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多孔質吸音材を充填した二重壁の音響透過損失について
黒木, 荘一郎
鹿児島大学工学部研究報告, 25: 85-94
1983-11-01
http://hdl.handle.net/10232/12454
http://ir.kagoshima-u.ac.jp
多孔質吸音材を充填した二重壁の音響透過損失について
黒 木 荘 一 郎
(受理昭和58年5月31日)
STUDYOFSOUNDTRANSMISSIONLOSSOFDOUBLE
LAYERWALLSWITHSOUNDABSORBENTMATERIAL
INTHECAVITY
SoichiroKUROKI
M
a
n
y
c
a
l
c
u
l
a
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i
n
g
m
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l
u
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s
f
a
c
t
o
r
i
l
y
.
1.緒言
した.多孔質吸音材を集中定数として把えることも可
一般建築物の壁体の構成方式として,単層壁及び二
能であるが,複素表現として対応できる分布定数の形
をとることによって,吸音材の特性をより自然に表わ
重壁が広く用いられている.居住空間の遮音対策とし
すことができる.また,回路論的に取扱うことによっ
て,侵入してくる騒音を最小限にとどめるためには,
て,表面材の寸法や支持条件という現実的な条件をイ
壁体の遮音性能をたかめることが一つの重要な方策と
ンピーダンスとして組み込むことも可能な柔軟性を有
なる.二重壁の中空層に多孔質吸音材(グラスウール,
している.
岩綿等)を充填すると,その遮音性能はかなり上昇す
ることが知られている。また,断熱性能の観点からも
有利になり,壁体の構造として重要な方式と言え,数
多く採用されている.したがって遮音設計段階で構成
壁体の遮音性能を定量的に把握しておくことが必要と
2.これまでの二重壁誘過損失評価法
2.1LONDONによる理論解')
なってくる.
単層壁に関しては,コインシデンス限界周波数まで
の透過損失値を質量則によって,かなりの精度で推定
A・LONDONは波動方程式を解くことによって,
理論解を得ている.図1に示すように,無限に広が
することができる.一方,二重壁については,未解決
った薄い,音響インピーダンスZ,,Z2を持つ2つの
の要素を数多く含んでおり,透過損失を定量的に把え
壁が間隔dで組み合わされた二重壁に,平面波が入
ることは困難である.A・LONDONの波動方程式に
射角βで入射する場合,入射音圧と透過音圧の比は
よる理論解''を中心として,いろいろな算出方法が提
次式で表現される.
案されているが,未だ充分とは言えない現状にある.
また,理論における仮定条件は理想条件であって,実
験条件としては実現しにくいという側面もある.
本報告では,二重壁の解析に回路論的考察法を導入
旦
=
1
+
A
(
Z
,
+
Z
2
)
+
A
2
Z
,
Z
2
(
1
−
ez
j
B
)
−
(
1
)
P
2
ここでA=cos8/2βc,B=Mcos8とする.したが
って透過率功は
8
6
鹿児島大学工学部研究報告第25号(1983)
差
=
│
芸
│
,
=
,
+
㎡
,
2
Z
‘
Z
伽
i
n
B
I
Z
‘
+
Z
鯉
)
(
2
)
となる.ここでC=cos8/2j“cである.この理論
では壁を空気を含まない剛壁と仮定しており,
る方向から音波が入射してくるので(2)式の積分範囲O
I
Z=んmとなる.実際の音場では壁に対してあらゆ
1
透過損失肥
CcosB+の2(Z1-Z2)2C2sin2Bl
∼汀/2を考慮すると乱入射透過率rは次式のように
なる.
】
L
,偽cos州、伽
『
=
J
(
・
c
o
s
,
馴
剛
(
'
=
昔
)
−(3)
周波数(Hz)
したがって透過損失は式(4)で与えられる.
