物性物理学のルネサンス ― 超伝導、トポロジカル系、非平衡

東京大学大学院理学系研究科・理学部
物理学教室 談話会
青木 秀夫 教授(最終講義)
「物性物理学のルネサンス
― 超伝導、トポロジカル系、非平衡」
2016年 3月10日(木) 午後3時30分~午後5時00分
東京大学 理学部1号館 小柴ホール
1978 年 に 博 士 号 を 得 て 以 来 、 私 の 38 年 間 の 物 性 物 理 学 の 理 論 研 究 の 流 れ を 、 最 近
の 発 展 を 中 心 に 俯 瞰 す る 。 こ の 分 野 の ル ネ サ ン ス と い う 訳 は 、 1980 年 代 に 勃 発 し
た高温超伝導、量子ホール効果にキックオフされた展開は、長い固体物理の歴史
の中でもワクワクするような革新を現在に至るまで与えたとおもわれる故であ
る。超伝導については、銅系、鉄系、軽元素系など思いがけず多彩な世界が広が
り続けている。トポロジカル系も、トポロジカル超伝導やグラフェンの物理との
関連などの広がりをみせている。これらは単に新現象や様々な対称性破れという
だけでなく、新たな概念(量子ホール効果を元祖とするトポロジカル系の概念、
高温超伝導体に発する電子相関の概念)を生んだ。固体物理系は、場の理論的に
面白いことが低エネルギーで多様に起きる世界でもある。さらに、多体系の電子
構造の精密な評価がコンピュータの発展に伴い遂行できるようになり、既存の物
質の理解だけでなく、物質設計を行う可能性も現実的になってきた。他方、高度
な制御性をもつ冷却原子系と固体系との学際は、理想化された模型も現実化させ
る面白い展開になっている。また、私の最近の研究の主眼は非平衡の物理であ
り、平衡では思いもよらない量子相を実現する新たな可能性が、強相関、超伝
導、トポロジカル系の全てに亘って拓かれつつあると感じられる。これらを、多
くの人に支えられた私自身の研究を縦糸として、将来展望も含めて解説したい。
※ 専門外、学生の方にもわかりやすくお話し頂く予定です。
※ 小柴ホールラウンジにお茶とお菓子を用意しています。どうぞご利用下さい。
退職記念パーティは午後6時00分から1320号室で行われます。