【組織活性化部門賞】 北海道 「水土里ネット富良野」

【組織活性化部門賞】
北海道
「水土里ネット富良野」
1.水土里ネットの概要
ふ
ら
の
・水土里ネット名:水土里ネット富良野
・役職員数:役員
16 名、
職
員:常勤
17 名
・組合員数:880 名
・受益面積:9,198ha (水田 6,745ha、畑 2,453ha)
・水土里ネット設立の経緯:水土里ネット富良野は、1921年(大正10年)設立の富良野用
水土功組合を前身としており、1952年(昭和27年)富良野平
原土地改良区に改組する。2000年(平成12年)富良野沿線5
土地改良区(富良野平原、草分、東中、扇山、東郷)の合併
により名称を富良野土地改良区に変更する。2004年(平成16
年)国営かんぱい事業の受益地区である中富良野町の東側丘
陵にあたる畑地帯の本幸地区を編入し現在に至っている。
2.地域の特徴
本地域は北海道の中央・上川総合振興局内の南部に位置し、富良野盆地と呼ばれる地
域の大部分にあたる平坦な水田地帯と、その東部高台にある東大演習林に隣接する丘陵
地帯の一部である畑地帯で構成されている。関係行政は、富良野市・上富良野町・中富
良野町の1市2町である。気象は典型的な内陸性気候を呈しており営農期の農業気象条
件に恵まれていることから、生産される基幹農産物は水稲・麦・玉葱・馬鈴薯・メロン
・スイートコーン・人参・スイカなど多岐に渡り、畜産を含め北海道屈指の食料生産基
地となっている。
本地域の土地改良事業は、大正時代初期の富良野盆地の排水事業がその起源である。
富良野盆地開発運動が興り、太古の時代は湖沼で一大湿地帯であった地域に大排水溝を
建設した。完了後水田開発を目的とした大規模なかんがい事業が展開され、今日の地域
農業基盤の基礎が築かれた。また畑地帯においては、農地を保全する施設の維持管理を
目的に開拓以来の水利組合が統一され組合を設立した歴史がある。
かんがい事業から引き継ぐ土地改良事業として客土事業が昭和初期から40年代頃まで、
馬搬から軌道客土、そしてトラック運搬と工法を進歩させながら泥炭地の土層改良を行
い、暗渠排水と併せて食料の増産を図るべく積極的に工事が施工された。また、三浦綾
子の小説「泥流地帯」の舞台である上富良野町十勝岳の噴火による壊滅的な泥流被害か
らの復旧も当地域の特色となっている。
高度成長期に入り、農業の近代化を図るべく基盤整備事業が積極的に推進され、農業
機械の高率稼働のための区画整理、用水利用の効率化やほ場の汎用化を図る用排水路整
備、農地の集団化を図る換地事業を併せ行うほ場整備事業が各地域で展開されてきた。
近年は、農村地域の高齢化、後継者不足に対応するための農地の大区画化・汎用化や農
業水利施設の老朽化に対応するため、国営農地再編整備事業、国営総合農地防災事業等
を積極的に実施し、当地域の生産性の向上と安全・安心な食料の安定供給等に向けて事
業の展開を図っている。国際的な観光地になりつつある「ふらの」において農村景観は
重要な資源でもあり、富良野地域の農業の持続的な発展は地域産業の振興・発展に必要
不可欠となっている。
3.運動の背景
本水土里ネットは平成 15 年度より本格的に 21 創造運動に取り組んでいる。当時は
「米政策改革大綱」の実施による土地改良区運営の影響について内部で大いに議論され
ていた。「助成金」から「補償制度」の移行に伴う農家所得減少の懸念や、土地利用形
態の固定化による賦課金徴収及び現在進行している土地改良事業の負担金の問題等、今
までの運営方針では激変する農業情勢に対応出来ないのではないかという危機感を抱い
ていた。
「米大綱に沿った地域ビジョン策定」にあたり、農家組合員及び農家以外の住民の方
々に対しても、水土里ネットの役割に対する啓発と理解を求める事を重要な課題と位置
づけた。現在の農業情勢は当時と異なっているが、水土里ネットが自ら情報を発信する
内容に変わりはないと考える。
