【地域農業部門賞】 広島県 「水土里ネット福山」 1.水土里ネットの概要 ふくやま ・水土里ネット名:水土里ネット福山 ・役職員数:役員 33 名、 職 員:常勤 4 名、非常勤 1名 ・組合員数:12,141 名 ・受益面積:2,457.2ha (水田 2,398ha、畑 59.2ha) ・水土里ネット設立の経緯:福山市土地改良区は昭和27年3月13日に、設立認可された福 山市久松土地改良区を母体として、昭和49年に21の土地改良 区と合併し「福山市土地改良区」と名称変更した。また平成 15年には4つの土地改良区と合併し、全国的にも有数の規模 を誇る土地改良区となった。市域の中央を流れる一級河川の 芦田川から取水する地域と周辺部のため池を水源とする地域 があり、土地改良施設の整備や維持管理を主な事業としてい る。従前の土地改良区は、地域それぞれの特性に合った土地 改良施設の維持管理媒体としての「工区」に位置付けられて いる。 2.地域の特徴 広域な農地を有する水土里ネット福山は、昭和 36 年「国営(三川ダム)付帯かんが い排水事業」により一級河川芦田川より取水する「七社頭首工」、幹線用水路3路線の ほか、分水工2箇所、サイフォン2箇所が整備された。水稲を中心ににんじん・ほうれ ん草などの生鮮野菜やいちじくなど、都市近郊に適した作物生産も盛んに行われ、特に 地域特産のくわいの生産量は全国1位を誇り、本市の地域農業の振興に大きく貢献して いる。また、市街化が進んだ今日、水路などの土地改良施設は、市民に憩いと潤いを提 供する水辺空間として大切な役割を担っている。平成 18 年芦田川用水が「疏水百選」 に選定されたのを契機に七社頭首工をはじめとした主要な水利施設や史跡、名所などを 巡るウォーキングコースを設定し、広く市民に維持管理の大切さや、農業用水に対する 理解の醸成を図っている。 3.運動の背景 面積規模が大きいことから広域的な組織運営が求められているが、急速な市街化や高 齢化などにより農地維持、施設管理が困難となっていることから、水土里ネットの存在 意義が問われている。組合員をはじめ役員、総代に意識を高めてもらい、水土里ネット の必要性と重要性を広めるために 21 創造運動に取り組んでいる。 4.運動の基本理念・目標 地域の社会資本としての土地改良施設を、住民や行政と一体となって管理する体制の 構築と水土里ネットが地域資源の管理団体、地域づくりの拠点となるよう認知に努める ことにより、農業農村の有する多面的機能の重要性に対する住民の理解を醸成する。 5.21創造運動の活動 ■地域と連携した水稲の農業体験 《活動内容》 東村町は、平成 3 年から平成 5 年にかけて水土里ネット福山が、ほ場整備事業を施工 した地域で、このほ場の一部を利用して水土里ネット組合員が中心となり、「学校給食 食材納入グループ若草会」を立ち上げている。特別栽培米 20aと野菜約 10aを栽培す る学校農園を作り、栽培されたお米は東村小学校、東村保育所で年間を通して給食とし て供給されている。子どもたちの田植えや稲刈り体験では、町内会の女性部が地元産の お米でおむすびや柏餅などを作り、子どもたちやお手伝いいただく方にふるまう等、地 域住民の交流行事となっている。福山市のモデルケースとして広く紹介され、地元では 「地域活性の素」として親しまれている。 駅家西小学校は、組合員を中心に町内会の協力を得て籾まきから苗を育て、田植え、 稲刈りと農作業の全てを手作業で体験をしている。この取り組みを水土里レポートで組 合員へ紹介することで、水土里ネット福山全体としての一体感を得ている。 《活動状況写真》 活動写真添付欄1 活動写真添付欄2 添付写真説明1 添付写真説明2 ・東村小学校の見える学校農園で、地域の方と一 緒に子どもたちが稲刈体験(上) ・子どもたちが描いた看板をバックに地元の方の 集合写真(下) ・駅家西小学校の籾まき(上) ・子供たちによる育稲(下) ■「くわい」に関する授業、農業体験 《活動内容》 川口小学校は、福山市の地域特産品である「くわい」を小学校で栽培している。児 童は、農家の方から直接話を聞き、農業用水のしくみや環境、歴史、食文化など多方 面について学び、郷土の農業に関心を深めることを目的とした学習に取り組んでいる。 水土里ネット福山は、こうした学習へ協力するため、福山市やJA福山市、くわい出 荷組合と連携し、出前授業やくわい農家の植付け見学、子どもたちが学習後に作成し た『くわい新聞』の展示などを提案し取り組んだ。 