T
L
=
1
0
l
o
g
÷
㈹
・--……;等価回路,⑩式による
(
4
)
−.−;垂直入射,(9)式による
(3)式を解析的に積分することは困難であるので,電子
一一一;質量則の和,(7)式による
計算機による数値積分を行っている.図2に計算結
−..−;合成質量
果を示す.
一方,一重壁の乱入射透過損失は質量則より次式で
一;乱入射,(3)式による
示される.
TLs=TLso−101og(0.23TLso)(dB)−(5)
○;実測値,文献9による
T
L
。
。
=
n
O
l
o
g
l
l
+
(
器
)
1
I
d
B
)
−
'
6
)
図2中空二重壁(4mm合板,中空層25m)
ここでTLsoは垂直入射透過損失である.二重壁にお
いて各壁が独立して遮音すると仮定すると透過損失は
式(7)のようになる.
の透過損失比較
ている.二重壁においては低周波領域での共鳴透過周
波数八mdが次式で与えられる.
TL=TLs,+TLs2(dB)(7)
ー
=
冨
志
百
,
/
写
烹
字
零
また,各壁の合成質量(m=、,+、2)を(5)(6)式に代入
(Hz)一(8)
した場合(すなわち。=0の一重壁に相当する)の計
したがって,式(3)の積分を行うと,あらゆる8に対
算結果も図2に示している.ここで式(3)による理論
して必ずその(mdが存在し,高周波領域までこの共
値は最も小さく,合成質量による理論値より下まわっ
鳴による透過損失の低下が生じる.また,この理論で
は,壁を無限大,かつ音場を完全拡散として仮定して
Y
いる.しかし,実際の残響室法測定においては,壁は
L
有限であり,また完全拡散音場を実現することは困難
である.さらに,残響室開口部に対する試料の取付条
X
件により式(3)の積分範囲が制限を受けることになり,
実測値は,中高周波数領域において,理論値ほど低下
しないと考えられる.
2.2BRUELによる理論解2)
X=0X=d
P
I
P Ⅱ P Ⅱ
BRUELは二重壁の理論解を次のように与えてい
る
.
図’二重壁の構造
黒木:多孔質吸音材を充填した二重壁の音響透過損失について
D
=
院
│
,
=
2
0
1
.
9
(
(
1
+
響
)
c
o
s
k
d
+
j
l
l
+
響
会
(
筈
)
1
s
Ⅲ
)
(
d
B
)
−
'
,
’
ウーィ0001−6
8
7
y00C
④
W
S
これは〔〕内の絶対値を求めると,LONDONによ
る式(2)で8=0とした場合(垂直入射)と一致する.
2.3集中定数回路による理論解
図1の遮音機構の等価回路を図3に示す.透過損
失TLeは次式として表現できる.
T
L
。
=
1
0
l
o
g
{
'
c
圏
(
籍
十
畑
璽
)
_
伽
,
"
,
+
(
,
c
)
圏
}
’
*
(
等
)
.
*
+
{
州
州
‘
'等
}
'
(
d
B
)
−
m
図4二重壁の等価回路
リックスの4定数は以下のとおりとなる.
{
:
:
1
−
[
単
W
:
剛
)
Ⅲ
受音側の壁体と空気のインピーダンスZ2(=んM2/S+
R/S)│より,中空層部分を含めたインピーダンスZ1は
z‘=会二諾一⑫
α
式(10の分子を最小にする周波数として,共振周波数が
となる.したがって,壁全体のインピーダンスZoは
表わせる.計算結果は図2に示すように,LONDON
音源側表面材のもつインピーダンスをZ耐,(=ん」M1/S)
による垂直入射(8=O)にほぼ近似している.
とおくと
Z。=Z腕,+Z1
−(13
となり,これより透過損失は式(14)として示される.
T
L
=
1
0
1
.
9
1
1
/
(
1
│
器
壬
会
r
)
│
(
d
B
)
0
1
1
ただしR=βbcは空気の特性インピーダンスである.
