高度石灰化を伴う下腿動脈閉塞病変に ATHLETE JOKER PV ワイヤー

JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
重城 健太郎
Vol.09
先生 (西新井ハートセンター病院 循環器内科 医長)
高度石灰化を伴う下腿動脈閉塞病変に
ATHLETE JOKER PV ワイヤーが有効であった一例
症例:65 歳 女性
診断名:重症下肢虚血、慢性腎障害 (stage 5D)、冠動脈ステント留置後、糖尿病、
高血圧症、脂質異常症
2 年前に指摘された両下肢の高度 ABI 低下のため何度も紹介されたものの、本人が精査
加療を拒否していた維持透析症例。大腿骨頭置換術施行の際に生じた右足部の潰瘍治癒が
遷延するため入院精査を行った。下肢動脈造影を行ったところ、両側浅大腿動脈、膝窩動
脈の高度狭窄および下腿動脈三枝完全閉塞の所見であり (Fig.1)、引き続き Rutherford
5 の右下肢への治療に移行した。
使用デバイス
Guiding catheter: 4.5Fr. Parent (Medikit)
Guide wire:
Cruise (SJM), ATHLETE JOKER PV (Japan Lifeline)
Microcatheter: Prominent Neo (Tokai Medical), Qualia (Orbus Neich)
Balloon:
Sapphire NC PTA 2.5x40 mm, 2.5x15 mm, 3.0x40 mm, 4.0x40 mm,
Scoring Balloon 2.5x15 mm , Coronary Balloon 1.2x6 mm
Stent:
Misago 6.0x40 mm (Terumo)
Other:
Tornus PV (Asahi Intec.)
手技手順・方法
4.5Fr. Parent シースを用いて右総大腿動脈より同側順行性アプローチで治療を開始。
Prominent Neo のサポートで Cruise により前脛骨動脈病変部へ進入。閉塞部でスタッ
クしたのちに ATHLETE JOKER PV に変更したところ容易に足背動脈まで到達した
(Movie 1)。こののち 2.5 mm Sapphire NC で病変部全域を拡張。非常に高度の石灰化
のため病変の一部で non-compliant balloon が 2 本 rupture し、やむを得ず coronary
用 の 2.5 mm Scoring Balloon で 拡 張 を 加 え て indentation を 除 去 し (Fig. 2-1, 2-2)
(Movie 2)
Fig. 2-1
Fig. 2-2
Fig. 1
JAPAN LIFELINE PERIPHERAL MARKETING REPORT
そ の 後 3.0 mm Sapphire NC に サ イ ズ ア ッ プ し て 拡 張 し た と こ ろ 良 好 な 開 大
Fig. 3
が 得 ら れ た。 し か し な が ら 足 背 動 脈 に focal severe stenosis が あ り、2.0 mm
Coyote → Tornus PV → Coronary 用 Balloon1.2x6 mm を使用して開大を試みたが
いずれも奏功せず、Prominent Neo および Qualia が病変不通過であり、ATHLETE
JOKER PV を pedal arch 経由で後脛骨動脈まで進めることができなかった。このた
め順行性に後脛骨動脈入口部を探り ATHLETE JOKER PV を進めたが、もともとほ
とんど collaterals もなく末梢の血管床も不明瞭であったこともあり不通過に終わっ
た。最後に浅大腿動脈遠位部の 75% tandem lesion を 6.0x40 mm Misago でカバー
し、浅大腿動脈→前脛骨動脈→ pedal arch / collaterals →踵部の one straight line の
形成を確認して終了した (Fig. 3, 4)(Movie 3)。
Fig. 4
コメント
長期間の維持透析のため高度の石灰化を伴った下腿動脈の完全閉塞病変に対するインターベンションである。先端加重 1g
の Cruise での通過が不成功であれば 3 → 6 → 9 g と加重を増加させていくのがこれまでの定石であると思われるが、
このケー
スではより先端加重が低い ATHLETE JOKER PV ワイヤー (0.6 g) が容易に病変部を通過することができた。安全性と通過
性が担保され、かつ先端の形状が保全されやすい特徴により、高度石灰化のびまん性閉塞病変を比較的容易に通過すること
ができるうえ、通過後の高度屈曲に追従し pedal arch をトラッキングして retrograde approach することを可能にしたワ
イヤーであると言える。これにより使用ワイヤー本数も減り、また血管外へのワイヤー穿孔のリスク軽減が期待できる。筆
者は、穿通力を期待する際には 1 mm 程度の first curve のみ作成しなるべく直線的に使用するように心がけている。
JOKER PV 構造図
ガイドワイヤー後端側識別マーカー
術者紹介
2002 年 東京慈恵会医科大学 医学部 卒業
西新井ハートセンター病院
循環器内科 医長
2005 年 St.Elizabeth's Medical Center, Tufts University, Boston
重城 健太郎 先生
2002 年 東京女子医科大学病院
2007 年 Feinberg Cardiovascular Research Institute of Northwestern University, Chicago
2009 年 東京女子医科大学病院
2010 年 東京女子医科大学 大学院 卒業
2010 年 西新井ハートセンター病院
2014-05-08-01