発展途上国への支援の形

発展途上国への支援の形
国際政治経済特殊研究Ⅷ グループC
前川桃子 小林明日香
北村由依 高須史奈 吉田真友
<発表の概要>
発展途上国への支援にはさまざまな形態があるが、その中
で日本がこの先行っていくべき、途上国にとってよりよい支援
の形を明らかにする
①日本の過去におこなってきた支援
②日本の現在おこなっている支援
③他の先進国がおこなっている支援
④途上国が途上国へおこなう支援
⑤日本がこれから目指すべき支援の方向性
《ODAとは》
ODA(政府開発援助)とは?
Official Development Assistance
ODA
多国間協力
二国間援助
《二国間援助》
(1) お金を貸す
発電所の建設や下水道の整備などお金のかかる事業について非
常に低い利子でお金を貸し、その国の自立を促す。
(2) お金をあげる
特に貧しい開発途上国に対して、学校や病院を建てたり
する際のお金を出して助ける。
(3) 技術を教える
日本の産業・農業・教育などについての技術を教えて
その国の自立・発展を助ける。
①日本の過去におこなってきた支援
日本のODA(過去)
かつての日本の援助
•1940年代:日本のODA開始
•昔は日本も援助の受け入れ国
•もともと日本のODAは戦後賠償
1990年代には拠出額は世界で1位の割合
日本のODAに対する批判
・高い借款比率
・ハードインフラ中心
・東アジア中心
ODA大綱について
日本の援助政策の基本原則となっている大綱
1992年6月に閣議決定
(1)開発と環境の両立
(2)平和的用途
(3)受け入れ国のミサイル開発・製造などの軍事面に対する注意
(4)途上国の民主化の促進
②日本の現在おこなっている支援
《二国間でのODA総額に占める分野別割合》
《社会インフラ&サービス》
17.33%
学校・病院・上下水道設備など
《経済インフラ&サービス》
37.38%
道路・鉄道・港湾などの運輸・発電や送電などエネル
ギーに関連するもの
《日本の取り組みの特徴》
長年の歴史の中で形作られてきた日本の考え方
「自助努力支援」
途上国の人々自らの手による努力を支援する
その他にも 「人間の安全保障」の推進
人間の安全保障とは
地球温暖化などの環境問題、エネルギー問題、金融危機などの地球
規模の問題に対処するには「国家の安全保障」だけでは不十分
人間ひとり1人の視点にたって取り組む必要がある
国や国際機関、NGO等が協力して人々の保護と、自分たち
で脅威に対処するための能力の強化を通じて、様々な脅威に
包括的に対処する必要があるという考え。
日本のODA拠出先上位10か国
国名
ベトナム
実質額
1,646,71
アフガニスタン
873,58
インド
704,65
イラク
360,96
バングラデシュ
305,46
パキスタン
256,36
カンボジア
182,44
スリランカ
182,21
アゼルバイジャン
155,36
タンザニア
147,91
2012 支出純額ベース,単位:100ドル 出典:DAC
ベトナムに支援をする意義
メコン地域の経済開発において重要な役割を果たす東西回廊や南部回
廊の一端を担っており、同地域のけん引役として、さらなる地域経済統
合と連携促進のため、同国の重要性が高まっている。
急速な経済成長に伴い増大している経済インフラ需要に対し、同国内の
インフラ整備は不足しており、大規模なニーズが見込まれている。
ガバナンスの強化
日本の支援方針
成長と競争力強化
ガバナンス強化
脆弱性への対応
2015年からアセア
ン経済統合に向け
共産党ー党制のもと
法治・民主化の促進
成長の負の側面にも
対応
①インフラ整備
②産業競争力の強化
③金融セクター
国営企業改革
①法整備・司法改革
②公務員制度改革
③汚染対策
①貧困削減・格差是正
②環境改善
③気候変動への対応
③他の先進国がおこなっている支援
日本以外の先進国による援助
開発途上国の問題は人類共通の課題
• 衛生事情の悪化による感染症の蔓延、環境汚染
• 社会不安による紛争
国際協力
国際社会全体の平和と安定、発展のために、開発途上
国・地域の人々を支援すること
政府開発援助(ODA)、企業の社会的責任(CSR)、NGO、
市民ボランティアetc…
世界のODA
開発援助委員会(DAC)
OECD傘下で、途上国支援について専門的に議論し、
検討を行っている組織(28カ国とEUで構成)
経済協力開発機構(OECD)…
加盟国間の意見交換や情報交換を通じて
①経済成長②貿易自由化③途上国支援
に貢献することを目的とした組織(現在34カ国が加盟)
世界の援助の動き
貧困が世界を脅かす危険を認識
→2001年同時多発テロ以降、世界的にODAが増加
主要援助国の
ODA実績の推移
(支出純額ベース)
(出典)OECD/DAC
世界の援助の動き
“援助疲れ”
長年にわたり途上国に対して援助を続けてきたが、
目に見える効果が現れていないのではないか?
