事業の評価、今後の課題編 69 1 本事業の評価 これまで学校における肥満傾向児への積極的な対策は多く行われてきました。しかし、就学前の子ど もたちに対しては、各保育所などでの食育の一環として個別に行われることはあったとしても、全県的 に、組織だった形でこのような取組を行った例は全国的にも珍しいです。今回の取組の特徴として、4, 5歳児全員に対しての働きかけと、肥満傾向児への個別的働きかけを組み合わせて行ったことがありま す。保健・予防の取組において、このような2つのアプローチを組み合わせることで、相乗的な効果を 生むことが期待されています。また、モデル30施設以外の協力を得て、基本的生活習慣などのアンケ ート調査と、 「身長・体重入力、成長曲線作成ツール」を活用して、県内全域の肥満傾向児の割合を初め て明らかとしたことの意義も大きいです。 今回設定した3つのプログラム(「身体活動」「咀嚼」「野菜摂取」)に関しては、それぞれの特徴をも った取組が行えました。30 モデル施設全体として、教材や働きかけの手法などを共有しながら、各施設 でこれまで行ってきた経験や特徴などを踏まえて、独自性をもった取組を行えたことが本報告書からも 伺えます。また、肥満傾向児に対する個別支援に関しては、これまで同様の取組経験がほとんど無い状 況からのスタートであったことなどから、事例数は限られてしまいましたが、貴重な経験の蓄積とその 共有を図ることができました。 今回の事業は先進的なチャレンジであったにも関わらず、モデル 30 施設の皆様の多大なる努力が実を 結び、総じて多くの経験の蓄積と成果を得ることができたと評価できます。最終的なゴールである県全 体での肥満傾向児の減少に関しては、継続的に評価していく仕組みを新たに構築することができたので、 今後の成果を期待します。 2 今後の課題 2年間の本事業では、①全県的な就学前児童における肥満の実態とその背景となる基本的生活習慣要 因を初めて明らかにし、②モデル施設での検証により、今回設定した3つのプログラムと個別支援計画 は実施可能であり、一定の効果が得られることがわかりました。 今後、①を踏まえてより効果的なアプローチを検討すること、②を踏まえてすべての施設で実施でき るように、今回開発した教材やマニュアルを改編・提供し、必要な研修などを行っていくことが必要で す。さらに、今回十分に踏み込むことができなかった、園医、市町村母子保健事業、小学校などへの「橋 渡し」について検討し、地域の実情にあった仕組みづくりを進める必要があります。 これらの取組を今後、拡大実施して行く際には、地域全体での肥満傾向児割合や基本的生活習慣につ いて、継続的に評価していくことが重要です。 (保育所発!子ども元気スリムプラン事業検討委員会 委員長 吉池 信男) 70
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