流体力学

流体力学
-演習問題 7-
【粘性流体の力学】
流体は粘性を有するニュートン流体として扱うこと。
(1) 速度成分が u=y, v=0 なる二次元流れについて、伸び(の変形)速度ε x ,ε y ,剪断変形の速度γ xy ,渦度ζを求
めよ。
(2) 速度分布が Fig.7.1 に示すような 2 次曲線 u=4-4(1-y)2 で表されるとき、y=0.0m, 0.5m, 1.0m におけるせん
断応力を求めよ。但し、粘性係数μ=1.5mPa・s とする。
(3) 間隔を h=2mm 隔てられた平行 2 平板間に、粘性係数μ=1.14mPa・s の水(密度ρ=999.1kg/m3)が満たされ
ている。一方の板を固定し、他方の板を U=2m/s で動かすとき、2 平板間に作用するせん断応力τはいくらか。
ただし、2 平板間の速度 u の分布は直線的、すなわちクエット流れを示すものとする。
(4) Fig.7.2 に示すように、6m/s の速度でピストンが動いている。ピストンとシリンダの間は油膜で覆われており、
その速度勾配は直線的であると考え、油の粘性係数はμ=0.958Pa・s とする。ピストンの接触面に作用する粘性
による力を求めよ。
(5) Fig.7.3 に示すように 2 枚の平行な平板で作られた流路の入口において、一様の流速 u0=4cm/s で流入したグリ
セリンが下流で u=a・z(z0-z)で表せる放物線形速度分布になったとする。下流での umax を求めよ。
(6) Fig.7.4 に示すように、半径 r0 の管内を流体が流れている。中心部で流速の最大値を umax、円管内の速度分布
は放物線状になると考える。このとき、管内を流れる流量 Q および平均流速 um を umax と r 0 を用いて求めよ。
(7) 半径 a の円管内の層流においては次の各式が成立することを、 u   1 dp a 2  r 2  を使って証明せよ。
4 dz
① 流量
Q
dp a 4
dz 8
④ 管壁でのせん断応力
② 平均流速
0 
4um
a
um  
dp a 2
dz 8
⑤ 管摩擦係数
③ 半径 r における流速

r2 

u  2um 1  2 
a 

64
Re d
(8) 内径 d=60mm、長さ l=400m の水平管路内を、比重 s=0.85 の原油が、流量 Q=0.120m3 /min の割合で送られ
ている。管路における圧力降下がΔp=250kPa であるとき、この油の粘性係数μを求めよ。
(ヒント:ハーゲン・
ポアズイユの法則を用いる)。
(9) 半径 a の滑らかな円管内を密度ρの流体が層流状態で流れるとき、任意の断面を単位時間に通過する流体の運
動エネルギが E1=ρQum2 で表されることを示せ。但し、Q は断面を通過する流体の体積流量であり、um は円管
内の平均速度である。次に、um が断面上で一様に分布していると仮定したときの運動エネルギ E2 を求め、E1
と比較せよ。
Fig.7.1
Fig.7.2
Fig.7.3
Fig.7.4
(10) 水平に置かれた同心2重管(外側半径 a1, 内側半径 a2)の間に粘性係数μの油が満たされており、内側の円
管が軸方向に U の速度で動いている。管軸方向に圧力勾配がない場合、① 断面の速度分布、② 内側管壁にお
けるせん断応力をそれぞれ求めよ。なお、流れは層流とする。
(ヒント:単純な円管内を粘性流体が流れる場合
と、解くべき方程式は同じ。境界条件だけが異なる)。
(11) 水平に置かれた同心2重管(外側半径 a1, 内側半径 a2)の間を軸心方向に、層流を成して定常的に流れてい
る粘性流体の速度分布は、次式にて表されることを証明せよ。(ヒント:前問と同じ)
uz  
ln  r a1  
1 dp  2
2
2
2
a1  r   a2  a1 

