平成28年熊本地震に伴う農作物技術対策(第2報) 平成28年4月19日

平成28年熊本地震に伴う農作物技術対策(第2報)
平成28年4月19日
農業技術課農業革新支援センター
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普通作
(1)施設・機械等の点検・補修
麦の収穫時期が近付いているので、収穫用機械や乾燥調製施設・機械の動作状況を点検
し、破損や故障している場合は早急に修理等を行う。なお、施設や建屋の点検を行う際は、
人命の安全を最優先にし、落下防止等の措置をとったうえで行うようにする。
(2)水田および農業用水利施設の点検・補修
水稲の作付時期が近付いている地域もあるので、早めに水田および水利施設の点検を行
い、補修が必要な箇所については作付の前に補修を終えておくようにする。なお、用排水
路等で大規模な補修が必要と思われる場合は、土地改良区や地域全体で事前に協議を行い、
優先順位を明確にしたうえで補修を行う。
(3)土砂や地下水が流入した水田の土壌調査
地震により土砂が流入したり、液状化現象を生じ地下水が流入した水田においては、土
壌の化学性が変化している場合があるので、植付前に土壌調査を行ってECや塩分濃度を
測定し、必要な場合は除塩等の対策を実施する(農業革新支援センター情報第7号参照)。
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園芸
(1)共通事項
1)施設・機械等の補修
ハウス施設、冷暖房装置・自動換気装置・灌水装置・電照装置・育苗装置等の動作状
況を確認し、破損や故障している場合は早急に修理等を行う。重油タンク・油送管等の施
設破損については補修を行う。
2)施設・機械等に停電や故障が発生した場合の栽培管理方法について
①施設の暖房装置が停止した場合:生育遅延や病害発生のおそれがあるため保温に努め
る。(保温のみの場合、湿度が高くなるので病気に注意する)
②換気扇や自動換気装置が停止した場合:植物(樹体)に高温障害や損傷が発生するおそ
れがあるため、谷やサイドのビニルを開けたり寒冷紗を利用し温度の上昇を抑える。
③自動灌水装置が停止した場合:水不足による生育不良が発生するおそれがあるため、大
型ポリタンク等に水を貯め、動力付きポンプ等を使用し潅水チューブや潅水ホースに
より手動でかん水を行う。
④電照装置が停止した場合:電照による生育調整ができず出荷のずれや品質低下が発生
するおそれがあるため、早急な修理を行う。
(2)野菜
1)共通事項
・果実等が落下した場合には、腐敗による病害等の発生が懸念されるため、速やかに
ほ場外へ搬出するとともに適正に処理する。
・生育や収穫中の作物で倒伏や株元の緩みによる根が露出した場合は、支柱を立て直
し誘引を行うとともに土寄せを行う。
・萎凋がみられることがあるが、草勢に応じて少量多回数のかん水管理を行う。また、
根の傷みによる萎凋の場合は、必要に応じて寒冷しゃ等で数日遮光して萎凋を軽減
させる。
・育苗ハウス内で被害が発生した場合は、不良苗を除去し充分な鉢間隔を取って採光
や通風を良くするとともに、かん水は最小限にとどめて草勢の回復を図る。
・被害が甚大で回復の見込みがない場合は、播き直しを行うか代替作物を選定し早急
に播種を行う。
2)イチゴ
・高設育苗施設が倒壊等の被害を受けた場合は、不良苗を除去し早急に修復する。修
復ができない程の被害を被った場合には、ブロック等による簡易な高設施設を設置
し、苗の地置きを避ける。
3)アスパラ
・水の確保が困難な場合、水不足に伴う生育不良が発生する恐れが予想される場合は、
天井フィルムを除去する。併せて薬剤散布により病害対策を行う。
(3)果樹
・施設栽培では、共通事項を参考に温度管理、水分管理に十分注意する。
・倒伏樹は早急に引き起こし、支柱等で固定する。
(4)花き
1)共通
・生育や収穫中の作物で倒伏や株元の緩みによる根が露出した場合は、支柱を立て直
し誘引を行うとともに土寄せを行う。
・萎凋がみられることがあるが、草勢に応じて少量多回数のかん水管理を行う。また、
根の傷みによる萎凋の場合は、必要に応じて寒冷しゃ等で数日遮光して萎凋を軽減
させる。
2)トルコギキョウの育苗
