合成開口インターフェロメトリソナーとサブボトムプロファイラーによる 東

合成開口インターフェロメトリソナーとサブボトムプロファイラーによる
東青ヶ島カルデラの海底熱水鉱床調査結果
○小島光博・浅田昭・水野勝紀・片瀬冬樹(東大生研)・浦環(九州工業大学)
・三尾有年(NTT データ CCS)・月岡哲・大美賀忍(JAMSTEC)
1. はじめに
用した。調査機器毎に扱える母船が違うため、航
2013 年度より海洋資源の分布・賦存量を効率的
海期間は表 1 のように異なる。
・効果的に把握する手法の研究を行っている。こ
の一環として、浅田研では、2013 年度から実海域
表 1 調査機器一覧
母船
において、海底熱水鉱床の探査を実施している。
2015 年度は、過去の航海調査で取得した柱状採
泥のコアリング情報を元に、東青ヶ島カルデラの
よ こ す
調査を実施した。調査には、MBES(Multi Beam Echo
か
Sounder) 、 InSAS(Interferometric Synthesis
柱状採泥器を使用した。その結果、前 4 種の機器
で調査した結果、東青ヶ島カルデラにおいて高さ
が 20m 以上のチムニーを発見した。調査順序は図
第 七 開
1 のようになり、海域選定、母船調査に始まり、
洋丸
AUV(Autonomous Underwater Vehicle)に搭載した
2015/6/5~
海底面の音響地形図
2015/6/14
音源:(100 kHz 付近)
KKKyot15-01
分解能:2.5 cm×10 cm
(YK15-09)
SBP
2015/7/25~
海底下の音響地層図
2015/7/31
音源:(0.7-1.7 kHz、
KKKyot15-02
LFM)
分解能:50 cm×4 cm
kt)
た。SBP による調査は、チムニー直下の熱水鉱床
法、作成結果及び今後の展開について記述する。
InSAS
艤 装 機 : 曳 航 体 (1.0
機器で調査し、柱状採泥器による底質調査に至っ
本要旨では、InSAS と SBP の計測結果の作成方
航海期間
艤装機:AUV (1.5 kt)
Aperture Sonar)、SBP(Sub Bottom Profiler)及び
の構造の解析を目的として実施した。
計測器説明
InSAS によるデータ作成は、以下の(1)~(4)の
手順で実施した。技術の詳細は、文献[1]、[2]に譲
る。
(1) 計測した音響データから複素信号の作成
学術的知見、海図、過去の航海の調査情報による海域選定
MBESによる広域での地形・反射強度マッピング
AUVに装備して近距離計測
合成開口ソナーによる
MBESによる
海底面の音響地形計測 海底面の地形計測
うらしま
曳航体から近距離計測
SBPによる
海底下の地層計測
うらしま
(2) 合成開口による進行方向分解能の向上
(3) インターフェロメトリで三次元座標算出
(4) 三次元座標と音響画像から鳥瞰図を作成
SBP によるデータ作成は、以下の(1)~(6)の手
順で実施した。技術の詳細は、文献[3]に譲る。
(1) 計測した音響データのチャネル合成
(2) レンジ圧縮によるレンジ方向分解能向上
柱状採泥・岩石コアサンプラー
等による海底底質採取
AUV 、ROVによる海底観察
(3) 残響の除去
(4) CTD 深度による深度補正
図 1 浅田研の海底熱水鉱床調査順序
2. 計測機器
InSAS と SBP について表 1 に示す。InSAS は、
JAMSTEC 所有の AUV「うらしま」に艤装し、母船「よ
こすか」で運用した。一方、SBP は、浅田研究室
所有の曳航体に艤装し、母船「第七開洋丸」で運
(5) ヒーブ補正
(6) 海底面の抽出
3. 計測結果
計測結果を図 2 から図 4 に示す。
取得できていない。そのため、深度補正は、曳航
体に艤装した音響測位装置(GAPS)受信用のトラン
スポンダーから得た深度を使用した。音響測位装
置の計測間隔は、SBP の 1ping の 4 倍であり、深
度補正後のデータはところどころ不連続な箇所が
存在する。この箇所は、ヒーブ補正処理で多少の
改善が見られた。
他方、InSAS では、チムニーが存在する箇所に
山状の隆起と、その右下あたりにマウンドと思わ
れる堆積物が確認できる(図 3)。また、図 2、図 3
共に、チムニーの後方に 60m 程度の細長い影が確
図 2 東青ヶ島チムニー周辺を平面図にした
認できる。
反射強度画像
4. 考察
InSAS と SBP でチムニー周辺の海底面と海底下
のデータを取得することが出来た。
今後は、InSAS、SBP、MBES、柱状採泥のデータ
を解析し、音響計測データと熱水鉱床の関係を導
き出すことが期待される。
5. 謝辞
本研究は文部科学省海洋資源利用促進技術開発
プログラム
「海洋鉱物資源広域探査システム開発」
の一環として行った。YK15-09 研究航海は、海洋
図 3 東青ヶ島チムニー周辺の InSAS の合成開口
研究開発機構所有の AUV「うらしま」およびその
処理後の反射強度画像(縦軸はスラントレンジ)
母船「よこすか」で実施されたものであり、関係
者には多くのご協力をいただいた。KKKyot15-02
の航海は、海洋エンジニアリング社所有の第七開
洋丸で実施されたものであり、関係者には多くの
ご協力をいただいた。
図 4 東青ヶ島チムニー周辺の SBP の地層図
図 4 に SBP で取得した地層図を、図 2、図 3 に
InSAS で取得した反射強度画像を示す。SBP では、
チムニーが存在すると考えられる箇所で層が崩れ
てまばらな反射となり、海底面より下に弧状の反
射が確認できる。曳航体に艤装した CTD と DVL の
データは、
計測時に電源トラブルが発生したため、
6. 参考文献
[1] 浅田昭、水野勝紀、片瀬冬樹、小島光博、三
尾有年、月岡哲、大未賀忍、AUV うらしま搭
載合成開口インターフェロメトリソーナー
による熱水鉱床の計測、海洋音響学会 2015
年度研究発表会講演論文集、東京、2015 年、
pp45
[2] 小島光博、水野勝紀、片瀬冬樹、浅田昭、三
尾有年、実開口インターフェロメトリソナー
による海底地形マッピング、海洋音響学会
2015 年度研究発表会講演論文集、東京、2015
年、pp33
[3] 三尾有年、浅田昭、水野勝紀、片瀬冬樹、小
島光博、曳航式サブボトムプロファイラーを
用いた海底熱水鉱床における音響探査技術
の実用化、第 26 回研究成果発表会 講演要
旨集 海洋調査技術学会、東京、2014 年、
pp35-36