機械工作法実習2(後期)

機械工作法実習Ⅱ
(後期)
◎機械実習工場における安全の心得
a)工作機械を使用する時は教職員に必ず許可を得る。絶対に無断で使用しない。
b)作業帽,作業服(胴回り、袖口の絞ったもの)を着用する。
c)靴は作業靴または安全靴を履く。スリッパ、サンダル類は禁止。
d)機械に巻き込まれないように、上着の裾や袖口をしっかり締めておく。
e)髪は出来るだけ短くすること。(髪の長い人は束ねること)
f)切り屑を発生する工作機械を使用する時は保護めがねを着用する。
g)機械操作中、手袋の使用は禁止する。(ガス切断、溶接、重量物の運搬時は除く。)
h)喫煙や飲食をしながらの作業は禁止する。
i)病気または体調の優れない時は機械の使用は控える。
j)機械の操作は単独で行うのが基本である。ただし、不測の事態に対処できるよう
に、2人以上が作業現場いること。
k)運転開始のスイッチは周りの安全を確認してから入れる。
l)工作物、工具、測定器、その他余分なものを機械上に置かない。
m)機械運転中に運動部分には絶対に触れない。
n)工具、工作物は高温になるので取り扱いに注意する。
o)切り屑を発生する機械では、切り屑の飛散に注意する。
p)切り屑を素手で触らない。
q)工作物の取り付け、取り外しは、完全に機械を止めてから行う。
r)作業終了後は、すみやかに使用した機械の手入れと、周辺の掃除をする。
※「実験・実習における安全の手引」をよく読むこと。
◎教科書と各自準備するものについて
1)機械工学便覧(デザイン編β3 加工学・加工機器)を使用する。
2)A4ノート、電卓を各自準備する。
3)ノートすべき事項、用語類は実習時間中に調べる。
4)ノートは指定日に提出する。
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機械工作法実習の目的と内容
前期実習では,様々な加工法を学んだが,後期実習では実際に種々の工作機械を
使用して歯車減速機を製作し,加工と加工誤差及び精度をよく理解することにする.
また,歯車減速機製作以外に,治具・取付具,定盤の平面度測定,円テーブルの
分割度測定,歯車の解析,摩擦減速機の分解組立等を行い,工作法をより広く,よ
り深く理解することにする.
1.歯車減速機
歯車減速機は平行軸間,食い違い軸間,交差軸間等の運動,動力伝達に使われる.
伝達馬力,回転数,総減速比は非常に小さい値から非常に大きい値の範囲にまたが
っている.歯車減速機は正確な動力の伝達が出来ること,使用時の安全性が高く,
寿命も長い.また,過負荷にもたえることができ,取り扱いが簡単であり,高い効
率がえられる等の特徴を有するため自動車,船舶,工作機械等我々の身の周りの物
に多く使用されている.
歯車減速機は,歯車はもちろん歯車減速機を構成している各部品が精度良くできて
いないと騒音を発生し,寿命を短くして使いものにならなくなる.そこで,ここで
は 平歯車を用いた歯車減速機の製作から組立までを以下の工程で実際に行い,寸法,
精度,はめあい,誤差を理解する.
(1)歯切り
ホブ盤(Hobbing machine)を使って平歯車を製作する.
ここでは歯切りの方法,歯車の精度について学習する.
【万能ホブ盤】
平歯車,はすば歯車,ウォームホィールはもちろんそ
の他の特殊歯車まで歯切りできる最も幅広く用いられて
いる歯切盤である.ホブ切りはホブと歯車材との相対運
動によって歯車を削り出すことができる創成歯切り法の
一つである.高精度の歯車を高能率で加工することがで
きるので,歯切り加工の中で最も多く用いられている.
ホブはウォームに数条の縦溝を入れて切刃を作り,ウォー
ムのねじ筋に沿って二番を取った一種のフライスである.
これを軸回りに回転させることによって並進するラック
歯形を創り出すことができる.
歯車の誤差には図 1 に示す誤差があり,それらは互い
に相関しているので,総合誤差となって歯当りが悪化す
る.
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(2)軸加工
旋盤(Lathe)を使用して,センタ作業により歯車軸を加工しながら,軸の寸法精度
および軸と歯車のボス穴径,ベアリングの内輪とのはめあいについて学習する.
