Title Author(s) Citation Issue Date URL パルミチン酸・オレイン酸系の気液平衡 愛甲, 涼子; 上村, 芳三; 蓑輪, 迪夫; 宮原, 浩嘉; 幡手, 泰雄 鹿児島大学工学部研究報告, 37: 67-70 1995-09-30 http://hdl.handle.net/10232/12366 http://ir.kagoshima-u.ac.jp パルミチン酸・オレイン酸系の気液平衡 愛甲 涼子・上村芳三・蓑輪迫夫* 宮原浩嘉*・幡手泰雄 (受理平成7年5月31日) Vapor-LiquidEquilibriumofPalmiticacidandOleicacidSystem RyokoAIKOU,YoshimitsuUEMURA,MichioMINOWA, HiroyosiMIYAHARAandYasuoHATATE Foraneffectiveutilizationofwastefoodlipids(oilsandfats),collectionbydistillationof freefattyacidsoccupying80-85%ofthewastelipidsishighlydesirable・ A s a f u n d a m e n t a l s t u d y o f t h e d i s t i l l a t i o n s e p a r a t i o n o f p a l m i t i c a c i d a n d o l e i c a c i d ( h i g h contentcomponents)inthewastelipids,inthepresentwork,theequilibriaofthesecomponents weremeasuredinthewiderangeofliquidcomposition・ Finally,itisevidentthatthissystemcanbetreatedasanidealsolution,showingthefollow‐ ingequilibriumrelation aZ g=’+(α−1)z wherezandgarepalmiticacidmolefractionsinliquidandvapor,respectively,andaisrelative v o l a t i l i t y 2 、 0 2 6 . 緒 言 食品関係事業所等から排出される廃油脂は,そのま ま環境水域に排出された場合は大きな汚濁源となる。 現在,これら廃水等に含まれ排出される油脂は,廃水 処理装置あるいは下水処理場に流入する前に,油水分 離装置により浮上分離され,処理業者により,回収さ れ,焼却炉で処分されている。しかしながら,このよ 飽和脂肪酸のパルミチン酸(Cl6.0),ステアリン酸 (Cl8.0)と不飽和脂肪酸のオレイン酸(Cl8.1),リノー ル酸(C1a2)の4つの脂肪酸で占める')。 TablelFattyacidcomposition(%) Fattyacid Wasteoils&fats (A)(B) Saturatedfattyacid C14Myristicacid 2.0 2.5 うな焼却処理では資源の有効利用の面で問題を残して C16Palmiticacid 21.6 24.7 いる。廃油脂を資源として見直し,再生利用の方法を C18Stearicacid 9 . 8 10.4 検討することは有意義なことである。 食品廃油脂は80∼85%の遊離脂肪酸を含んでおり, Unsaturatedfattyacid その組成は表1に示した通りである。この点に着目す C16」Palmitoleicacid 2.2 2.2 ると油脂を精製することにより得られた脂肪酸を, C1a,Oleicacid 41.1 41.4 JIS工業脂肪酸原料として利用できることが考えられ C1a2Linoleicacid 21.0 17.3 る。表1でわかるように,遊離脂肪酸の94%程度は, C1a3Linoleinicacid 2 . 3 1 . 5 *㈱サニタリー 6 8 鹿児島大学工学部研究報告第37号(1995) Thermomeier Table2Experimentalresults L i q u i d M:噸 1 . 1 0 1 0 3 2 0.107 0 . 2 0 9 0 9 6 1 0 . 9 8 1 1 2 1 0 . 9 6 1 0 . 9 8 1 1 , 2 1 . 9 3 5 0 . 8 7 2 0 1 . 0 7 2 0 . 8 6 2 0.ⅧU 1 ‘ U l j Z 0 . 8 6 3 1 . 1 7 4 1 / x l j y : : ] y 4 7 2 0 . 4 3 4 7 1 0 4 刈辱q Q1I』 I _ ‘ ! 0.766 0 . 8 6 7 1 3 1 0 . 7 3 5 4 7 1 0 . 4 0‘626 u783 2 5 1 . 7 7 2 1.278 0 . 6 0 4 0 475 1 . 4 . 6 0 7 0 . 4 2 8 0 4 1 8 0.421 0 . 5 9 9 198 皿 . 5 0 9 0 . 3 2 6 0 559 0 . 3 3 2 1 5 1 8 ユ ー 5 6 1 2 . 7 0 . 0 5 7 046 1 1 1 6 1 2 2 4 : 、 9 3 1 、 7 9 7 . 4 1 1 0 0 』 vac U u m 8 5 0 3 ∼ 5 : 8 0 . 1 : 6 1 . 9 5 3 1.423 本研究では,廃油脂中に最も多く含まれているパル Stirrer Hotstirrer y , / x 1 E ] x : [ . : リ 四●& Manometer 0 0 4 9 0 . 4 Ⅱ■ Thermometer x 1 E 9 4 9 2 4 7 1 一 一 N 2 Ca1.ibrCI鯛&CII [ % : Ur 〔 K ] HotWater 2℃ Cal‘for<:2紬&C皿 PL h a g e Pmss賊 R l I n P 腿12噸 N o . t c m p , [ k P n l Heatingribbons Buffertank Fig.1Schematicdiagramofapparatusfor vaporliquideqilibriummeasurements ミチン酸及びオレイン酸の2成分に注目し,約0.4 kPa(3mmHg)の圧力下でその気液平衡関係の測定 を行った。 