基本領域研修プログラム選択に当たって(2017 年度) 専門研修

基本領域研修プログラム選択に当たって(2017 年度)
専門研修プログラム研修施設評価・認定部門
委員長 四宮 謙一
1)新しい専門医制度におけるプログラム制の導入について
医療は信頼によって支えられ、そして医療に対する信頼を保障するもっとも基本
的な基盤が専門医制度であると考えられます。日本の専門医制度は 1962 年の
麻酔科指導医制度に始まり、その後各学会認定の専門医制度が作られ運営され
てきました。2008 年 6 月に日本学術会議は、専門医制度は専門医資格の客観的
な証明や研修実績などを重視する必要があり、抜本的に見直しが必要、との提言
を行いました。さらに厚生労働省内に専門医の在り方に関する委員会(2011.10~
2013.4)が設立され、専門医制度はプロフェッショナルオートノミーにより運営さ
れ、専門医試験だけでなく研修プログラム制を重視する、専門医の認定あるいは
更新は中立的第三者による認証が必要である、等々の報告書が示され、それに
基づいて中立的第三者としての日本専門医機構が2014.5に設立されました。
今回の新専門医制度では、研修プログラム制度による研修の過程とその実績評
価を重視しています(HP:専門医制度整備指針)。研修プログラムでは、各学会の
協力のもとに領域ごとに研修内容の標準化が行われており、到達目標達成の確
認のために形成的及び総括的評価が行われ、研修プログラム修了を認められた
専攻医(従来の後期研修医)に対して、専門医試験の受験資格を与えるもので
す。日本専門医機構は第 3 者機関として各研修プログラムを評価・認定し、また
専門医試験の内容評価と専門医の認定を行います。
2) 標準化された専門研修
各領域の研修プログラムは各学会との協力のもとに、専攻医が受けるべきカリキ
ュラム、指導体制、経験手技や症例が各領域専門研修プログラム整備基準(HP:
各領域研修プログラム整備基準)により規定されており、日本専門医機構が評
価・認定したものです。全国各地に形成されたどの研修プログラムでも、専攻医は
標準化された研修を受けることができると考えられ、結果として標準以上の専門
医が輩出されることを目標としています。
3) 研修プログラムでの研修
研修プログラムは、中心となる基幹施設と複数の連携施設からなる施設群からな
り、専門研修管理委員会とその委員長である統括管理者により研修の計画、運
営、評価が行われます。専攻医は領域の専門医として必要な知識・技能・態度を
習得するだけでなく、地域医療の経験とその必要性を理解すること、また科学的
思考能力を備えた医師となることが期待されています。
4) 研修プログラムの特徴と選択
各研修プログラムは、中心となる基幹施設と複数の連携施設が構成する施設群
からなり、より特徴が出ると考えています。例えば、大学を中心とした研修プログ
ラムでは多数の指導医が存在して研究を間近に見る機会が多く、比較的アカデミ
ックな研修内容となる可能性が高いと考えています。一方地域の中核病院を基幹
施設とする研修プログラムでは高度急性期から在宅医療までの地域完結型医療
を経験できるでしょうし、またより地方の比較的人口減少地区の病院を基幹施設
とした研修プログラムでは、多くのコモンディジーズ、へき地医療などの都会とは
異なった症例経験ができると考えています。
基本領域の専門研修期間は医師としての基礎を形成する時期であり、各研修プ
ログラムの公開内容を十分に吟味したうえで、症例経験、手術や検査の経験、指
導医の特徴など、各自が望む研修内容により選択してもらいたいと願っていま
す。研修プログラムの場所や便利さなどで選考することは、専門研修の本来の趣
旨から適切ではありません。
追加:サブスペシャルティー希望の専攻医は基本領域研修修了後にサブ研修プ
ログラムに参加しますが、一部の診療領域では基本領域研修の進行度合いによ
り基本領域研修期間中にも希望サブスペシャルティー領域の研修が可能となって
