なぜ貧しい国はなくならないのか第3章

なぜ貧しい国はなくならないのか
第3章
なぜ貧困を撲滅できないのか?
1
第3章の目的
• なぜ貧困を撲滅できないか?という問いに対
する解答
• 開発経済学と開発経済論のちがい
なぜ貧困を撲滅できないのか?
①ストックの蓄積には時間と金がかかるから
なぜ貧困を撲滅できないのか?
①ストックの蓄積には時間と金がかかるから
•
•
•
•
労働者の生産性
企業の生産性
経済全体の生産性を決めるもの
経済を発展させるための原動力
↓これらを決めるもの↓
•
•
•
•
•
人的資本
物的資本
インフラ
社会関係資本(=信用)
知的資本
ストック
なぜ貧困を撲滅できないのか?
社会
①ストックの蓄積には時間と金がかかるから関係
資本
• 「神の見えざる手」に任せれば市場が活性化
する
見えざる手が失敗するケース
• 買い手にとって買おうとしている商品の質が
わからないという「情報の非対称性」の問題
いいもの?
粗悪品?
高すぎる?
適切な値段?
なぜ貧困を撲滅できないのか?
社会
①ストックの蓄積には時間と金がかかるから関係
資本
• 市場取引がスムーズに行われるためには、
社会関係資本が重要な役割をはたす
• 信用を得るためには時間がかかる
なぜ貧困を撲滅できないのか?
人的
①ストックの蓄積には時間と金がかかるから資本
人的資本を形成するもの
• 学校教育
• 親の教育
• 職場での訓練
• 健康への努力
日本、韓国、アメリカにおける生産年齢人口の平均就学年数(年/人)
日本
韓国
アメリカ
1890
1.3
n.a.
6.5
1900
2.0
n.a.
7.2
1910
3.0
n.a.
7.7
1920
4.3
0.6
8.3
1930
5.6
0.8
9.1
1940
6.5
1.1
9.8
1950
7.6
n.a.
10.5
1960
8.7
3.3
11.3
1970
9.8
4.8
12.0
1980
10.7
6.9
12.8
1990
11.5
9.0
13.5
2000
12.3
10.5
14.0
50年の差
30年の差
人的
資本
なぜ貧困を撲滅できないのか?
物的
①ストックの蓄積には時間と金がかかるから資本
• 物的資本の蓄積
• 100年を超える長期にわたって資本が蓄積さ
れてきた
↓
• 経済発展は長期のプロセス
なぜ貧困を撲滅できないのか?
イン
①ストックの蓄積には時間と金がかかるからフラ
インフラが整備されていないと、
• 余分なコストがかかる
• 十分な食料を収穫できない
↓
インフラの整備には時間がかかる
•
•
•
•
•
道路
鉄道
電力
上下水道
港湾
なぜ貧困を撲滅できないのか?
知的
①ストックの蓄積には時間と金がかかるから資本
• 知的資本の蓄積
例)日本の特許料の実質支払額と受取額の推移
①特許に対する支払額>>>>>受取額
②特許に対する支払額≒受取額
③特許に対する支払額<受取額
①→②→③・・・約40年
途上国の段階では外国技術に依存し、経済の
発展とともに技術的知識の水準を向上させ、や
がて自前の技術の開発力を高めることが重要
=時間がかかる
なぜ貧困を撲滅できないのか?
②援助が足りないのでは?という意見に対してのこたえ
なぜ貧困を撲滅できないのか?
②援助が足りないのではないかという意見に対するこたえ
表3-7より
• ODAだけで途上国の発展を大幅に加速させ
ることはできない
• しかし、FDIの呼び水になる
• なぜならば、FDIは最貧国を嫌い、ある程度の
教育を受けた質の高い労働者を求めるから
なぜ貧困を撲滅できないのか?
③効果的な開発戦略がわかっていないから
なぜ貧困を撲滅できないのか?
③効果的な開発戦略がわかっていないから
• 資源は限られている
しかし、そのほとんどを有効に活用できていな
い
例)
その1:農業の開発
その2:工業化
その3:サービス産業の発展支援
なぜ貧困を撲滅できないのか?
③効果的な開発戦略がわかっていないから
その1:農業の開発
「緑の革命」
日本のような温帯で開発された高収量型の技術体系を熱帯に移転するという技術変化。
アジア・・・「緑の革命」により収穫率が増えた
アフリカ・・・「緑の革命」なし
しかし、なぜ「緑の革命」が起らないのか誰もわか
らない。
なぜ貧困を撲滅できないのか?
③効果的な開発戦略がわかっていないから
その2:工業化
アジア・・・成長している
アフリカ・・・成長しているが低いまま
工業化に対する熱意は変わらないはず
誰も、アジアとアフリカの成長の差の理由がわ
からない
なぜ貧困を撲滅できないのか?
③効果的な開発戦略がわかっていないから
その3:サービス産業の発展支援
サービス産業を発展させるためには高等教育
に投資しなければならない
⇔ 二律背反
教育を受ける人と受けない人との間に不平等・
格差がうまれてしまう
開発経済学と開発経済論のちがい
開発経済学と開発経済論のちがい
開発経済学
発展のメカニズム(経済が
どのように発展し、それを
阻止したり促進したりする
要因)に関する分析をする
例
『なぜ貧しい国はなくならないのか』
開発経済論
経済発展のメカニズムにつ
いての分析がない
理論が述べられている
例
『貧困の終焉』
『傲慢な援助』
『貧乏人の経済学』