熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター 臨床薬理分野平田純生

熊本大学薬学部附属育薬フロンティアセンター
臨床薬理分野 平田純生
KDIGOによる急性腎障害(AKI)病期分類
Stage 1
sCr:基礎値の1.5~1.9倍または0.3 mg/dLの増加
尿量:<0.5 mL/kg/hr for 6 ~12hr
Stage 2
sCr:基礎値の2~2.9倍
尿量:<0.5 mL/kg/hr for 12 hr
Stage 3
sCr:4.0mg/dL以上に上昇または基礎値の3倍
または血液浄化法の開始
または18歳未満でeGFRが35mL/min/1.73m2に低下
尿量:<0.3 mL/kg/hr for 24 hr以上 または12 hr以上無尿
Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice
Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney inter., Suppl. 2012; 2: 1–138.
KDIGOによる急性腎障害(AKI)病期分類
Stage 1
sCr:基礎値の1.5~1.9倍または0.3 mg/dLの増加
尿量:<0.5 mL/kg/hr for 6 ~12hr
Stage 2
1⽇600mL/50kg未満
sCr:基礎値の2~2.9倍
尿量:<0.5 mL/kg/hr for 12 hr
Stage 3
sCr:4.0mg/dL以上に上昇または基礎値の3倍
または血液浄化法の開始 1⽇360mL/50kg未満
または18歳未満でeGFRが35mL/min/1.73m2に低下
尿量:<0.3 mL/kg/hr for 24 hr以上 または12 hr以上無尿
Kidney Disease: Improving Global Outcomes (KDIGO) Acute Kidney Injury Work Group. KDIGO Clinical Practice
Guideline for Acute Kidney Injury. Kidney inter., Suppl. 2012; 2: 1–138.
薬剤性腎障害はなぜ起こりやすい?
腎血流1500L
原尿
150L
体重の1%に満たないのに循環血の
20%、つまり1500L/日の血流量がある
薬物の曝露量が多い臓器
そのうち10%、つまり150L/日が細動脈
から成る糸球体で濾過されて原尿になる
細動脈からなるため虚血の影響を受けやすい
尿量1.5L/日
そのうち99%の水分、必要な栄養素を
再吸収して1.5L/日の不要な濃縮尿を
生産している。
薬物も再吸収され、尿細管
上皮細胞に薬物が蓄積
尿細管で水が再吸収され、薬物が結晶化しやすい
薬剤性腎障害はなぜ起こりやすい?
腎血流1500L
原尿
150L
体重の1%に満たないのに循環血の
20%、つまり1500L/日の血流量がある
薬物の曝露量が多い臓器
そのうち10%、つまり150L/日が細動脈
から成る糸球体で濾過されて原尿になる
細動脈からなるため虚血の影響を受けやすい
尿量1.5L/日
さらに・・・・
そのうち99%の水分、必要な栄養素を
再吸収して1.5L/日の不要な濃縮尿を
免疫反応が起こりやすい
急性腎不全
生産している。
薬物も再吸収され、尿細管
上皮細胞に薬物が蓄積
の5~20%
フリーラジカルによる傷害
は薬剤性
尿細管で水が再吸収され、薬物が結晶化しやすい
を受けやすい
薬剤性急性腎障害の分類と頻度
急性腎不全
腎前性
50%
尿細管壊死
腎実質性
腎後性
間質性腎炎
10%
糸球体性腎炎
5%
腎毒性
35%
Thahani R,et al: Acute renal failure, N Engl J Med,344:1448‐1460,1996を改変
薬剤性腎障害の発現を経験した薬剤
(n=158)
腎毒性薬物
腎虚血誘引薬物
腎後性腎障害
アレルギー性間質性腎炎
NSAIDs
その他
アシクロビル
バラシクロビル
ARB
シスプラチン
造影剤
ファモチジン
DMARD
アルファカルシドール
セフェム系抗菌薬
グリコペプチド
系抗菌薬
アミノグリコシド
系抗菌薬
和泉智, 他: 日病薬誌46: 17-21, 2010より引用
薬剤性急性
障害
薬物
RA系阻害薬を早く投与すればするほど
透析導⼊までの期間を延⻑できる
GFRでも可(血清Cr値の逆数の傾きから計算)
1.0
1
0.8
/
血
0.6
清
Cr 0.4
値
0.2
血清Cr値1.1mg/dL
で投与開始
傾きは健常者で0.5mL/min/1.73m2/年
DM患者の傾きはで5mL/min/1.73m2/年
だが集学的治療により0.5~1に軽減可能?
