関口 雄一郎 氏 「重力波で探る中性子星物質の物理」

東京大学大学院理学系研究科・理学部
物理学教室 談話会
関口
雄一郎
氏
(東邦大学理学部)
「重力波で探る中性子星物質の物理」
2016 年 6 月 10 日(金) 午後 4 時 00 分〜午後 6 時 00 分
東京大学理学部 1 号館
小柴ホール
2016 年 2 月 11 日、米国の重力波観測装置 Advanced LIGO の研究チームが、
史上初めて重力波の直接検出に成功したことを発表した。一般相対性理論
の提唱から 100 年、アインシュタインの宿題がついに解かれた瞬間であった。
重 力 波 が 100 年 も の 間 直 接 検 出 さ れ て こ な か っ た 理 由 は 、 発 生 す る 時 空 の
ゆがみが極めて小さいためであるが、それは重力波と物質との相互作用が
極めて小さいことによる。つまり、重力波の微弱性はその高い透過性と
表裏一体であり、重力波観測は他のシグナルからは決して得られない情報を
も た らす 。そ の代表 例 が重 力波 による 中 性子 星構 造 (さら に は内 部状 態 )の
観測である。
中性子星物質の状態方程式を決めることは原子核・ハドロン物理学の大きな
目標の一つといえるであろう。この観点からは、中性子星は宇宙に浮 かぶ巨大
な原子核ともいうべきものである。質量や状態方程式にも依存するが、中 心
密度は飽和密度の数倍から 10 倍近くにもなる超高密度環境が達成されており、
核子からなる通常核物質相に加え、ハイペロン・K 中間子・クォークなどの多彩
な構成粒子が出現している可能性も高い。すなわち、中性子星は、それらの相互
作用及び多体問題を研究するための宇宙の実験場である。
このような視点から、中性子星の観測によって状態方程式に制限を与える
ための研究がこれまで精力的に行われてきた。本発表では、中性子星の
天文学的観測、特に中性子星連星合体の重力波観測によって核物質の状態
方程式の情報を抜き出そうという最近の試みについて紹介し、今後の展望に
ついて議論したい。
紹介教員:福嶋健二准教授
※ 専門外、学生の方にもわかりやすくお話し頂く予定です。
※小柴ホール前の ホワイエ にお茶とお菓子を用意しています。どうぞご利用下さい。