景気循環研究所レポート 住宅投資を刺激するマイナス金利 2016 年 4 月 21 日 住宅ローンの資金需要判 断が改善 マイナス金利政策の導入に伴い、住宅ローン資金の需要が高まってい る。日本銀行が 21 日に発表した主要銀行貸出動向アンケート調査(16 年 4 月)によると、住宅ローンの資金需要判断 D.I.は+4 となり、マイナス 金利決定前の前回 1 月(マイナス 4)から大幅に改善した。例年 4 月調査 は、回答期間に年度末を挟むこともあって高めの数値が出やすいが、季節 要因を除去した季節調整値をみても、住宅ローンの資金需要判断 D.I.は、 4 月にマイナスからプラスに転じる動きとなっている(図 1)。 大企業の建設・不動産向 け資金需要判断も改善 マイナス金利の決定以降、住宅ローン金利が大幅に低下したこともあ り、今回の資金需要判断 D.I の改善には借り換え需要が少なからず含まれ ている。しかし、過去の金利低下局面においても、住宅ローンの資金需要 判断 D.I.が改善した後、半年程度のタイムラグを経て、GDP の住宅投資(実 質ベース)が増加しており、今回も夏場以降、住宅投資の増加が見込まれ る。また、今回の調査では、住宅ローンの資金需要判断の改善と同時に、 建設・不動産業向け(大企業)の資金需要判断も大幅に改善している(図 2)。住宅関連以外の資金需要も含まれているとはいえ、少なくとも、マイ 建設・不動産以外は低調 ナス金利政策以降の貸出金利の低下は、住宅を含めた建設・不動産投資の 活発化に繋がる可能性がある。 嶋中 雄二 景気循環研究所長 もっとも、建設・不動産向け以外を含めた、企業向け全体の資金需要判 断 D.I.は、大企業・中堅企業・中小企業のいずれも低下している(表 1)。 鹿野 達史 景気循環研究所副所長 地方公共団体向けの資金需要判断 D.I.も、4 年ぶりにマイナスに転じた。 シニアエコノミスト 宅などの建設・不動産関連に限られている模様である。 宮嵜 浩 図 1. 住宅ローンの資金需要判断が改善 シニアエコノミスト 03-6213-6573 miyazaki-hiroshi@sc.mufg.jp 福田 マイナス金利政策が資金需要に及ぼしたプラスの効果は、現時点では、住 圭亮 シニアエコノミスト 03-6213-2608 増加 30 (%ポイント) (年率・兆円) 資金需要判断D.I. 住宅ローン(左目盛) 20 マイナス金利 16 15 10 14 0 13 fukuda-keisuke@sc.mufg.jp 本レポートは、嶋中雄二の見方に基づき、宮嵜・ 福田が執筆を担当しています。 景気循環研究所 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング -10 12 GDP住宅投資(右目盛) -20 減少 -30 11 10 10 11 12 13 14 15 16 (注)資金需要判断D.I.は当研究所季節調整値。GDP住宅投資は実質ベース。 (年、四半期) (資料)日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」、内閣府「四半期別 GDP速報」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 1 2016 年 4 月 21 日 図 2. 住宅ローンと建設・不動産(大企業)の資金需要判断 D.I の推移 増加 20 (%ポイント) 住宅ローン 15 マイナス金利 10 5 0 -5 -10 -15 減少 -20 建設・不動産(大企業) 10 11 12 13 14 15 16 (年、四半期) (注)資金需要判断D.I.は当研究所季節調整値。 (資料)日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」をもとに三菱UFJモルガン・ スタンレー証券景気循環研究所作成 表 1. 企業規模別・業種別資金需要判断 D.I.(季節調整値) (%ポイント) 15年 住宅 ローン 消費者 ローン 大企業 向け 0 5 -1 -3 6 4 6 6 7 6 0 6 2 5 4 1月 4月 7月 10月 16年 1月 中堅企業 向け 建設・ 不動産 -1 -0 -0 -2 4 1 3 2 3 0 建設・ 不動産 中小企業 向け -2 2 1 -0 7 建設・ 不動産 1 4 2 5 1 地方公共 団体向け 1 8 1 5 3 2 5 3 5 -6 (注1)貸出運営スタンスD.I.=「積極化」とした回答金融機関構成比+0.5×「やや積極化」とした回答金融機関構成比。 (注2)当研究所季節調整値。 (資料)日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 (参考)表 1 の原系列データ(季節調整前の数値) (%ポイント) 住宅 ローン 15年 16年 消費者 ローン 大企業 向け 中堅企業 向け 建設・ 不動産 中小企業 向け 建設・ 不動産 地方公共 団体向け 建設・ 不動産 1月 3 7 0 -3 1 -2 1 1 4 4月 6 5 6 -1 1 -3 1 3 6 7月 -2 5 1 1 4 4 5 4 0 10月 -4 8 8 2 3 2 5 8 3 1月 4 7 5 5 -1 3 4 5 0 (注1)貸出運営スタンスD.I.