血清Cr値2mg/dL
で投与開始
透析導入必要ライン
治療期間
Brenner BM et al. N Engl J Med 2001;345:861-869のデータより改変
RA系阻害薬を早く投与すればするほど
透析導⼊までの期間を延⻑できる
GFRでも可(血清Cr値の逆数の傾きから計算)
1.0
1
0.8
/
血
0.6
清
Cr 0.4
値
0.2
血清Cr値1.1mg/dL
で投与開始
傾きは健常者で0.5mL/min/1.73m2/年
DM患者の傾きはで5mL/min/1.73m2/年
だが集学的治療により0.5~1に軽減可能?
血清Cr値2mg/dL
で投与開始
透析導入必要ライン
血清Cr値の上昇が軽度(eGFRの低下が30%未満)は
継続投与。eGFRが30%以上の低下または血清K>5.5
治療期間
mEq/Lは減量または中止。
Brenner BM et al. N Engl J Med 2001;345:861-869のデータより改変
両側腎動脈狭窄症
腹大動脈
腎動脈
プラーク
両側腎動脈狭窄症にRA系阻害薬を投与すると急性腎不全になる
ことがあるため、両側腎動脈狭窄症にはRA系阻害薬は慎重投与
バラシクロビルによる急性腎障害
80代、女性、体重36kg ヘルペスのため他院でバルトレッ
クス錠500mg 6錠・分3、ロキソニン60mg 3錠/日開始。
SCr:0.7、BUN:9.8mg/dL
投与4日目にAKIのため、紹介入院。SCr:6.2、BUN:45.7
内服薬はすべて中止。尿量減少。受け答えはできるが、傾
眠傾向となりJCS-IIレベル。
中止翌日、透析施行。終了後も意識レベル大きな変化なし。
中止3日後、2回目の透析施行。意思疎通可能になる。
中止4日後、意識レベル改善し「数日前のことは覚えていま
す。」透析不要となり食事再開。SCr:2.9mg/dLに改善。
全日本民医連薬剤委員会・副作用モニター情報(415)
バラシクロビルによる急性腎障害
80代、女性、体重36kg ヘルペスのため他院でバルトレッ
クス錠500mg 6錠・分3、ロキソニン60mg 3錠/日開始。
SCr:0.7、BUN:9.8mg/dL
投与4日目にAKIのため、紹介入院。SCr:6.2、BUN:45.7
内服薬はすべて中止。尿量減少。受け答えはできるが、傾
眠傾向となりJCS-IIレベル。
中止翌日、透析施行。終了後も意識レベル大きな変化なし。
中止3日後、2回目の透析施行。意思疎通可能になる。
中止4日後、意識レベル改善し「数日前のことは覚えていま
高齢者はS-Crが低くても体格や年齢を考慮して減量。吸収
す。」透析不要となり食事再開。SCr:2.9mg/dLに改善。
率の低いアシクロビルのほうが良いかも?鎮痛を併用する
際にはGFR低下しないアセトアミノフェンを選択し、水分摂
取を促す必要がある。
全日本民医連薬剤委員会・副作用モニター情報(415)
剤型・プロドラッグの違いによる
⾎清アシクロビル濃度推移
(μg/mL)
14
血漿アシクロビル濃度
12
ゾビラックスⓇ 500mg1時間静注
ゾビラックスⓇ錠800mg内服
10
バルトレックスⓇ 錠500mg内服
8
6
4
平均値±標準偏差(n=6)
2
0
0
6
12
時間
18
24
(hr)
バルトレックスⓇ 錠のインタビューフォームより引用
ゾビラックスⓇに関してはインタビューフォームの動態パラメータより推算
尿中排泄率が⾼く⽔溶性で溶解度の低い
⼤量投与薬物が腎後性AKIの原因薬物に?
