{詳細①] 反磁性異方性の起源の解明 反磁性の固体はすべて、磁化率の異方性ΔχDIAのために磁 場配向する可能性を、原理的に有している。 ΔχDIAは電子 密度の異方性に由来するとされ、ポーリングらによって有機 反磁性物質 物に関する議論が進められた.しかし無機結晶ではΔχDIAが (大多数の自然物質) ほとんど未測定で、起源の考察は進んでいない。 私たちは水晶、コランダム、方解石、生セッコウ、酒石酸、尿 素などの代表的な反磁性結晶が、ΔχDIAに起因して1テスラ 程度の低磁場で回転振動することをはじめて見出した。その 周期から微弱なΔχを検出する方法を見いだし、ΔχDIA値の 集積を進めた。さらにそれらの値を基盤として、異方性の発生 機構に関する考察を行なった(次頁へ)。 不安定軸 χ⊥ 反磁性異方性 反磁性磁化 : M = χ B 反磁性磁化率: χ= - C e2<r2 >/6mc2 Δχ = χ // - χ ⊥ 磁気的 c// 安定軸 局在電子の分布 無機絶縁結晶における反磁性異方性の起源 反磁性体の自由エネルギー: U = - ½ χB 2 →異方性エネルギー:ΔU = ½ (χ 2 2 ∥ - χ⊥) B = ½ ΔχB ---磁場配向の駆動力 個々の結合に、結合方向を主軸とした異方性 (χ∥ χ⊥ χ⊥)を仮定 したモデル 結合一本のエネルギー: 結合一本の異方性: e B B (前頁より)その結果、個々の結合軌道に一定 のΔχDIAを割り当てることで、測定値が矛盾なく z 説明された。固体は全て化学結合で構成され 結晶軸の座標 ており、未測定のほとんど全ての物質について y 有意のΔχDIAが予想される。しかし現行の測定 感度では、予想されるΔχ x DIAを検出できない。そ こでμG中でのΔχ測定を進め、既存の感度を大 きく凌駕する見通しを得た。 B の方向余弦 : (a, b, c) bondの方向余弦 e : ( α,β,γ ) 予想される関係: ↑ 化学式ごとの値を原子位置から計算 測定値(左辺)が右辺の関係を満たす か否かで、モデルの有効性を検証 Chart 4]
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