各論6.ODA (1)ODAの現状 ①政府開発援助(ODA)の定義 ODAは、開発途上国に対する二国間贈与(無償資金協力・技術協力)や政府貸付(円借款)のほ か、国際機関に対する拠出・出資等から成り立っています。具体的には、日本政府やJICA(国際協 力機構)などが行う環境問題対策支援、食糧援助、道路や橋などのインフラ整備など、資金・技術 面での協力です。 贈与 無償資金協力 (食糧援助、学校等の建設、自然災害被災民・ 難民の救済、NGO支援、債務救済等) 技術協力 (青年海外協力隊の派遣、研修生の受入等) 二国間 政府貸付 (円借款) (道路、橋、発電所などのインフラの整備等) ODA 国際機関に対する拠出・出資 (ユニセフ、WHOへの拠出等) ②ODA予算の構成 ODA予算は、一般会計当初予算に加え、補正予算、円借款、国際機関への出資等から構成され ています。 2016年ODA事業量 <平成28年度 一般会計当初予算> 5,519億円 <ODA事業量(グロス)> 20,241億円 (平成27年度) 一般会計補正予算 無償資金協力 技 術 協 力等 1,704億円 無償資金協力 技術協力等 国際開発金融機関 への出資等 9,630億円 (注1) 5,075億円 円借款出資金 444億円 2,169億円 (注2) 円借款 円借款等 10,525億円 10,611億円 財政融資資金 4,680億円 被 支 援 国 が 裨 益 円借款回収金等 (注3) 5,401億円 (注1)債務救済16億円を含む。 (注2)特別会計を通じた技術協力等698億円を含む。一般会計の債務救済(16億円)を除く。 (注3)海外漁業協力財団を通じた借款86億円を含む。 1 ③ODAの規模と経済・財政 ODA予算は平成9年度をピークに減少してきましたが、事業量については必要な水準を確保して きました。ODAの貢献も一助としてASEAN諸国の経済は順調に成長しています。 ODAグロス 一般会計ODA予算 名目GDP成長率 国・地方財政収支GDP比 現ASEAN10の1人当たりGDP平均,2000年=100 (兆円) 2.5 ・安保法制成立(2015) ・開発協力大綱(2015) ・持続可能な開発のための2030アジェンダ(2015) 第5次中期目標(1993) ・PKO法成立(1992) ・ODA大綱の制定(1992) 1兆1,687億円 湾岸戦争への拠出1.5兆円(1990-91(ODA外)) 2.0 (%) 25 (2000年 =100) ミレニアム開発目標 (2000) 米国同時多発テロ (2001) 中国有人ロケット打ち上げ(2003) 20 1兆6,543億円 第4次中期目標(1988) 1.5 第3次中期目標(1985) 第2次中期目標(1981) 大平内閣「総合安全保障戦略」(1980) 1.0 400 第1次中期目標「ODAを3年間で倍増」(1978) 福田ドクトリン(1977) 日本の賠償支払いが完了(1976) ベトナム戦争終結(1975) 0.5 インドネシア反日運動(1974) 15 300 10 200 5 100 5,502億円 0.0 0 2014 2012 2010 2008 2006 -5 2004 2002 2000 1998 1996 1994 ・一般会計ODA予算ピーク(1997) ・財政構造改革法(1997) 「平成10年度:▲10%シーリング 平成11・12年度:前年度を下回る」 1992 1990 1988 1986 1984 1982 ・日本のODAが米国を抜 いて世界一位に(1989) ・東西冷戦終結(1989) 1980 1978 1976 1970 -1.0 1972 -0.5 1974 ・経済社会基本計画「3年以内にGNP の1%程度の経済協力を前提」(1973) ・オイルショック(1973) 0 骨太2006 「2007年から5ヵ年で▲4%~▲2%」 -10 (出所)「ODAグロス」はOECD DAC, 「名目GDP」及び「財政収支」は「国民経済計算」、「現ASEAN10の1人当たりGDP」はIMF WEO。 2014年は暫定値・見込値。 (注)1:「財政収支」については一時的な特殊要因を除いている。 2:「一般会計ODA予算」のうち、1970~1977年については、経済協力費予算を計上。 (2)ODAの戦略的・効率的活用に向けた取り組み 日本からは、ODAの4倍程度の民間資金が途上国に流入しており、ODAだけでなくO OF及び民間資金を含めれば、日本はトップクラスの資金規模となっています。 <日本の途上国向け資金(グロス)の推移> (百万ドル) <ODA,OOF,FDIの国際比較(ネット)> (倍率) その他 140,000 (百万ドル) 7.0 90,000 途上国向け民間資金 ODA 120,000 117,705 途上国向け民間資金/ODA(右軸) 103,895 100,000 116,063 109,786 6.0 95,688 87,97391,836 78,869 77,537 80,000 60,000 54,977 80,000 米 国 70,000 日 本 5.0 60,000 4.7 ドイツ 4.0 50,000 59,089 英 国 3.0 40,000 40,000 2.0 フランス 30,000 20,000 1.7 20,000 1.0 0 イタリア 0.0 0 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013 2014 (出典)財務省 カナダ 10,000 1995 1996 19971998 1999 20002001 2002 20032004 2005 20062007 2008 20092010 20112012 2013 2014 (注)OOF:政府関係機関による資金、FDI:民間の海外直接投資 (暦年) (出典)OECD DAC <財政制度等審議会「平成28年度予算の編成等に関する建議(平成27年11月24日)」> 開発途上国の経済発展への我が国の貢献を評価するに当たっては、単に一般会計のO DA予算額(当初)の多寡を論じるのではなく、円借款も含めたODAの事業規模、O OF及び民間資金に着目すべきであり、とりわけ民間の海外直接投資は、成長や雇用に 貢献し開発途上国との関係強化に重要な役割を果たすものであり、重視すべきである。 2
© Copyright 2024 ExpyDoc