レボフロキサシン 457(n-オクタノール・水pH7) 最大500mg静注
pH1.2:120mg/mL、pH4.0:200mg/mL、6.8:30mg/mL
アシクロビル fe: 75% 0.06(n-オクタノール/pH7) 最大500mg/50kg静注
pH1.2:13.2mg/mL、pH4.0:3.0mg/mL、pH6.8:2.6mg/mL、水:2.3mg/mL
メトトレキサート fe: 90% 0.0002(オクタノール・水) 最大15g/6hr/50kg静注
pH1.2:0.57mg/mL、pH4.0:0.054mg/mL、pH6.8:3.24mg/mL、水:0.11 mg/mL
インジナビル fe: 10~12% 0.42(n-オクタノール・水pH7.01) 最大800mg内服(F:60%)
pH3.4:61.2mg/mL、pH4.0:5.13mg/mL、pH6.9:0.0019mg/mL
腎結石症の発現を防止するため、1日1.5Lの水分を補給する必要がある
各社のインタビューフォームより
尿中排泄率が⾼く⽔溶性で溶解度の低い
⼤量投与薬物が腎後性AKIの原因薬物に?
レボフロキサシン 457(n-オクタノール・水pH7) 最大500mg静注
pH1.2:120mg/mL、pH4.0:200mg/mL、6.8:30mg/mL
アシクロビル fe: 75% 0.06(n-オクタノール/pH7) 最大500mg/50kg静注
pH1.2:13.2mg/mL、pH4.0:3.0mg/mL、pH6.8:2.6mg/mL、水:2.3mg/mL
メトトレキサート fe: 90% 0.0002(オクタノール・水) 最大15g/6hr/50kg静注
pH1.2:0.57mg/mL、pH4.0:0.054mg/mL、pH6.8:3.24mg/mL、水:0.11 mg/mL
インジナビル fe: 10~12% 0.42(n-オクタノール・水pH7.01) 最大800mg内服(F:60%)
pH3.4:61.2mg/mL、pH4.0:5.13mg/mL、pH6.9:0.0019mg/mL
腎結石症の発現を防止するため、1日1.5Lの水分を補給する必要がある
キーワードは利尿薬、RAS阻害薬、NSAIDsの併用、
夏、不感蒸泄、高齢者、口喝感、下痢、嘔吐などの虚
血因子
各社のインタビューフォームより
薬剤性急性腎障害の分類と原因薬剤の⼀部
腎前性
薬剤性急性腎障害
尿細管壊死
35%
間質性腎炎
10%
アミノグリコシド系
アムホテリシンB
シスプラチン
リチウム
ゾレドロン酸
造影剤
βラクタム系抗菌薬
その他の抗菌薬
NSAIDs
抗てんかん薬
虚血性
50%
NSAIDs
利尿薬
RA系阻害薬
造影剤
カルシニューリン阻害薬
SGLT2阻害薬
腎後性
アシクロビル
ガンシクロビル
ホスカルネット
インジナビル
テノホビル
メトトレキサート
ST合剤
糸球体性腎炎
5%
金製剤
チオプロニン
D-ペニシラミン
ブシラミン
抗TNF-α製剤
NSAIDs
インターフェロン
腎前性腎不全と腎性腎不全
(急性尿細管壊死)の鑑別
よくわかる病態生理4, 日本医事新報社, 2006
尿中Na濃度 尿Cr/血清Cr比
尿浸透圧
(mOsm/kgH2O)
(mEq/L)
尿所見
Na排泄率
(FENa,%)
腎前性
正常
<1
>500
<20
>40
腎 性
尿細管上皮細
胞からなる円
柱, 血尿など
>2
<350
>40
<20
FEurea<35%、BUN/Cr>20も腎前性を疑う。
急性腎不全に対する鋭敏な新たなバイオマーカーが
登場していないため、いまだに血清Cr値、尿量を指標
として急性腎障害の診断をしているのが現状。
VCM起因性AKIの早期発見にはNAG, β2MG, α1MG
よりもL-FABP, NGAL, KIM-1, Cystatin Cが有用?
