『ファウスト』(8)

計が著名な建築家坂倉準
ち、その上、美術館の設
価値からも、美術館とし
館自体の文化財としての
いう観点からも、又美術
鎌倉の市民たちから
は、鎌倉の文化を護ると
ねられることになった。
所有者の八幡宮の手に委
ないという現状で、土地
けるよう促した。女性は
のような人が来て、片付
手を貸してくれた。守衛
がかりの女性が見かねて
ては又並べていた。通り
丹念に一枚一枚拾い集め
ぬ願いと知っているのだ
ひな祭りの3月3日、 葛原岡神社提供。
ろう。でもしかし、これ 鎌倉の葛原岡神社で月次
由比ガ浜海岸で獲れる
サクラ貝を使ったお守り
いと感じた。所詮は叶わ
の訴えの方がはるかに強
りも、このたったひとり
た。何十人の市民運動よ
にドイツの下宿で読みふ
った。この頃の鴎外の心
ないで〟という映像を見
のだと、寒空に必死に言
がほんとうの市民の心な
掃活動に鎌倉宮・長岡仁
ガ浜海岸でのお祓いと清
祭と雛祭が行われ、由比
への感謝と、貝の住むき
を授けている同宮が、海
宮司は﹁今後も続けてい
いっぱい集められ、長岡
鎌倉宮宮司らが由比ガ浜で
続けていた。
黙ったまま自分の行動を
い続けていた。
れいな海を祈願して行っ
にいじめられた娘が王子
を3巻に変え、原文には
話の展開を理解しやす
くするため、原文の4巻
人、また読み返している
で、 2 日 で 読 み 終 え た
されると思いのほか好評
様に見いだされ幸せにな
たものの古文の塊で読め
・3823・9171
4円、東京図書出版刊☎
ずに置いたままになって
らに各巻を5章に分けて
人がいるという。194
めるようにできないかと
﹃かまくらパン﹄
題名をつけている。出版
ない各巻の名をつけ、さ
が﹃落窪物語﹄で、一般
考え、脚注をつけずに自
結構面白かったので、
もっと普通に日本人が読
るという粗筋。
巻を読み始め
には日本版シンデレラと
分なりに現代語・現代文
で、パン屋めぐりのガイ
載せている。マップ付き
文 小出美樹・井上有紀
写真 港の人・斉藤有美
現代語で表したいと取り
食パン、バケット、ク
ロワッサンやメロンパン
ドブックとしても役立
﹁自由な土地に自由な民
起こして、幾度となくわ
盛り込み、カラー写真と
慢のパンの数々の説明を
を留めさせず、中ごろは
世をいとい、身をはかな
ッセーやインタビューも
⋮街で見かけるパン屋さ
つ。
筋は違えずに判りやすい
ら読めて、しかも原文の
に変換を試みた。すらす
いわれ、継母や継母の娘
た。まず興味を持ったの
書﹄全
い た﹃ 新 釈 日 本 文 学 叢
きたい﹂と話していた。
ている。
地元商店街の人たちが
数人が参加した=写真は
新刊書
私編落窪物語﹄を出版
した=写真。
ゴミは1時間ほどで袋
志宮司、巫女含め神職、
年間お疲れさま
湘南モノレール 車両搬出
大船・湘南江の島間の6・6㌔を結ぶ湘南モノレ
ール︵鎌倉市常盤、尾渡英生社長︶の500形55
小説
9編成が3月
私編 落窪物語
が行われた=写真。車両下の2カ所にロープが渡さ
日に車両の搬出作業
とり、美術館の前の広場
れ、大型クレーン2台が重さ約
日で退役し、
で、美術館の過去の展覧
500形は198
8年に導入。今年2
とりながら慎重に地上のトレーラーに下された。
㌧の車両を吊り上
会のポスターを数十枚広
年月の実績と展示内容の
豊かさを静かに訴えてい
る姿を見た。
少年時代に国語学者
になることを夢見ていた
んに並べられたパンは誰
三潴さんは銀行を定年退
でも気になるもの。
した5000系に役
て、一点の翳とのみなれ
目を引き継ぎ、 年
ど、文読むごとに、物見
もう北風が冷たい季節
だった。折角並べたポス
を回復することは出来な
ターを風が容赦なく巻き
いと思ったであろう。
組んだという。
やめず、百歳にして初め
郎の綿々たる悔恨の情の
が心を苦しむ。ああ、い
って悪魔のものとなるは
告白に始まり、全編この
まることを知らぬ拡張の
文章で紹介している。
ずのファウストの魂は、
かにしてかこの恨みを消
意欲によって純真は村の
後悔︵恨み︶の意識で彩
娘グレートヒェンを破滅
させてしまう。
によって天国に引きあげ
めて、瑞西︵スイス︶の山
﹁昔、グレートヒェンと られている。
すことができよう。
鎌倉在住でパン好きの
