量 の 計 算 結 果 が 非 常 に 大 き く 計 算 さ
れたものなど、入力データのクレンジング不足によるものが多く含まれていた。
今回は、代表値のみの評価を行ったが、これらの作業を繰り返すことによって、
データクレンジング精度を向上させ、より精度の高い解析が可能と考える。
3 -8 . ま と め
常 圧 蒸 留 装 置 の デ ー タ を 中 心 に 腐 食 予 測 モ デ ル の 検 討 を 行 い 、入 力 項 目 の 見 直 し 、
解 析 パ タ ー ン の 検 討 を 行 う こ と に よ り 、デ ー タ の 誤 差 範 囲 0 .1 m m / y 以 内 で あ
る デ ー タ の 割 合 が 9 9 % を 超 え る 予 測 モ デ ル を 構 築 す る こ と が で き た 。ま た 、昨 年
度 の 解 析 で は 、解 析 精 度 を 向 上 す る 手 段 と し て 、5 年 未 満 の デ ー タ を 削 除 し 最 終 解
析 を 実 施 し 、解 析 精 度 を 8 8 .8 4 % か ら 9 8 .2 4 % ま で 向 上 さ せ た が 、こ の 場
合 、解 析 結 果 を 使 用 年 数 が 短 い 配 管 に は 適 用 で き な い な ど の 問 題 が あ っ た 。今 回 の
予 測 モ デ ル で は 、こ の よ う な 条 件 を 加 え て い な い の で 使 用 年 数 が 短 い 配 管 に も 適 用
で き る 。 今 回 の 解 析 結 果 は 表 3 . 3 -8 に 示 す 。
表3.3-8
今回と昨年度の予測精度の比較
4.研究開発(調査)の結果
4.1
配管検査業務フローと腐食予測モデルの活用方法
今 年 度 は 、ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク 、デ ィ シ ジ ョ ン ツ リ ー な ど に よ り 、年 間 腐 食
量 の 予 測 、腐 食 デ ー タ の 分 類 を 実 施 し た が 、こ れ ら の 解 析 結 果 を 実 際 の 業 務 に フ ィ
ー ド バ ッ ク す る こ と が 重 要 で あ る 。 こ こ で は 、 図 4 . 4 -1 に 示 す 配 管 検 査 の 業 務
フローの中にどのように活用すればよいかを考えた。
現 在 は 経 験 豊 富 な 保 全 員 の 経 験 で プ ラ ン ト の 維 持 管 理 を 行 っ て い る 。し か し 、今 後
経 験 が 浅 い 技 術 者 が プ ラ ン ト の 維 持 管 理 を 行 う 場 合 、こ れ ら の 経 験 を 積 む 場 が 少 な
く 、よ り 少 な い 経 験 で プ ラ ン ト の コ ン デ ィ シ ョ ン を 評 価 す る 必 要 が 出 て く る 。今 回
実 施 し た よ う な デ ー タ 解 析 手 法 、デ ー タ 解 析 結 果 は 従 来 経 験 豊 富 な 保 全 員 の 経 験 を
補 う も の で あ り 、今 後 プ ラ ン ト を 維 持 管 理 す る 若 手 検 査 員 の 有 効 な ツ ー ル と な る と
考える。
図4.4-1
配管検査業務フロー
4 -2 . P F D 図 面 上 へ の 解 析 結 果 の フ ィ ー ド バ ッ ク
ニューラルネットワークで求めた予測年間腐食量と設備診断支援システムで各
系 統 の 最 大 腐 食 量 を 比 較 し た 。 図 4 . 4 -2 に 示 す よ う に 全 体 的 に は 類 似 の 傾 向 が
見 ら れ る が 、ニ ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク の 結 果 の 方 が 大 き な 年 間 腐 食 量 が 色 付 け さ れ
ている。これらの違いを見ることによっても、新しい気付きがある。
図4.