⾼齢者へのNSAIDs漫然投与
75歳男性、身長165cm、体重60kg。加齢に伴う膝関節症で
整形外科を受診、痛み止めとしてロキソニンを1回1錠×1
日3回毎食後服用で30日分投与された。50歳代から内科医
を受診しACE阻害薬+利尿薬を服用している155/100mmHg
である。血清Cr値1.2mg/dL、BUN 45mg/dL、eGFR 46.03
mL/min/1.73m2(44.13mL/min)と腎機能は低下していた。
NSAIDs服用2か月後に食欲不振・全身倦怠感を訴え内科
受診、血清Cr値8.5mg/dL となり透析導入が必要となった。
慢性糸球体腎炎、糖尿病、腎硬化症などの腎機能を悪化
させる疾患の既往はなし。このような腎機能悪化症例は
7月、8月に発症することが多い。
⾼齢者へのNSAIDs漫然投与
75歳男性、身長165cm、体重60kg。加齢に伴う膝関節症で
整形外科を受診、痛み止めとしてロキソニンを1回1錠×1
日3回毎食後服用で30日分投与された。50歳代から内科医
を受診しACE阻害薬+利尿薬を服用している155/100mmHg
である。血清Cr値1.2mg/dL、BUN 45mg/dL、eGFR 46.03
mL/min/1.73m2(44.13mL/min)と腎機能は低下していた。
BUN/Cr>20であり脱水が疑われるた
ポイント!
め心不全がなければ水分補給が必要
NSAIDsのAKIになるリスクはeGFR<60mL/min/1.73m2、
高齢者、利尿薬などによる脱水、心不全、高血圧など
本症例は⾼齢、⾼⾎圧、 ACEI+利尿薬の投与既存の
腎障害がるためNSAIDsの漫然投与は腎機能を悪化
させやすい。
⾼齢者における薬剤性腎障害の起因薬物
高齢者のARF194名中、39名(20%)が薬剤性腎障害
NSAIDs服用者のうち5名、抗菌薬投与者のうち2名が死亡
高齢者ほど腎障害を起こしやすい。
ACE-I
20.5%
造影剤
5.1%
抗菌薬
12.8%
NSAIDs
61.5%
Baraldi A, et al: Nephrol Dial Transplant 13:(S7): 25-29, 1998より引用
NSAIDs投与による急性腎不全発症リスク
心 RR[95%CI] 0
不
非投与
全
非投与+心不全
の
NSAIDsのみ
有
無 NSAIDs+心不全
高 非投与
血
非投与+高血圧
圧
NSAIDsのみ
の
有 NSAIDs+高血圧
無
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0 12.0
2.82
3.34
7.63
2.09
3.69
6.18
Huerta C, et al: Am J Kidney Dis 45: 531-539, 2005より引用
NSAIDs投与による急性腎不全発症リスク
心 RR[95%CI] 0
不
非投与
全
非投与+心不全
の
NSAIDsのみ
有
無 NSAIDs+心不全
2.0
4.0
6.0
8.0
10.0 12.0
2.82
3.34
7.63
高 非投与
2.09
血
非投与+高血圧
3.69
圧
NSAIDsのみ
の
6.18
NSAIDsと利尿薬の併用は相対リスクが11.6倍
有 NSAIDs+高血圧