旋削は工作物の取り付け方法により,センタ作業とチャック作業とに大別される.
【センタ作業】主に“軸物"といわれる,径に比べて細長い工作物を加工する場合に
用いられる方法である.工作物の両端をセンタで支持し,駆動装置を介して主軸の回
転を工作物に伝える.駆動装置として,
従来から用いられているのが主軸に回
し板を,工作物に回し金(ケレ)を取り
付けるものがある.
【チヤツク作業】主に,径に比べて長
さが短い工作物を加工する場合に用い
られる方法で,工作物の一端だけをチ
ャックなどに取付けて加工する方法で,
外周部の加工に加えて端面部および内
周部の加工を伴う場合が多い.
(3)キーみぞ加工
フライス盤(Mi11ing machine)を使用
して軸にキーみぞを加工し,立削り盤
を使用して歯車にキーみぞを加工して,
キーみぞと平行キーのはめあいを理解
する.
【立削り盤】立削り盤(S1otter)は形削
り盤(Shaper)のラムが上下運動をする
ようにしたもの.刃物が上下運動をし
てキー溝,スプライン穴などの加工に
用いられる.バイトが工作物に切込む
様子を見ながら作業することができる
のでケガキ線に沿って仕上げるような
とき便利である.運動機構は形削り盤
によく似ているが,テーブルが左右,
前後に送られるほかに回転できるよう
になっている.
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(4)ハウジング加工
治具中ぐり盤(Jig boring machine)またはフライス盤(Mi11ing machine)を使用して,
ハウジング(ギヤーボックス)にベアリング外輪の穴加工をし,ベアリング取付け穴
とベアリング外輪とのはめあいについて学習する.
【治具中ぐり盤】治具の穴あけあるいは極めて正確を要する穴あけに使用される.
テーブルは 1 ミクロンまで正確に読取り,位置決めすることができる.多数の穴を正
確な位置に,真円度,真直さの正しい穴に能率よく仕上げることができる.
【立てフライス盤】正面フライス,エンドミル,溝フライス等のフライス工具を回転
させて平面,みぞ,傾斜面などの切削を行うことができる.また,ドリルや中ぐりバ
ーを使用して,穴加工も行うことができる.
(5)仕上げ・組立
やすりによるキーの仕上げ加工や歯車の面取り作業を行った後,各部品を取付けて
歯車減速機を組み立てる.
(6)運転・討論
歯車の歯面に光明丹を塗った後,歯車減速機を運転して歯当たりや音について観察
し,誤差や寸法精度等について検討する.
2.治具,取付具の製作
治具の製作は今日では必要がないよう思われている.しかしフレキシブリティを持
たせた中小量生産において,CNC,NC で治具の機能を置き換えることは,CNC,MC に
オプションを付ける必要がある.これは安くて品質の良いものを多量に生産する本来
の目的からはずれて,より高価なものを生産することになる.現在でも特定の分割穴
あけを同時に,多量にする場合,トランスファーマシンでは治具が使用されている.
打ち抜き金型はある意味では治具であろう.さらに組立用治具類は航空機工場には多
数使用されている.
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【治具】機械設備や装置などの能力を最大限に,かつ有効に引き出し,発揮させ,作
業を能率的に行えるように作られる補助具,装置を治具という.とくに機械加工で
は,加工物を所定の加工位置に位置決めして,保持固定すると同時に,切削工具を案
内する装置を持つ特殊工具をいう.
【取付具】工作物の切削面を切削工具の進行方向に正しく保持し、組立作業にお
いて部品どうしを組立やすいように保持する道具で、刃具の案内部はもっていないも
のをいう.旋削治具,フライス治具,チャックなど.
しかし実際には、治具と取り付け具を厳密に区別することは難しく、治具と取付具
を総称して、治具あるいは治工具と呼んでいる.ここでは諸条件を考慮して,穴あけ
用治具を設計してみよう.
ノート:(1)穴あけ用治具の設計
3.定盤の平面度の測定
定盤(Surface plate)は,平面の標準として平たん度の測定に用いられるほか,けが
き,心出し,組立作業などの際に基準面として使用される.
定盤には数種類のものがある.材料によって鋳鉄,石,セラミックの分けられる.