4 dz 
ln a2 a1  
(12) A wide moving belt passes through a container of a viscous liquid.
The belt moves vertically upward with a constant velocity, V0, as
illustrated in Fig.7.5. Because of viscous forces the belt picks up a
film of fluid of thickness h. At its outer edge, the film moves
downward due to gravity. Assume that the flow is laminar, steady,
and fully developed (the only nonzero velocity is v(x)) and shear
stress is zero at at the outer film edge.
 v 
  0 at x=h.)
 x 
( xy   
Derive a formula for (a) v(x), (b) the average velocity vavg in the film,
and (c) the belt velocity Vc for which there is no net flow either up or
Fig.7.5
down. (d) Sketch v(x) for case (c).
発展:構成方程式
(13) 一般に、速度勾配テンソルは、ひずみ速度テンソル Sij と回転速度テンソルΩ ij の和で表わすことができる
1  ∂ui ∂uj
1  ∂ui ∂uj
が、その成分はそれぞれ Sij =
2  ∂xj + ∂xi  , Ωij = 2  ∂xj - ∂xi  である。このとき、次の問いに答えよ。
(i) x1-x2 平面内の単純せん断流れ(
∂u1
=a , その他の速度勾配は 0)における Sij, Ω ij を行列の形で書け。
∂x2
(ii) ニュートン流体では、応力テンソルσ ij と速度勾配テンソルとが線形の関係にあり、かつ流体の性質が等
方的であると考えれば、構成方程式の一般的な形として、σ ij =Aδ ij +B Sij +CΩ ij と書くことができる
(A,B,C は定数)。このとき、①~③を利用してニュートン流体の構成方程式を求めよ。
① 垂直応力の平均値が圧力 p である
② 応力テンソルが対称であること
③ 単純せん断流れの場合、せん断応力が速度勾配と粘性係数の積で表される
-演習問題 7 解答-
(1) 定義式へ代入すればよい。ε x =0 ,ε y=0 ,γ xy=1 ,ζ=-1
(2) τ=μ
∂u
=8μ(1-y) であり、y に値を代入すればよい。
∂y
τ=12 [mPa] (at y=0.0m), τ=6.0 [mPa] (at y=0.5m), τ=0.0 [mPa] (at y=1.0m)
(3) τ=μ
∂u
U
=μ h =1.14 [Pa]
∂y
(4) ピストン表面に働く剪断応力はτ=μ
u-0
∂u
=μ
=4.598×104 [Pa]
Δh
∂y
ピストンに働く力は F=S×τ=1.39×103 [N]
但しΔh:ピストンとシリンダの隙間
但し S:ピストン外周の表面積
(5) 紙面に垂直方向には単位長さをとり、1, 2 面を通過する流量を求める。
z
Q1 = z0×u0 =4z0 [cm3 /s], Q2= 0 0 udz =
∴ umax=
az03
6
[cm3 /s]
24
ここで、連続の式より Q1=Q2=だから、a= z 2
0
az02
4 =6.0[cm/s]
(6) 速度分布は放物線状となるから、u=a r2+b r+c と表せる。境界条件は、 r=0 にて u=umax, r=±r0 にて u=0

結局、u= umax 1 

πr02
r2 
Q
Q
umax
r0
が得られる。
流量
Q=
dq

2

r

udr
=
umax 、平均流速 um= S =



2 =
0
2
2
2
πr
0
r0 
Q
② u m= S
a
(7) ① Q=  dq  0 2r udr であり、右辺へ u の式を代入。
③ ②の結果から
=
Q
であり、Q へ①を代入。
πa2
dp
8
 um 2 を与えられた u の式へ代入。
dz
a
④ ニュートンの粘性法則より、壁面の流体が受ける剪断応力は   
⑤ λの定義式: 
u
r
である。この式へ③の u の式を代入。
r a
dp
1 um2

を変形してλ=・・・の形にし、②を代入する。(注 d=2a である。)
dz
d 2
(8) (7)の①式を変形して、   
dp a 4
dz 8Q
かつ、 
dp p

=625[Pa/m]であるからμ=9.94×10- 2 [Pa・s]
dz

(9) 半径 r~r+dr の円環内を流れる流量 dq=u×2πr dr
1
この円環内を単位時間に通過する流体の有する運動エネルギ dE= 2
ρdq u2
a
管内の任意断面を単位時間に通過する流体の有する運動エネルギ E=  dE   0 u 3 rdr ・・・・※
・層流の管内の速度分布は(7)の③で与えられるので、これを上の※へ代入し、E1=ρQ um2 を得る。
・断面内が um の一定流速の場合、u=um を※へ代入し、E2=
1
2
ρQ um2 が得られる。
両者を比較すると、E1=2E2 の関係がある。
(10) 軸対称一方向流れの基礎方程式:
d  du z  1 dp

r
r を解き、境界条件(r=a1 にて uz=0, r=a2 にて uz=U)
dr  dr   dz
を用いて積分定数を消去する。さらに、管軸方向の圧力勾配がないことから、dp/dz=0 を代入すれば、
① 速度分布 u z  U
ln r a1
ln a2 a1
② 内側管壁における剪断応力 0  
u z
r