(95%CI: 4.2-32.2)に上昇する
Huerta C, et al: Am J Kidney Dis 45: 531-539, 2005より引用
無
NSAIDs投与による急性腎不全発症リスク
RR[95%CI]
N
S
A
I
D
の
種
類
0
4.0
2.0
6.0
8.0
12.0 32.0
投与せず
ジクロフェナク
イブプロフェン
3.12
2.64
8.05
メロキシカム
ナプロキセン
2.98
Huerta C, et al: Am J Kidney Dis 45: 531-539, 2005より引用
NSAIDs投与による急性腎不全発症リスク
RR[95%CI]
0
2.0
4.0
6.0
8.0
12.0 32.0
N
S 投与せず
3.12
A ジクロフェナク
I
2.64
D イブプロフェン
8.05
のCOX-2は、主に組織の炎症を起こした部分でのみ作ら
メロキシカム
種れる誘導型酵素なので、COX-2阻害薬は胃障害は
2.98
ナプロキセン
類少ない。ただし脳と腎臓ではCOX-1と同様、構成酵素
であるためCOX-2選択的阻害薬の腎毒性が低いという
エビデンスはない。Huerta C, et al: Am J Kidney Dis 45: 531-539, 2005より引用
NSAIDsによる腎障害のメカニズム
腎障害の存在
RAA系の亢進
交感神経系の亢進
腎血管収縮
腎機能低下
×
NSAIDs
腎におけるPG産生による代償的な血管拡張
Whelton A, et al: Am J Med 106: 13S-24S, 1999より引用
NSAIDsによる腎障害のリスク因⼦
既存の腎機能低下
高齢者
高血圧
糖尿病
非ステロイド系消炎鎮痛薬(NSAIDs)の
常用など薬剤投与がCKD 重症化に影
響することから、薬剤師に対するCKD に
関する教育や啓発を行うことが望ましい
今後の腎疾患対策のあり方について(腎疾患対策検討会報告書(
H20.3))
心不全
利尿薬、RAS阻害薬、造影剤
夏
BUN/Cr>20
ではどうする?
鎮痛解熱薬のアセトアミノフェン(APAP)を処方
外用NSAIDsを活用する ± 十分量のAPAP
可能な限り頓服での投与に変更してもらう ± APAP
漫然と投与するなら2週間おきに血清Cr値を測定
痛くない時には飲む必要がないと指導
鎮痛薬腎症は急性腎障害(AKI)ではなく乳頭壊死による
慢性腎不全で原因は生涯にわたる数kgのフェナセチン
またはアセトアミノフェンの服用。
NSAIDs⇒AKI⇒漫然投与(週・⽉単位)⇒透析導⼊
アセトアミノフェン⇒GFR維持⇒⼤量漫然投与(年単
位)⇒透析導⼊
NSAIDsの作⽤
NSAIDs投与
NSAIDs
速やかに
虚血による
GFR低下
漫然投与により
重症な尿細管壊死
GFR↓
末期腎不全
ロキソニンⓇパップは安全?
ロキソニンⓇ錠60mg×3錠投与で活性体AUC6.06μg ・hr/mL
ロキソニンⓇパップ100mg×2枚を1日1回反復貼付時の活性
体AUC: 2.278μg ・hr/mL。消化性潰瘍等の胃腸障害、腎障害
等の全身性副作用はない。水谷 英樹:臨床医薬 26(10):727-741, 2010
ロキソニン錠
ロキソニンパップ
活性体AUCは内服の37.6%
モーラスⓇは安全?
