ディンプルシェード(業務用内装材)-ビジネスモデルを転換

デザインマネジメントで、
ビジネスモデルを転換
CASE
事例紹介
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ディンプル
シェード
(業務用内装材)
「ディンプルシェード」は、セラミック系人造木
材板(不燃材料)に特注の NC ルータで彫刻を施
した内装用のデザインパネルです。商業施設な
どの内装を「希望の表現」で形作ることができ、
価値ある空間装飾の実現が可能です。
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デ ザインマネジメントに取り組み
の開発をスタートさせました。
当社は元々、自社でデザイン・設計・
自社の強みを活かせる戦略づくり
始めたきっかけ
制作・納品を手掛ける看板業者でした
が、時代の変遷の中で、商圏から遠い釧
てきたデザイン性を活かし、他社と差
路という立地でもビジネスが成り立つ
別化できる「パターンオーダー」と、経
「付加価値の高い製品」や「オンリー
験の浅い営業マンでも販売可能な「カ
ワンでできること」を模索し、業務用内
タログ販売」を目指しました。
装材「ディンプルシェード」を開発しま
最初に検討したのは、顧客となる建
した。
築士やデザイナーに、「使ってみたい」
当初、業務用内装材は、NC 加工技術
と思ってもらうためにどうするかとい
を習得した社員が珪酸カルシウム板を
うことでした。業務用内装材はデザイ
一つ一つ手作業で浮き彫り加工をして
ン性が高く、見た目が大切な製品です。
いました。優れたデザイン性から製品
そのため、形状や寸法・材質といった
に対する評価が高まる一方で、受注の
「製品仕様(スペック)」ではなく、自然
度にデータを受け取り、試作をしてか
をモチーフにした「イメージ」を重視
ら製造に入るため、完成までに時間を
して製品の魅力を訴求する方向性が早
要することと、作り置きできないこと
い段階で決まりました。
で高コストとなり、さらに競合他社が
この考え方が、製品デザインやプロ
出現するといった課題も出てきました。
モーションの基本戦略になりました。
(地独)北海道立総合研究機構 工業試
験場(以下、道工試)に、「より広い市場
から受注を取れる製品を開発したい」と、
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attraente ∼「ものづくり」から「もの創り」へ∼
開発にあたっては、これまで蓄積し
技術の肝の発見
パターンオーダーに対応する製品を
具体的な相談をしたのは 2009 年の春。道
開発する上で課題となるのは、様々な
工試の日高 青志氏と、デザイナーの佐々
パターンを効率良く生産する方法で
木 賢氏を交えたデザインチームを組織
す。加工時間はコストですので、いか
し、業務用内装材「ディンプルシェード」
に機械の動きを最小限にして、意図し
Company Profile
日の出工芸株式会社
所在地:釧路市鳥取南 8 丁目 14-8
TEL:0154-51-1616
代表者:代表取締役 三輪 昌博
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資本金:2,000 万円
設立:昭和 47 年(1972 年)
主要事業:不燃の内装用装飾材製造、薄型
LED サイン製造、サインデザイン、屋内・
屋外広告物、施工、OEM 製造
URL:http://www.hinode-gr.jp/
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たデザインに仕上げることができるか
の重要なポイントでした。看板業が主
がポイントとなります。
力だった頃は、取り付け作業は自社で
開発当初は効率的な生産方法を探す
対応していましたが、メーカーとして
のに苦慮しましたが、試行錯誤の末、
製品を納める側になると、取り付け作
「刃物の形状 × パス(刃物の軌跡)」が
業は製品を購入した業者が行うことに
技術の肝であることにたどり着きまし
なります。業者が確実に取り付けられ
た。この「刃物の形状」と「軌跡」の組
るようマニュアルにも様々な工夫をし
み合わせを工夫することで様々なデザ
ています。
インを短時間で加工できるようにな
り、パターンオーダー化に向けた技術
ベースが完成しました。
販売戦略の工夫とその効果
受注生産から提案型ものづくりメー
カーへ
以上のような取り組みを通じて当社
は、ビジネスモデルの転換に成功しま
販売開始にあたっては、カタログ制
した。顧客の予算に応じて、従来から
作に時間と手間をかけました。売り
の強みを活かした受注生産と、パター
込みの際、営業マンが顧客と円滑なコ
ンオーダーを使い分けられることが他
ミュニケーションを図れるよう、製品
社との差別化につながりました。2 年
の写真を接写で撮影して掲載するな
前には自社デザイナーも採用し、“ 提
ど、誰が見てもイメージしやすい質の
案型ものづくりメーカー ” として次々
高いカタログに仕上げています。
と新製品を生み出しています。今後も
これによって入社 1 ~ 2 年目の社員
看板業ではできない製品に挑戦してい
でも営業が可能となり、受注先の拡大
きます。
代表取締役
三輪 昌博 氏
Supporting Organization
地方独立行政法人
北海道立総合研究機構 工業試験場
所在地:札幌市北区北 19 条西 11 丁目
TEL:011-747-2377(デザイン・人間情報グループ)
道内企業のための産業支援機関として、技
術開発、商品開発をサポートするために、
技術相談や技術指導といったサービスの提
供や、試験研究を行っています。
「製品技術部」
新製品開発のためのデザインや設計・評価
技術および高品質・低コスト化のための加工
技術や生産技術について、技術支援を行い、
快適で安全な生活環境の実現に向け、健康福
祉機器開発などの支援を行っています。
またデザイン・人間情報グループでは主
に、工業製品に関わるデザイン開発、人間
情報応用に関る支援を行っています。
につながりました。最近では提案段階
から 3D データで完成イメージを出せ
るようになり、カタログ販売と受注生
産の割合が半々程度になっています。
またマニュアル化も、販売戦略上で
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内装用デザインパネル ディンプルシェード
特殊塗装の様子
自然をモチーフにしたイメージでカタログを作成
LED サイン G-Style
attraente ∼「ものづくり」から「もの創り」へ∼
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