先進国
より効果的なODAを目指す
MDGs 測定可能な開発目標を国際社会が共有し、援助に対する意
識と動機を高めることに貢献
世界の援助の動き
ミレニアム開発目標(MDGs)
2015年までに国際社会が達成すべき開発目標
①極度の貧困と飢餓の撲滅
②普遍的初等教育の達成
③ジェンダーの平等の推進と女性の地位向上
④乳幼児死亡率の削減
⑤妊産婦の健康の改善
⑥HIV/エイズ、マラリア及びその他の疾病の蔓延防止
⑦環境の持続可能性の確保
⑧開発のためのグローバル・パートナーシップの推進
貧困削減戦略文書(PRSP)
各国の開発の基本戦略。1999年9月世界銀行・国際通貨基金(IMF)
で策定が合意
パリ宣言
効果的に援助を行うため、途上国と先進国が取り組むべき制度の改
革などについて合意
米国の援助の動向
開発援助は全世界共通の安全保障の増大のための最大
の投資
ODA 実績支出総額:336億ドル(世界1位)
支出純額対GNI比:0.19%(世界18位)
特徴:①援助の定義が広範囲(ODA対象外の軍事政策、イ
スラエルや欧州など高所得国への援助も含む)
②国益重視(世界におけるリーダーシップを維持)
③ミッション性が高い(援助を通じて、民主主義
や自由の理念を世界に普及させる志向)
英国の援助の動向
二国間開発援助の模範的国家
ODA 実績支出総額:201億ドル(世界2位)
支出純額対GNI比:0.71%(世界5位)
特徴:「地球規模の貧困削減」を国家政策に掲げる
技術援助を推奨
社会インフラに注力
原則として無償資金協力(贈与比率95.7%、
二国間援助は2001年から100%アンタイド)
機構:首相、財務大臣との強固な政治的協力関係をもつ
国際開発省(DFID)を設置→効率的なODAを運営
援助対象:貧困層の多い諸国(サブサハラ・アフリカや南ア
ジア諸国)、紛争の起こりやすい脆弱な国家に集中
ドイツの援助の動向
開発援助の効率性と効果を高めるため、協力対象国を絞り込んで支援
ODA 実績支出総額:189億ドル(世界3位)
支出純額対GNI比:0.41%(世界10位)
特徴:貧困削減が開発援助の最重要目標とするも、経済的に発展した
国々への援助も重視
平和構築、民主主義の促進、平等なかたちでのグローバリゼー
ション、環境保護を基本理念とする
贈与比率が非常に高い
ジェンダーの問題、女性のエンパワーメントを重要視
機構:財政的分野と技術的分野で組織が分かれている
援助対象:ナイジェリア、イラク、中国、カメルーン、インドネシア、ザン
ビア、ガーナ、インド、エジプト、セルビア
フランスの援助の動向
貧困層や疎外されたグループをグローバルな関与のもとにおく
幅広い視点からの援助
ODA 実績支出総額:123億ドル(世界5位)
支出純額対GNI比:0.71%(世界12位)
特徴:「民主的な政府、人権、貧困削減、健全な資源管理に重点を置くこと」
「環境、制度的開発、貧困削減、債務免除」を基本理念とする
贈与比率が非常に高い
教育・健康重視(貧困国への贈与の3分の1)
伝染病の予防、気候変動への対処、生物多様性の保護を重視
ジェンダーの問題と女性のエンパワーメントに注力