ケトプロフェン徐放カプセル150mg単回投与での
AUC: 25,170ng・hr/mL。常用量50mg×3回、
t1/2: 1.22hr(速効カプセル)より長い
モーラスⓇパップ30mg×1枚12時間貼付時のAUC:
322ng ・hr/mLでt1/2: 3.6hr
5枚貼って12時間以上経過すれば
1,610ng ・hr/mL以上
モーラスⓇテープ20mg×8枚貼付時の
AUC: 18,210ng ・hr/mLでt1/2: 4.52hr
医中誌、PubMedともに貼付薬・軟膏NSAIDs
による腎障害の報告は皆無。
Ⓡ
ハイペン ,
Ⓡ
クリノリル
は腎にやさしいって本当
⾮⿇薬鎮痛薬の副作⽤
薬剤
商品名
胃障害
肝毒性
腎毒性
++++++
++
++
アスピリン
バファリン
アセトアミノフェン
タイレノール
+
++
+
メフェナム酸
ポンタール
++
+
++
ジクロフェナク
ボルタレン
++
+
++
イブプロフェン
ブルフェン
++
+
++
ナプロキセン
ナイキサン
++
+
++
エトドラク
ハイペン
++
+
++
セレコキシブ
セレコックス
+
+
++
Wells BG, et al ed: Pharmavotherapy Handbook sixth editionより引用
⼆重盲検法による各種NSAIDsの⾎清Cr上昇頻度
1382名の関節炎患者、52週間
血清Cr値上昇者
1.2%
患者数(人)
1000
800
600
400
2.4%
1.7%
200
0%
プラセボ
エトドラク
アスピリン
1.7%
イブプロフェン スリンダク
Shand DG, et al: J Clin Pharmacol. 26:269-274, 1986
⼆重盲検法による各種NSAIDsの⾎清Cr上昇頻度
1382名の関節炎患者、52週間
血清Cr値上昇者
1.2%
患者数(人)
1000
800
600
400
2.4%
1.7%
200
1.7%
プラセボとすべて実薬群では腎機能悪化に有意差なし。
0%
ただしBUN上昇はプラセボ、エトドラク群はアスピリン群・
プラセボ エトドラク アスピリン イブプロフェン スリンダク
スリンダク群に比し有意に低い。
Shand DG, et al: J Clin Pharmacol. 26:269-274, 1986
鎮痛解熱薬(フェナセチン・APAP)による腎障害
腎排泄性の鎮痛薬濃度が腎乳頭部では皮質より10倍
以上に濃縮されるために乳頭部に壊死を起こし、腎機能
障害を起こす。
鎮痛薬腎症の報告はオーストラリアで多く、3.7~20%
と言われており、透析導入患者の10.2%に及ぶ。
鎮痛薬腎症は頭痛ないし腰痛のある中年女性に多く、
長年にわたり、連日服用した症例に多い。
Liano F, et al: Kidney Int 50: 811-818, 1996
生涯にわたる鎮痛薬服用量が3001g以上の患者のみ、
他群に比し6.02倍 有意にESRDになりやすい。
Van der woude FJ, et al : BMC Nephrol]:15、2007
鎮痛解熱薬(フェナセチン・APAP)による腎障害
腎排泄性の鎮痛薬濃度が腎乳頭部では皮質より10倍
以上に濃縮されるために乳頭部に壊死を起こし、腎機能
障害を起こす。
鎮痛薬腎症の報告はオーストラリアで多く、3.7~20%
と言われており、透析導入患者の10.2%に及ぶ。
鎮痛薬腎症は頭痛ないし腰痛のある中年女性に多く、
長年にわたり、連日服用した症例に多い。
Liano F, et al: Kidney Int 50: 811-818, 1996
ESKDになった患者22名は 平均 7.8 kg (2.7~30.8kg)の
生涯にわたる鎮痛薬服用量が3001g以上の患者のみ、
鎮痛薬を平均21.5年(6~35
years)を服用。フェナセチンを
他群に比し6.02倍 有意にESRDになりやすい。
含有しない鎮痛薬では末期腎不全の危険性は低い。
Van der woude FJ, et al : BMC Nephrol]:15、2007
Michielsen P, et al: Nephrol Dial Transplant 24: 1253-1259, 2009