また使用目的によってケガキ用定盤,取り付け定盤がある.これらの定盤の精度は,
基準
の直線,平面からの誤差でもって,各々平面度,真直度で示される.定盤の測定法に
は水準器,オートコリメータ,レーザ等がある.ここではオートコリメータを使用し
鋳鉄製の精密定盤を測定する.
ノート
(1)真直度を図で示せ.(測定値や角度の計算から)
(2)石の定盤と鋳鉄の定盤を下記の項で比較せよ.
○メンテナンスの程度(リンギングの程度も含む)
○熱伝導率
○硬さ
○経年変化
○表面の塑性変化
○磁性
○耐摩耗性
○耐食性
4.円テーブルの分割度測定
円テーブルは円周を任意の数に等分する加工等に用いる.このような場合,円テー
ブルの分割精度が悪いと正しく分割された加工ができなくなる.
そこで,ここでは円テーブルの分割精度測定をし,各種誤差を調べる.
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ノート
(1)円テーブルの誤差を測定する方法を述べよ.
(2)最大ピッチ誤差,最大累積値を求めよ.(表を書き,グラフに示せ)
(3)テーブル外周での誤差を,最大累積値を使って求めよ.
【単一ピッチ誤差】
隣あった歯のピッチ円上における実際のピッチと,その正しい値との差
【隣接ピッチ誤差】
ピッチ円上の隣あった二つのピッチ誤差
【累積ピッチ誤差】
任意の二つの歯の間のピッチ円上における実際のピッチの和と,その正しい値と
の差.
5.歯車の測定
実際のインボリュート平歯車のまたぎ歯厚や各部寸法を調べ,歯車を解析し再設計
する.
【インボリュート歯車】
インボリュート歯車は,製作しやすく,中心間
距離が多少違ってもスムーズにかみ合うなどの
特徴があり,動力伝達歯車に広く使用されている
代表的な歯形である.
インボリュート曲線は,右図の円筒に巻き付け
た糸を緩めることなく,…端 a を円筒から離して
行った時の軌跡である.この円筒が歯車における
基礎円となる.
ノート
(1)歯車の諸元(モジュール,圧力角,歯数,ピッチ円直径等)を算出する.
モジュール m
圧力角
α0
歯末のたけ hk=m
歯元のたけ hf≧1.25m
全歯たけ
h≧2.25m
有効歯たけ he≧2.00m
頂げき
Ck≧O.25m
基準ピッチ to=πm
法線ピッチ te=t0cosα0
基準ピッチ円直径 d0=mz
基礎円直径 dg=d0cosα0
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6.分解・組立
摩擦減速機を分解し,その構造を勉強する.
ノート
(1)構造部品のスケッチ
(2)最も重要な部分の部品の処理はいかにしてあるか調べてみよう.
(3)静摩擦トルクを調べて図を書け.
討論問題
1.旋削における軸径とベアリング(0 級)穴径の寸法および寸法公差を調べ,設計上
どの程度のすきま又は締めしろがあるかを記せ.この時のはめ合いを何というか.
また,出来上がった軸径の寸法を示せ.
2.軸を仕上げる時の切削速度,送り,切込み,バイトの材種,形状を記せ.
3.ギヤーブランクの基準面とは何か,精度の高い歯車を作るにはギヤーブランクを
どのように旋削すればよいか基準面と関連させて述べよ.また,歯車と軸との寸法公
差を調べ,はめ合いは設計上どのようになっているか調べよ.
4.キー溝切削にはどのような点を注意して取付け,切削をおこなうとよいか,ケガ
キの入れ方,バイトの形状等を考慮して記せ.また,キー溝の割出誤差はどうして生
ずるのか述べよ.
5.ギヤーボックスのベアリング取付け穴を仕上げるにあたって,ボックスの取付け
方法を図示せよ.取付け精度はいくらか,またどこを基準にしてボーリングを行った
かを図示せよ.
6.ギヤーボックスの中心間距離はいくらか,その公差を示せ.その寸法は何を使っ
て測定したか.また,穴径を測定した器具の名称,また検定方法を説明せよ.
7.ベアリング外輪とベアリング取付け穴の寸法公差,その記号とはめ合いを記せ.
