資料1-1 海外調査報告 (ドイツ) 平成28年4月15日 経済状況 ○ リーマン・ショックを機に、2009年には経済が大きく低迷したものの、経常収支の堅調な黒字などを背景に 翌年には急回復、足元までプラス成長が継続。金利も低下傾向が続いている。 ○ 失業率は2005年に10%超まで増加したが、労働市場改革などにより大きく改善。リーマン・ショック後も失 業率は着実に低下。 (%) 12.0 10.0 リーマン・ショック (2008年9月) 失業率:4.7% (2015年) ギリシャ危機 (2009年10月) 経常収支対GDP比:8.5% (2015年) 8.0 6.0 4.0 2.0 0.0 ▲ 2.0 ▲ 4.0 10年物国債金利:0.5% (2015年) 実質GDP成長率:1.5% (2015年) ▲ 6.0 2001 2002 2003 2004 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 1998.10 ~ 2005.11 2005.11 ~ シュレーダー首相 (ドイツ社会民主党) メルケル首相 (キリスト教民主同盟) ドイツ社会民主党(SPD)、同盟90/緑の党 1 2005 キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、 ドイツ社会民主党(SPD) (出典)IMF「World Economic Outlook」。但し、10年物国債金利についてOECD「Economic Outlook 98」。 2013 キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、自 由民主党 (FDP) 2014 2015 (暦年) キリスト教民主・社会同盟 (CDU/CSU)、ドイツ社会民 主党(SPD) 財政状況 ○ リーマン・ショックに対応するため、大規模な経済対策を行ったことで、財政収支は大幅に悪化。こうした状 況を受け、連邦基本法を改正したほか、大規模な財政健全化策を決定。 ○ 2012年以降、財政収支を黒字化するなど、他のEUやG7諸国と比べて、最も財政健全化が進んでいる。 (%) 6.0 リーマン・ショック (2008年9月) 実質GDP成長率 (左軸) 4.0 100 (%) ギリシャ危機 (2009年10月) 債務残高対GDP比は 安定的に低下 79.3 80.6 72.7 2.0 57.9 59.6 63.3 65.0 67.2 66.6 63.8 77.0 77.9 74.6 80 70.7 65.2 60 0.0 40 一般政府ベースで 財政収支均衡を達成 ▲ 2.0 債務残高 対GDP比 (右軸) ▲ 4.0 財政収支対GDP比 (左軸) ▲ 6.0 2001 2002 2003 PB対GDP比 (左軸) 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 1998.10 ~ 2005.11 2005.11 ~ シュレーダー首相 (ドイツ社会民主党) メルケル首相 (キリスト教民主同盟) ドイツ社会民主党(SPD)、同盟90/緑の党 (出典)IMF「World Economic Outlook」 キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、 ドイツ社会民主党(SPD) 2013 キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)、 自由民主党 (FDP) 2014 20 2015 0 (暦年) キリスト教民主・社会同盟 (CDU/CSU)、ドイツ社会民主 党(SPD) 2 金融危機後の経済・財政面における対応 金融危機後の対応 ○ 東西ドイツ統一後、景気低迷や高失業率に悩める「欧州の病人」に転落したドイツは、シュレーダー政権 (1998~2005年)期の改革により、競争力を大きく回復・向上。 ○ メルケル首相は、リーマン・ショックを契機とした経済金融危機を受け、景気対策を実施。これにより悪化し た財政状況を改善するため、2009年7月にドイツ連邦基本法(憲法)を改正。 ○ また、2010年6月には、2011~2014年までの4年間の財政健全化策を閣議決定。これは、歳出・歳入の両 面で総額約800億ユーロに及ぶものであり、財政健全化を大きく進める方針が打ち出された。 ○ こうした取組に加え、経常収支黒字の維持、景気回復に伴う税収増により、2012年には一般政府財政収支 の黒字を達成。更に、2014年には、1969年以来45年ぶりに、連邦政府財政収支の黒字化を達成。債務残高 対GDP比も、2012年以降は安定的に低下。 ドイツが抱える課題 (%) 3 ○ 合計特殊出生率が1.40%(2013年)と厳しい少子化に直面して おり、高齢化率も2016年の21%から、2050年には32%にまで上昇 すると推計されるなど、少子高齢化が一層進む見通し。 40 ○ 足元では、ドイツに大量の移民・難民が流入している。ドイツ経済 研究所の試算では、2015年から2017年にかけて累計200万人以上 の移民・難民受入れが見込まれる一方、就業者数は累計30万人弱 (約13%)にとどまるとされており、失業状態の固定化が懸念される。 20 38.8 日:27.5 35 32.3 30 仏 英 米 25 15 10 独:21.4 5 0 1950 1970 2000 2016 2030 2050 財政運営を規律するルール① ○ リーマン・ショックを契機とした経済金融危機直後の2009年7月に連邦基本法(憲法)を改正し、連邦政府と 州政府の財政収支均衡を原則義務付け(債務ブレーキルール)。 ○ ドイツの先行した取組は、EUの財政協定(2013年発効)の制定に当たり、大きく貢献。 ※ 財政収支均衡の原則を憲法ないし国内法で規定することを欧州各国に義務付け。 改正後の憲法の内容 (債務ブレーキルール) ○ 連邦政府及び州政府に対して、財政収支を原則とし て均衡化することを義務付け。 ※ 本原則は2011年より適用。 ○ 連邦政府については、構造的財政収支対GDP比が ▲0.35%以下であれば、本原則を満たす(2016年より 適用)。これは、EUの財政協定よりも厳格なルール。 ※ 構造的財政収支とは、財政赤字から景気循環要因、一時的 要因を取り除いたもの。 ※ 州政府には構造的財政収支の赤字は認められない(2020 年より適用)。 ※ EUの財政協定では、構造的財政収支対GDP比の基準は 一般政府ベースで▲0.5%とされている。 <連邦財務省ヒアリング> ○ 憲法改正には連邦議会の3分の2、連邦参議院 の3分の2の賛成が必要だが、金融危機が国庫 財政にネガティブに働き、何かやらなければいけ ないという中で、政治的に強い意志を貫徹する、 長期的な国庫財政の健全性の課題を解決する、 という共通認識があった。 ○ 当時はキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU) とドイツ社会民主党(SPD)の大連立政権であっ たが、社会福祉・歳出拡大を志向する傾向にあっ たSPDに対しては、2008年・2009年にSPDが望ん だ歳出増(新規国債発行によるファイナンス)を行 う代わりに、債務ブレーキルール導入に反対しな いよう説得した。 ○ これらが功を奏する形で、憲法改正に当たって は大きなコンセンサスが得られた。 (参考)改正前の連邦基本法では、「投資支出の総額の範囲内で、新規国債発行を許容する」とのルールを用いていた。しかし、①「経済の 不均衡を防止するため」との例外規定の解釈があいまいであった、②新規国債発行額の上限の定めがなかった、③投資支出の方が「教 育等への支出よりも成長に寄与するかは分からず、一方で、投資概念自体を広げることは、際限無い投資を生みかねず現実的ではな い」、などの問題があった(連邦財務省ヒアリング)。 4 財政運営を規律するルール② ○ 連邦基本法(憲法)改正に合わせて、2011年から、予算編成プロセスをボトムアップ型からトップダウン型へ と変更。これにより、財政収支均衡という規律を、より実効的なものとしている。 ○ 具体的には、連邦財務省が、債務ブレーキルールに適合させつつ、毎年3月に予算要求の大枠を各省別に トップダウンで設定。各省はこの大枠を超える予算要求を行うことができなくなる。 <ドイツの予算編成プロセス> 予算要求の大枠の設定 ○ 2011年より前は、各省からの予算要求を受けて、財務省と各省間で 折衝するボトムアップ型の予算編成プロセス。 ○ 2012年予算の編成時(2011年)より、予算編成プロセスもトップダウン 型に変更された。トップダウン型とは、各省からの予算要求に先立ち、 債務ブレーキルールに適合させつつ、連邦財務省が各省ごとに予算要 求の上限を決定する仕組み。 (参考)連邦財務省は、この予算要求の上限を画するに当たって、事前に各省庁 から予算の需要を聴取。連邦首相府と密に連携しつつ、その年の予算のコンセ プトを作成し、各省事務次官級で合意をしたものを各省に通達する。 経済見通し ○ 連邦財務省では、年に3回(1月、4月及び11月)経済見通しを出して いる。特に、毎年1月の経済見通しは、予算要求の上限を設定するに 当たって重要。 5 1月 連邦財務省が経済見通し①発表 経済見通しや経済政策が記載された年次経 済報告を議会に提出 連邦財務省が経済見通しに基づき税収予測 ①を実施 3月 連邦財務省は各省庁と合意の上、省庁別の 予算要求の大枠(予算基準値)を設定 政府は予算要求の大枠(予算基準値)及び 中期財政計画の基準値を閣議決定 政府は予算要求の大枠を各省に通達 4月 政府は安定化プログラムを閣議決定 連邦財務省が経済見通し②発表 5月 連邦財務省、州政府財務省、連邦統計庁、 連銀、五賢人委員会、有識者等が合同で税 収予測②を実施 7月 政府は予算案及び中期財政計画を閣議決 定、議会に提出 10月 連邦財務省が経済見通し③発表 11月 12月 経済見通しに基づき税収予測③を実施 ※国会審議中の予算案は、この税収予測③ を踏まえて適宜見直される 予算成立 経済状況の見通しと実績及び評価 ○ 連邦財務省の経済見通しは、客観性を向上させるため、経済省や中央銀行、各州の財務省、民間シンクタ ンク、五賢人委員会などの予測を総合的に織り込んだ上で作成されている。 経済の見通しと実績 【実質GDP成長率】 (%) 6.0 4.0 2.0 0.0 ▲ 2.0 2007 2008 2009 2010 ▲ 4.0 2011 2012 2013 2014 2015 実績(見込み) 安定化プログラム2010 安定化プログラム2012 ▲ 6.0 ▲ 8.0 (出典)安定化プログラム2010(2010年2月)、安定化プログラム2012(2012年4月)。 評価 ○ 総じて、実績が見通しに沿ったものとなっており、堅実な経済成長を前提に置いている。特に2012年時の経 済予測については、EUの見通しに沿った妥当(plausible)なものであると評価されている。 6 財政状況の見通しと実績等 ○ 財政状況については、実績が見通しを常に上回っており、総じて堅実な見通しを立てていた。 ○ 2014年に一般政府の財政収支を均衡させるとの見通しは、予想よりも税収が増加したこと等により、2012 年中に前倒しして達成。 財政の見通しと実績 <ドイツの債務に対する考え方> 【財政収支対GDP比】 (%) 2.0 ドイツでは罪の意識を感じずにお金を借り ることはできない。イタリアのモンティ元首相 はインタビューでドイツ語の「Schuld (シュル ト)」について触れ、「ドイツ語では債務と罪 は同じ単語だ」と話した。 0.0 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 2015 ▲ 2.0 ▲ 4.0 ▲ 6.0 (出典)安定化プログラム2010(2010年2月)、安定化プログラム2012(2012年4月)。 実績(見込み) 安定化プログラム2010 安定化プログラム2012 1920年代にハイパーインフレーションで苦 しんだ経験から経常黒字を積み上げようと する願いがこうしたドイツの借金嫌いにつな がっているようだが、それが景気拡大の加 速を望む米国やフランスといった同盟国を いら立たせている。 (Bloomberg(2015年4月14日)より抜粋) 財政収支均衡について ○ 2012年4月時点では、2014年以降の一般政府の財政収支均衡を見通していたが、予想よりも税収が増加し たこと等により、2012年中に目標を前倒しして収支均衡化を達成している。 ○ 近年、欧州委員会は財政黒字のドイツが公共投資により欧州経済を支えるべきとの見解をとっており、これ を受けてドイツでは支出を拡大させているが、現在も財政収支均衡は維持している。 (参考) ドイツの「国家改革プログラム2015」においては、ドイツの支出拡大の意義を強調しつつも、①欧州委員会はドイツの支出拡大の取組を 十分に評価できていない、②ドイツ政府の推計では、支出拡大の他国への波及効果は小さい、など、ドイツ独自の立場を強調している。 