います。基本領域研修期間中のサブスペシャルティー領域の研修実績は、新たに
参加するサブスペシャルティー領域の研修プログラムに引き継がれることになりま
す。
5) 採用試験
各種手続きの期日はホームページ上に掲載の「研修プログラム応募・採用フロ
ー」を参考にしてください。まずは新専門医制度への参加登録が WEB 上で必要
です。その後各研修プログラムへの応募を行いますが、応募状況は締め切り期
日まで時々刻々確認することができるので、応募研修プログラムを変更すること
は可能です。1 次採用試験で合格判定とされた専攻医は、原則として研修プログ
ラムの採用を辞退することはできません。このため専攻医希望の先生方には研修
プログラムの見学などを含めて、十分な検討のために 2 ヶ月間の期間をもうけて
います。その上で 1 次募集締め切りまでに選択する領域と研修プログラムを決定
して下さい。1 次募集で採用が決まらなかった場合には 2 次募集に再度応募して
いただきます。同様に 3 次募集まで行うことになります。また各募集中に、例えば
大都会に集中するような偏在を認めた場合には、各領域と密接に協議したうえ
で、地域医療崩壊を防止するために募集専攻医数の変更を行うことがあります。
1年間の研修の後に、様々な理由により、次年度に新たな領域に再度応募するこ
とは可能です。
6)専門研修の中断・延長
妊娠、出産・産前後(産休)、育児(育休)、介護(介護休)、病気(病
休)、留学等にあたっては、研修プログラムの中断期間を除き、各領域で
定められた研修期間で研修カリキュラムの達成レベルを満たせるように、
柔軟な専門研修プログラム対応を行います。短時間雇用での研修でも、研
修カリキュラムの達成レベルを満たせるように、柔軟な専門研修プログラ
ム対応を行います。
また、住所変更等により選択している研修プログラムでの研修が困難とな
った場合には、転居先で選択できる専門研修プログラムのプログラム統括
責任者と協議した上で、プログラムの移動ができます。(日本専門医機構
内の各領域研修委員会が個別の対応を致します)。
特定の研修分野を受け持つ連携施設の指導医が何らかの理由により指導を
行えない場合、特定の疾患に対する臨床研究や専門研修を研修プログラム
外の先端的な医療施設で希望する場合、またプログラムの統括責任者が特
例と判断した場合の対応については、日本専門医機構内の各領域研修委員
会との協議が必要となります。
留学、臨床業務のない大学院の期間に関しては研修期間として取り扱うこ
とはできませんが、社会人大学院や臨床医学研究系大学院等に在籍し、臨
床に従事しながら研究を行う期間については、そのまま研修期間に含める
ことができます。
以上の理由や産休による6か月までの中断でも、各領域で定められた研修
期間の残りの期間で研修要件を満たしていれば研修期間の延長をせずにプ
ログラム修了と認定されます。6か月を超える場合には、研修期間を延長
しなければなりません。中断が6か月を超え1年以内の場合は研修期間を
延長することになります。1 年をこえる中断の場合は、1 年単位でさらに延
長します。
なお、さまざまな理由によって生じる短時間あるいは短期間の雇用につい
ては、雇用時間の合計をもって研修期間の合計とします。その際、研修期
間 1 年の定義は、週 32 時間×4 週×12 か月=1536 時間とします。
ただし、育児短時間勤務制度を利用している専攻医の場合は、1 年の定義を
週 30 時間×4 週×12 か月=1440 時間とします。また週 20 時間を常勤とす
る領域があるが、1440 時間を持って 1 年とします。
参考:育児短時間勤務制度について(厚生労働省委託事業 HP より)
3 歳未満の子供を育てる従業員は、所定労働時間を短縮する制度(原則とし
て 1 日 6 時間)を利用できます。利用できる期間は子供が 3 歳になるまで
の間で従業員の申し出る期間となります。取得するための手続きは施設の
定めによります。就業規則や、育児休業規定を確認してください。