鎮痛薬腎症は減少している
Mihatsch MJ, et al: Nephrol Dial Transplant 21: 3139-3145, 2006
鎮痛薬腎症は減少している
フェナセチンは米国では1983年、日本では2001年4月に製造中止
乳頭壊死と確認された剖検例は1978年~1980
年には4%
2000年~2002年には616名の剖検例中、乳頭
壊死は79歳の男性1例のみ(0.2%)に減少
Mihatsch MJ, et al: Nephrol Dial Transplant 21: 3139-3145, 2006
⽣涯にわたる鎮痛薬服⽤量が3001g以上の患者のみ、
6.02倍 有意に透析患者になりやすい
他群に⽐し
Michielsen P, et al: Nephrol Dial Transplant 24: 1253-1259, 2009)より引用。元データはVan der woude FJ, et al : BMC Nephrol]:15、2007より
5/6腎摘ラットへのアセトアミノフェン投与は
腎機能保護作⽤を⽰す
腎不全+アセトアミノフェン750mg/kg)
100
腎不全+溶媒
血清クレアチニン
*
5
*
4
3
80
腎不全+アセトアミノフェン150mg/kg
60
2
1
0
40
腎不全+インドメタシン
Indomethacin 5 mg/kg
20
0
0
5
10
15
20
25
30
投与⽇数 (day)
NSAIDのインドメタシンは⽣存率を低下させたが,
アセトアミノフェンは⽣存率を低下させなかった
血中尿素窒素
*
400
*
300
200
100
0
投与4週目
Kadowaki D, Sumikawa S, Arimizu K, Hirata S, et al., Life Sciences. 2012
まとめ:NSAIDsとアセトアミノフェンの腎への影響
1996年、米国腎臓財団のAd Hoc Committeeは腎臓病患者
への鎮痛薬はアセトアミノフェンを推奨。NASIDsは医師の
指示なしで服用しないこととした。 Henrich WL, et al: Am J Kidney Dis 27: 162-165, 1996
2009年、米国老年医学学会では高齢者の持続的な痛みに
対する初期および持続的薬物療法、特に筋・関節痛に対して
はアセトアミノフェンを推奨した。 JACS 57: 1331-1346, 2009
しかしアセトアミノフェンは主にケースコントロールスタディで
腎障害の原因薬物になるという報告も散見される。
透析導入に至るリスクはアセトアミノフェンの方が高かった
報告に関しては、アセトアミノフェンの方が腎障害症例の
疼痛コントロールに好んで処方されたという交絡因子が排除
されていない。そのためさらなる検証を要する。
Kuo HW: Pharmacoepidemiol Drug Saf 19: 745-751, 2010.
まとめ:NSAIDsとアセトアミノフェンの腎への影響
1996年、米国腎臓財団のAd Hoc Committeeは腎臓病患者
への鎮痛薬はアセトアミノフェンを推奨。NASIDsは医師の
指示なしで服用しないこととした。 Henrich WL, et al: Am J Kidney Dis 27: 162-165, 1996
2009年、米国老年医学学会では高齢者の持続的な痛みに
対する初期および持続的薬物療法、特に筋・関節痛に対して
はアセトアミノフェンを推奨した。 JACS 57: 1331-1346, 2009
しかしアセトアミノフェンは主にケースコントロールスタディで
アセトアミノフェンは大量服用の継続によって
腎障害の原因薬物になるという報告も散見される。
慢性腎不全にはなるが、急性腎障害には
透析導入に至るリスクはアセトアミノフェンの方が高かった
ならない。なるとすれば自殺企図の超大量
報告に関しては、アセトアミノフェンの方が腎障害症例の
服用による劇症肝炎に伴って発症するまれな
疼痛コントロールに好んで処方されたという交絡因子が排除
急性腎障害。
されていない。そのためさらなる検証を要する。
Kuo HW: Pharmacoepidemiol Drug Saf 19: 745-751, 2010.
