D.C.通信 海外だより 連載 65 中村岳志 (JA全中農政部国際企画課<在ワシントン>) October, 2016 遺伝子組み換え食品表示を義務 化するアメリカ連邦法の成立 章のほか、QR コードなど GMに 関する情報を掲載したウェブサ イトへのリンク等の選択肢も用 意され、必ずしも包装上の表示 7 月29日、オバマ大統領は、 に違いがないのに表示を変える を行わなくてもよい内容となっ 食 品 の 遺 伝 子 組 み 換 え(GM) ことは、GM 食品の安全性に関 ている。 表示を義務付ける連邦法改正法 する消費者の誤解を招く」など なお、本法は、州による独自 案に署名し、GM表示が全米で義 とする主張もあり、調整が図ら の GM 表示の新たな実施を禁止 務化されることとなった。 れてきていた。 するとともに、既存の基準を無 効とする旨が規定されているこ ■これまでの経緯 ■連邦法の成立 とから、バーモント州の法律も GM 表示の義務化は、既に一 こうした中、2016年 7 月 1 日 含め、州による基準の制定・実 部の州で取り組まれてきており、 にバーモント州法が発効するこ 施は今後行えないこととなる。 2013年12月にコネティカット州、 とを踏まえ、上院農業委員会の 2014年 1 月にメイン州が、それ ロバーツ委員長(共和党)とス ■おわりに ぞれ隣接州における同様の法律 タビナウ筆頭理事(民主党)を 今回、食品のGM表示を行うこ の発効を条件に表示を義務化す 中心に、全国レベルの表示義務 と自体は決定したものの、どの る 州 法 を 成 立 さ せ た。 ま た、 に関する協議・検討が進められ、 程度の GM 原料を含んだ食品を 2014年 4 月には、バーモント州 新たな表示義務を導入する法案 GM 食品と定義付けるかなどの で、そうした条件を伴わない州 が 7 月 7 日に上院で、14日に下 詳細については今後の検討に委 法が成立している。 院で可決され、29日の大統領の ねられることとなっている。 GM 表示の義務化をめぐって 署名を経て成立した。 既 存 の 法 律 の 内 容 に は、 ファームビューロー連盟などの は、州間取引が行われている食 32 品について州法で表示義務を課 ■連邦法の内容 農業団体や多くの大手食品・小 すことは、州ごとの表示の変更 本連邦法では、農務長官が 2 売企業等が賛成する一方、一部 など業者等のコスト面での負担 年以内に全国的な GM 食品表示 の消費者団体等はより厳格な内 増を懸念する声などがある。そ 義務に関する基準を設定する旨 容を求めており、賛否双方の利 のような状況の中で、全国統一 が定められている。具体的には、 害関係者の主張を踏まえ、アメ での基準設定の必要性が訴えら GM 原料を使用している旨等の リカ政府がどのような調整を れてきたが、具体的な表示内容 商品包装への記載が求められて 図っていくかについて、引き続 に関する議論のほか、 「非 GMの いたバーモント州とは異なり、 き注目していく必要がある。 ものと栄養学的・機能的な特徴 連邦法ではそうした包装上の文 月刊 JA 2016/10
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