海外だより - JA 全中

D.C.通信
海外だより
連載 59
中村岳志 (JA全中農政部WTO・EPA対策課<在ワシントン>)
April, 2016
米国連邦最高裁判所の
判事交代をめぐる動き
2 月13日、1986年から30年近
ら引退するまではその地位を保
くにわたり最高裁判事を務めた
障される。したがって、次期判
スカリア判事が、急逝した。米
事がどちらの党の考えに近い人
国連邦最高裁は、議会が制定す
間になるかは、今後数年、場合
る法律が、合衆国憲法に照らし
によっては十数年間の米国連邦
て合憲か違憲かを判断する権限
最高裁の勢力バランスを左右す
て強調しており、真っ向から対
を有し、これまで政治的にも重
る、政治的に極めて重要な案件
立している。
要な判断を多く行ってきている
となる。
しかしながら、直近の世論調
ことから、今後の判事構成がど
うなるかに、注目が集まってい
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査では、
「上院は最高裁判事の
■任命には上院の同意が必要
だが、共和党は反発
る。
米国連邦最高裁判所(ワシントンDC)
任命にかかる公聴会および投票
を行うべき」との意見が多数派
最高裁判事の指名・任命はい
であり、上院共和党指導部の強
■米国連邦最高裁の構成
ずれも大統領の権限であるもの
硬姿勢は、11月の大統領・上下
米国連邦最高裁は長官を含め
の、任命には上院の助言と同意
両院選挙に悪影響を与えかねな
9 人の判事から構成されており、
が必要とされており、上院の支
いとする見方もある。
スカリア判事が急逝するまでは、
持を得ることが不可欠となる。
共和党大統領が任命した保守派
オバマ大統領は 3 月16日、後
■今後の見通し
の判事が 5 人、民主党大統領が
任判事として、コロンビア特別
今後、上院においては最高裁
任命したリベラル派の判事が 4
区連邦控訴裁のガーランド判事
判事の任命案件への同意の是非
人という、一般的に共和党側に
の指名を発表したが、その直後、
をめぐり、両党の駆け引きが激
有利な構成であった。しかし、
上院で多数派を占める共和党
化し、他の案件における両党間
スカリア判事(共和党のレーガ
トップのマコネル院内総務は
の協力が一層困難になると見ら
ン大統領が任命)の急逝により、 「米国国民は次期判事の選択に
れており、次年度予算や環太平
両党大統領が任命した判事が同
あたり発言権を有するべきであ
洋連携協定(TPP)などの審議
数になることとなる。
り、この空席は新たな大統領が
にも大きな影響を与える可能性
最高裁判事の任期は原則とし
選出されるまでは埋められるべ
があることから、動向を注視し
て終身となっており、一度任命
きではない」と述べ、選挙前の
ていく必要がある。
されれば、本人が死去または自
審議を行わない考えをあらため
月刊 JA
2016/04