心の減災心理教育プログラムの効果に関する研究(2) ―効果測定調査の自由記述分析― 椙浦結香 1,2 西井香純 1,2 垣内圭子 1,2 野村あすか 1 坪井裕子 1,3 森田美弥子 1,2 松本真理子 1,2 窪田由紀 1,2 1 (名古屋大学心の減災研究会) (名古屋大学大学院教育発達科学研究科) 2 問題と目的 2011 年の東日本大震災以降,学校における防災 (人間環境大学) 3 大カテゴリーでは,<10 秒呼吸法 (30.9%)><信 頼・協力・助け合い (20.7%)>についての記述が特 教育に対する関心がより一層高まっている。これまで に多く,実際に体験しながら学習できる内容であると, の防災教育では,一般的に避難行動や災害への備 より強く生徒の印象に残りやすいことが示唆された。 えといった行動レベルの内容が多く扱われていたが, また,<信頼・協力・助け合い><10 秒呼吸法> 学校現場においては,心理的なストレス反応への対 <ふわふわ言葉>の中カテゴリーの「行動意図」に 処スキルの育成など「心の減災」の視点も含めた防災 は,〔普段から使いたい〕等の小カテゴリーが抽出さ 教育が求められている (足立ら, 2013 等)。 れた。今後の防災教育においては,災害時のみなら このような現状を踏まえ,我々は 3 部からなる独自 ず日常生活においても活用できる具体的な方法を取 の心の減災プログラムを開発・実施した。本報告では, りあげることで,より防災への意識を高めていくことが 自尊感情と対人関係スキルの向上を図るためのプロ 必要であると思われる。 グラム(第 3 部)実施後の質問紙調査における,自由 記述欄への回答結果を検討することで,プログラムの 効果を把握し,今後の防災教育についての指針を得 ることを目的とする。 方法 1. プログラム試行・実施 2013 年 12 月~2014 年 2 月にかけて,A 県内の B 小学校 (5, 6 年生;計 9 クラ ス,300 名) で実施した。 2. 質問紙調査 プログラムの効果に関する質問紙調 査への回答を求めた。質問紙の中で「今日の授業の あとで思ったことや感想など何でもいいので書いてく ださい」との自由記述欄を設けた。 3. 調査対象 自由記述欄への記載があった 260 名 (93.5%) を対象とした。 結果および考察 260 名の自由記述回答をもとに,434 個のラベルを 抽出した。これを,臨床心理士 6 名,臨床心理学を専 攻する大学院生 2 名の計 8 名で KJ 法を行い,大・ 中・小カテゴリーに分類した。大・中カテゴリーの結果 を Table 1 に示す。 Ta bl e 1 KJ 法により抽出されたカテ ゴ リー 結果 大カテゴリー 中カテゴリー パズルだよ,全員集合! ゲーム ジェスチャー 計 信頼・協力・助け合い 知的理解 体験的理解 行動意図 その他 計 地震に関する知識 知的理解 計 10秒呼吸法 知的理解 効果の実感 実施の簡便さ 行動意図 実施上の問題点 計 ストレスに関する知識 知的理解 行動意図 計 ふわふわ言葉 知的理解 行動意図 計 プログラム全体 知的理解 効果の実感 プログラムに対する評価 行動意図 計 その他 件数 (%) 51 13 64 42 25 19 4 90 23 23 16 21 11 73 13 134 17 2 19 12 19 31 11 8 12 29 60 (11.8) (3.0) (14.7) (9.7) (5.8) (4.4) (0.9) (20.7) (5.3) (5.3) (3.7) (4.8) (2.5) (16.8) (3.0) (30.9) (3.9) (0.5) (4.4) (2.8) (4.4) (7.1) (2.5) (1.8) (2.8) (6.7) (13.8) 13 (3.0) ※()内の数字は全体に占める割合を示す。
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