r a 2
U
が得られる。
a2 ln a2 a1
(11) 基礎方程式は(10)と同じで、境界条件(r=a1 および a2 にて uz=0)だけが異なる。境界条件を用いて積分定
数を求めれば、与式が導出される。
(c) Vc=
g h2

 hx  V 0 (b) vavg=V 0 

 3
 2

g x2
g h2
 3
(d) v(x)=
g x2
h2 
 hx 

 :右図に示す放物線となる。
3 
 2
v
(12) (a) v(x)=
x
流体力学
-演習問題 8-
【相似則とレイノルズ数】
(1) 風洞実験をするために 10m の高さの実際の建物の 1/20 のモデルで模型をつくった。実際の風の速度を 5.0m/s
と考えたとき、風洞の速度を何 m/s にすればよいか。空気の動粘性係数は 15×10- 6 m2/s である。このときの
レイノルズ数はいくらか。
(2) 20℃の動粘性係数ν=μ/ρは、以下の通りである。
空気:15.01×10- 6 m2/s
水:1.01×10- 6 m2/s
今、代表寸法 d=50cm の物体の空気速度 U=0.50m/s での性能を知りたいが、風洞に物体が入らない。
10cm(1/5)の模型を作って実験をする。速度はいくらにすれば妥当か。このときのレイノルズ数はいくらにす
れば妥当か。動作流体に水を用いると速度はいくらになるか。
(3) 直径 50mm の水平管内を 30℃の水が流量 Q=0.01m3/min で流れている。水の代わりに 30℃の空気を流して、
流動状態を力学的に相似にするには、空気の流速(管内平均流速)をいくらにすればよいか。30℃の動粘性係
数νは、次の通りである。空気:16.08×10- 6 m2/s
水:0.8008×10- 6 m2/s
(4) 長さ l1=2.0cm の昆虫が、動粘性係数ν 1=14×10― 6m2/s の空気中を速度 v1=5.0m/s で飛んでいる。空気と昆虫
との相対運動を調べるのに、長さ l2 が昆虫の長さ l1 の 5 倍の模型を用いて、動粘性係数ν 2=110×10― 6m2/s の
オリーブ油の流れの中で模型実験をする場合、オリーブ油の速度 v2 をいくらにしたらよいか。
このとき、模型の受ける抗力は、実際の昆虫が受ける抗力の何倍となるか。ただし、空気の密度を 1.2kg/m3 、
オリーブ油は 900kg/m3 とする。
(5) 一様流(流速 U)の中にある固体物体(代表長さ L)まわりの流れ(u,v,p)を考える。U と L とをそれぞれ代表
速度、代表長さとして、無次元化した次の変数を導入する。
u’ =
u
v
x
y
t
p
, v’ =
, p’ =
, x’ =
, y’ =
, t’ =
2
U
U
U
L
L
LU
(’は無次元量を表す。)
これらを連続および N-S の運動方程式へ代入し、無次元量に関する次の方程式を導出せよ。
連続の式:
u  v 

0
x  y 
N-S の運動方程式(x 方向):
u 
u 
u 
p  1   2 u   2 u  
 u
 v





t 
x 
y 
x Re  x2 y 2 
N-S の運動方程式(y 方向):
v
v
v
p  1   2 v  2 v 
 u
 v





t 
x
y 
y  Re  x2 y 2 
但し、Re=UL/νである。
(ヒント:例えば・・ u
u
x u
1 
U 2 u 
u
 Uu   
Uu   
u
となる。)

x
x x
L x
L x
※ これらの方程式はすべて、無次元量の間の関係式であり、無次元パラメータ Re が同じならば同じ方程式を、Re が異
なれば異なった方程式を表すことがわかる。したがって、Re の定義式を考慮すれば、流体の密度、粘性係数、流速、固体
物体の代表長さは、単独では解を支配しないで、Re として解を支配する。
-演習問題 8 解答-
(1) 風洞の流速 100[m/s], レイノルズ数 3.3×106
(2) 速度 2.5[m/s], レイノルズ数 1.67×104(動作流体が空気の場合)
速度 0.168[m/s], レイノルズ数 1.67×104(動作流体が水の場合)
(3) 管内平均流速 1.70[m/s]
(4) オリーブ油の速度 v2=7.86[m/s]。模型の受ける抗力は昆虫の受ける抗力の 4.63×104 倍
(5) 省略。(詳細は流体力学の教科書を参照されたい。)