メモー3: Rouseモデルの簡略版 分子鎖はバネと見なせる 排除体積効果を無視すると、熱平衡での分子鎖の形は単純なランダムウォークになり、末端間 ⎛ 3 2⎞ R となる。ここで R0 は分子鎖のおよその ⎝ 2R02 ⎟⎠ ベクトル R の分布はガウス分布 P(R) ∝ exp ⎜ − 広がりで、 b モノマーの大きさ、 0 = 熱平衡での平均として R0 ≡ R2 0 N 1/2b (1) ⎛ U(R) ⎞ ⎟ とみなすと、 ⎝ k BT ⎠ この分布をボルツマン分布 P(R) ∝ exp ⎜− ポテンシャル U(R) = バネ定数 k N = kN 2 R 2 3k BT 3k T 1 = B 2 ∝ 2 R0 Nb N 復元力 F = −kN R x-成分は Fx = −kN Rx (2) (3) (4) 分子鎖は、このようなバネ定数を持つバネ(エントロピーバネ)とみなせる。 Rouse モデル(を簡略化したモデル) 分子鎖を、2個のビーズをバネ定数 k N のバネで繋いだもので近似する。ビーズ間を結ぶベクト ル(あるいは末端間ベクトルとみなしてもよい)を R 、重心の位置ベクトルを R G とする。 重心の運動 重心は単純なブラウン運動をする: G + f(t) = 0 −ζ N R (5) 重心が動くときに働く摩擦力は、個々のモノマーに働く摩擦力の和になるので、重心に対する摩 擦係数 ζ N も、モノマー1個の摩擦係数 ζ1 の和になる(モノマーが N 個あれば ζ1 の N 倍): 重心運動の摩擦係数 ζ N = Nζ1 ∝ N (6) Einstein の関係により 重心拡散係数 D = k BT kT 1 = B ∝ ζN Nζ1 N (7) バネの運動 、及びランダムな力 f(t) のつりあい バネの運動は、バネの復元力 −kN R 、摩擦力 − ζ N R + f(t) = 0 つまり R =− −kN R − ζ N R kN 1 R+ f (t) ζN ζN (8) から決まる。( ζ N は重心の摩擦係数と完全に同じではないが、 N に比例する点は同じ)。これは 1階線形非斉次の微分方程式で、すでに何回か出てきたものと同じ形。特に緩和時間は Rouse緩和時間 τ R ~ ζ N ζ1b 2 2 N ∝ N 2 k N k BT (9) これが、変形した(配向した、あるいは伸びた)分子鎖が、熱平衡に戻るのに必要菜時間。 (7)(9)より Dτ R ~ R0 2 ~ Nb 2 (10) つまり、 緩和時間 τ R 程度の時間経過すると、重心は分子鎖の広がり R0 程度拡散している ことがわかる。 応力を表す式 このような分子鎖が多数あるとき、観測される応力は Rx Ry ずり応力 σ xy = ν kN Rx Ry = 3ν kBT R0 2 ( R0 ≈ N 1/2 b ) (11) で与えられる。但し ν = 単位体積あたりの分子鎖の本数 = cN A M (12) (c =単位体積中に存在する高分子の質量(溶融体なら試料の密度 ρ )) 熱平衡では Rx と Ry に相関は無く、 Rx Ry 0 = Rx 0 Ry 0 = 0 。つまり σ xy =0 である。 (Rx , Ry ) = (+,+) あるいは (−,−) の分子鎖が、 (+,−) あるいは (−,+) の分子鎖より多い という「配向」が生じて始めてずり応力 σ xy が発生する。 応力緩和 ひずみ γ 0 の瞬間変形を与えると、 R は Rx → Rx′ = Rx + γ 0 Ry 、 Ry → Ry′ = Ry (13) と変化する。変形前は熱平衡だったので、変形直後は Rx′ Ry′ = (R x + γ 0 Ry ) Ry 0 = Rx Ry 0 + γ 0 Ry 2 0 = 0 + γ0 R2 3 0 = 1 2 R0 γ 0 3 (14) よって、変形直後の応力は 1 σ xy (t = +0) = ν k B R0 2γ 0 = ν kBT γ 0 ∝ γ 0 3 (15) これは与えたひずみ γ 0 に比例しているので、比例係数として変形直後の弾性率 G ≡ G(t = +0) = ν k BT (16) が求まる。これが Maxwellモデルで近似するときのバネの弾性率である: G = ν k BT (17) 粘度 Maxwell モデルと同様、粘度は η ~ Gτ R で見積もることが出来る。 分子量依存性 D∝ 1 c τ R ∝ M 2 G ∝ η Gτ ∝ cM 1 M M 特に溶融体なら c = ρ = 一定で G∝ 1 η Gτ ∝ M 1 M (18)
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