・種子冷蔵中の停電:冷蔵庫の温度を確認しながら温度が高くなるようであれば入り口
を開放する。それでも高くなるようであれば早めに育苗ハウスに移し、育苗を行う。
(早めに育苗ハウスに移すと定植日が早くなるので定植準備を急ぐ必要がある)
・冷房育苗中の停電:通風に留意するとともに寒冷紗被覆や散水等をこまめに行い室温
の上昇を可能な限り抑える。
3)鉢物
・散乱した鉢は早めにもとに戻す。
・壊れた鉢棚は早急に修復する(プール潅水の場合は水平になるようにする)。修復が
間に合わない場合は、地置きする(排水、病害等に注意する)
・転倒した鉢や茎葉等が損傷した鉢は病気が発生しやすいので病害防除を行う。また
必要に応じ葉面散布剤を施用する。
・出荷選別を徹底する。
(5)茶
製茶機械設備の点検については、各種機械、設備の損壊や傾きがないか下記の点に
ついて点検する。
1)建物設備
・製茶工場施設については外壁の割れ、亀裂など使用中に崩落の恐れがないか点検す
る。また、重油タンク、プロパンガス、受電設備などに異常がないか点検する。配
管関係について水道、ガス管、重油配管、電気設備の破損、断線などの点検を行う。
2)製茶機械
・各種機械の設置位置がずれていないか点検する。また機械を支える土台(ゲタ)が
ずれて機械が宙に浮いた状態になっている場合もあるため、それぞれの機械の足元
についても確認する。
・排煙煙突、コンベア、シュート、トラフなど連結された器具、搬送装置について
も固定が外れていないか点検する。
3)始業点検
・全てにおいて異常が無ければ機械を順番に稼働し、異音や、異常振動などがあれ
ば直ちに停止させ、異常部位の確認を行う。
4)水道、電力供給ほか
・水道、電力の供給が回復していない工場、製茶機械の修理が間に合わず製造できな
い工場については、摘採時期が遅れても品質が維持できるよう茶園に被覆を行う。
また、適期を過ぎて摘採する場合は、摘採位置を高くして良質芽の確保に努める。
5)防霜ファン
・防霜ファンの傾きや断線について確認する。
(6)畜産
・管理者の安全を最優先する。畜舎施設等には安全を確認した後、被害状況を確認す
る。
・被害を受けた畜舎施設等については、すみやかに補修を行い次の災害に備える。ま
た、電線の断線、漏電等がないか十分に確認を行う。
・施設の安全確保が困難と判断された場合、速やかに家畜等を施設から屋外に避難さ
せる。家畜を屋外で繋留する場合は、給水、日陰等を確保し、しっかりと繋留する。
・畜舎の倒壊、機器の破損等により、中長期にわたり家畜の飼養管理、生産活動が困
難な状態と判断された場合、関係機関に相談し預託管理先の確保に努める。
・断水の有無について確認する。断水の場合、家畜および家禽の飲水については給水
タンク等により確保に努め、充分な給与を行う。
・酪農の場合、停電による搾乳の遅れ、不十分な搾乳、搾乳器具の汚染等は乳房炎の
発生、乳質低下につながるため、電源の確保に努めるとともに、通電後は搾乳機器
の洗浄を十分に行うとともに牛の個体管理を行う。
・余震等により再度の停電も予想されることから、発電機等の燃料の確認、補充を行
う。
・飼料タンク等が倒壊、破損している場合、内部の配合飼料等は速やかに搬出し、フ
レコンバッグ、ビニールシートで覆うなど雨水等で濡らさないように管理する。
・粗飼料庫等が倒壊破損し使用できない場合、粗飼料はラップでの再梱包、ビニール
シートで覆うなど、雨水等で濡らさないように管理する。
・ほ場作業については、作業機器でほ場に侵入する前に、安全性を十分に確認する。
作業により、強度低下した法面近辺や断層亀裂近辺では絶対に作業しないよう十分
注意する。
・放牧地については,土砂崩れ等の被害が無いことを確認したうえで放牧する。また,
牧柵等の破損を確認した場合は速やかに修理等の対応を行い、家畜の安全を確認し
たうえで放牧する。
・家畜の個体観察に努め、異常畜の早期発見・早期治療に努める。
・死亡家畜の取扱いについては適正に処理する。
・畜舎等環境衛生の管理については、通常以上に飼養衛生管理基準に準じた管理徹底
を行い、環境悪化防止、防疫徹底を行う。
・家畜排せつ物および堆肥については、施設破損等で雨水により流出、地下浸透等が
ないよう、ビニールシートで覆う等の対策を実施する。