7 財政健全化に向けた取組 ○ 財政規律の強化に加えて、リーマン・ショック後の財政収支の大幅な悪化に対応するため、メルケル政権 は大規模な財政健全化策を閣議決定し、健全化を大きく進める方針を示した。 ○ また、シュレーダー政権下(1998年~2005年)における社会保障改革の取組などにより、長期的な財政の 持続可能性の改善が図られている。 「財政健全化に向けた基本方針」(2010年6月)(メルケル政権) ○ 2011から2014年の4年間で総額816億ユーロとなる歳出・歳入両面からなる健全化策を策定。 これにより、2013年には財政収支の均衡が達成できるとした。 (億ユーロ) <歳出面: 531億ユーロ> ・ 長期失業者に対する失業給付を抑制 (▲160億ユーロ) ・ 子供を持つ親に対する手当の給付抑制 (▲24億ユーロ) ・ 各省の裁量的経費の抑制 (▲102億ユーロ) ・ 防衛費の抑制(連邦国防軍の兵士削減(4万人規模)) (▲40億ユーロ) ・ 財政収支の改善による利払費の節約 (▲50億ユーロ) <歳入面: 287億ユーロ> ・ 航空税(ドイツ国内の空港から離陸する旅客に対して課税)の導入 (+40億ユーロ) ・ 原子力発電所に対する新たな課税 (+92億ユーロ) <各年の財政健全化の見込額> 300 250 200 198 歳 出 抑 制 策 78 78 150 100 78 歳 入 増 加 策 53 160 114 50 59 0 2011 2012 2013 2014 8 社会保障改革の取組 ○ 年金分野では、2000年代前半に、年金支給額の計算方法について客観的なルールが導入されたことなど により、年金財政の長期的な持続可能性の改善が図られている。 ○ 医療分野では、保険者間の競争を通じ、医療費抑制や医療サービスの質の向上を促している。 年金制度 ○ 私的年金制度の導入、及びこれを踏まえた年金支給額の計算式の見直し(2001年) ○ 少子高齢化の進展が毎年の年金支給額のスライド調整に加味されるよう、計算式を見直し(2004年) ○ 年金支給開始年齢の引上げ(2012年~2031年までに67歳に段階的引上げ)(2007年) ※ 支給開始年齢の段階的引上げや支給額のスライド率を調整する計算式の導入を通じ、今後も年金財政の安定化が図られ る見通し。EUの「持続可能性レポート2015」では、公的年金支出は2013年の対GDP比10%から2060年には13%弱に上昇す ると推計。 医療制度 ○ 保険料収入及び連邦補助を財源として運営しており、主として保険料で賄われている。また、連邦補助には 法定上限を設けて総額を管理(2014年は105億ユーロが上限。公的医療総収入の約5%を占める)。 ○ 被保険者は保険者(疾病金庫と呼ばれる)を自由に選択することが可能であり、疾病金庫間の競争が促さ れている。 ○ 保険料率はかつて疾病金庫ごとに定めていたが、2009年より統一。2014年の法改正で、保険料率は 15.5%から14.6%に引き下げられた上で、各疾病金庫が追加保険料を徴収できるとする枠組みとなった。 ※ 今後、医療技術の進歩・新薬の開発や少子高齢化により、医療費の更なる増加が見込まれている。 EUの同レポートでは、 公的医療支出は2013年の対GDP比7.6%から2060年には9%弱まで上昇すると推計。 9 年金制度改革の効果(マックスプランク研究所ヒアリング) ○ 2001年の年金改革では、公的年金保険料の計算式に「リースター係数(contribution rate factor)」 を導入し、私的年金の充実に合わせて年金給付を抑制する仕組みを導入。 ○ 2004年の年金改革では、公的年金保険料の計算式に「持続可能性係数(sustainability factor)」を 導入し、少子高齢化の進展に合わせて年金給付を抑制する仕組みを導入。 この2つの改革により、公的年金の 持続可能性は大きく高まったと推計 されている。 2040年と2060年に退職する人の年金 受給額は、2002年に退職する人と比べて それぞれ17.1%、20.1%低くなる。 (出典)マックスプランク研究所 ディスカッションペーパー Börsch-Supan et al. “The development of the pension gap and German households’ saving behavior” (2016年2月) 持続可能性係数 による引下げ効果 リースター係数 による引下げ効果 両者を合わせた 引下げ効果 公的年金保険料の計算式については、複雑な数式が法律に書き込まれており、安易な介入を防 ぐ工夫として高く評価。 