工業力学 補足スライド Industrial Mechanics 第7回:慣性モーメント・剛体の運動学・動力学 ● ● ● ● ● 宿題を提出してください わからないことを質問してください 以前のノートがない人はとりにきて下さい 配布物:解答用紙 1枚 次の次の会に中間テストを行います 知能システム工学科 井上 康介 日立キャンパス E2棟801号室 回転体と重心 (パップス・ギュルダンの定理) 長さ L の曲線 AB を x 軸の まわりに一回転させてできる 回転体の表面積を求めたい. 図の通り,長さ dL の微小 部位をとり,一回転させる と,幅 dL,長さ 2py の 輪っか状テープとなる. dA = 2py・dL よって全体の表面積は S = ò dA = ò 2py dL = 2p ò y dL = 2p y G L = 2pyG ×L (重心の周回軌道長)・(曲線の全長) 2 回転体と重心 (パップス・ギュルダンの定理) 面積 A の平面図形を x 軸の まわりに一回転させてできる 回転体の体積を求めたい. 図の通り,面積 dA の微小 部位をとり,一回転させる と,断面積 dA,長さ 2py の リングとなる. dV = 2py・dA よって全体の体積は V = ò dV = ò 2py dA = 2p ò y dA = 2p y G A = 2pyG ×A (重心の周回軌道長)・(全面積) 3 物体のすわり 物体のすわりがよいとか悪いとかいうとき,これは 物体の 安定性 を言っている. ある状態に置かれた物体が安定であるか否かは,物体に微 小な傾きを与えた時,物体がそのまま倒れるか,元の状態 に戻ろうとするか によって,まずは判定できる. 微小に傾いたときに,物体が「戻ろうとする」か「もっと 倒れようとする」かは,その時 発生しているモーメントが 復元モーメントか転倒モーメントか によって決まる. そしてそのいずれが生じるかの条件は… 重心がもとの位置より上がる 復元モーメント (安定) 重心がもとの位置より下がる 転倒モーメント (不安定) 重心高さが不変 モーメントは発生しない (中立) 4 安定なすわり (stable) 物体を少し傾けると重心が上がる場合 重心にかかる重力 W と地面からの反力 R がつくる力の モーメントは,傾きを回復する方向の復元モーメント 戻ろうとする (安定) 5 不安定なすわり (unstable) 物体を少し傾けると重心が下る場合 重心にかかる重力 W と地面からの反力 R がつくる力の モーメントは,より傾ける方向の転倒モーメント もっと倒れようとする (不安定) 6 中立なすわり (neutral) 物体を少し傾けても重心高さが変わらない場合 重心にかかる重力 W と地面からの反力 R の作用線が一致 し,モーメントが生じない 倒れようとも戻ろうともしない (中立) 7 角運動方程式 剛体の運動では,並進運動・回転運動の合成 である. その解析では,それぞれの基本式を連立させて解く. 並進運動の基本式:Newton の運動方程式 f = ma ( 質量 m は 並進運動の慣性) 回転運動の基本式:角運動方程式,Euler の運動方程式 N = I w&( 慣性モーメント I は 回転運動の慣性) 慣性モーメント I は回転運動の慣性であり,物体が現在 の角速度を維持したがる傾向 (物体の回しにくさ) を表 している. 慣性モーメントは,物体の質量が大きいほど,また, 質量と回転軸との距離が遠いほど,大きくなる. 8 慣性モーメント 物体上の回転軸にトルク N を加えて, 物体の回転を角加速度 w&で加速する r N dm とする. 物体上の微小部位 (質量 dm) と回転 w& 軸との距離を r とすると,この部位 の軸周りの回転を角加速度 w&で加速 するのに必要なトルクは dN = dm r 2 w&. 剛体全体の回転を加速するのに必要なトルクは,各微小 部位に対するトルクの合計なので, N = ò dN = つまり, I = 2 2 & & r w dm = w r ò ò dm = I w&. ò r dm . 2 9 慣性モーメントの計算例 例) 下記の細い (太さの無視できる) 長さ l,質量 m の棒を軸 L まわりで回転させるときの慣性モーメントを求める.ただ し,線密度 (長さあたりの質量) を r とする (m = rl ). l L dx x 軸 L から距離 x の位置に微小部分 (長さ dx ) をとると,そ の質量は dm = r dx である.先ほどの式に代入すれば, l 3 2 é 1 ù r l ml I = ò r 2 dm = ò x 2 ×r dx = r ê x 3 ú = = 物体全体 0 êë3 ú 3 3 û0 l 10 パーツに分かれた物体の慣性モーメント 部分 i の慣性モーメントが Ii である結合体の全体の慣性 モーメントは,部分ごとの慣性モーメントの総和である. I = å Ii 慣性モーメント IB の物体から慣性モーメント IP の部分を 抜いた後の慣性モーメントは,抜く前の慣性モーメントか ら抜いた部分の慣性モーメントを引いた値となる. I = IB - IP 11 有用な定理 1:平行軸の定理 平行軸の定理 (parallel axis theorem) 2 I = IG + d m 質量 m の物体の重心 G を通る軸周りの物体の慣性モー メントを IG とするとき,その軸から距離 d だけ離れた 平行軸周りの慣性モーメントは,IG に d 2m を足した量 となる. 物体の慣性モーメントは 重心を通る軸周りが一番小さく, そこから離れるにしたがって d 2m だけ増加する. 重心を通るある軸周りの慣性モーメントが分かっていれ ば,この定理を使って,その軸に平行な任意の軸周りの慣 性モーメントを簡単に求められる. 12 有用な定理 2:直交軸の定理 直交軸の定理 (perpendicular axis theorem) Iz = Ix + Iy 平面板上の任意の点 O を通り,板に垂直な軸周りの慣 性モーメントは,平面内の O を通り直交する2軸周り z の慣性モーメントの和に等しい. O y r x y dm x 13 特定物体の慣性モーメントを求める 以上の考え方を使って特定物体の慣性 モーメントを求められる. 例) 右図の物体の軸 L 周りの慣性モーメ ントを求める. 円柱や直方体の 重心周り の慣性モー メントは,積分の計算 により求まる. この計算の中で 直交軸の定理 を活用. L ( 結果が教科書の表 6・1 に出ている) 平行軸の定理 を使えば,右図の 軸 L 周り の部分ごとの慣性モーメントが分かる. さらに,「全体の慣性モーメント=部分の慣性モーメント の和」であるから,求まった 部分ごとの慣性モーメントの 合算 により全体の慣性モーメントが求まる. 14 断面二次モーメント (本講義の範囲外) 図のように 片持ち梁 に力を 加え,前モーメント を発生 させると,梁は変形する. この変形に耐える材料の硬さ は,材料の材質と 断面形状 に依存する. 断面形状に依存する材料強度のパラメータに,断面二次 モーメント (second moment of area) がある. 断面上の微小部位 (面積 dA) をとり,その軸との距離を r とするとき,断面二次モーメントは以下のように計算 される (詳細は講義「材料力学」で学ぶ). I ¢= 2 r ò dA 15
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