=「積極化」とした回答金融機関構成比+0.5×「やや積極化」とした回答金融機関構成比。 (資料)日本銀行「主要銀行貸出動向アンケート調査」をもとに三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所作成 (以 上) みやざき ひろし (16.4.21 宮嵜 浩) 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 2 2016 年 4 月 21 日 ―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――― 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではありません。本 資料で直接あるいは間接に採り上げられている有価証券は、価格の変動や、発行者の経営・財務状況の変化およびそれらに関する外部評価 の変化、金利・為替の変動などにより投資元本を割り込むリスクがあります。ここに示したすべての内容は、当社の現時点での判断を示している に過ぎません。本資料は、お客様への情報提供のみを目的としたものであり、特定の有価証券の売買あるいは特定の証券取引の勧誘を目的と したものではありません。本資料にて言及されている投資やサービスはお客様に適切なものであるとは限りません。また、投資等に関するアドバ イスを含んでおりません。当社は、本資料の論旨と一致しない他のレポートを発行している、或いは今後発行する場合があります。本資料でイン ターネットのアドレス等を記載している場合がありますが、当社自身のアドレスが記載されている場合を除き、ウェッブサイト等の内容について当 社は一切責任を負いません。本資料の利用に際してはお客様ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。 当社および関係会社の役職員は、本資料に記載された証券について、ポジションを保有している場合があります。当社および関係会社は、 本資料に記載された証券、同証券に基づくオプション、先物その他の金融派生商品について、買いまたは売りのポジションを有している場合が あり、今後自己勘定で売買を行うことがあります。また、当社および関係会社は、本資料に記載された会社に対して、引受等の投資銀行業務、 その他サービスを提供し、かつ同サービスの勧誘を行う場合があります。 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の役員(会社法に規定する取締役、執行役、監査役又はこれらに準ずる者をいう)が、以下の会社の役員 を兼任しております:三菱UFJフィナンシャル・グループ、三菱倉庫。 債券取引には別途手数料はかかりません。手数料相当額はお客様にご提示申し上げる価格に含まれております。 本資料は当社の著作物であり、著作権法により保護されております。当社の事前の承諾なく、本資料の全部もしくは一部を引用または複製、 転送等により使用することを禁じます。 c 2016 Mitsubishi UFJ Morgan Stanley Securities Co., Ltd. All rights reserved. Copyright ◯ 〒100-0005 東京都千代田区丸の内 2-5-2 三菱ビルヂング 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 景気循環研究所 (商号) 三菱 UFJ モルガン・スタンレー証券株式会社 金融商品取引業者 関東財務局長(金商)第 2336 号 (加入協会) 日本証券業協会・一般社団法人金融先物取引業協会・一般社団法人日本投資顧問業協会・一般社団法人第二種金融商品取 引業協会 本資料は、英国において同国the Prudential Regulation Authorityとthe Financial Conduct Authorityの監督下にあるMitsubishi UFJ Securities International plcが配布致します。また、米国においては、Mitsubishi UFJ Securities (USA),Inc.が配布致します。 本資料は信頼できると思われる各種データに基づいて作成されていますが、当社はその正確性、完全性を保証するものではなく、利用に際してはお客様 ご自身でご判断くださいますようお願い申し上げます。巻末に重要な注意事項を記載していますので、ご参照下さい。 3
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