2011 年度 京都女子大学 HP 用過去問題解説 アジア史 京都女子大学の世界史の問題は,非常に勉強し甲斐のあるものだと,最初に言っておきたいと 思います。 やればやっただけ得点できるからです。しかし誤解をしてはいけません。内容が安易だという 意味ではまったくなく,そこにはかなりの配慮がなされています。教科書の記述を超えるような 難問は一切なく,いわんや奇問は皆無であり,それでいて浅い学習ですべて解けてしまうような 設問でもありません。教科書を精密に読んで理解しているかどうかが問われる内容ですが,単に 語句を暗記すればよいということではありません。また,出題範囲が非常に広いという特徴があ り,時代は古代から現代まで,地域は地球上のあらゆるところに及ぶ,という具合に,まさに「ス キ」がない問題です。苦労せずに解けてしまうものではないけれども,まじめに勉強しさえすれ ば必ず解ける内容なのです。ですから,やり甲斐のある問題であるというわけです。以下,実際 の問題に当たりながら解説してみましょう。 1 アジア史に関するもの アジアは広いです。ユーラシア大陸の大半を占めています。この広大な世界の隅々まで京都 女子大学では出題範囲にします。中国の何千年にも及ぶ歴史もあれば,騎馬遊牧民の独特な活 動もあり,はたまたイスラーム教徒が急速に拡大していく動きもあれば,彼らの世界的な海上 交易も展開されます。これらのすべてが対象になるのですから,受験生としては気を引き締め なくてはいけません。ですが,京都女子大学のアジア史では,中国史およびその周辺に関する 設問の比率が高い傾向があります。まずはこの分野を,これから夏休みにかけて行う学習の重 点目標にすべく,中国とその周辺に関する問題を扱ってみましょう。2011 年度一般入試前期A 方式(1/29)のⅡを取り上げてみます。 ●2011 年度 一般入試前期 A 方式(1/29 実施) 大問Ⅱ ①リード文について 京都女子大学の世界史の問題はほぼすべて,空欄部の語句補充問題と,下線部に関する短答 問題からなっています。時折,空欄部がなく下線部のみという場合もありますが,上記のよう な形で出題されると思っていてよいでしょう。本問は漢字・儒教・仏教という共通点を持つ, 東アジア文化圏の諸国を対象にしています。つまり,中国・朝鮮・日本・ベトナムがテーマと なっており,各国のある時点について説明したA~Fの6つの短文が並んでいます。内容はそ れぞれ,渤海,室町幕府,高麗,楽浪郡,ベトナム阮朝,鄭成功一族と清と多岐にわたってお り,そのバラエティの豊かさはこれだけで実感できるでしょう。これらの中に合計 11 個の空欄 部があり,そのほとんどが漢字表記を求めています。下線部は(ア)~(カ)の6か所ありますが, それぞれに設問が設けられているわけではなく,下線部の出来事が起こった年代の順序を配列 することが求められています。これは京都女子大学の世界史の設問では珍しい部類ですが,こ ういう問われ方もあるのだと,心の準備をしておきたいところです。 1 ②設問について 空欄部では,1か所を除いてすべて漢字表記が求められています。誤字では不正解となりま すので,普段から書いて覚える訓練をしておかなければいけません。中にはなかなか手強い問 題もあります。たとえば,大祚栄が建国した国ということで渤海など,大丈夫でしょうか。 「さ んずい」がつくことも正確におさえてあるでしょうか。耶律阿保機が初代皇帝である遼(もしく は契丹),足利義満が始めた勘合による貿易,高麗の都である開城,阮福暎が建国した阮朝の越 南国,漢字ではないが,この阮朝最後のバオ=ダイ,鄭成功の子孫が守っていた台湾を征服した 清の康熙帝,などなど,誤りなく書けるか,やや不安になってくる受験生が少なくないかもし れません。一方,年代配列を求められる下線部の事項とは次のようなものです。(ア)渤海が遼に 滅ぼされた(10 世紀) (イ)足利義満が「日本国王」に封ぜられた(15 世紀) (ウ)高麗がモンゴル の属国となった(13 世紀) (エ)楽浪郡が高句麗に併合された(4世紀) (オ)阮福暎がベトナムを 統一した(19 世紀) (カ)清の康熙帝が台湾を征服した(17 世紀) 以上を年代順に並べた場合, 1番目・3番目・5番目にあたる出来事の記号を答えよ,という設問です。このような問題が 恐ろしいのは,1箇所だけ順序が狂っただけですべて崩壊してしまう危険性があることです。 ③学習アドバイス 京都女子大学のアジア史対策としては,まず中国史および中国周辺に関して重点的に勉強す ることが有効です。特に漢字表記でミスをしないように,徹底的に書いて覚えるべきです。ま た,年代配列の例を見て,やや不安を感じた受験生がいたかもしれません。これについてひと こと言っておきますが,年代を暗記することにそれほど神経質になる必要はありません。本問 の例をもう一度確認してほしいのですが,歴史の流れを丁寧にたどってあれば,年代を暗記し ていなくても,出来事の順序は自ずとわかってくるものです。たとえば,中国史の王朝を並べ てみると,殷・周・秦・漢・隋・唐・宋・元・明・清となりますが,上で挙げたようなことは すべて,これらとの何らかの関わりの中で出てくるものですから,それほど苦労せずに順序は わかるはずです。要は, 「・・・」だから「・・・」になる,というように因果関係を教科書の 中でしっかり追っていく姿勢が保たれていれば,ちゃんと得点できるということです。そして 問題集を用意して,常に問題演習を積んでおくこと,これも必要なことです。 2
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