3.2下地材による板の剛性を考慮した補正
図3二重壁の等価回路
後述するように残響室法透過損失測定において,表
面材は間柱等の下地材によって分割されている.表面
3.分布定数回路の導入
2で述べたように,これまでの理論では中空層内部
による損失を正当に評価しているとは言えない.これ
は実際の残響室測定における壁の有限性に起因してい
る.したがって,これらの要因を理論に反映させる必
材が下地材のつくる各グリッドに単純支持されている
と仮定すると,そのスティフネスによるコンブライア
ンスは各表面材の質量によるイナータンスに直列に接
続したものとなる.したがって等価回路は図5に示
すようになる.また,ステイフネスは次式となる3).
S
T
=
願
‘
面
農
可
(
芸
+
苦
)
要がでてくる.そこで分布定数回路を導入することに
よって,中空層の内部損失に対応する理論的考察を行
った.
(
1
5
リ
ただし,Eはヤング率(N/7702),tは表面材の厚さ
(、),ぴはポアソン比,、.〃はモード(’=72=1を
3.1一般理論
考慮している),α・6は各グリッド寸法(、)である.
図4は分布定数回路による一般二重壁の遮音機構
の等価回路である.2−P(4端子回路)のA,B,C,
DはFマトリックスの縦続接続後の4定数である.
p−JOOOL{卜C
0
@
R
/
S
j
ここで中空層媒質の伝搬定数γと特性音響インピー
ダンスWは一般に複素量で表わされるので,その媒
質の損失を考慮することに対応する.ここでFマト
図5板の剛性を考慮した等価回路
鹿児島大学工学部研究報告第25号(1983)
8
8
各グリッドにおいて,音圧が共通で体積速度が和とな
②>α郷ならば質量として働くから⑳鯛は“転移角周
る関係から,壁全体のインピーダンスZは,各グリ
波数”である.β,γは周波数の関数で,βは低音域
で,γは高音域でやや増加する傾向がある.しかし,
低音域では抵抗が,高音域では質量が効いてくるので,
ッドのインピーダンスZ。‘の並列和となる.
z=,/{妻(,/Z。‘)}−伽
ただし,Nはグリッド数である.したがって,透過
損失は式(10より,式(M)と同様に求められる.
β,γの近似値として,jq"→。。,7h,→・を採っても差支え
ないであろう.7.0=r"→0を“流れ抵抗,,という.
3.3多孔質吸音材の等価回路
x*が複素量になるのは,熱伝導に伴うエネルギ吸
収に起因し,、りくacでは等温変化,⑳>⑳cでは断熱
建築材料として一般に使用される多孔質吸音材は,
等温変化(⑳c→。。),断熱変化(⑳c→0)それぞれを
変化となり,α=⑳cで損失が最大となる.ここでは,
ガラス繊維の骨格素材と,その間隙を占める空気との
不規則な混合体で,解析には以下の仮定を設ける.1)
多孔質吸音材の円形毛細管モデル化,2)有限試料,
3)多孔質吸音材の支持条件は無視できる.
多孔質吸音材内の音の伝搬は,運動及び連続の条件
より,次式で示される3).
,
総
筈
十
伽
d
P
=
0
筈
十
,
M
w
=
0
⑪
(
l
O
仮定して計算を行っている。
次にこれらを一次元の等価回路で近似し,正弦平面
波入射を仮定すると式(,,,剛より次のようになる.
筈
十
岬
謬
v
=
0
器
十
j
参
P
=
0
伽
鯛
媒質の境界面では,音圧P,体積速度Uが連続とな
ることにより,変数をP,Uとし,音響定数が媒質
内の位置Zに依らない均一系と仮定すると次のよう
ここで,P:音圧,ひ:粒子速度,β*:複素実効密度,
x*:複素実効体積弾性率である.β*.x*は共に,粘
性損失を伴う為,複素量で周波数の関数となるが,
Scott,Beranekらの資料を整理すると次の近似式
が得られる4).
になる5).
