Ⅲ 指導案における「学びのつながり」のかき方

Ⅲ
指導案における「学びのつながり」のかき方
指導案における「学びのつながり」には、学習指導要領における位置をもとにした、本時の学びの内
容や意義、児童生徒のこれまでの学びの履歴を指導者がどのようにとらえているかを記述します。
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「学びのつながり」にかくこと
指導案における「学びのつながり」は、
「これまでの学び」、
「ここでの学び」
、
「このあとの学び」
、
「授
業中の生徒指導について」の構成とします。
「ここでの学び」には、本時(45 分 or50 分)の授業における学習内容や育てたい資質・能力を記述
することを基本とします。
(ただし、教科や領域においては、単元や題材となる場合もあります。
)
また、
「これまでの学び」には、同様に本時より前の「時間」
「単元」
「学校種」について記述します。
さらに、
「このあとの学び」には、本時より後の「時間」
「単元」
「学校種」について記述します。
最後に、
「授業中の生徒指導について」には、
「ここでの学び」に意欲的に取り組ませるための工夫や
自信をもって学びを継続させるための手立て等を生徒指導の三機能(自己決定・自己存在感・共感的人
間関係)の面から記述します。
2 「これまでの学び」にかくこと
「これまでの学び」には、ここで(本時)の中心的な課題解決のために直接関係のある既習の学習内
容と育ててきた資質・能力を簡潔に記述します。
本時の学習の『めあて』を達成するためにこれまでどのような学習を行ってきているか、どの学習の
中でどのような資質・能力が培われているのかを記述します。また、ここで記述された知識や技能、考
え方や表現する方法等は、指導案の児童生徒の実態で分析することになります。
(分析の結果、できて
いない知識や技能、考え方や表現する方法等がある場合は、指導案の指導方針に克服できるような手立
てを記述します。)
3 「ここでの学び」にかくこと
「ここでの学び」には、本時の学習を通して「育てたい資質・能力」と「本時の中心的(具体的)な
課題」を記述します。
育てたい資質・能力には、各教科の評価規準の四観点(国語は五観点)の中で本時の評価の中心とな
る1つ観点について記述します。これは、指導案の展開の本時の『ねらい』と直接つながります。
本時の中心的(具体的)な課題には、課題そのものと児童生徒が課題を解決する手立てを記述します。
これは、授業の中で児童生徒にしめす『めあて』とつながります。
4 「このあとの学び」にかくこと
「このあとの学び」には、ここで(本時)の学びが今後、直接どこの学習でどのように活用されてい
くのかを記述します。
ここで(本時)の学びで獲得される資質・能力が、今後どのような学年、学校種のどのような学習で
どのように生かされ伸ばされていくのかを具体的に記述します。
5 「授業中の生徒指導について」にかくこと
「授業中の生徒指導について」には、児童生徒が主体的に学習に取り組めるような指導者の日常での
取組を自己決定、自己存在感、共感的人間理解の面から記述します。
自己決定の面からは、どのように一人一人に考えを持たせるのか、自己存在感や共感的な人間理解で
は、一人一人の意見をどのように取り上げ、よさを共有するのかなど児童生徒の実態をもとに具体的に
記述します。
特に、
「これまでの学び」と「ここでの学び」をつなぐための課題の取り上げ方や教具の工夫、児童
生徒同士で意見が交流できる場の工夫、互いに認め合いながら教室全体で学習に取り組もうとする雰囲
気をつくるための工夫も記述します。
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【「ここでの学び」において育てたい資質・能力[思考・判断]に視点をあてた例】
〇「これまでの学び」単元名「九九をつくろう」小 2 下
これまでに児童は、小 2 下の「九九をつくろう」の単
元において、●の個数を求める学習をしてきている。そ
の学習の中では、いくつかのまとまりとして図をとらえ
るために「分ける」
「移動させる」
「図を合わせる」など
の工夫をするという思考力を身につけてきている。ま
た、自分の考え方を式と照らし合わせて説明する学習も
進めてきている。
〇「ここでの学び」単元名「広さを調べよう」小 4 下
ここでは、
「複雑な図形を既習の図形とみなして面積
を求める工夫を説明する。
」ことをねらいとして思考力
を深めていく。L字型の図形の面積は「部分に分ける」
「大きい長方形から小さい長方形を引く」
「一部を移動
する」
「2つを合わせる」などの工夫をすることで、面
積を求めることができることを学習する。また、工夫
を説明する活動をとおして、様々な工夫をして長方形
(既習の図形)を作り出すことが大切であることを『ま
とめ』として気づかせていく。
〇「このあとの学び」①単元名「立体のかさの表し方」
このあと児童は、小5上「立体のかさの表し方」の単
元で合成された立体図形の体積を求める学習で「ここで
の学び」で身につけた「既習の図形を作り出すこと」を
想起させ、体積を求めるだけでなく「分ける」
「移動さ
せる」
「2つをあわせる」という考え方が使えるかどう
かを判断したり、
説明したりすることで思考力をさらに
深めていくことができる。
〇「この後の学び」②単元名「2 乗に比例する関数」
また、中3の「2 乗に比例する関数」の単元でグラ
フの中に表れる三角形の面積を求める場面で、小学
校で身につけた「既習の図形を作り出すこと」を想
起させ「2つの三角形に分ける」
「大きい長方形から
三角形を引く」などのくふうを見出して面積を求め
たり、考え方を説明したりできる思考力を養ってい
くことにつなげていく。
・
「授業中の生徒指導について」
ここでの学習では、課題解決に向け様々な意見が出せる児童と図形の見方が分からない児童が混在すると考えら
れる。そのため、2 年下「九九をつくろう」で学習した課題に取り組ませ、考え方が複数あってもよいことを想起
させる。本時では、自分の見出した考え方を大切にできるように、ノートに自分の考えた解法を図や言葉を使って
説明をかかせる。
(自己決定)その後、小グループ内で発表させ、
(自己存在感)他の人の考え方のよさに触れさせ
る。(共感的人間理解)また、全ての課題解決の方法を板書に取り上げ学級全体で「いつでも使える考え方はどれ
なのか」という視点で比較検討をすることをとおして一般化していくという思考力を身につけさせる。
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