8.ギヤーボックスのベアリング取付け穴のボーリング切削速度はいくらか,使用し
た工具材種は何か,使用した工作機械の名称は,また,この機械は主としてどのよう
なものを加工する目的で作られたものか.
9.軸受部分に使った材料 FC250 を説明せよ.この材料を切削する場合は,何故乾式
切削でよいのか.
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10.歯車加工で創成歯切り法と成形歯切り法を説明せよ.今回の歯切り方法はどちら
か.
11.歯切りをした機械とその時使用した工具の名称を述べよ.
12.歯形の大きさを示すモジュールとは何か.
13.歯車の各寸法を表す式を調べ,加工した歯車の寸法と合わせてみよ.
14.歯車加工のとき,ギヤーブランクの心出しはどのようにしたか,またその精度は
どの程度にしたか,測定器具は何か.
15.歯切りの時,ギヤーブランクの基準面をまちがえて取付けると,歯車の軸方向に
どのような誤差が生じるか述べよ.
16.両方のベアリング押さえカバーを締付けると軸の回転が重くなるのは何故か,ベ
アリング外輪,内輪,鋼球の位置関係を図示して説明せよ.
17.プレロードとは何か,どのような方法で行うのか,またベアリングの調整で熱の
発生は何度程度までよいのか.
18.ころがり軸受の dn 値とは何か.
19.歯当りをみるにはどうすればよいか.歯面に片当たりがあればその原因とその対
策方法を述べよ.また,バックラッシの測定方法を述べよ.
20.製作した歯車減速機を運転して回転音をチェックする.異常音や騒音があれば,
その原因と対策を述べよ.
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参考資料
討論番号 1
物を作るには形状.寸法だけでなく,それらを許しうる範囲(許容域)を示す必要
がある.この許容域を示したものが図 2 の寸法公差である.このように柵対する外側
形体と内側形体の間で図 3 のすきま,図 4 の締めしろが問題となる場合の両者の許容
域の関係をはめあいという.図 5 のように常にすきまがある場合をすきまばめ,図 6
のように常に締めしろがある場合をしまりばめ,すきまが生じたり,締めしろを生じ
たりするばあいを中間ばめという.
(1)寸法公差の等級…精密さが同一水準にあると考えられる寸法公差群につけられ
た精粗の段階.
(2)IT 基本公差…この規格で定めているすべての寸法公差.
(3)はめあい…二つの機械部品の互いに,はめあわせる前の寸法の差によって生じ
る関係.
(4)すきま…穴の寸法が軸の寸法より大きいときの寸法の差.(図 3 参照)
(5)しめしろ…穴の寸法が軸の寸法より小さいときの寸法の差.(図 4 参照)
(6)はめあいの変動量…はめあいの変動する範囲で,2 種類の機械部品の互いにはめ
あわす穴と軸との寸法公差の和.
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(7)すきまばめ…常にすきまができるはめあい,軸の許容域は,完全に穴の許容域
より下にある.(図 5 参照)
(8)しまりばめ…常に締めしろができるはめあい.軸の許容域は,完全に穴の許容
域より上にある.(図 6 参照)
(9)中間ばめ…それぞれ許容限界寸法内に仕上げられた穴と軸とをはめあわせると
きその実寸法によってすきまのできることもあり,しめしろのできることもあるはめ
あい.軸の許容域は,穴の許容域にかさなりあう.
(10)最小すきま,すきまばめで,穴の最小許容寸法から軸の最大許容寸法を引いた
値.(図 5 参照)
歯車とベアリングでは,はめあいは異なる.歯車内径φ28 の寸法公差は H7 00.021 か,
精度の良いもので H5 00.009 であるから,軸をφ28h7 00.021で指定するならば,軸の上限と
歯車の穴の下限で,すきまが 0 になり,歯車の穴の上限と軸の下限で,30~42μm の
すきまができる.製作した軸と歯車がこのようにできれば,すきまばめとなる.ベア
リングの内輪の精度は 13 ページの参考資料の表に示すように 0 級では O~-10μm で
あるから,通常の荷重で軸とのはめあいは k5 で,しかも,内輪しまりばめが推奨さ
れている.k5 の公差は( 00..011
002 )であるからベアリングの精度からしまりばめとなる.