1.実験 ㈱サニタリーでは,この組成に注目し,工業原料と 1.1試薬 しての利用を検討している。すなわち,その分離精製 パルミチン酸は市販特級試薬をそのまま使用した。 のためにパイロットプラント規模の蒸留塔を設置して, オレイン酸は市販1級試薬を精留したものを使用した。 ある程度の運転を行っている。得られた結果を解析し, さらに最適運転条件を推算するためには高級脂肪酸の 気液平衡に関する基礎データが必要である。 C 1 6 . 0 1.2気液平衡測定 オスマー気液平衡装置(図1)に約320,0の混合溶 液をいれ,真空ポンプにより減圧を開始した。ニード RuhNo、5(G) RunNo、5(L) C 1 6 . 0 C 1 7 ( s t d . ) C 1 7 ( s t d . ) 510152025 Rctentiontimc[min] Fig.2(a)G、C・chartofvaporphase 5 1 0 1 5 Retentiontime 2025 [min] Fig.2(b)G、C・chartofliquidphase 6 9 愛甲・上村・蓑輪・宮原・幡手:パルミチン酸・オレイン酸系の気液平衡 2.実験結果及び考察 1.0 2.1気液平衡実測値 0.8 [l]一易 60 4 0 表2に実験データを示す。 図2(a),(b)に,各々気相,液相のガスクロ分析 の代表的な結果を示す。図に示したように,各相とも 純粋なパルミチン酸(C16.。),とオレイン酸(C,a,)だ けの混合物でなく,パルミトオレイン酸(c,6』)やリ ノール酸(C18.2)等が含まれている。本研究ではCl6 グループをまとめてパルミチン酸(1)とし,C18グルー 0.2 プをまとめてオレイン酸(2)とした場合と,C160, c1a1のみとした場合の気液平衡関係を計算した。その 00.20.40.60.81.0 結果を図3に示す。図からわかるように,両者とも差 x,[−] はなく,一致していることがわかる。 2.2気液平衡計算値 Fig.3Relationbetweenx1andy,(0.4kPa) この2成分を理想溶液とするとラウールの法則に従 ルバルブを用い,所定圧力に達した後,加熱を開始し い,分圧(p)と純粋成分の蒸気圧(P)との間には次 た。運転中,パルミチン酸の固化を防ぐため冷却管に の関係が成り立つ。 p,=PIjr, ( 1 ) はリボンヒーターで保温した。 p2=Bz2 ( 2 ) 溢流開始後,2時間で運転を終了した。 (1:パルミチン酸,2:オレイン酸) は60∼64℃の温水を流し,気相溜及び側管(溢流管) 気相中では理想気体の法則が成立するので,分圧は 装置を放冷した後,液相と気相をサンプリングし, p,=”,(汀は全圧)であらわされる。 所定の方法でメチルエステル処理後ガスクロ分析を行 〃=p,+'2であるから,次式が成立する。 い,各々の濃度を決定した。 100 100 0 5 _ 些 幽 l 2 2 T 023- 4 . 6 5 1 2 x l O 3 T 1 0 [g︷EE] 0 1 [ロエEE︺ Q Q ‐ 1 1 2.02.5 1ノT【K-1】 3 . 0 x l C 「 3 Fig.4Relationbetweenboilingpointand vaporpressureofPalmiticacid 1 . 5 2.02.5 1 ノ T [ K F 1 】 3.0 X 1 C 「 3 Fig.5Relationbetweenboilingpointand vaporpressureofOleicacid 7 0 鹿児島大学工学部研究報告第37号(1995) となる。式(4)にα=2.026を代入して,理想溶液と しての気液平衡計算値を求めたものが図3の実線であ る。実測値と計算値はほぼ一致しており,理想溶液と 1 0 結 一一一目 [I]一×一一〆 53 みなしてよいことがわかった。 パルミチン酸一オレイン酸2成分系気液平衡関係を 0.4kPaで測定し,以下の結果を得た。 1)パルチミン酸(C16.0)とオレイン酸(C18』)の平 衡関係はC16グループ(C16.0+C16.1)とCl8グルー プ(C18.0+C18.1+C18.2)との平衡関係と同様な値を 0.5 示した(図6)。 l x 0 . 5 1 [−】 このことは,本実験条件では避けられなかった少 量のC16.1,C18.01Cla2の存在は平衡関係に影響を与 Fig.6ChangeofEquilibriumratioofPal‐ miticacidwithliquidcomposition えなかったことを示しており,実測値は充分信用で きる。 2)理想溶液としての気液平衡関係計算値と実測値は 一致し,本2成分系は理想溶液として良いことがわ 91= p , p,+p2 (3) 今後Cl6.0とCl8.1の蒸留による分離を考える場合に ここで,α=p,/p2(α:比揮発度) 重要である。 とすると,式(1),(2),(3)より次式が導かれる。 α j r l g ' = ’ + ( α − ' ) z , 文 献 ( 4 ) また,純粋成分の温度と蒸気圧の文献値2.3.4)(図4, 5)より関係式を求めると次式のようになる。 logP,=10.3205-(4.5147×103)/T(5) logP2=10.3023-(4.6512×103)/T(6) 測定温度198∼202℃の間で比揮発度一定とし,温度を 200℃(T=473.15K)として求めると α=pI/B=2.026 かった。このことは,予測通りであると言えるが, 1)蓑輪ら,鹿児島県工業技術センター平成5年度研 究報告発表会予稿集,pp、10-13(1994.3) 2)V、B・コーガン編著,平田光穂訳,気液平衡デー タブック,pp,882-883(1974) 3)浅原照三ほか編,溶剤ハンドブック,p,555 ( 1 9 7 6 ) 4)日本油化学協会編,油脂化学便覧,p、84(1980)
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