646KB

JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
宮下 裕介
Vol.10
先生 (信州大学医学部附属病院 循環器内科)
ATHLETE JOKER PV ワイヤーが有効であった CLI の 1 例
手技手順・方法
Fig. 1 術前の左下腿 DSA 像
下肢動脈インターベンションにおいて、び漫性慢性閉塞病変の治療はいまだに課題
の多いところである。特に膝下動脈ではステント留置による解離の修復が積極的に
は行えないので、いかに閉塞部の真腔をとらえていくかが非常に重要である。冠動
脈と異なり、下肢動脈は閉塞部より遠位の穿刺をすることが可能であるので両方向
性治療を確立しやすいが、創傷の近傍、かつバイパス吻合部の近傍を穿刺すること
になるので安易な遠位動脈穿刺は慎む必要がある。今回我々は ATHLETE JOKER
PV による trans collateral ワイヤリングが後脛骨動脈の慢性閉塞の治療に有効であっ
た症例を経験したので報告する。
症例は 72 歳男性。左足踵部の潰瘍(Rutherfold-6)のため紹介となった。左足の潰
瘍近傍の皮膚還流圧は 22mmHg であった。Fig.1 に術前の DSA を示す。
前脛骨動脈はび漫性の狭窄があり、後脛骨動脈は入口部で閉塞していた。腓骨動脈の
分枝から還流されて遠位部は造影されるが、足底動脈の還流は低下していた。前後脛
骨動脈の治療を左鼠径同側順行穿刺で行った。4.5Fr 45cm シースを挿入し、多方向
から造影を行ったが、後脛骨動脈の入口部は同定することができなかった。病変部位
から後脛骨動脈の血流増加が必要であると考え、レトログレードのアプローチが必要
であると考えたが、一般的に踵の潰瘍は難治性であり、EVT 不成功もしくは EVT 後
も創傷の改善が得られなければ、膝窩-後脛骨動脈バイパスの必要があるため、内顆
近傍の穿刺は避けるべきであると考えた。腓骨動脈の分枝の側副血行の蛇行は軽度で
あり(Fig.2-a)
、この側副血行路を経由してワイヤリングを行うこととした。
Fig. 1 足関節以下の DSA 像
Fig. 2-a ATHLETE JOKER PV による
レトログレードワイヤリング
前脛骨動脈のび漫性狭窄と後脛骨動脈の入
口部閉塞(白矢印)を認める。後脛骨動脈
は側副血行路から血行を受け、中位部から
造影される(赤矢印)
。
内外足底動脈の還流が低下している
側副血行路に留置したマイクロカテーテルから
の造影
JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
ATHLETE JOKER PV はマイクロカテーテルのバックアップ下においても非常にトルクの伝達がよく、容易に側副血行路か
ら後脛骨動脈に挿入することができ、後脛骨動脈を逆行した(Fig.2-b)
。マイクロカテーテルも後脛骨動脈に侵入すること
はできたが、5㎝ほど逆行した後、抵抗が強くなり進行することができなくなった。しかしながら、ATHLETE JOKER PV
はトルクの伝達が落ちることなく操作が可能であり、簡単に近位部の閉塞部位も穿破することが出来た(Fig.3)。
Fig. 2-b ATHLETE JOKER PV は容易に後脛骨動脈に挿入することができ、逆行性に進行させることができた。
Fig. 3 ATHLETE JOKER PV によるレトログレードからの閉塞部穿通
側副血行路から後脛骨動脈に入るループにもかかわらず、ATHLETE JOEKR PV のトルクの伝達はスムースで、比較的容易に閉塞部を穿通して腓
骨脛骨幹に進行した。
シースでワイヤーランデブーすることはできたが(Fig.4)
、ワイヤー長が足らず、プルスルーすることが出来なかった。こ
の為 ATHLETE JOKER PV にタッチするようにアンテグレードから non taper intermediate wire を用いて操作し、後脛骨
動脈の入口部閉塞部を通過することに成功した(Fig.5)。後脛骨動脈をロングバルーンで開大し(Fig.6)、その後前脛骨動脈
術後 2 週間ほどで潰瘍は改善した。
もバルーンで開大し手技を終了した(Fig.7)。術後 4 日目の SPP は 54mmHg まで改善し、
Fig. 4 ATHLETE JOKER PV によるシースへのランデブー
Fig. 5 アンテグレードワイヤリング
レトログレードのワイヤーをメルクマールに non taper intermediate wire を操作し、閉塞している後脛骨動脈にワイヤー
を挿入した。
Fig. 6 POBA
アンテグレードワイヤー通過後 2.5mm ロングバルーンで拡張を行った。
近年冠動脈慢性閉塞治療用デバイスが末梢血管領域でも使用可能となり、下肢動脈血管内
Fig. 7 最終造影
治療も治療のオプションが増えてきている。冠動脈で鍛えた技術を下肢動脈でも生かす
ことが出来、より安全に効果のある治療が行えるようになってきたと筆者は感じている。
ATHLETE JOKER PV、ATHLETE Wizard PV シリーズは、過剰でない先端硬度とトルク
伝達性の良いシャフト・構造であり、複雑病変や慢性閉塞病変に対しより積極的に挑める
ワイヤーである。
Fig. 7 足関節以下造影
下腿部造影
内外足底動脈も良好に還流されるようになった
ATHLETE JOKER PV 構造図
ガイドワイヤー後端側識別マーカー
術者紹介
1992 年 3 月
信州大学医学部卒業
1992 年 4 月
信州大学附属病院第ニ内科入局
信州大学医学部附属病院 1993 年 4 月
循環器内科
1994 年 4 月
宮下 裕介 先生
諏訪赤十字病院内科勤務
長野赤十字病院循環器科勤務
1996 年 5 月
信州大学薬理学教室研究員
1998 年 4 月
長野県立木曽病院内科医長
2000 年 4 月
愛心会湘南鎌倉総合病院循環器科勤務
2005 年 4 月
同院循環器科医長
2008 年 6 月
同院循環器科部長
2009 年 4 月
信州大学附属病院循環器内科 助教
2011 年 1 月
学位 ( 医学博士 ) 取得
2011 年 4 月
信州大学医学部附属病院
2013 年 10 月
寄附講座 閉塞性動脈硬化症先端医療学講座 講師 ( 循環器内科兼任 )
同講座 准教授
日本内科学会認定医、日本心血管カテーテル治療学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医、
日本心血管カテーテル治療学会代議員、日本下肢救済足病学会評議員、日本フットケア学会評議員
2014-06-08-01