.4-2
予測結果と設
予
備管理支援システムの結
結果との比較
較
4 -3
3 . 設 備 管 理 支 援 シ ス テ ム へ の 予 測 結 果 フ ィ ー ド バッ ク
図 4 . 4 -3 に 示 す よ う に 予 測 結 果 を 設 備 管 理 支 援 シ ス テ ム へ フ ィ ー ド バ ッ ク し
検 査 図 面 に 展 開 し た 。配 管 改 造 に よ り 新 し く 設 置 し た 配 管 の 検 査 箇 所 に 対 し て 、ニ
ュ ー ラ ル ネ ッ ト ワ ー ク の 予 測 値 を 当 て は め る こ と に よ り 、未 測 定 箇 所 の 予 測 年 間 腐
食 量 を 色 表 示 で 確 認 す る こ と が で き る 。こ れ ら の 予 測 値 を 図 面 に 表 示 さ せ る こ と に
よ り 検 査 箇 所 の 増 減 や 検 査 周 期 の 見 直 し に 活 用 可 能 と 考え る 。
図4.4-3
設備管理
理支援システムへのフィードバック
4 -4
4 . デ ィ シ ジ ョ ン ツ リ ー 解 析 手 法 を 用 い た デ ー タ 解析
腐食
食予測モデル
ルに用いたニ
ニューラルネ
ネットワーク
ク解析は、予
予測値の計算
算過程を見る
ること
ができず、直観的
的に把握する
ることが困難
難である。ディシジョンツリー解析で
では、使用年
年数、
腐食系
系統など分類
類毎の腐食傾
傾向を把握し
し、腐食の大
大きな箇所や
やデータのば
ばらつきの大
大きな
箇所を把握することができる
る。以下に解
解析例を示す
す。今回の解析
析では、腐食
食の程度を表
表4.
4-4のように分
分類化した。
表4.4-4
表
の分類
腐食傾向の
デ ィ シ ジ ョ ン ツ リ ー は 、常 圧 蒸 留 装 置 の 全 測 定 デ ー タ( ポ イ ン ト 単 位 )を 使 っ て 、
配 管 の 使 用 年 数 ご と に 腐 食 傾 向 を 分 類 化 し た も の で あ る 。ま た 、1 つ の ノ ー ド は 使
用 年 数 5 年 ご と に 分 類 し て い る 。 ( ノ ー ド : 0 -5 ⇒ 0 年 以 上 ~ 5 年 未 満 、 5 10 ⇒ 5年以上~10年未満、・・・)
デ ィ シ ジ ョ ン ツ リ ー を 利 用 す る こ と に よ り デ ー タ が グ ル ー プ 化 さ れ 、グ ル ー プ ご
と の 腐 食 傾 向 を 知 る こ と が 出 来 る 。 こ の 解 析 か ら 、 図 4 . 4 -4 に 示 す よ う に 使 用
年 数 が 短 い 1 0 年 以 下 の 配 管 に 腐 食( 大 )が 集 中 し て い る こ と が 判 っ た 。ま た 、使
用 年 数 1 0 年 以 上 の 配 管 で は 、腐 食 速 度 の 大 き な も の が 残 っ て い な い( 適 切 な 配 管
更新が実施されている)ことが確認できた。
図4.4-4
使用年数と腐食傾向
5.まとめ
5.1 オンサイト配管の腐食予測モデル
常圧蒸留装置のデータを中心に腐食予測モデルの検討を行い、常圧蒸留装置のデータを
中心に腐食予測モデルの検討を行い、データクレンジング(無効データの除去、データの
加工、不足データの追加、など)の工夫により、予測年間腐食量と実測年間腐食量の差が
0.1mm/y以内であるデータの割合が99%を超える予測モデルを構築することがで
きた。これは、昨年度の89%に比べ大幅な精度向上である。
この予測に用いたデータ項目は、汎用性が高い9項目(使用年数、配管形状、初回測
定値、温度、腐食分類、サイズ、足場工事、保温保冷、材質分類)であり、他の製油所へ
のスムーズな展開が期待できる。
5.2 実用的な管理手法の提案
配管検査の標準的な業務フローを元に実用的な管理手法の可能性を検討し、腐食予測モ
デルを、検査周期の延長・短縮、検査箇所から除外・追加を判断する場合のサポートツー
ルとして用いることを提案した。また、ディシジョンツリー解析により使用年数、腐食系
統など分類毎の腐食傾向を把握することができることを示した。
5.3 データの連携方法の調査
将来的に配管腐食予測モデルを幅広く運用するために求められるデータの連携方法に
ついて調査し、設備管理支援システムとデータ解析ソフトの間は、直接データ連携できる
こと、また、アクセスファイルまたはエクセルファイルに変換しても接続可能であること
を確認した。運転データと検査データ(内部腐食データ)を連携させる場合、運転データ
をエクセルファイルまたはCSVファイルにダウンロードし、データ解析ソフトから取り
込みを行うことが可能である。
5.4 将来的なデータ活用方法について
今回の解析手法を他の製油所へ展開することで、配管検査業務のサポートツールとして
の完成度を高めるとともに、管理方法や腐食傾向を比較検討することで、現在の検査方法
の問題点、改善点を知ることも期待できる。また、将来的には、データ採取からデータ解
析までの一連の仕組みの整備や、様々なデータを有効に活用した稼働信頼性向上の取組が
望まれる。
以上