P,=P2cosh(泥)+Za0U2sinh(γd)−,0
U,=(1/Zα、)P2sinh(γd)+U2cosh(γd)-,7)
ここで添字1は〃=。c,,添字2は,c=gc2=鉱,+dに
おける値を示す.Zα0,γはそれぞれ特性音響イン
,
議
毒
,
(
1
−
j
等
)
(
1
,
雄
難
害
謄
砦
袈
多
差
剛
ただし,β:多孔質吸音材の実効密度,x:実効体積
ピーダンス及び伝搬定数であり,次式となる.
Z
。
。
=
、
/
両
軍
ラ
『
ヨ
『
/
s
剛
γ=”,/万事万束
剛
式(1,,剛を考慮すると
グ
ノノぴ
’一一一
伽叩
β,光
伽
⑫
γ=
1−加鯛/①)(1+”/CUC
γc+m/cdc
1−m鯛/の)(γc+jα/ac
l+”/cリc
、
Za0=
次式のように定義される.
〆一S
弾性率,γc:定容・定圧比熱比(空気では1.40)で,
− 帥
J⑳
−
-61)
C
ここで,、:質量係数(円形毛細管理論では,低音
となる.ここで,式(20,伽は損失のある伝送線路(分
域で、=4/3,高音域で、=1となる.荒井4)は
布定数回路)の式と相似である.これを集中定数回路
、=1.5で実測値に近いとしている),ぴ:ポロシテイ
(多孔度,一般に0.9∼1.0),IGO:空気の密度(常温
で1.205k9/77z3),xo:空気の断熱的体積弾性率
(=1.42×105N、 2)である.β*が複素量となるの
で構成すると,折線近似により,T形または〃形単
位回路の縦続接続として近似的等価回路を導く.
△Ma△Ra
)0【
〕00
は多孔質吸音材中の空気粘性に起因し,γを実効抵
抗とすれば
血10*=γ十九胆
卿
となる.式(19と比較するとα鯨=γ/βとなり,無損失
系では⑳鯛=0である.の<α鯛ならば抵抗として,
図6吸音材の等価回路
黒木:多孔質吸音材を充填した二重壁の音響透過損失について
8
9
音響管内の多孔質吸音材に平面波が入射する場合,
入射方向の厚さの1分割長を△',試料面積をSと
4.実験的考察
すれば,直列素子は抵抗分を含むインダクタンス,並
列素子は誘電体吸収のあるキヤパシタンスとしてシミ
4.1透過損失測定
ュレートされる.(図6参照)各素子は次のように示
透過損失の測定は鹿児島大学建築学科音響実験室の
:
剛
:
陣
w
i
o
l
㈱
△R・/=1/(必α)
ここで単位回路はT形または冗形となり,多孔質吸
音材全体の回路はこの縦続接続の形として取扱い,
透過損失測定施設でJISA1416(残響室一残響室
法)に準拠して実施した.音源室容積は207㎡,受
音室容積は101㎡,試料取付け開口部面積は約7㎡
である.下地は木材(木口寸法60×60mm)により図
7のように開口部に取付けている.下地の一部分を切
2−PのFマトリックスでまとめられる.したがっ
り取ることにより,パターン1からパターン3まで
て,単位回路のFマトリックスを(F‘)とすると,
多孔質吸音材全体のFマトリックス(F)は,その
分割数が〃の場合,次式のように縦続接続すること
の3種類の下地形態としている.中空層の厚さを,9
mm合板を釘打ちによって張り足し,60∼96mmまで変
化させた.表面材は900×1800mm板を釘打ち(15cm
間隔)によって取付けた.周辺枠部分は油粘土ですき
により求められる.
(
F
)
=
(
F
,
)
・
(
F
2
)
・
…
(
F
‘
)
…
(
F
"
)
間が生じないようにふさいでいる.表1に使用材料
卿
多孔質吸音材全体のインピーダンスはこのFマトリ
の物性値を掲げておく.
