研究主題 「響く音の輪 輝く笑顔」

≪三重県≫
第 13 回東海北陸小中学校音楽教育研究大会
三重大会
研 究 主 題 「響く音の輪
輝く笑顔」
小学校主題 「音楽に親しみ、そのよさを感じ、思いをもって
表現しようとする子どもの育成をめざして」
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研究主題設定に当たって
私たちは、子どもたちが音楽のよさや美し
友達とともに学び高め合う音楽の学習活動
さを感じ、生涯にわたって音楽に親しんで欲
が「響く音の輪」となり、そこから生まれる
しいと願っている。
感動が、子どもの「輝く笑顔」を生みだすこ
そのためには、表現及び鑑賞の様々な音楽
とになる。音楽学習を通して子どもの輝く笑
活動を通して、子どもたちが楽しく音楽にか
顔は、このような活動によって実現すると思
かわり、音楽を学習することの喜びを得るよ
った。
私たちも、東海北陸地方や全国の先生方と、
うにすることが大切である。つまり、子ども
自らが、音楽学習への関心をもち、友達とか
子どもの学び合いを通して、音楽教育にかか
かわり合いながら、音楽のよさや面白さ、美
わる喜び、音楽のよさや美しさなどについて
しさに気付き、表現や鑑賞の学習に、主体的
ともに語り合うことで、和(輪)をつくり、
に取り組み、音楽を学ぶ喜びを実感できる学
輝く笑顔になることを期待し、主題を設定し
習活動を充実していくことが大切であると考
た。
えた。
表現領域の学習において、子どもの音楽表
2
小学校部会の主題設定と研究の視点
現は、
「こう表したい」という自分の思いや意
子ども自らが音楽のよさや面白さ、美しさ
図をもち、それを友達に伝えたり、友達の表
に気付くとともに、思いや意図をもって音楽
現の工夫から学んだりすることでさらに高ま
を表現したり、想像力を働かせながら音楽を
っていく。このような学習は、ともに学び高
聴いたりするなど、一人一人が感性を豊かに
め合うといった協同して学ぶ子どもの姿があ
働かせながら、主体的に活動に取り組むこと
ってこそ充実するし、仲間と学習を深めるこ
ができる学習が大切であると考えた。そして、
とで音楽活動の楽しさも生まれる。だからこ
仲間と思いや意図を伝え合う過程で、音楽表
そ、音楽の授業では、
「みんなで心を合わせて
現を高めたり、音楽を聴く喜びを実感したり
演奏できた」
「工夫を繰り返すことで表現がよ
する授業の展開が大切であると考え、小学校
くなった」などの充実感や達成感を味わうこ
部会の主題を設定した。
研究の視点を次の3点とし、実践研究を行
とができるように、協同する喜びを感じるこ
とができる学習の展開が大切である。
鑑賞領域の学習においても、子どもは楽曲
のよさについて自分の考えをもち、友達と互
った。
①
子どもが思いや意図をもって豊かな音楽
活動をしていくために
いの考えを伝え合いながら楽曲の価値を見出
〔共通事項〕をすべての音楽活動の支えと
したとき、音楽のよさや美しさなどを一層深
して、各事項の学習が充実するような題材構
く味わって聴き、音楽を聴く喜びを実感する
成を考える。その際、表現及び鑑賞の各活動
ことになる。そのため、授業では感じ取った
を〔共通事項〕を要として、相互に関連させ
ことを言葉で表すなどの活動を取り入れ、協
るとともに、各活動において、音楽を特徴付
同して高め合う学習の展開が大切である。
けている要素や音楽の仕組みを聴き取り、そ
津市立櫛形小学校 教諭
れらの働きが生み出すよさを感じ取った子ど
・5年歌唱「曲想を感じ取って歌おう
もたちが、新たな工夫に気づき、さらに音楽
~つばさをだいて~」
表現を高めていくようにする。また、思いや
亀山市立井田川小学校 教諭
意図を子ども同士で伝え合うことと、実際に
桂山 典子
・2年音楽づくり「お気に入りの音をみつ
音楽で表して試すことを往還しながら、音楽
けてあそぼう~森のカーニバル~」
表現を高めていくようにする。
②
伊藤 昌子
津市立南が丘小学校 教諭
子どもたちが協同的に取り組み、学習の
東山 順子
充実につなげるために
個々の子どもの気付きや考えを、子ども同
士がかかわり合うことで相乗効果を生み、一
人一人の子どもと学級全体の学習の深まりに
つなげる学習形態を工夫する。また、グルー
プや学級全体で話し合う際、音楽科に即した
言語活動を取り入れることで、学習のさらな
る充実をめざす。
③
・5年器楽「曲想を味わおう
~ジャマイカン
子どもの学びを確かなものにするために
津市立誠之小学校 教諭
子どもの学びを確かなものにするために、
ルンバ~」
橋本 直子
子どもに付けたい力を明確にすることが大切