また、新涯小学校も同様に学校でくわいを栽培していることから、水土里ネット福 山が組合員の協力を得て、くわい植付け体験を実施し、収獲体験後は調理実習でくわ いを使ったメニューを考案し、料理作りにチャレンジしている。農業体験の様子やく わいの初出荷、創作料理の出来栄えなどを水土里レポートで紹介し、地域農業のアピ ールに貢献している。 《活動状況写真》 活動写真添付欄1 活動写真添付欄2 添付写真説明1 添付写真説明2 ・川口小学校の出前授業でくわいの栽培について。 (上) ・くわいの植え付けについて組合員から説明(下) ・新涯小学校のくわい植付け体験(上) ・新涯小学校のくわい植付け体験でテレビ局の取材 を受ける様子(下) ■農業用水路等土地改良施設啓発への取り組み 《活動内容》 芦田川用水は、疏水百選にも選定された農業用水で、平成7年度の丸川分水の改修工 事の際、絶滅危惧種のスイゲンゼニタナゴの保存のため、水路底に川砂を入れ自然護岸 とした。盈進中学・高等学校では、工事後から約 20 年間丸川分水でスイゲンゼニタナ ゴの産卵母貝の調査をしており、水土里ネット福山が調査に協力し、用水路の水質や生 態系の変化を注視してきた。平成 27 年3月に「スイゲンゼニタナゴを守る市民の会」 が設立され、水土里ネット福山も会員となったことから、この取り組みを水土里レポー トで紹介し自然環境の保護や農業用水路の重要性を啓発した。また、平成 27 年度は小 学校等7校で約 500 名の児童を対象に、取材の機会を活用して、水路の重要性と併せて 水土里ネットの役割や転落防止等の防災について啓発した。 西深津町内会では公民館を中心に西深津小学校の子どもたちが、蓮池川(七社頭首工 用水の幹線水路の 1 つである蓮池幹線用水路)で船上体験や環境学習など地域の自然と 親しむ活動を行っており、更なる周知と農業用水路や土地改良施設の役割について、小 学校等へ出前授業を企画・提案し取り組んでいる。 《活動状況写真》 活動写真添付欄1 活動写真添付欄2 添付写真説明1 添付写真説明2 ・出前授業で水質調査の総量の予想を立てている ・多治米保育所の園児たちは「水路やため池には 様子(上) 入りません!」と約束 ・西深津小学校の出前授業で「七社頭首工」と「 転落防止」について説明(下) ■地域内の活性化と水土里ネット受益内の地域間の交流支援 《活動内容》 東村町の「東村町かかし祭り」に協賛し、水土里ネットの取り組みをパネル展示する ことで、地域の方への啓発を行った。また、市街地にある松永幼稚園の園児の農業体験 を東村町で実施することで、地域間の交流を推進し、園児は普段接することのない用水 路や動植物、田植えや稲刈り等に触れ、その様子をかかし祭りで紹介している。 《活動状況写真》 活動写真添付欄1 活動写真添付欄2 写真説明1 添付写真説明2 ・「東村町かかし祭り」でレポートを展示 ・東村町資料館「かかしの里」見学の様子 ■取材を通して水土里ネットが活性化した活動 《活動内容》 21 創造運動を契機に取材した小学校等へ子ども絵画展の参加を呼び掛けたところ、 平成 26 年度は 7 校 507 名の応募があり、この中から全国入賞 1 名、全国入選 2 名、理 事長賞 1 名が受賞となった。また、水土里ネット福山の独自の賞を「水土里賞」と定め、 水土里ネットの役割普及に努めた。賞の選考にあたっては、ふくやま美術館の協力を得 て、503 点全ての作品の中から選考し 11 名に「水土里賞」を授与した。11 名全員に賞 状と副賞のトロフィーを学校等へ出向いて常務理事より手渡し、その様子や受賞作品、 選考理由等を水土里レポートで報告した。 理事会や総代会においても 21 創造運動の取り組みを報告,レポートの展示,広報誌 で啓発を行った。また、水土里レポートがきっかけで水土里ネット加古川西部から視察 が訪れた。 《活動状況写真》 活動写真添付欄1 活動写真添付欄2 添付写真説明1 添付写真説明2 ・「水土里賞」選考の様子 ・水土里ネット加古川西部の施設見学の様子 6.運動全体の成果と今後の展望 地域の特長を活かし、それぞれの運動に取り組んだことが自信となっている。地域間 交流を通じお互いの良さを知ることで、自分の所の活動をもっと充実させたいという気 持ちが生まれている。活動範囲も広がっているが、広域にわたって水土里ネットの役割 を浸透させていく必要があり、現在の取り組みを継続しつつ、福山市の農業や食文化に まつわる歴史や伝統文化・芸能なども取り入れて、幅広く周知を図っていきたいと考え ている。
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