ックスとその性質により容易に求めることができる.
4.2パラメータの算出
表1使用材料の物性値
表 面 材
芯
名称
材
単位面積
流れ抵抗γ
名称
△ロ
板板
(
N
s
/
m
4
)
■
2500
∼150
ビ
塩
035
﹄6
﹃0︲
T
0.28
T巴
IE
I
I
!
I
’
J
§
L
:’ ’│
I…|撰ぶ,I
4kダフ
ィ
凶
1
1
身.襖80
弓“γフ
α台か
姓〈Yフ
Iαfアう
ABD
2.ヅK80
(b)パターン2
(a)パターン1
図7下地構造形態
Q
リ
2
︼
・
■﹃
酉
︼■
画
画亘
亘
国P
P
一
|
p︻
|P
一
一一
一
︼
︼■
■円
一
﹄﹃
一
一
一一
一︷
I
I
鳥
I
一一
I
ヨ
■●
●■
Ⅱ︼
二
一一
■﹄
一一
一一
I I
〒
(c)パターン3
580
鹿児島大学工学部研究報告第25号(1983)
9
0
3.3で述べたように,多孔質吸音材を中空層部に
充填した二重壁の場合,中空層媒質の伝搬定数と特性
音響インピーダンスが基本量となり,近似等価回路に
基づき,各パラメータは式側のごとく示された.ここ
で本測定で使用した多孔質吸音材の物性値を入れると
柵
│
蕊
募
卿
…
各素子の値は次のようになる.
△Mα=必、/S=(、job/ぴ)△、/S=1.5A△'/S
(、=1.5,グー1)
4.3測定結果及び考察
△Ra=γ△、/S=(2500×、)△'/S
図9∼図16は,多孔質吸音材としてグラスウール
(
γ
=
2
5
0
0
)
を中空層に充填した,間柱等の下地材を有する二重壁
△Ca=S△、/x=S△'/(xo/ぴ)=S△、/1.42×105
剛
)
(グー1,Xo=1.42×105)
(抵抗材サンドイッチパネル)の残響室法透過損失実
測値と本報告による理論計算値を図示したものである.
△Ca=(γc−1)△Ca=0.4△Ca
図9∼図12は下地構造形態パターン1であり,図13
(
γ
c
=
1
.
4
)
∼16は同じくパターン2を示している.(図7参照)
ARo/=1/(⑳.△C・/)=0(等温:αc=CO)
i)図9は下地形態パターン1における3mm厚合
=CO(断熱:αc=0)
板の等質材二重壁について示している.中空層厚は
60mmで,図10は中空層厚を85mmに増やしている.
中空層の厚さによる実測値の変化は,中低音域におい
て,厚さが増加すると実測値も上昇している.これは
刈勉
一一一一一一
αT
bP
b
T
ZZZ
rIlllk
汀
形
aT
bT
c
P
ZZZ
職
形
匿
弾
十
州
他の実測値についても同様の傾向を示す.理論値はこ
の傾向をよく説明しており,実測値にも比較的よい一
致を示している.しかし,250Hz以下の低音域では
理論値は実測値よりもかなり低い値になっている.透
開
過損失値が極小値を示す低周波共鳴周波数(蝿dは一
致しており,中空層が厚くなるとパ胴dが低周波数側
へ移動することは本理論によって説明できる.
高音域における共鳴周波数(dは中空層の厚さd
によって決まり,媒質の種類に関係なく次式のように
ZTα/2ZTc/2
示される.
Upa
ん
=
器
(
"
=
1
,
2
,
3
…
)
一
,‘nL
師
理論値はこの(αの影響による透過損失の低下が現わ
れているが,実測値においては顕著に現われていない.
図8単位回路
これは1/3オクターブ帯域幅について測定を行って
これらのインピーダンスを用い,各単位回路のFマ
いることに起因する.したがって理論値を帯域幅で平
トリックスの4定数をそれぞれ,FTa,FTb,FTC,
均すると全般的傾向は比較的一致すると言える.この
FTd,FP。,FPb,FPC,FPdとすると次式となる.