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討論番号 4
スロッターのテーブル中心とスクロールチャックが同心か. キー溝切削バイトが
ギヤブランクの中心に対称かどうか.刃先の傾きと刃の中心線がブランクの中心と
一致しているかどうか.
討論番号 6
工作する機械の精度から,中心間距離の公差を 4 級,90 ときめた.製作したボック
スの中心間の寸法を書け.
討論番号 7
ベヤリング外輪の精度は,O 級で O~-13μm である.穴を H7 に仕上げれば,すきま
ばめになる.
討論番号 9
S50C 材程度の炭素鋼を切削すると,せん断
面のせん断仕事により 400℃程度の熱が発生
する.また,切屑がバイトのすくい面を摩擦
し 800℃以上の高温になる.そこで切刃の潤滑
と温度を下げるために切削油をかけて加工す
る.鋳鉄の場合バイトは,せん断仕事が炭素
鋼より小さく,また切屑が断続して,すくい
面での発熱が少なく,さらに黒鉛が潤滑作用
をする等々から温度上昇が少ないのでドライ
で切削されている.
討論番号 10
歯切法には成形歯切法(Gear cutting by forming method)と創成歯切法(Gear cutting
by generating method)とがある.成形法は工具の輪郭を削ろうとする歯車の歯溝と同
じ形に作り,一溝ごとに歯溝を削り出す方法である.創成法は被削歯車と噛み合う歯
車あるいはラックの形状をした工具を用い,工具と削ろうとする歯車の間に理想的な
関係運動を与え,じゃまになる部分を削り取って歯車を削り出す方法である.成形法
は,被削歯車の歯数が異なる度に工具輪郭を変えなければならぬとか,歯切時のセッ
ティングが難しいなどの短所があるために多くは用いられていない.しかし,専用の
歯切盤が不要であり,また工具の製作が容易であるから,工具や機械がないために創
成法では製作困難な大形モジュール歯切りとか,特殊な歯形の歯車を少量製作する場
合に用いられている.また機械,工具の構造を頑丈に作ることができるので,円筒歯
車の荒削りや量産するかさ歯車の歯切りなどに用いられる.
創成歯切法には形削りとホブ切りがある.形削りはラック形カッタあるいは歯車形
カッタを用いて,カッタを歯すじ方向に往復させる切削運動のほかにかみあい創成運
動をさせて歯切りする方法で,ホブ切りはねじ状に作った工具のホブに回転運動を与
えて歯切りする.ホブ切りは形削りに比べて歯幅の広い歯車が削れること,はすば歯
車のねじれ角を自由に選びやすいこと,ピッチ精度を出しやすいことなどの理由で多
く使われている.ピニオンカッタを用いた形削りは,段付歯車や内歯車の歯切りにそ
の特徴を発揮している.
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討論番号 17
予圧…軸受に荷重が加わったとき,ラジアル方向アキシアル方向の何れにも軸の変
位量を極力小さくしなければならない用途,例えば工作機械の主軸,歯車軸などの軸
受では寿命,摩擦を犠牲にして軸受の内部隙間を負にし,軸受の剛性を高めるように
している.これを予圧といっている.
討論番号 18
ころがり軸受の限界 dn 値…ころがり軸受の潤滑上の使用限界は,いわゆる限界 dn
値(軸受内径 d mm×回転 n rpm)でほぼ規定され,その値は表のように与えられている.
dn 値がなぜころがり軸受の潤滑上の速度限界をきめる基準になり得るのか,というこ
とについては,次ぎのように理解されている.すなわち,ころがり軸受の摩擦部分の
うちで,潤滑上問題になるおもなところは転動体と保持器との間で,じつは dn 値は
この部分のおける摩擦による発生熱の指定となるものである.これはすべり軸受にお
ける pv 値(たとえば平均圧力 p Pa,すべり速度 v m/s)と同じ内容のもので,すべり
軸受ではμpv(μ:摩擦係数)が単位面積あたりの発熱量を表す因子となるものに対し
て,ころがり軸受ではすべり摩擦部分といえば,もっぱら転動体と保持器との間で,
しかもここではふつうの状態では荷重の影響は比較的小さく,したがってその限界は
すべり速度,すなはち周速に比例する dn(すべり速度を意味する)だけで表しうるとい
うのである.
討論番号 19
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ラジアル軸受の精度
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