呼ばれた少女﹂の愛の力
この恨みは初め一抹の ︵神奈川歯科大名誉教授︶ 著名人のパンに関わるエ
雲のごとくわが心をかす
職後、父親から譲り受け
て﹁自由な民と共に自由
間の運行を終えた。
トフェレスとの契約で若
散らしていった。女性は
返 っ た フ ァ ウ ス ト が、
店を、店主の思いや自
るごとに、
鏡に映る影、
声
本著は、鎌倉で地元住
1296円、港の人刊
民に愛されているパン店 ☎0467・ ・1374
あればそうせざるを得な
々しい生命の喜びを歌う
満足を予感した刹那、悪
と、自らの自我に誠実で
ことによって、ヨーロッ
かったという人間の運命
魔との契約通り死に見舞
﹁全人類が受けるべきも
パロマン主義の先駆的作
のを、おれは内なる自我
われる。しかし賭けによ
に応ずる響きのごとく、
への想いがゲーテの創造
によって味わいつくした
な土地﹂に立てるという
﹃舞姫﹄は日本に帰る
船の中で、エリスを棄て
品となっている。しかし
い﹂という、自我のとど
限りなき懐旧の情を喚び
数々の名作を産み出して
的なエネルギーとなり、
いく。
てきたことへの大田豊太
若きゲーテの、新しく目
欲は、ゲ
長への意
実現していこうとする成
覚めた自我を世界の中に
月末にデビューラン
三潴信道
著
げて並べ、美術館の長い
げ、車両が軌道桁から取り外されると、バランスを
藤沢市在住の三潴︵み
つま︶信道さんが﹃小説
た。老年に近い女性がひ
きれいな海願い海岸清掃
三の手によるもので、日
館の存続が、鎌倉の大き
ばれる程の名品だ。今年
届 か ぬ 声
大変古い話で恐縮だ
が、鶴岡八幡宮の境内に
な話題となったことがあ
山 内 静 夫
ある県立近代美術館鎌倉
本の近代建築二十選に選
て存続を願ったようだっ
私は眼頭が熱くなっ
たが、
むつかしいようだ。
った。日本の公立美術館
引き、鎌倉市も手を上げ
ドイツ留学でヨーロッ
パの何よりも自分の自我
けっていたゲーテの﹃フ
の近代美術館の灯を消さ
で契約が切れる県は手を
そんな中、短篇ドキュ
メントの上映で、〝鎌倉
として最も古い歴史をも
を大事にするという﹁近
ーテを小
さな村に
は 出 来
歳で完成した﹃ファウ
みて、腸
︵はらわた︶日ご
とに九廻すともいうべき
惨痛をわれに負わせ、今
は心の奥に凝り固まり
60
﹃ 舞 姫 ﹄と﹃ フ ァ ウ ス ト ﹄︵ 8 ︶
赤羽根龍夫
代的自我﹂に触れた鴎外
ァウスト﹄が蘇ったこと
ならないはずのものであ
であったが、周囲のなす
は間違いない。
んでいた鴎外は、ゲーテ
がままにまかせエリーゼ
のようにエリーゼを裏切
ず、ゲーテはフリーデリ
ケを捨ててゼーゼンハイ
られていく。
歳の大学生ゲーテは
騎馬旅行で立ち寄ったゼ
とともに立ちたい﹂と壮
った後悔の意識を浄化し
﹁第二部﹂は、近代的
な意味で行為の人となっ
ーゼンハイムという小さ
大な干拓事業に取り組む
なければ、失われた自ら
とどめて
う後悔の気持は、鴎外の
な村の牧師の娘フリーデ
が、干拓に反対する老夫
のアイデンティティー
おくこと
自我を無力化せずにはお
リケに恋をした。この時
婦を殺してしまい、憂い
︵自分が存在する理由︶
を裏切ってしまったとい
かなかった。エリーゼを
スト第一部・悲劇冱は、
のうちに盲目になるが、
ムを去っていく。
10
た壮年のファウストは
ド イ ツ 留 学 中 ず っ と 色 を も 見 せ ず、 伊 太 利
﹃ファウスト﹄に取り組 ︵イタリア︶の古蹟にも心
真に愛し得なかったとす
生まれた﹁ゼーゼンハイ
望みはすべてかなえてや
なお行動的であることを
歳頃から書きはじめ
れば、その愛を支えてい
るが、満足したら魂を奪
る近代的自我の別名であ
うという悪魔・メフィス
数々は、中世ドイツから
ムの歌﹂といわれる詩の
しかし一人の純真な少
女を傷つけてしまったこ
の封建的因習を脱した若
03
23
15
17
とに対する贖罪の意識
る﹁ファウスト的自我﹂
22
木版画 藤本宿
12
27
ドイツの下宿で読み耽った
ゲーテの名作『ファウスト』
=鴎外の無数の書き込みが
見られる(「新潮日本文学ア
ルバム」より)
34
もまた吟味されなければ
57
21
27
24
138
第445号
2016年(平成28年)4月1日
1部 108円
(3)