場合,多孔質吸音材の抵抗によって共鳴現象が現れに
くくなっていることも考えられ,媒質による影響とし
て今後の課題としたい.
、形陸禰…
さらに高音域において,中空層が厚くなると,式帥
に示すごとく,八dは低周波数側に移ってくる.した
がって透過損失値も低下する恐れがあり,理論値は実
6
6
)
測値の低下をよく表わしている.
黒木:多孔質吸音材を充填した二重壁の音響透過損失について
9
1
7
0
fI
、j
印⑩犯加
透過損失肥
透過損失
(
d
B
)
6
0
CO/0
。
◎
。
。
。◎
◎
0
1
01252505001K2K4K8K
周波数(Hz)
周波数(Hz)
図10合板十グラスウール(厚85mm)+合板(パターン1)
図9合板十グラスウール(厚60m)+合板(パターンl)
−;理論値,○;実測値
−;理論値,○;実測値
7
0
6
0
透過損失
透過損失⑱
印的⑩釦m
7
0
5
0
ooq/。
d
b
O
◎
◎
。
3
0
(
d
B
)
◎
2
0
0
。
。
1
0
1
0
0
−1252505001K2K4K8K
125250500..1K2K4K8K
周波数(Hz)
周波数(Hz)
図11塩ビ板十グラスウール(厚60mm)+合板(パターンl)
図12塩ビ板十グラスウール(厚85mm)+合板(パターン1)
−;理論値,○;実測値
−;理論値,○;実測値
7
0
6
0
I
弱い如加1
透過損失肥
透過損失
(
d
B
)
。
0.
0
◎
0.
1
0
0
1252505001K2KムK8K
周波数(Hz)
周波数(Hz)
図13合板十グラスウール(厚60m)+合板(パターン2)
図14合板十グラスウール(厚85mm)+合板(パターン2)
−;理論値,○;実測値
−;理論値,○;実測値
鹿児島大学工学部研究報告第25号(1983)
9
2
透過損失肥
、j
印印⑳釦釦
I
透過損失佃
印印如犯、
7
0
7
0
OII。
◎
◎、◎
。
。
。
◎
0
0
1
00
1
0
0
‐1252505001K2K4K8K
。。
1252505001K2K4K8K
周波数(Hz)
周波数(Hz)
図15塩ビ板十グラスウール(厚601m、)+合板(パターン2)
図16塩ビ板十グラスウール(厚85mm)+合板(パターン2)
−;理論値,○;実測値
−;理論値,○;実測値
ii)図11∼12は音源側の表面材を塩化ビニール板
とした異質材二重壁の結果を示している.本理論によ
5.結語
る,低音域の共鳴透過周波数(減dにおける,透過損
(1)本報告では,多孔質吸音材を充填した二重壁に
失計算値は,等質材の場合TL=0dBとなるが,異
質材の場合零まで低下しない.これは異質材を使用す
塩化ビニール板は合板に比較して面密度が大きくなっ
ている.面密度が増加すると透過損失値は平行移動的
対し,等価回路を導き解析を行った.特に,多孔質吸
音材のシミュレートとして,一次元の回路論的評価を
行っている.二重壁全体としては,分布定数回路によ
る評価法を導入することにより,一般理論として二重
壁の透過損失評価法を与えている.したがって,表面
に上昇する.理論値も実測値と同様な変化が現われて
材のインピーダンス及び中空層の損失を回路定数の中
ることの有利性を示している.表1に示すように,
おり,特に中空層厚85mmにおいて顕著に現われてい
に組み入れることによって合理的に評価できるという
る.理論値は実測値に良く一致していると言える.
