放射光小角散乱による界面活性剤分子集合体の溶液状態解析と その製品応用 小倉 卓 ライオン株式会社 研究開発本部 機能科学研究所 界面活性剤は、各種条件により溶液中で特異的な分子集合状態を形成するため、トイレタ リー・化粧品・医薬品等の分野において、必要不可欠な機能性基剤である。これまでに、様々 な界面科学的手法を用いることで、界面活性剤分子集合体の状態解析が検討されてきたが、 その評価には、各手法に適したサンプル調製が基本的に必要であった。 近年、装置・解析技術の著しい進歩に伴い、実使用形態に則した濃度・温度範囲での、直 接的な溶液状態解析が可能な、”放射光小角散乱”が注目されている。本手法は、サンプルが 有する数 nm から数 μm といった、いわゆる“コロイド”領域の大きさをもつ構造体もしくは 電子密度ゆらぎについて、散乱強度分布からその構造特性を捉えることが可能である。 特に、溶液中に存在する界面活性剤分子集合体の大きさ、形状、分布、可溶化物質の存在 位置、膜の柔らかさ、表面状態等 1)-2)に関する様々な構造情報が得られる。さらに本解析結果 は、製品機能に直結する重要な情報を含んでいることから、当該分野における新製品設計の 一助となることが期待される。 本講演では、当該分野における放射光小角散乱の有用性について、界面活性剤が形成する 分子集合体の溶液中での状態解析結果を、①油溶成分の可溶化挙動、②ナノエマルションの 構造解析とその機能 3)、③脂質膜中の機能性成分の存在状態 4)を応用例と共に紹介する。 Reference 1) O. Glatter, "Small Angle X-Ray Scattering", Academic Press London, 1982 2) Th. Zemb, P. Lindner, “Neutron, X-rays and Light. Scattering Methods Applied to Soft Condensed Matter”, North Holland, 2002 3) K. Aburai et al., Journal of Oleo Science, 2013, 62, 913 4) M. Matsuki et al., Journal of Oleo Science, 2014, 63, 903
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