である。その上で、評価に当たっては、予想
◆研究協議会(分科会:各会場)
される子どもの姿を想定し、個人がどのよう
な思いや意図をもっているか、グループでど
のような工夫をしたのかなどの見取りの方法
を工夫する。また、指導と評価の計画におい
て、評価規準に基づき、評価の結果を記録に
残す場面を精選して、適切に位置付けるよう
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にする。
◆講演・講評
全体会
演題「今、音楽教育にもとめられるもの」
3
当日の研究授業等の内容(小学校)
◆歓迎演奏(津市立櫛形小学校)
・全校合唱
「変わらないもの」他
国立教育政策研究所教育課程研究センター
研究開発部教育課程調査官
文部科学省初等中等教育局教育課程課
教科調査官
津田
正之
氏
◆研究演奏
(1)
津市立南郊中学校吹奏楽部
“NANNCOH JAZZ ORCHESTRA”
「ALIANZ」「MOONLIGHT SERENADE」
「SOON」「SING SING SING」
◆研究授業(小学校)
(2)
鈴鹿市立桜島小学校3年生・
・4年音楽づくり「いろいろな音色を感じ
取ってつくろう~リズムアンサンブル~」
リコーダークラブ
「旅立ちのアンダンテ」
「クラッピング・ファンタジー 第 3 番」
たちに何を聴かせるのか」にこだわり、ね
「カヴァレリア・ルスティカーナ」
らいに迫る鑑賞教材(CDやDVD)の選
「案山子~道化師ノソネット」
択の重要性を再認識した。
(3)
鈴鹿市立神戸小・玉垣小合同金管バンド
・〔共通事項〕のうち、リズム、音色、強弱、
「ノーブル・マーチ」
変化など、指導者が意識していくことで、
「故郷~希望への序曲~」
子どもたちも感じ取ったことを発言する時
「オーメンズ・オブ・ラブ」
のツールとして使えるようになってきた。
(4)
子ども唐人・唐人踊りを継ぐ会
(5)
三重大学教育学部附属中学校音楽部
子どもによる「唐人踊り」の披露
・授業毎にチームを組み、指導助言者の先生
方にご指導いただき、研究を深めることが
でき、大きな財産となった。
「友~旅立ちの時~」「島唄」
(2) 課題
「クレーの絵本第 1 集から」
・研究に携わったものは、大変勉強になった
「コルシカ島の2つの歌から」
◆全員合唱
「ふるさと」「七つの子」
が、研究内容を三重県全体に広めたり、日々
の授業実践で積み重ねていったりすること
が今後の課題である。
・友だちの演奏を聴いて感じ取ったことを発
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成果と課題
言したり、グループの中で次はこうしたい
(1)成果
という思いを伝え合ったりする手だてとし
・研究の視点を基に手だてを考え、研究を進
ての言語活動について、日常的な学級指導
めていったことは、授業の根本を見直すこ
の中で積み重ねていくことが必要であると
とになり、授業をした学校の子どもたちに
いうことが再認識された。
確かな力を付けていくことができた。
・評価のあり方について、評価規準と評価方
・題材において視点を具体化することにより、
法について指導案検討の段階でしっかり話
子どもは何を学ぶか、教師は子どもにどん
し合い設定したのだが、指導をしていく中
な力をつけるかが明確になった。
で十分に検証できなかった。
・子どもたちは楽譜とじっくり向き合うよう
また、グループ活動での個人評価のあり方
になり、どのように歌いたいのか、どのよ
を今後研究していかなければならない。と
うに歌えば聴いている人に思いが伝わるの
いう意見もあった。
かなど深く考えるようになった。また、歌
・音楽の授業において、子どもが「分かった」
詞の意味を考えるとともに、強弱やフレー
「楽しかった」
「感動した」などという実感
ズなどから作曲者の思いを感じ取る経験が
を持てるよう、教師が教材研究を深め、感
できた。なにより、子どもたちが音楽を楽
しみ、もっと歌いたいという気持ちになっ
たことが成果である。
・題材構成をするにあたり、鑑賞と表現の活
性を磨いていくことが大切である。
・台風の接近により、大会の開催が危ぶまれ
たが、どんな場合においても危機管理を考
えておく必要性を感じた。
動を〔共通事項〕を要として関連させるよ
うに組み立てていった結果、子どもたちが
最後に、本大会開催にあたり、ご指導とご
鑑賞で聴き取り、感じ取ったことを次の表
協力いただいた全ての皆様に心より感謝申し
現活動に生かし、音楽表現を高めていくこ
上げます。ありがとうございました。
とにつなげることができた。また、
「子ども