10 経済成長に向けた取組 ○ ドイツの成長戦略では、「成長志向の財政健全化」を掲げ、経済成長と財政健全化の両立の観点を強調。 ○ 「インダストリー4.0」と称する伝統的なドイツ製造業のIT化を重点的に推し進めているほか、教育や研究投 資などの長期的な成長を高める分野に対し、予算配分を重点化している。 国家改革プログラム2015 ○ 成長志向の財政健全化 財政健全化と投資を同時に行うという理念であり、投資を行う場合は、教育・研究開発やインフラといっ た、投資によって長期的な成長を高める取組を重視。 ・ 的を絞った公共インフラの維持・拡大(例:効率的な輸送ルートや地方のインフラ)への予算配分 ・ 研究促進を含むイノベーション戦略やデジタルインフラ整備などを含むデジタル化計画などの策定 等 投資支出の拡大や的を絞った形での減税を織り込んだ、安定志向の財政政策を継続することで、ドイツ 国内の消費者からの信用が一層高まり、これが内需の拡大に寄与する。 ○ インダストリー4.0 官民を挙げて、国内の伝統的な製造業のIT化を推進。 IoTや生産の自動化技術を駆使し、今までにない価値や、新しい ビジネスモデルの創出に取り組んでいる。 ドイツはGDPの約25%、輸出額の約6割を製造業が占めており、 生産拠点としての競争力を保持する戦略を明確に打ち出している。 11 今後の経済・財政に関する見通しと当面の課題 ○ 既に収支均衡を達成し、良好な経済財政状況となっているが、足元の移民・難民問題や将来の少子高齢化 による歳出増加圧力にさらされている。このような中、財政収支均衡を維持する方針。 今後の経済・財政に関する見通し (%) (%) ○ 2015年4月の安定化プログラムによれば、2019年まで財政収支 は均衡ないし黒字状態を維持、債務残高対GDP比も2019年には 61.5%まで改善する見通し。 2.5 75.0 2.0 70.0 ○ 2017年予算要求の大枠では、移民・難民対策に100億ユーロを 追加支出することとされているが、新規国債を発行せずに財政 収支の均衡が図られる予定。 1.5 65.0 ○ 2015年5月の国家改革プログラムでは、「ドイツが直面している 人口動態の課題に鑑みれば、経済が成長しているときにこそ、 更なる財政健全化に取り組むことが重要な目標」としている。 0.5 1.0 実質GDP成長率 (左軸) 財政収支対GDP比 (左軸) 60.0 債務残高 対GDP比 (右軸) 55.0 0.0 50.0 2015 2016 2017 2018 2019 移民・難民問題をめぐる動向 ○ メルケル首相は、これまで「寛容な」受入れ政策を掲げ、多くの移民・難民が流入。 ○ ドイツ国内の3州の議会選挙(2016年3月13日)の結果、メルケル首相率いるキリスト教民主同盟(CDU)は 3州全てで議席を減らす一方、移民・難民受入れに反対の立場を掲げる右派政党「ドイツのための選択肢 (AfD)」が躍進。2017年9月にはドイツ総選挙が予定されており、今後の政権運営が注目されている。 12 ポイント ○ 財政規律を重視し、EUの「財政協定」(2013年1月発効)に先立って2009年に連邦 基本法(憲法)を改正し、財政収支均衡又は構造的財政収支対GDP比を▲0.35%以 内に抑えるとのルールを策定。連邦基本法改正に当たっては、歳出拡大に積極的な 社会民主党(SPD)からも賛同を得られた。 ○ 今後の少子高齢化に鑑みて、健全財政によって長期的な財政の持続可能性確保に しっかりと取り組むとの方針は広くコンセンサスが得られており、EUの求めにより一時 的に公共事業等への支出を増やしつつも財政黒字を維持している。 ○ 経済見通し(経済成長率)の客観性を担保するため、連邦財務省が経済見通しを作 成するに当たっては、経済省や五賢人委員会、各州の財務省のほか、中央銀行や民 間シンクタンクといった複数の機関の見通しを織り込んでおり、結果的に見通しと実績 の乖離は小さくなっている。 ○ 「成長志向の財政健全化」を掲げ、投資によって長期的な成長を高める取組を重視 するとともに、安定志向の財政政策を継続することで、国内の消費者からの信用が一 層高まり、これが内需の拡大に寄与すると考えている。 13
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