第99回薬剤師国家試験問題(2014年)
問185
腎機能が低下している患者において
腎機能を急激に悪化させる危険性が高い処置はどれか。
2つ選べ。
1
2
3
4
5
生理食塩液の点滴静脈注射
アセトアミノフェン錠による鎮痛
イオパミドール注射液を用いた胸部CT検査
プラゾシン塩酸塩錠による降圧
ゲンタマイシン硫酸塩注射液による感染症治療
解答: 3, 5
第99回薬剤師国家試験問題(2014年)
問208‐209 61歳男性。2日ほど前から左側腹部に軽度の疼痛があり、皮疹が認められた。
帯状疱疹と診断され、以下の薬剤が処方された。なお、検査値を確認したところ、ASTは
31 IU/L、ALTは23 IU/L、クレアチニンクリアランスは40mL/minであった。
(処方1)
バラシクロビル塩酸塩錠556mg(注) 1回2錠(1日6錠)
1日3回 朝昼夕食後 7日分
(注:バラシクロビルとして500mg)
(処方2)
アセトアミノフェン錠300mg
1回1錠(1日3錠)
1日3回 朝昼夕食後 7日分
問208(実務)
これらの処方について、提案すべき処方変更として最も適切なのはどれか。1つ選べ。
1 バラシクロビル塩酸塩錠556mgの用法を1回2錠(1日4錠)、1日2回、朝夕食後投与に
変更する。
2 バラシクロビル塩酸塩錠556mgの用法を1回3錠(1日9錠)、1日3回、朝昼夕食後投与に
変更する。
3 バラシクロビル塩酸塩錠556mgをアシクロビル錠400mgに変更し、用法はそのままとする。
4 アセトアミノフェン錠300mgをロキソプロフェンナトリウム水和物錠60mgに変更し、用法は
そのままとする。
5 アセトアミノフェン錠300mgをチアラミド塩酸塩錠100mgに変更し、用法はそのままとする。
解答1
各地の「腎と薬剤研究会」の分布
(山口のみ腎臓病薬物療法学会)
3
12
日
本
腎と
薬
剤
研
究
会
14
6
2
13
21
10 7
14
15
17
4
11
20
5
1
8
9
19
16
18
日本腎臓
病薬物療
法学会
①1999 関西
②2002 北部九州
③2005 北海道
④2006 広島
⑤2006 中部
⑥2006 東京
⑦2006 熊本
⑧2006 香川
⑨2007 徳島
⑩2009 長崎
⑪2010 愛媛
⑫2011 宮城
⑬2011 福岡
⑭2012 群馬
⑮2013 山口
⑯2013 神奈川
⑰2013 広島備北
⑱2013 三泗鈴
⑲2014 静岡
⑳2015 大分
21 2015 佐賀
各地の「腎と薬剤研究会」の分布
(山口のみ腎臓病薬物療法学会)
医原病である腎排泄性薬物による中毒
3
性副作用、薬剤性腎障害をなくすために
CKD患者の心血管病変を防ぐために
透析患者を減らすために・・・・・・・・・
12
日
本
腎と
薬
剤
研
究
会
14
6
2
13
21
10 7
14
15
17
4
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20
5
1
8
9
19
16
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日本腎臓
病薬物療
法学会
①1999 関西
②2002 北部九州
③2005 北海道
④2006 広島
⑤2006 中部
⑥2006 東京
⑦2006 熊本
⑧2006 香川
⑨2007 徳島
⑩2009 長崎
⑪2010 愛媛
⑫2011 宮城
⑬2011 福岡
⑭2012 群馬
⑮2013 山口
⑯2013 神奈川
⑰2013 広島備北
⑱2013 三泗鈴
⑲2014 静岡
⑳2015 大分
21 2015 佐賀
各地の「腎と薬剤研究会」の分布
(山口のみ腎臓病薬物療法学会)
医原病である腎排泄性薬物による中毒
3
性副作用、薬剤性腎障害をなくすために
CKD患者の心血管病変を防ぐために
透析患者を減らすために・・・・・・・・・
12
日
本
腎と
薬
剤
研
究
会
14
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10 7
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15
17
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日本腎臓
病薬物療
法学会
①1999 関西
②2002 北部九州
③2005 北海道
④2006 広島
⑤2006 中部
⑥2006 東京
⑦2006 熊本
⑧2006 香川
⑨2007 徳島
⑩2009 長崎
⑪2010 愛媛
⑫2011 宮城
⑬2011 福岡
⑭2012 群馬
⑮2013 山口
⑯2013 神奈川
⑰2013 広島備北
⑱2013 三泗鈴
⑲2014 静岡
⑳2015 大分
21 2015 佐賀
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2015年9月29日(火)19:30~
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2015年10月6日(火)19:30~
薬剤性腎障害を防ぐ
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