機構:外務省、経済財政産業省の両者がODAの戦略的運営に責任
→システムが複雑化、複数の開発目標が存在=一貫性を欠く
④途上国が途上国へおこなう支援
中国からアフリカへの支援
誤解
1)中国は、最近になって援助を始めた「新顔」。
➡中国は50年以上前からアフリカに援助している。1960年代後半に建設が決まったタ
ンザニアとザンビア間を結ぶタンザン鉄道建設への援助が代表例である。
2)中国は援助事業に従事する労働者のほとんどを自国から送り込んでいる。
➡アフリカ大陸全体でみれば、援助事業従事者のうち中国人は2割だけで、残り8割は
現地のアフリカ人だ。ただ、進出先ごとに事情が異なる。アンゴラでは中国人45%でア
ンゴラ人55%。タンザニアでは中国人10%、タンザニア人90%。背景には、アンゴラ進
出は比較的最近で現地の人材がまだ育っていないが、古くからの進出先のタンザニア
では育っているといった事情がある。
中国はアフリカの豊富な資源の獲得も目指している。だが、そこで使われる
手法は公的機関による無償援助ではなく、経済的な得失を考えた投融資の
性格が強い。例えば、中国はアフリカの天然資源を担保に自国製機材を輸
出し、その代金を資源で受ける。これは1970年代に日本が中国に対して
採ってきた手法だ。当時の中国では日本の融資を受けるかを巡り大変な議
論になったが、自国の発展のための取引と判断して受け入れた。
中国のアフリカ進出にはもう一つ狙いがある。それは、中国企業のグロー
バリゼーションの後押しだ。中国企業の輸出先を広げ、現地でのブランドイ
メージの確立を図ろうとしている。
⑤日本がこれから目指すべき支援の方向性
これまでおこなってきた国際協力の形
• ここまで述べたように、日本は今までインフラを支援するという国際
協力の形を多くとっていた
→社会インフラ17.33% 経済インフラ37.38%
• 途上国ではそこに住む人が生きるためにまずはインフラの整備が不
可欠である
しかし、途上国が真の意味で自立するには
その国の経済的自立が必要
これから目指すべき国際協力の形
「援助」ではなく「投資」や「融資」を通じて
プロジェクト形成またはビジネス形成をおこなう
• 先進国の政府と企業が連携して、その国のプロジェクトやビジネスに
対して投資や融資を行い、経済発展に寄与する
• はじめは、企業資本のうち先進国の持つ割合が多いが、だんだん発
展途上国に移していく
ポイントはコアになるような大きな企業を
誘致すること
• 経済特区を作ったとしても、小規模な事業をたくさん寄せ集めてもあ
まり効果は得られない
⇒ガーナの例
政府が投資し、経済特区を作ったものの、大きな企業を誘致す
ることができなかったため、海外の目を引くアピールができず、
周辺に企業が集まらなかった。
• 途上国にひとつの企業ができれば、その周りに関連企業ができ、
周辺産業が生まれる
⇒日本でも、大企業の工場ができれば部品工場が近くにでき、
周辺産業が潤う、これと同じ仕組み
• また、企業ができれば就労者がその周りに住み、人口が増えるの
で、小売業やサービス業、教育施設にも波及効果がある