特徴をもっている.
iii)図13∼16は下地形態をパターン2(図7参
照)とした場合の結果を示している.下地形態による
補正は3.2で述べている.すなわち,表面材の剛性
によるステイフネスのコンプライアンスは,表面材の
質量によるイナータンスに直列に加わってくる.また
式(151のステイフネスの定義より,表面材の寸法が大き
くなるほど,ステイフネスは小さくなり,結局,単位
面積当りのインピーダンスは小さくなる.したがって
パターン1に比較してパターン2の場合,透過損失
(2)本理論を下地材を有する吸音性二重壁に適用し,
実測結果に対して,かなりの精度で説明できることを
確認した.
(3)本報告では,多孔質吸音材のシミュレートに重
点を置いたが,一次元解析であるために,表面材の内
部損失や中空層媒質内の振動モードの解析として限界
がある.特に,中空層が空気のみの場合,有限壁で問
題となってくる.したがって,多次元解析による本理
論の展開が必要となる.
て,下地材の占める面積の割合が,パターン1にお
(4)下地材により分割された二重壁は,表面材の剛
性や中空層内の振動モードにより,透過損失値が変化
する.今回,板の剛性を考慮した補正を導入したが充
いて18%,パターン2において13.6%とかなりの
分とは言えず,今後の問題として残っている.
は低下する.理論値による低下量は実測値の低下量ほ
ど顕著には現われていない.これは試料全面積に対し
割合を示しており,試料全体の剛性を考慮する必要が
あると考えられる.
謝 辞
本研究の計算は大迫勝彦氏に負う所が多い,また実
黒木:多孔質吸音材を充填した二重壁の音響透過損失について
9
3
験及びデータ整理は卒論生高吉邦治君,竹内弘明君,
ついて,日本音響学会誌(1963)19(1)
矢ケ部博君の協力を得た.ここに記して謝意を表しま
5)川上正光:基礎電気回路I,コロナ社(1960)
す
.
6)C,Zwikker&C、W、Kosten:SoundAbsorbing
Materials,ElsevierPublishingCompany
(
1
9
4
9
)
参考文献
7)子安勝:吸音材料,技報堂,昭和51年
l)A・LONDON:TRANSMISSIONOF
8)久我新一:建築用遮音材料,技術書院,昭和49
REVERVERANTSOUNDTHROUGHDOU‐
年
BLEWALLS,』.A,S,A・(1950)22(2)
9)騒音対策ハンドブック;日本音響材料協会編,技
2)P.V・BRUEL:SOUNDINSULATIONand
報堂,昭和41年
ROOMACOUSTICS,ChapmanandHall,
10)久我新一:サンドイッチパネルの遮音性ならび
London,(1951)
に遮音構造のシミュレーションについて(建築
3)LL・BERANEK:ACOUSTICS,McGraw−
部材の遮音性の研究・第4報),日本建築学会
HillBookCompany(1954)
論文報告集,第128号,昭和41年10月
4)荒井昌昭:多孔質吸音材のシミュレーションに
サンドイッチパネルの使用材料の特性値(測定:鹿児島大学)
表 面 材
音源側
M
名称
(
、
、
)
芯 材
受音側
E
l
O
l
0
N
l
m
i
’
(
k
9
/
㎡
) l
気温
M
ぴ
E
名称
(
n
m
)
l
O
1
0
N
I
I
,
f
’
(
k
9
/
㎡
) l
D
ぴ
P
γ
名称
(
m
、
)
5P
上
同
γ:単位面積流れ抵も
(℃)
郷一坪一坪一郷一郷一鉦一坪一呼一和一坪一理一郵一皿一加一迦一獅一郷一坪
上
同
皿一駈一〃|〃|〃|〃一〃|〃|〃|〃|〃|〃|〃|〃|血一馳一〃|〃
釦一師一拓一妬一%|価一帥一師一布一路一㈹|師一柘一妬一㈹|師一布一鯛
(
k
9
/
㎡
) (NS/mI1
銅醗榊恥9N匙9N上同
9N
同上
付録I
一亜芸一苦亙帯亙器亙器一器一︾|器一
ll定番号
【
)
4
Hz
]
』
﹁﹄
rl
53.1
53.9
51.6
52.4
53.4
50.8
50.4
52.4
50.5
48.4
50.2
49.2
46.8
47.9
47.0
44.2
46.1
45.4
42.6
44.6
43.2
42.6
43.7
42.1
42.2
42.6
40.9
41.5
41.8
40.8
38.7
39.5
39.0
35.3
36.5
36.4
32.1
33.8
34.0
28.3
23.3
23.9
24.9
17.8
19.1
20.3
14.9
16.1
17.6
11.6
11.7
11.7
13.2
12.8
1
3
.
