資料1 G7の持続的成長 ~伊勢志摩サミットでの議論に向けて~ 平成28年4月18日 伊藤 元重 榊原 定征 高橋 進 新浪 剛史 1.力強さに欠ける世界経済とG7各国が抱える共通課題 世界経済は緩やかに回復しているものの、成長をけん引してきた新興国の減速が続くなど、2015年は、世界 金融危機後では最も低い成長率(3.1%)に低下。 先進国経済をみると、世界金融危機後の需要不足が残る中、潜在成長率も低下。 こうした停滞の長期化の背景には、高齢化など人口構造の変化、資産バブル崩壊後の資産価格の長期低 迷、技術革新が成長に取り込まれていないといった構造問題も存在。 7 図表1.世界実質GDP成長率 (%) 6 4.1 5 4 4.9 5.5 3.4 3.1 1 3.3 3.4 3.1 ▲1 1 ▲2 0 ▲3 0.0 新興国・途上国寄与 ▲5 (年) 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 2007 2006 2005 2004 2003 2002 2001 ▲ 2.9 ▲4 ▲2 その他先進国寄与 0.2 0 2 G7寄与 2.0 2 4.2 ▲1 図表3.G7のGDPギャップ (%) 3 5.4 3.0 2.5 3 5.2 5.7 (2008年=100) 120 110 個人消費 2007 2008 2009 フランス イタリア 英国 110 フランス ドイツ 日本 英国 米国 カナダ 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) 世界 図表4.G7各国の潜在成長率 民間設備投資 120 カナダ ドイツ 日本 米国 ▲ 1.5 ▲ 4.6 図表2.G7各国の個人消費、設備投資 (2008年=100) ▲ 2.0 ▲ 2.4 ▲ 2.2 ▲ 2.3 2.5 2007年 (%) 2015年 2.0 1.5 100 1.0 100 90 0.0 80 90 2008 0.5 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 -0.5 (備考)図表1、図表3はIMF世界経済見通し(WEO)データベース(2015年10月版)より作成。図表2、図表4はOECD経済見通し (2015年11月)掲載のOECD推計。図表2民間設備投資につきイタリアはSNAベースで公共と民間を区分できないため非掲載。 日本 カナダ フランス ドイツ イタリア 英国 米国 2 2.国際的なマクロ政策協調に向けて~金融政策、財政政策、構造政策の一体的推進~ 金融危機後の先進各国のマクロ経済運営は、金融緩和を継続・強化している一方、財政政策は引き締め気味 で対応している。 こうした状況に対して、IMFは、先般、持続的成長を遂げるためには、①構造改革、②継続的な金融緩和、③財 政支援の3方向からの総合アプローチが必要であること、先進国が長期停滞に陥った場合には、協調的財政 政策が有効であること等を報告。また、OECDは、より強力な協調的財政政策が効果が大きいことを報告。 まさに、アベノミクス新3本の矢は、こうした提言のモデルともなるもの。その中心には「国民の希望を実現する こと」を通じて「所得・雇用環境を底上げするとともに、社会的課題を解決し、成長に結び付ける」との考え方が ある。先進国が直面するこうした共通課題に対して、日本がリーダーシップを発揮し、国際連携・協調を牽引す べき。 図表7.G7各国の歳出 図表5.主要国の政策金利 (%) 7 5 カナダ ドイツ 日本 米国 60 米国 ユーロ圏 英国 日本 6 フランス イタリア 英国 55 4 50 3 45 2 40 1 35 (%、GDP比) 80 2016 2015 2014 2013 2012 2011 2010 2009 2008 (年) 2007 0 (利払費を除く一般政府ベース) (%、GDP比) 60 2008 図表6.主要国のマネタリーベース 2009 2010 2011 図表8.G7の財政赤字 (%、GDP比) 米国 ユーロ圏 英国 日本 70 30 2007 3 2012 2013 カナダ ドイツ 日本 米国 2014 (年) フランス イタリア 英国 0 50 ▲3 40 ▲6 30 ▲9 20 ▲ 12 10 0 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 (年) (備考)図表5、6:Bloombergより作成。図表5の日本については、2013年4月に金融市場調節の操作目標を金利(無担保 コール翌日物金利)からマネタリーベースに変更。なお、市場で決まる無担保コール翌日物金利は足元0.0%近辺で推移。 ▲ 15 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (年) (備考)図表7はOECDデータベースより作成、自国通貨表示の一般政府歳出(利払費除く)。図表8はIMF世 界経済見通しデータベース(2015年10月)より作成、一般政府財政収支の対GDP比。 3 3.国際的なマクロ政策協調に向けて~連携・協調による課題解決~ 【国際的なマクロ政策協調に当たっての留意点】 国際的なマクロ政策協調に当たっては、以下の点に留意すべき。 潜在成長率を高める構造政策を併せて推進すること。その他、OECD・G20による「BEPSプロジェクト」の勧告等 を踏まえ、国際的な租税回避・脱税の防止を図ること。 各国の財政余力の違いに配慮しつつ、潜在需要を喚起するような質の高い投資・支出を実施すること 国際金融市場の安定に向け、各国が努力すること。また、金融規制(バーゼルⅢ)が金融機関のリスクテイクを委 縮させないよう留意しつつ進めること。 中国の経済・金融の変動が世界経済に与える影響は大きく、政策に係る透明性の向上、市場とのコミュニケーショ ンなどについて、いろいろなチャネルを通じて働きかけていくこと。 【マクロ政策協調の実行に向けて】 先進国が持続的成長を実現するカギは、「国民の希望」を実現することで社会的課題を解決し、成長に結び付けるこ とである。G7各国が共通に抱えている、健康・医療、環境、人材面等の課題(以下参照)を、連携・協調して克服し、 需要創造、供給力強化、所得の底上げに結び付けるべき。 高齢化に伴う課題への対応(データの活用や予防医療等を通じた健康寿命延伸や高齢者の生活の質の向上) 少子化の是正及び労働力人口減少への対応 (教育、人材育成) 女性の活躍推進 地球温暖化の解決に向けた省エネ・代替エネ投資やまちづくり(エネルギーの地産地消等)、国際協力の仕組み イノベーションの成長への取り込み、生産性の向上 Society 5.0による新しい経済社会の実現 と国民生活の諸課題(人口減少を克服するスマート社会、環境問題の解 決、セキュリティ向上等) その際、社会的イノベーションをいかに促すか、また、課題解決に向けて、産学官連携など、民間部門と協働しつつ、 いかに実効的に政策対応していくか、それらを新興国を含めいかにグローバルに展開していくか、といった点につい ての認識共有と、共同行動が重要となる。 このため、①社会的イノベーションを含む先進事例の共有、②長期的ビジョン(課題克服の道筋と将来の姿)の提示、 を通じて、G7で共有し、課題解決に向けて連携・協調した取組を推進することが重要。こうした取組を官民で行うG7 4 レベルの対話・協働の場づくりを日本がリードすべき。
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