イソノナン酸 - シーエムシー出版

ケミカルプロフィル
ケミカルプロフィル
イソノナン酸
(Isononanoic acid)
化審法 (既)2―608(C4∼30 のアルカン酸)
C A S 3302―10―1(TSCA 記載あり)
26896―14―4(TSCA 記載あり)
EINECS 248―092―3
消防法 危険物第 4 類第 3 石油類(非水溶性液
体)
化学名 3,
5,
5―トリメチルヘキサン酸
CH3
CH3
発火点:440℃
〈市販品規格〉
CH3
CH2
C
引火点:127℃(開放)
CH
CH2
COOH
CH3
外
観:異物のない透明の液体
色
相:APHA 15 以下
比
重:0.897∼0.903(20/20℃)
純
度:95% 以上
水
分:0.1% 以下
酸
価:337mgKOH/g 以上
オレフィンからオキソ法で誘導される合成脂肪
CH3C(CH3)2CH2CH(CH3)CH2COOH
酸の一種である。
CO2H
C9H18O2;分子量:158.2
"
毒
性
急性毒性:
!
概
要
〈一般物性〉
性
状:弱い特徴あるにおいを有する透明な液体
比
重:0.90(20/20℃)
融
点:−30℃ 以下
沸
点:225℃
蒸気密度:5.5(空気=1)
蒸気圧:3.9kPa(100℃)
粘
#
ラット,LD50
0.73g/kg(経口)
ラット,LD50
>2 g/kg(経皮)
製
法
ジイソブテン(1)と水性ガスのオキソ反応に
より 3,
5,
5―トリメチルヘキシルアルデヒド(2)
が得られるから,これを酸化すればイソノナン酸
(3)が得られる(図 1)
。
度:11.2mPa・s(20℃)
溶解度:in H2O(g/100g)0.17(22℃)
H2O in(g/100g)1.34(22℃)
2009年2月号
Vol.38 No.2
$
生
産
国内メーカーは協和発酵ケミカル 1 社である。
93
Chemical Profile
CH3
CH3
C
CH3
C
CH2
CH3
酸化
CH3
CH2 + CO + H2
CH3
CH3
1
CH3
CH3
C
C
CH3
CH2
CH
CH2
CHO
2
CH3
CH2
CH2
CH2
COOH
CH3
3
図1
表1
メーカー・生産量(2007 年)
機器の冷蔵・冷凍機油原料用途が拡大している。
(単位:トン)
メーカー
工
場
生産量
協和発酵ケミカル
千
葉
12,
000
合
計
12,
000
(シーエムシー出版推定)
国内での用途は冷凍機油・潤滑油原料が主体で
ある。特定フロン冷媒の使用が中止され,代替フ
ロンの使用が普及するに伴い従来使用されていた
鉱油系の冷凍機油は塩素を含まない HFC などの
代替フロンを溶解しないため使用できなくなり,
協和発酵ケミカルのイソノナン酸(商品名:キ
これに代わって HFC を溶解する合成脂肪酸とポ
ョーワノイック―N)は,1993 年ころから協和発
リオールとのエステルの需要が急増している。こ
酵四日市工場の合成脂肪酸生産設備で併産してい
の用途にはペンタエリスリトール,トリメチロー
たが,97 年 12 月に千葉工場(協和発酵)に年産
ルプロパン,ネオペンチルグリコールなどとのエ
5000 トンのイソノナン酸の専用生産設備が完成
ステルが使用される。これらのエステルは,冷凍
してから同工場でのみ生産を行っている。同社は
機油のほかに潤滑油や化粧品基材の用途もある。
需要の増加にあわせて 2004 年に 7000 トン,05
また,酸クロライドを経由して過酸化物にしたも
年に 1 万 2000 トンへと生産能力を増強した。07
のは重合開始剤にも使用されている。
年夏時点のイソノナン酸の生産態勢はフル稼働状
態であったということで,同社はさらに,08 年
海外ではアルキド樹脂の改質成分としての用途
がかなりあるが,日本では少ない。
に年産 2 万トンへと生産能力を増強した。
今後も,世界的な環境保全意識の高まりから,
米国や中国を中心としたアジア地区での需要拡大
!
需
要
が見込まれている。
イソノナン酸の用途は,冷凍機油,合成潤滑油
原料,防錆添加剤,金属石けん原料,アルキド樹
"
価
格
脂変性剤などである。また,代替フロン(HFC:
価格:400∼500 円/kg
ハイドロフルオロカーボン)対応の空調機や冷凍
荷姿:180kg ドラム缶,15kg 石油缶
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ファインケミカル