1
52.3
51.9
50.4
47.2
46.9
44.0
42.7
42.7
41.7
40.7
38.9
34.7
31.2
26.8
21.7
16.4
12.9
12.3
13.2
49.5
48.6
50.1
48.3
46.4
44.3
43.0
42.1
39.1
39.4
36.8
34.2
31.8
26.9
22.9
18.9
15.5
12.1
13.1
49.5
49.2
50.6
48.3
46.4
44.1
42.4
42.1
40.6
39.0
36.1
33.9
29.9
25.1
22.1
16.2
12.9
11.8
13.2
46.6
46.1
48.9
48.3
46.8
44.4
43.0
41.9
40.2
38.9
36.5
33.2
30.0
24.7
20.5
16.0
13.7
11.3
13.1
45.6
45.0
47.2
45.9
44.2
42.2
40.6
40.2
39.0
37.2
34.9
31.7
28.9
23.5
19.2
15.9
12.9
●
29.7
謡詞即汁慨H惟嬰劃淵難叩
28.8
14.6
13.0
57.9
57.7
56.0
51.7
49.8
46.7
45.4
46.0
44.7
44.0
41.2
38.2
36.7
31.6
28.0
23.3
14.9
16.7
18.2
56.2
55.3
53.2
49.2
46.9
45.6
44.5
45.9
44.4
42.8
40.9
37.2
35.0
30.5
27.4
18.2
13.9
15.6
22.8
54.1
53.9
52.0
49.4
47.7
46.1
44.8
44.3
43.5
41.2
39.2
34.7
32.1
27.7
19.4
15.7
13.6
14.9
24.7
53.8
53.2
51.9
49.7
48.7
47.0
45.1
44.9
43.1
41.8
39.9
35.1
32.5
27.1
22.9
18.0
14.8
13.5
16.0
41.6
38.4
37.3
33.8
26.8
25.2
21.2
16.5
13.3
14.0
31.8
56.4
L』
57.5
43.1
55.9
44.0
51.2
42.8
48.9
40.1
46.2
38.8
44.8
35.1
44.8
33.3
54.0
28.2
54.2
25.5
53.2
23.2
48.2
18.4
46.7
●
13.9
44.6
14.3
●
52.2
51.8
50.9
45.7
45.0
42.7
41.6
43.2
42.0
39.9
37.3
33.6
31.8
27.0
24.6
21.9
16.5
14.4
52.8
15.7
●
48.6
47.0
44.6
43.9
44.5
43.1
40.5
38.6
34.4
31.7
26.6
23.9
22.3
16.3
14.6
15.3
nI
54.0
4
8
4
8.8
50.5
50.4
47.4
46.3
44.8
43.4
43.6
41.4
39.6
37.3
32.6
29.4
24.6
21.6
18.5
14.4
15.2
14.4
52.8
48.6
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52.2
49.9
48.5
46.7
45.5
44.3
41.8
39.7
37.4
32.5
29.6
23.7
20.8
18.5
14.2
14.0
15.7
dP
$
00
(
8
0
0
0
6300
5000
=
4
0
0
0
3150
2500
2000
1600
1250
1000
800
630
500
400
315
250
200
(測定:鹿児島大学)
160
サンドイッチパネルの透過損失実測値
125
付録Ⅱ
④全
紬誤叩︵岳麗︶