4.運動の基本理念・目標
21創造運動の創成期に、上川管内土地改良区で合同実行委員会を組織して「農業を支
える水(水)土(農地)里(故郷)を繋ぐ団体として、土地改良区は今新しく“水土
里ネット”として農業・環境・生活のことをより大切にし、21世紀の日本を支えてい
く」をスローガンに歩みを共にして活動をスタートした経過がある。
農村の自然は、農地や土地改良施設および里山など変化に富んだ環境があるからで
あり、それは開拓以来、先人が苦労を重ねて人の手で築き上げてきた賜である。農業
を通しての積極的な自然への働きかけが豊かな農村景観を創り出し、地域社会の形成
に欠かせないものである事を、長く後世に伝えていく事が本水土里ネットの創造運動
の基本理念であり、農村社会の継続と活性化が目標であると考える。
5.21創造運動の活動
■なんでも探検隊
−水の道を旅しよう−
《活動内容》
土地改良区施設見学会「なかふらのなんでも探検隊」は、中富良野小学校3年生以上
の児童を対象に、夏休み期間中に基幹的な土地改良施設の見学を行っている。見学施設
に合わせてテーマを決めており、平成 26 年は「ダムの中を知りつくせ!!そして気にな
る空知川の川の上に見える小さな家は?」と題して、上流部にある金山ダムの提体内お
よび空知川頭首工の洪水吐ゲート巻き上げ施設の見学を行った。
《活動状況写真》
金山ダムの提体内見学
空知川頭首工のゲート巻上機
おいしい流しそうめんの昼食
■地域イベントでの啓蒙活動の推進(パネル展の開催)
《活動内容》
水土里ネットの役割等について啓発活動を行うため、地域イベントに積極的に参加し
ている。「水土里ふれあい広場」は、秋に中富良野町で開催される「お米祭り」(農作
物の販売や料理を提供する収穫祭)に共催しているイベントであり、農地や多面的な機
能を持つ土地改良施設は地域の資源として大切である事を理解してもらうことを目的と
して取り組んでいる。その他にも夏に開催されるJAふらの主催の「農業祭り」や、富
良野市で秋に開催される「ふらのワインぶどうまつり」にも参加し創造運動の活動を推
進している。
《活動状況写真》
暗渠の仕組みを模型で説明
ぬいぐるみもお手伝い
アンケートに答える方々
■「農業・農村フェスタ in 赤れんが」札幌市
《活動内容》
各種土地改良事業で基盤整備を行った農地で生産された農産物や加工品を都市住民に
販売することで、農業の役割と大切さを知ってもらうことを目的として取り組んでいる。
《活動状況写真》
赤レンガ広場の様子
ふらのの特産品の販売
ペーパークラフト・紙芝居など
■JICA技術協力プロジェクト研修に協力
《活動内容》
本研修は、平成 17 年より上川管内の4つの水土里ネットで受け入れを始めて 10 年が
経過した。当初は受け入れに対する不安がある中、関係機関と情報交換を行い研修員の
受け入れ体制を整えた。
研修の内容は道内でも事例の少ない畑地かんがいをテーマとしており、水土里ネット
の概要や地域の自然環境の講義を行っている。また、現地研修では、研修員と組合員の
意見交換の場を設けて、積極的に交流を行う事により疑問点の解決を図っている。
《活動状況写真》
中富良野町へ表敬訪問
講義の状況
組合員との意見交換
6.運動全体の成果と今後の展望
21 創造運動は、水土里ネットが抱える問題を第三者の考えや意見を幅広く知る良い
機会となっている。また、運動を通じて、役員・職員の土地改良事業に対する意識の変
化が生じることにより、水土里ネットが地域に根ざした組織になっていると思う。
組合員と共同で施設の現地研修を行いながら、将来を見据えての施設の管理について
協議が始まっている。この活動を通じて、水土里ネットが抱える問題を再認識し、また
他の団体、市民との交流を図ることによって、解決策のヒントを得ることができると考
える。今後も、地域に密着した「水土里ネットふらの」としてイベントへの参加やホー
ムページを活用して広く情報を発信していきたい。