色も色いろ 第 10 話 光の波動説

色も色いろ 第 10 話 光の波動説
~複屈折や偏光の観察・研究から生まれた波動説~
色彩関係テキストでは、「光とは、電気と磁気のエネルギーが波となって空間を伝わって
いく電磁波の一種です。・・・人間の眼が感じることのできる波長範囲の電磁波を可視光、ある
いは単に光と呼びます。」「光とは、電磁波とよばれる放射エネルギーの一種である。・・・電磁
波は、粒子の性質と波の性質を併せ持っているが、色彩では、波の性質を考えると都合がよ
い。」と光の波としての性質が記述されているが、光の波動説を初めて科学的に唱えたホイ
ヘンスや「波動論」に達した研究・観察については触れられていない。
ホイヘンスはオランダの数学者、物理学者、天文学者で、1670 年ころから複屈折現象を
解明する過程で、光の本性の問題を扱い始め、素元波や楕円波面などの概念を用いた光の波
動論に達し、90 年『光についての論考』を発表した。多くの業績にもかかわらず、ホイヘ
ンスの説を引き継ぐ研究者は当時少なく、光の波動論は 19 世紀に入ってようやく受け入れ
られた。この理由としては、ニュートンの影響が大きかったことが考えられる。(日本大百
科全書(小学館))
そのニュートンは複屈折について「光学」の中で「光の射線の固有の性質のもう一つの例は、
氷洲石(方解石)の屈折である。」「射線にはこれまで発見されたもの以外にもまだ固有の性
質があるかどうかが、研究されるべき事柄としてのこる。」と記し、「氷洲石の異常屈折を、
圧力もしくは運動の伝播によって説明しようと試みたのは、私の知るかぎりホイヘンスだけ
である。」と紹介したうえで、「少なくとも私には、説明できないように思われる。」と多く
のページを割いて反論を加えている。一世紀後にやってきたゲーテも「色彩論」のなかでア
イスランド結晶(方解石)の複屈折について触れている。「ある場合に屈折が明白な二重像
を出現させるということである。いわゆるアイスランド結晶の場合がそうである。」と。
ホイヘンスの理論的展開はさておき、光の波としての性格を偏光板によって観察できるの
が、偏光観察器です。方解析の複屈折(二重像)の観察とあわせ、是非観察してみて下さい。
不思議な色の世界に一層魅せられることでしょう。