■ 医療現場のニーズに応える産業技術 超高解像度8K映像技術の 臨床応用の試み ─世界初の8K腹腔鏡下胆嚢摘出手術の実施─ 日本大学総合科学研究所 准教授、 一般社団法人メディカル・イメージング・コンソーシアム 理事/山下紘正 われわれは日本発の超高解像度8K映像技術の医療応用として、2013年12月7日に国立成育医 療研究センター (東京)で行った8K腹腔鏡下動物実験に引き続き、2014年11月10日に杏林大学 医学部付属病院 (東京)にて世界初の8K腹腔鏡下胆嚢摘出手術を臨床で行った。8Kカメラを用 いた世界初となる腹腔鏡下手術の臨床評価には、動物実験にも増して入念な準備が必要であっ た。動物実験終了後からの臨床に向けての8Kカメラの改良や、臨床現場での運用を想定したシ ミュレーションの実施、手術前日の準備、手術当日と手術後の8Kデータ管理については、多くの 協力者の力を結集することで、成功といえる結果を得ることができた。 本稿では、超高解像度8K映像技術の臨床応用を実現させるために必要としたことと、その成果 の検討により今後必要となる取り組みにつき述べていく。 1 8Kカメラヘッドの小型軽量化 8K腹腔鏡下動物実験の結果から、8Kカメラヘッ 能性が低くなった。さらに筐体の素材や部品を厳 選することにより、カメラヘッド本体のみで約 300g の軽量化を果たし、2.2kg となった(図1)。 ドの臨床応用にはより一層の小型軽量化が必要不 可欠と考えた。腹腔鏡として利用する場合には、 カメラヘッド部分が患者に接近することから、そ の大きさは患者や術者、カメラ助手等との物理的 な干渉に係わり、手術の効率に大きく影響する。 特に患者へ干渉することは術式の進行に影響を及 ぼすため、真っ先に避ける必要がある。前モデル は元々放送用カメラの仕様に合わせて試作された ものであり、医療用とは重要視される仕様が異な る。そこで 8K カメラヘッドの構成部品の配置を 医療用に最適化することで、筐体の容積をおよそ 2/3 まで小型化し、8K 撮像素子の配置をカメラ ヘッド底部に寄せた。これにより、8Kカメラヘッ 図 1 8K カメラヘッドの小型軽量化 ドに接続される硬性鏡の光軸がカメラヘッド底部 左:H170 × W140 ×D200mm、2.5kg に移動し、患者へ 8K カメラヘッドが干渉する可 右:H130 × W125 ×D180mm、2.2kg 88 ︱August 2015 eizojoho industrial
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